便利な東京で「一生暮らす」と思っていた私が、坂本大祐さんに出会って変わった話。

私が初めてこの地域に訪れたのは、もう2年も前になる。

2016年11月12日。
日付までちゃんと覚えているのは、この日が私の21回目の誕生日だったから。

今の旦那とまだ恋人同士だった頃、奈良県東吉野村という人口わずか2,000人の小さな村で暮らしていた彼に「本当に素敵な場所だからおいでよ!」と声をかけられた。

人生初の夜行バスに揺られながら新宿駅から6時間かけて桜井駅に向かい、そこからさらに、電車で榛原駅の待ち合わせ場所まで向かう。待ち合わせ場所からは車で移動と、なんとも辺鄙な場所にある村だった。

待ち合わせ場所に着いた時にはもうクタクタで、久しぶりの彼との再会を喜べる元気もなく、車に揺られながら窓の外をずっと見ていた。徐々に窓から見える色が、緑と茶色ばかりになっていく。道幅も徐々に狭くなり、車とすれ違う時は思わず凝視してしまうくらいスレスレ。

21年間、都会で生活してきた私にとって、目の前に広がる世界は、『となりのトトロ』の世界観そのもので、移動の疲れはどこかに吹っ飛び、「たばこ」という看板や「鹿注意!」の標識、木造建築や透き通った川にまで感動する始末。

全てが新鮮で、興奮している私を乗せた車はぐんぐんと森の奥に進んでいった。と思いきや、急に停車。驚いて、顔を前に向けると、今までの建物とは全く違うどこか「イマドキな建物」が目の前に現れていた。

明らかに新しく建てられたであろうその建物は、東吉野村の中でも特に大きな存在感を放っている。「なんだろう?」と思っていると、建物の扉が開き「いらっしゃい!」と声をかけられた。

車に乗ってから、初めて見た「人間」の姿に驚いた私は、言葉がうまく出ず、会釈をすることしかできなかった。そして今度はその「人間」と、彼が親しげそうに会話を始めた。

私の前に現れた「人間」は、坂本大祐さん。東吉野村に在住し、商品や店舗のデザインなどを手がけ活躍するデザイナーで、「大祐さん」と呼ばれている。そして「イマドキな建物」は、OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO。大祐さんが運営する、築70年の古民家をリノベーションしたシェアオフィスだ。

「コーヒー入れるで!」という大祐さんのお言葉に甘え、OFFICE CAMPの中に入ると、ふわっと香る木の匂いに全身が包まれた。

大祐さんが手際よく煎れてくれたコーヒーを飲みながら、お互いの話に花を咲かせる。

大祐さんは大阪府狭山市出身。幼少期から都会で暮らしており、社会人になってからも大阪を拠点に活躍、仕事に明け暮れる日々を過ごしていた。そんな大祐さんだったが、31歳の頃、仕事漬けの日々が原因で、体を壊してしまう。これがきっかけとなり、中学生の頃に山村留学の経験があった東吉野村への移住を決意したのだそう。

村は、スーパーやコンビニが遠く、情報交換もしづらい。冬の寒い時期には本格的なストーブが欠かせないが、そのための薪割りは一苦労。

そんな東吉野村だが、その反面、澄んだ空気と綺麗な水で育った食べ物が簡単に手に入る。お互いの生き方を尊重しながら、会って話す機会を大切にし、暮らしの中で自然と体を動かす。そんな都会では考えられない生活が当たり前のように行える環境がここにはあった。

村には、求められる仕事があって、村に住むだけでも喜んでもらえるからこそ、それを支援する仕組みを生み出そうと活動している大祐さん。「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」もその中の一つで、県や村、移住したクリエイター陣とタッグを組んで立ち上げた。

こんな暮らし方があってもいいんじゃないかなって思っているんだよね。

飾らない、でも芯のある大祐さんの生き方に憧れて、実際に東吉野村に移住してくる方や、東吉野村に遊びにくる方は後を立たない。

「本当にここに人が来るの?」そう思っていた私も、毎年1回は必ず大祐さんに会うために東吉野村に足を運んでしまう。そして、同じように大祐さんに会いに来た人たちと「初めまして」とご挨拶をして、帰りには「また必ず会いましょうね」と言って別れていく。

この日はたまたま全国から11人もの方が大祐さんを訪ねて来ていた
この日はたまたま全国から11人もの方が大祐さんを訪ねて来ていた

「都内の方が便利で暮らしやすいでしょ」そう思っているあなたにこそ、一度足を運んでほしい場所、奈良県東吉野村。春は満開の桜「ソメイヨシノ」を楽しみ、夏は澄んだ川に飛び込んだり、鮎を釣ってバーベキューを楽しむ。秋には真っ赤な紅葉を見て、冬は樹氷を見に高見山に登る。

大自然と笑顔あふれる人たちがいるここには、きっとあなたが想像している以上に素敵な出会いがあるはずです。

Writer:高山奈々

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