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一度使ったら手放せない。口コミを大事に、リピーター続出の “今治タオル” をつくる「町工場の教え」とは

AUG. 29

拝啓、使う人のことを一番に考えて作られたタオルに、触れてみたいアナタへ

1991年生まれの27歳。彼は愛媛県今治市で、50年以上今治タオルを作り続けている「渡辺パイル織物株式会社」の長男であり、渡辺パイルの三代目を継ぐため日々奮闘している。

お爺様が創業した当初から、会社に関わる全ての人が「素材の良さを最大限に活かすものづくり」を大切に、日々タオルと真剣に向き合い続けている姿がここにあった。

渡邊文雄さん
渡邊 文雄 さん

タオルが大好きなタオル屋さん

幼い頃からタオルに囲まれていた。当時の遊びといえば、会社にあったタオルの山に登って遊ぶこと。他の人よりも圧倒的に触れる機会が多かったからだろうか、彼はタオルが大好きだった。

学年が上がるにつれて、必然と「会社を継ぐのは文雄だよ」と言われる機会は増えていった。だから「いつかは継ぐんだろうな」と思いながらも、父には「好きなこともやれ」と言われていた。

現実的に自分の進路を考えたのは、大学に進学を決める少し前。世の中にはタオル屋以外にも面白そうな仕事は数多くあった。正直、葛藤しなかったと言えば嘘になる。でも53年も続いてきた会社を辞めてまで、やりたいと思えることはなかった。父の姿を見てきていたからだろうか、会社を潰すことは考えられなかったのだ。

経営者であり職人でもある父への憧れ

父を一言で言うなら「貪欲さの塊」だろうか。父は経営者としては珍しく、社長であり職人だった。自らお客様が喜ぶものを想像して、全力で作っている父はとにかく格好よかった。幼い頃から仕事に対して貪欲に働いている父を尊敬していた。

そんな父にアメリカへ綿畑を見に行こうと誘われたのは、彼が19歳の時だった。これが彼の転機になる。アメリカは大きかった。何事も寛大に受け止める姿勢に驚くと同時に、ほとんど英語が話せなかった彼は、深い会話ができずコミュニケーションが取れないという “もどかしさ” も感じていた。

「もっとコミュニケーションがとりたい」そんな想いが彼を突き動かし、アメリカへの留学を決めた。留学の時の目標は「語学と言語を超えたコミュニケーションを身につけること」。

だからアメリカでの授業はなるべくチームで進めていくものをとった。全てが新鮮だった。お互いにメンバーの考え方や価値観を共有・理解し合い、自分の優先順位が高いものに関しては、授業を休んでも優先させる・周りはそれをサポートするという環境が当たり前だった。日本の「大学」というよりは「企業」という環境に近い状態だったと思う。

タオルを売って恩返しがしたい

留学の期間が終了した後は、会社で綿花の取引をしている綿畑に一ヶ月インターンをした。工場には基本的に、綿花が糸になった状態のものが届く。糸になる前の綿花がどうやってできて、どんな人が育てているのかを知っている人は、会社でもほとんどいなかった。

会社を継ぐと決めていたからこそ、この機会にしっかりと糸を届けてくれる人や環境を知りたいと思って、インターンをお願いしたのだった。

綿花は何十キロと収穫されても、実際に糸として使えるのは三割ほど。その希少さに驚いた。この土地で取れた綿を使って作ったタオルを手渡すと、本当に喜んでくれた。彼が綿の状態を知らなかったように、農家さんは最終製品を知らなかったのだ。

綿畑は本当に広大で、ここにはとても穏やかな時間が流れていた。ここで働く人たちのために彼ができることは、より売り上げを伸ばすこと。彼らの綿花で作ったタオルを売り、あの時の恩返しをしたいという気持ちが今も彼を突き動かしている。

最初から継ぐことは考えていなかった

大学に入った時から、大学卒業後にいきなり会社を継ぐことは全く考えていなかった。今の自分がこのまま家に帰っても何もできないことは分かっていた。

昔から経営としても職人としても必死に走り続け、その才能を開花させている父を間近で見てきたからこそ、大学1年生の頃から「父にはできなくて、会社に必要なことは何か?」をずっと考えていた。

会社を継ぐことを見据えて就職活動を続ける中で、彼が出した答えは「生地」の分野に精通することだった。将来的にタオルだけでなく、洋服の生地として販売することも考えて、服地の販売が勉強できるニューヨークで洋服の生地を扱っている商社にインターンとして働くことを決めたのだ。

使う人のことを一番に考える

家に戻ってきたのは今から3年ほど前。今彼がものづくりで大切にしているのは「使う人の立場に立って作る」こと。たとえ自分たちがいいと思ったものでも、買う人がいいと思えなければ意味がない。

渡辺パイルのお客様はほとんどがリピーター。彼は常に店頭に立ったり、口コミを見たりすることを大切にしている。買ってくれたお客様の生の声を聞くことで、日々改善を繰り返し、試行錯誤を続けているのだ。

一回使ったお客さんからのリクエストに合わせて商品を作ることもあるから、その品数は年々増え、何千にも及ぶ。お客様が好きなタオルを見つけていけたらいいなと思う、ただそれだけなのだ。 

タオルだけじゃないタオル屋さん

今は営業をメインに会社のほぼ全ての業務を行っているが、ここでもっと経験を積んだら、今度はチーム作りをしていきたい。今は、必死にみんなが目の前のことをこなしている感覚があるのと同時に世界は今、世の中にないものを求めている。渡辺パイルのタオルが世界に通用すれば、働いている人たちのモチベーションにも繋がる。だからこそこれからは日本国内を固めつつ、世界を見据えたチームとして戦える会社を創りたいのだ。

彼にはもう一つ大きなビジョンがある。彼は人と人が繋がっていくことが大好き。大学に入ってからは、いろんなコミュニティに属したり、イベントを企画したりしていた。

タオル屋だけど、タオルづくりだけをしているわけではない。決して中途半端な考えではなく、タオルづくりをしつつ、人と人が繋がる場所、お店を持ちたいと思っている彼は、今知り合いのバーでも働き、メニューの開発などを手がけている。時には自らカウンターに立ち、お客様の生の声を聞くことも。

「友達だから仕事しない」「仕事仲間だから飲みに行かない」そんなのは悲しい。いろんな人が仕事もプライベートも関係なく、混ざり合っていったら面白い。彼の友達同士を集めたらきっと面白い。なんなら彼がいなくても、みんなで集まって何か生まれる関係になったらさらに面白い。

そんなコミュニティを創りたい。何か共通の話題や目的があれば、知らない人同士でも話せるものだ。あ、たまたまビールが好きだからビールで何かしようかな。今彼の頭にはそんな未来が描かれているのだった。

Information

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Editor's Note

編集後記

タオルへの愛や、お父さん、タオルづくりを支えてくれている人たち、お客さま、全ての思いや人に突き動かされ進んでいる渡邊さん。ぜひ一度、彼のつくったタオルを使ってみてはいかがでしょうか?

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