前略、100年先のふるさとを思ふメディアです。

LOCAL LETTER

メディア運営者らが迫る。「ローカルはメディアを必要としてるのか?」への解とは

JAN. 23

拝啓、ローカルにおけるメディアの真価を問いたいアナタへ

ローカルメディア『LOCAL LETTER』が開催する、本業でも副業でもライターとして全国各地で活躍できる人を増やすスクール『ローカルライター養成講座』の特別講義として行われた、スペシャル対談の前編。

ある種直球すぎる「ローカルはメディアを必要としているのか」の答えを探し出すのは、『LOCAL LETTER』のプロデューサーである株式会社WHEREの平林和樹と、メディア運営以外の方法で、ローカルを表現・発信し続けているクリエイティブディレクターの坂本大祐さん。

「ローカルはメディアを必要としてるのか?」という問いは、どんな着地をみせるのか。

異色のふたりが、メディアの真価を問います。

大祐さんが語る「出てよかった」と思うメディア。大切なのは人対人の思いやり

平林和樹(以下、平林):皆さんこんばんは。今日は『ローカルライター養成講座』の第0回特別講義です。一般的には「メディアの使い方」とか「How to」みたいな話が求められることが多いですが、今回参加してくださっている皆さんは、書き手や作り手として来てくださっているかなと思うので、ディープな話をしていく意気込みです。

平林 和樹 株式会社WHERE 代表取締役、LOCAL LETTERプロデューサー / ヤフー株式会社・カナダ留学・株式会社CRAZYを経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディアLOCAL LETTERは約2万人の会員規模まで成長。人口900人の村で古民家をリノベした体験型民泊施設まつや邸は開始9ヶ月で宿泊客180名を突破。地域経済活性化カンファレンスSHARE by WHEREを立ち上げ業界・地域を超えた産学官民の起業家70名以上が登壇。内閣府地域活性化伝道師。

平林:「ローカルはメディアを本当に必要としているのか」をテーマに大祐さんとお話をしていきたいと思うのですが、大祐さんの最近の活動といえば、奈良県生駒市で『まほうのだがしや チロル堂』がグッドデザイン大賞を獲得したことですかね。

坂本大祐(以下、大祐):おかげさまでそうなんですよ。僕らがやっている『チロル堂』は、大人の飲食代がこども達の駄菓子やカレー代に変わる魔法の駄菓子屋なんですが、その活動がグッドデザイン賞のファイナリストにノミネートされまして。最終的には大賞をいただきました。

平林:いや本当におめでとうございます。

大祐:ありがとうございます。

平林:「まちや社会の循環をいかにデザインできるのか?」という大祐さんの観点は、東吉野村にあるコワーキングスペース『オフィスキャンプ東吉野』から始まっていると思うのですが、僕らのLOCAL LETTERもそこを大事にしている部分では通じるものがあるなと感じていて。

大祐:うんうん。

平林:メディアを運営しているとありがちなのは「PVをどれだけ取れるか」や「コンテンツの受け」。ですが、これらに寄りすぎてしまうと、本当に社会が必要としている情報やコンテンツとかけ離れてしまう可能性がある。だからこそ、僕らは定期的にメディアの在り方を問い直す必要があると思っています。

大祐さんもこれまで過去多く取材を受けられていると思うのですが、大祐さんが「出てよかった」と思うメディアと「そうではないメディア」の違い(ポイント)はなんでしたか?

坂本 大祐さん クリエイティブディレクター、合同会社オフィスキャンプ 代表社員 / 奈良県東吉野村に2006年移住。2015年 国、県、村との事業、シェアとコワーキングの施設「オフィスキャンプ東吉野」を企画・デザインを行い、運営も受託。開業後、同施設で出会った仲間と山村のデザインファーム「合同会社オフィスキャンプ」を設立。2018年、ローカルエリアのコワーキング運営者と共に「一般社団法人ローカルコワークアソシエーション」を設立、全国のコワーキング施設の開業をサポートしている。著書に、新山直広との共著「おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる」(学芸出版)がある。奈良県生駒市で手がけた「まほうのだがしやチロル堂」がグッドデザイン賞2022の大賞を受賞。

大祐:一つは丁寧にやってくれていることがわかるメディアには好印象を持ちますよね。例えば、自分がやっていることをある程度理解した上で取材に来てくれるとか。もちろん「初見であることを前提にしています」というのもわかるんですが、そうなると「俺は何十回同じ話をするんだろう?」となって「多分それどっかにもう載ってますけどね」という気持ちにもなっていくわけですよ。

平林:はいはい!

