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LOCAL LETTER

「可もなく不可もなく」だから、暮らしやすい。千葉県山武市が初めての地域おこし協力隊を募集

NOV. 25

CHIBA

拝啓、まだ誰も歩いていない道を地域と共に拓いていきたいアナタへ

千葉県北東部、九十九里浜に面した山武(さんむ)市。

海と里山が身近にあり、成田空港や東京圏へのアクセスもよい“ちょうどいい距離感”のまちです。

しかし2020年、株式会社ブランド総合研究所が実施した「地域ブランド調査」の魅力度ランキングで997位と全国ワーストタイを記録。

海も山もあり、東京への通勤圏内と、都会からの移住先として選ばれそうなまちがなぜ最下位に?

その背景にあったのは、まちの魅力が知られていないという課題でした。

九十九里浜のほぼ真ん中に位置する山武市。写真は本須賀海水浴場。

知られていないが故に転入が少なく、人口減少が進み、2022年には市内の旧松尾町地域が過疎地域に指定されるに至ります。一方で、子育て世代の移住など新たな動きもあります。

そこで、さらなる移住促進のため、初めての地域おこし協力隊の募集に踏み切りました。ミッションは市の魅力の発掘と発信、移住相談の対応です。任期ありの市職員(地域おこし協力隊制度活用)として2名お迎えします。

これまで市の移住施策は、職員がほかの業務と兼任しながら取り組んできました。だからこそ、今回新たに専任の仲間を迎え、より一歩踏み込んだ挑戦をはじめたいと考えています。

山武市企画政策課の青木和也さんと金ケ崎淳一さんに、募集にかける想いや期待をうかがいました。

>募集の詳細はこちらから

※【編集部より】今回の募集に込められた背景や想いは、この記事の本編で紹介しています。まずは山武市の歩みやお二人の声に触れていただいた上で、詳細をご確認いただけると嬉しいです。

取材を行った山武市成東(なるとう)。市役所もある、まちの中心エリアだ。

東京から1時間。海・山・街が生み出す日常の豊かさ

千葉県北東部に位置し、東京駅から特急で約1時間、千葉市までも1時間圏内。海も山もある山武市は、都心へのアクセスと豊かな自然環境を併せ持ちます。

市の中心部にはスーパーマーケットが複数あり、日常の買い物に困ることはありません。少し車を走らせれば、千葉市や成田市の大型商業施設にも行くことができます。海側に向かえば九十九里の海岸線が広がり、内陸に入れば田んぼが広がる里山の風景が待っています。

「住みやすそう」と呟くと、「生活上に必要な環境は揃っていて、不便はありません。ただ、特別な華やかさがあるわけではない。いい意味で可もなく不可もなく、というのが正直なところです」と穏やかな声が聞こえてきました。

声の主は、山武市企画政策課主査補の青木和也さん。山武市生まれ山武市育ち。現在は市外に住んでいますが、14年間、市の職員として働いてきています。

青木和也氏 山武市企画政策課主査補/1989年生まれ。山武市生まれ山武市育ち。現在は市外在住。妻と子ども1人(3歳)の3人暮らし。高校生までは、地元で過ごし、大学時代を京都市で送る。大学卒業後、山武市役所に就職。税務や情報システム部門等を経て、2022年から現職。2025年から移住業務を担当。

派手さはないが、暮らしにくいこともない。それが、地元民が感じる山武市の姿だと青木さんは言います。それは実感でもあり、「期待させ過ぎてギャップがあってもいけないから」という配慮でもあります。その証拠に、尋ねれば次々に、山武市の魅力が湧き出てきました。

「冬も雪はそんなに降らないですし、夏もうだるような暑さはない。比較的1年中通して気候は温暖で安定しています。海が好きな方は本当に楽しめます。広い家で暮らしたいといった希望も叶います。野菜や果物などが豊富で、美味しい食べ物も多いです。食べるのが好きな方も、ぜひ一度いらしていただけたら」(青木さん)

その言葉から浮かんで来るのは、確かにそこにある日常の豊かさ。

「子育て環境も充実しています」と言葉を添えるのは、山武市企画政策課副主幹を務める金ケ崎淳一さん。25年前に青森から山武市に移住し、山武市のために働いてこられました。

金ケ崎淳一氏 山武市企画政策課副主幹(政策推進係長)/1974年生まれ。青森県出身。大学卒業後、山武町役場(現山武市役所)に入庁。現在は、山武市在住(在住歴約25年)。教育委員会を皮切りに企画、財政等を経て、2024年から現職。

「まず、幼保一元化したこども園が5カ所あります。すべて公立で、比較的新しく、広い園庭を持つ施設が多いんです待機児童もなく、スムーズに入園先をみつけやすい環境です。成田国際空港が近いこともあって、国際教育に力を入れている園もあり、学校教育や施設も充実しています」(金ケ崎さん)

市のこども園の1つ「なるとうこども園」の園庭。子どもがのびのびと育つ環境が用意されている。

教育だけではなく、豊かな遊びの環境も、子育て世代にはうれしいところ。

 「海にも山にも近いので、田んぼ風景の見える景色と、夏の間海で遊べる場所と、両方が数キロ圏内にあります。子どもと一緒に自然の中で遊べる環境が揃っていると思います」(青木さん)

