大学在学中に地元でゲストハウス立ち上げを開始。Uターンした若者が語る地域の魅力とは|愛知県瀬戸市

前略
旅行といえば「観光地巡り」ではなく「ディープな町歩き」派のあなたへ

「日本ってもともと違う国だったのに観光地化が進んでいって、似たような雰囲気になっていくことは勿体ないと思うんです。それぞれの地域に個性があるからこそ、“特異性のある観光地” にしていくことが大切だと考えています」

愛知県瀬戸市は “ものづくり” のプロフェッショナルが集まる町。1,000年以上も途絶えることなく作られてきた “やきもの” は、時代の変化に合わせながらも伝統を大切に受け継いできた職人さんが多く、その技術の高さに「作れないものはない」と言います。

その一方で、伝統的な文化を持つ地域でありながらも、瀬戸市のことを知っている人がほとんどいない地域でもあります。

そんな瀬戸市だからこそ、地域の情報を発信するために “ゲストハウス” の立ち上げに奮闘しているのが、今回の主人公 南慎太郎さん。「まとまりのない話ばかりですみません」と言いつつ、熱い想いを楽しげに、穏やかな口調で話す南さんに迫ります。

自分のやりたいことを考える。

「大学時代から旅が大好きで、お金と時間ができればすぐにいろんな場所を巡っていました。海外も日本も大好きで、いつもゲストハウスに泊まっていたんです」

「日本のゲストハウスと海外のゲストハウスって全然違うんですよ。どちらも “ゲストの交流” という意味では共通していましたが、日本のゲストハウスはさらに、”地域性” があって、 “情報のハブ” を担っている場所が多いんです」

地域の人しか知らないようなお店や、その地域ならではの文化を誇らしく教えてくれるスタッフはとてもキラキラ輝いて見えた。

オススメされた場所はどこも観光地化されていない、町の人の “日常” ばかり。でもその日常が南さんにとっては “非日常” で、見るもの触れるもの聞くもの、その全てが非日常だった。

旅をする際には必ずゲストハウスに泊まっていた南さんですが、“自らゲストハウスを立ち上げよう” と思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

「大学時代、自分の “好きだ” という気持ちに自信が持てなくなったことがありました。自分の進みたいと思っていた道に進めなくなったり、やりたくても怪我が原因でできなくなったりして、

不運が重なってしまったことが大きな原因です。自分が世界と繋がっていない感覚を抱いて、”怖い” という感情を抱きました」

「就職活動の時にも、“自分が本当は何をやりたいのか” が見えなくなっていく感覚があったんです。また自分の “好きを疑う自分” に戻りたくなくて、改めて自分のやりたいことを考えました」

自分のやりたいことを考える。

「その時思い出したのがゲストハウスのことでした。自分の大好きなゲストハウスを今度は自分で運営してみたい。自分が心から “いいな” と思えるゲストハウスを創ろうと思いました」

試行錯誤を繰り返している町との出会い。

そこからは各地域のゲストハウスを転々と見て回ったり、ゲストハウスを運営されている方のブログを片っ端から読んでいった。そんな中で今あるゲストハウスの多くが、資金をはじめとする、ゲストハウスオープンへの準備が整った状態で始めているわけではないことを知る。

いろんな地域のゲストハウスを見ているからこそ、どんな地域でどんなゲストハウスを運営していきたいのか、想像もどんどん膨らんでいった。

「わかりやすく目に映るものがある観光地よりも、地域の特色がわかる伝統産業があって、その文化をさらに根付かせるためのゲストハウスを創りたいと思いました」

運命の地域は意外にも自分の身近なところに存在していた。愛知県瀬戸市出身で大学進学のために地域を離れていた彼は毎年のように瀬戸市に帰省をする。その年の彼は、実家に暮らしていた時はほとんど訪れる機会のなかった瀬戸市の中心まで足を運んでみることにしたのだ。

「瀬戸市ってすごく面白い地域だったんですよ。一言でお伝えするなら、とても “思考錯誤” を繰り返している町です。というのも、瀬戸市は “せともの” がとても有名なのですが、実はせとものだけではなくて、いろんな “やきもの” という “やきもの” が全てあるんです」

「時代の変化と共に、その時の流行や文明の進化によって求められる “やきもの” が違います。その時代で求められているものを思考錯誤を繰り返して生み出してきたのが瀬戸市の文化なんです」