大祐:自分がやってきたことを前提に、その先で聞きたいと思っていた「問い」を投げられると、こっちも勉強になります。もちろん「絶対にここだけは話してもらわないと困る」というオーダーもあっていいと思うんですけど、「何か自分の言葉で考えて喋ってくれているな」と思うライターさんとやれると、結果的にアウトプットされる記事も反響が良いですね。

平林:たしかに、考えたことが取材をされることで整理されるというか、深まるというか。

大祐:そうそう!

平林:話していて、そういうのが生まれてくると、取材を受けてよかったなってなりますよね。

大祐:めっちゃ思う!せっかく出会ってるんで、個人的にも繋がれるようなことがあればいいなとっていうのは毎回思うしさ。そういう人とは取材を終えた先でも何かありそうな気がするし、アウトプットされる記事も楽しみになるしね。

平林:メディアって取材者と読者が両者いて、初めて成り立つのが面白いなって僕は思うんですけど、そういった時にメディアが気にするのって、取材をさせいただいて、「記事全然伸びなかった」みたいなことなんですよね。でも、大祐さんがおっしゃったのは、もちろんメディアとして発信の努力も必要ですが、相手との接し方や、自分の考えが整理されていく取材や記事も一つのメディアの強みだということだと思いました。

大祐:取材ではあるんやけど、聞きたいことだけを聞き出したらもうそれでいいやっていうのは寂しいよね。その姿勢は取材相手にも伝わるし。

平林:「それもう答えイメージできてるでしょ!」みたいなのありますよね(笑)。

大祐:そうそう!ガッツリシナリオが決まっていて、それを喋って欲しいんですよねっていうのがこっちも分かるから、それをもちろん喋るんですけど、でもそれって「俺おらんくてよくない?」と。「最後に承認するとこだけやってます」みたいな感じになるから、そこのプロットガチガチに組まれると「俺いらんやん」って思うよね(笑)。

取材でも、そこにしかない出会いや偶然とか、いろんな要素があるわけじゃない?もちろん、ある程度の構成は考えてくれててもとは思うねんけど。そこでどれぐらいのハプニングっていうか、自由度を許容するかが面白い記事にも繋がるんじゃないかなと思うんですよ。本人が面白がってるかどうかみたいなのは、やっぱりどうしても記事に出ちゃうから。

平林:それめっちゃ共感しますよ!やっぱインタビューが盛り上がってた記事ってそこに熱量が乗っかっているから、記事の広がり方もナチュラルになるのはめちゃくちゃ思いますね。

大祐:そうなんですよね。取材対象に対してやっぱり興味持ってもらいたいっていうか、「仕事できたから聞いてます」みたいな感じって、「なんなんこれ!」みたいになるやん(笑)。俺おらんでいいやんって。そういう人もやっぱ実際にいるんだよね。

どの方向から光を当てるのか。メディアが持つ「強み」と「問い」

平林:僕はメディアを運営する立場として、「自分たちの価値をどこに置くのか」を日々考えています。メディアって仮想というか、クラウドみたいな存在で、そこにどんな価値や魂を込めるかで、メディアの価値自体が変わると思っているんですそこで大祐さんにお聞きしたいのが、今回のテーマである「ローカルにおけるメディアの価値」について。

大祐:メディアって日本語に翻訳すると「媒体」だけど、僕はそれだけの意味じゃなくて、世の中はこういう風に見えてるんです」っていうのを切り取るためのものだと思ってる。だから、例えば僕が住んでる東吉野村っていうのを、Aのメディアはこういう風に切り取るけど、Bのメディアはこの角度から切り取るっていうのはある種正しいし、間違ってもいるんじゃないかって。