思考錯誤の文化は今も変わらず残っているのでしょうか。

「特に60 ~ 70歳のおじいちゃんおばあちゃんの思考錯誤し続ける姿勢には頭が上がりません」

そう言いながら、楽しそうに町でのエピソードを語ってくれました。

町のお肉屋さんをやっている70歳くらいのおばあちゃんが、卵サンドとカツサンドをミックスした新メニューを考案して売り出していたこと。

70歳のおじいちゃんが営む喫茶店で “自信作だから食べてみてくれ” と、新メニューのプリンが出てきたこと。

「この年代の方々が “もっとお店や町を良くしよう” と挑戦し続けているってすごいと思うんですよね。しかもどれも本当にクオリティが高いんです」

最近では陶芸家さんだけではなく、漫画家さんや画家さん、カメラマンさんなど多岐多様な方々が瀬戸市に集まり、おしゃれなシェアアトリエをオープンさせている。

一方で瀬戸市には、瀬戸市で約250年続く古い窯元さんである “瀬戸本業窯せとほんぎょうがま” や町の銭湯、駄菓子屋など古いものが多く残っている町でもある。

宿よりも情報発信ができるゲストハウスをつくりたい

「今までに挑戦してきたことが残っていて、さらに新しい人が挑戦している町です。昔ながらの雰囲気に新しい風が混ざり合うことで生まれているところが瀬戸市らしさだなと思います」

すっかり町の雰囲気に魅了された南さんは、この町でゲストハウスを運営していくことを決める。

「瀬戸市は古い伝統や歴史を持ちながらも、常に新しいことに挑戦し続ける文化を持ち合わせている素晴らしい地域なのですが、”せともの” のことは知られていても、”瀬戸市” のことはほとんど知られていません」

「だからこそ “せともの” はもちろん、それ以外の瀬戸市の魅力を伝えるために瀬戸市でゲストハウスを開きたいと思いました」

まだ大学に在学中ではあったものの、“この想いは何としてでも実現させたい” と思った南さんは、思い切って瀬戸市役所の空き家担当者さんに電話して、ゲストハウスとして使えそうな空き家がないか質問します」

「その時対応してくださった担当者さんと意気投合して、“次に瀬戸に帰省する時に、事業計画書つくって持ってきてよ!” と言われました(笑)想像していなかった急展開に驚きつつ、生まれて初めての事業計画書を作成して、瀬戸市へ持参したのが大学4年の夏休みです」

とにかく、やりたいことを発信し続けた結果

帰省すると、市役所の方のご紹介もあって瞬く間にいろんな方と繋がっていった。

今でも協力してくださっている「瀬戸本業窯」の八代目 水野半次郎後継の雄介さんや、進行中のゲストハウスのリノベーションで全面的にアドバイスをいただいている大工の六鹿崇文さん、さらにゲストハウスを運営する古民家の大家さんもこの時で会った方々。

瀬戸本業窯」の八代目 水野半次郎後継の雄介さん
「瀬戸本業窯」の八代目 水野半次郎後継の雄介さん
大工の六鹿崇文さん
大工の六鹿崇文さん

「本当にご縁で繋がって、一緒に造ってくださる方が多いんです。少し前ですが、私がFacebookに出した投稿文を見て、フリーライターとして活動されている方から直接ご連絡が入ったこともありました」

何回かやりとりを交わし、実際に瀬戸市へも足を運んでくれたというライターさんは、もうすでに瀬戸市への移住を決め、南さんと新しくメディアをつくる構想もしているとのこと。

「ずっとゲストハウスが運営するメディアをやりたかったのですが、なかなかそこまで手が回っていない中での出会いだので、本当に驚きました。やりたいことを発信し続けていると、繋がっていくものなのかもしれません」

ゲストハウスオープンに向けて

着々とゲストハウスオープンに向けて進んでいる南さん。今回ゲストハウスになる明治7年に建てられたち推測される古民家も、地元の方々と一緒に掃除やリノベーションを続けてきました。これからはいよいよ床や壁の補修、電気工事などプロに任せる段階です。

「瀬戸市でゲストハウスを開くことを決めてから、大学生の時に約100万円を貯金してきました。これから銀行から150万円の借り入れをする予定です。しかし想像以上に建物の老朽化が激しく、今の資金だけでは到底足りないといった現状が見えてきました」

「都市化も、観光地化もされず “廃れた” と言われ続けていた瀬戸市が、今確実におもしろい方向へと変貌を遂げています。だからこそ早くゲストハウスを完成させ、瀬戸市の魅力を発信していきたいと思っています」

「ますきち」の外観
ゲストハウス「ますきち」の外観

現在南さんはクラウドファンディングを使って、2018年7月5日まで支援者を募集中。(195名の方にご協力いただき、達成しました!ご協力いただきました皆様本当にありがとうございました。詳細はこちら

「僕は、旅や暮らしのおもしろさは人と人の間で生まれると思っています。全国の方と瀬戸市の方が交わる場になったらいいなと思っています」

今から完成が楽しみなゲストハウス「ますきち」は、ディープな町歩きが好きなあなたにオススメの町。ゲストハウスでは、南さんがあなたに合ったお店や人をご紹介してくれます。

この記事を最後まで読んでくれたあなたへ。
ぜひ一度瀬戸市まで足を運んでみてはいかがでしょうか? 

\ますきちのHPはこちら

草々

Writer:高山奈々

これからもふるさとの応援をお願いします。