切り取って、そこに光を当てることがメディアの持つ思想みたいなもので、つまりはそれが、メディアの編集方針になる。光の当て方みたいなところを、メディア側はコントロールできるのが強みだと思うし、メディアを運営していく側に課せられた問いがあるとも言える。あとは、切り取ったものをちりばめることによって、自分たちが想像している世界を見せる手段として、メディアを活用する方法もあるんじゃないかなって。

平林:PRですね。

大祐:そうそう。PR的な部分もあるし、なってほしい未来のための雛形というか。だから一つ一つのことに関しては事象を重ねていってるんだけど、その組み合わせによって文脈が生まれる。その文脈をたどってくると、なんとなくアウトラインを見てきて、「この未来はこうなんじゃないの?」みたいなところが、じわじわ伝わってくるみたいな。

平林:読めば読むほど的な。

大祐:Webメディアが一概にそうかと言われると難しいけど、たとえば昔のマガジンみたいな雑誌って、確実にいろんな事象を取り扱いつつも通貫したテーマというか「自分たちとしてはこういう世の中に見えてるんです」とか「こういう世の中になってほしいんです」っていう想いがあって、そこに読者が影響を受けるってことがあるわけじゃないですか。

だから一つ一つは事象そのものでしかないけど、記事の組み合わせによって「こういう未来もある」っていうのが暗に伝わるであったり、書いてはないけど伝わる雰囲気を受容して、なんとなくそういう世界になっていったりみたいな。だからやっぱり、メディアが持ってる役割って大きいと思うんですよね。

長年語られてきた「メディアが複数あること」への究極の解

平林:今の話だけでも、今日の対談をやって本当によかったなって思ってます。メディアを運営すればするほど、「記事単発で考えていく」っていう発想になっていきがちで、評価の仕方も「記事単体でどうだったか」に向いていく。

だけど「世界の中にどういうコンテンツが流れてきていて、その総体としてどう未来に向けて世界が作られていくのか」っていう視点は、メディアとして見失っちゃいけないと思いました。

大祐:例えば、世の中に赤白青の3色しかないとして、メディアとしては赤だけとか白だけを取り上げることもできるし、赤白青をまんべんなく取り上げることもできる。事実としては、その3色しかないってことなんだけど、どこを取り上げるかによって見えてくるものが違ってくる。そういう意味では、メディアっていうのはある種世界をつくってるとも言えるんじゃないかなって。

平林:ローカルにメディアがあることに対して「複数ある意味ある?」みたいな問いって起こりがちですけど、複数あるから意味がないということじゃなくて、違う視点や世界観で切り取られてたら、価値があるし、逆に同じ目線や世界観なら、記事の書かれてる内容が別だとしてもあまり意味がないと感じてしまうということなんだろうなって思いました。

大祐:今の時代は、俺らが一生かかっても消化できないような良質な情報がたくさんある。SNSもそうで、ある種全員がライターみたいな世界の中でも「LOCAL LETTERというメディアをやりたかったのは何故か」という問いが大事になってくるやろうね。

あとは、これから先のライターっていうのは、書くことに対してハードルが下がっている時代の中で、何がその人に頼みたくなる理由なのかも大事。確かに書くことはそんなに簡単じゃない。でも文字情報になってそれがデータ化され、その何らかをインターフェースを通してみることにおいて言うと、SNSもLOCAL LETTERも同じ。だからこそ自分たちが「何のためにやってるのか」を持つことが、すごく重要になってくるだろうね。

平林:本当にそう思います。

Information

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場所に縛られずに、 オモシロい地域や人と もっと深くつながりたいーー。

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは、「Co-Local Creation(ほしいまちを、自分たちでつくる)」を合言葉に、地域や社会へ主体的に関わり、変えていく人たちの学びと出会いの地域共創コミュニティ。

「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。

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Editor's Note

編集後記

出てくる出てくる金言の数々。私自身もライブで聞いていましたが、書き留めたい内容が多すぎてメモが追いつかない事態に(笑)。
ライターの心得から、メディアが持つ強み・役割といった、メディアに関わる人全ての人に刺さる内容となりました。後編では、「メディアが持つ可能性」が語られます。是非そちらもご覧ください!

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