総面積約12ヘクタールの広大な敷地をもつ「さんぶの森公園」。1998年の開園以来、多くの人々に親しまれている。子どもが全力で遊べる遊具から、大人が静かに過ごせる池や図書館まで揃い、自然を五感で味わえる空間が広がる。

小学校では、田植え体験や芋掘りなど、地域の自然を活かした体験学習も行われているそう。千葉県の子どもたちが一度は遊びに来たことがあるという蓮沼海浜公園は、県内一のプールとウォータースライダーを誇り、家族の夏の思い出の一コマを彩っています。

ポテンシャルは十分。課題は認知度

山武市は、2006年に、成東町、山武町、松尾町、蓮沼村の3町1村が合併して誕生しました。それ以来、人口は減り続けています。

「関東地方なので、他の地域に比べれば急激な減少はないと思います。とはいえ、着実に減ってはいます」(青木さん)

人口減少を食い止めるため、2020年から企画政策課が移住促進業務を引き受け、いくつかの施策を試してきました。しかし、専任の職員がいない状態が続き、思うように手を広げられていません。

そんななか、2022年に旧松尾町地域が過疎地域に指定されました。

「さすがにこのままではまずいと、新しい取り組みを始めたいと考えていました」と青木さん。

東京近郊である立地の良さから、市としては、適切に施策を進めていけば、人口が増えるポテンシャルがあると判断しています。解決すべき一番の課題は認知度の低さ。

「山武市が抱える多くの課題の原因を探っていくと、認知度の低さにつながっています。『魅力度ランキング』で全国最下位を記録してしまった要因もそれでした。地域おこし協力隊と一緒に情報発信に力を入れ、市の認知度を上げていきたいというのが、今回の募集の出発点です」(青木さん)

取材時はあいにくの雨天だったが、黄金色に残る稲刈りの跡。山武市では収穫時期の早い早生(わせ)品種がよく栽培されているのだとか。

とはいえ、新規に協力隊を立ち上げることには不安もあります。募集に踏み切る追い風となったのは、総務省の「地域おこし協力隊アドバイザー派遣事業」の拡充でした。

「新規募集の計画づくりや募集準備が支援対象に追加され、地域おこし協力隊を新しく導入して活用できる道が開けました。この制度を利用してみて、地域おこし協力隊を始めることになりました」(青木さん)

山武市の魅力を届ける「さんむ移住コーディネーター」募集

今回募集する地域おこし協力隊の主な業務は、山武市の移住にまつわる施策や制度、まちの良さを伝え、移住相談の窓口ともなる「さんむ移住コーディネーター」です。

具体的に想定されている業務は、以下の4つ。
①移住相談のための情報収集
②移住相談の対応
③移住関連施策の情報発信
④移住イベントの企画立案・実施

採用後は任期ありの市職員(地域おこし協力隊制度活用)として働くことになります。市役所の企画政策課を拠点とし、基本的には午前9時から午後5時までの勤務です。ただし、フィールドワークなどで時間が変動する場合には、柔軟に対応する方針とのこと。

採用後は基本的に山武市役所にて勤務することになる。

また、副業は最初から可能。副業の都合で「午後4時までしか働けない」「週に半分しか働けない」といった相談にも、パートタイムで対応できる体制を整えています。

 チーム編成は、協力隊2名と市の職員1〜2名の計3〜4名。基本的には2人の協力隊員が1組で動くことを想定しています。

「各々の得意不得意があると思うので、それに応じて担当業務を決めることにはなりますが、基本は2人一緒にというイメージです」(青木さん)

企画政策課での移住サポートが主なミッション。庁舎の2階に窓口が。

なお、地域おこし協力隊の制度上、山武市内に住むことが必須。住居探しと家賃について、市がサポートします

「最終選考の通知を出す際に、市役所からアパート等の物件の候補を提案します。その中から選んでもらうので、ご自身で探す必要はありません。家賃は6万円まで市役所で負担が可能です。もしそれ以上の家賃の物件を希望される場合は、差額を負担いただく形です」(青木さん)

築いてほしいのは、積極的に魅力をアピールしていくカルチャー

協力隊のミッションは、移住先として山武市を認知してもらい、「ここで暮らすのもいいかも」「地元に戻ってもいいかも」と思えるきっかけを作ること。関心を持ってくれた人の移住をサポートすることです。

もちろん、すぐに成果を求めているわけではありません。3年間かけて、じっくり取り組んでもらうことを想定しています。

1年目は、インプットの年だと考えています。まず山武市を知ってもらう。山武市のフィールドにいる人たちにも認知してもらうことが中心です」(青木さん)

着任後に一緒に働くことになる企画政策課のみなさん。写真中央はイチゴをモチーフにした山武市公式キャラクターの「SUNムシくん」。市役所玄関入ってすぐのホールにて撮影。背景に映る木材は特産のサンブスギだ。

移住業務は青木さんたちがすでに対応しているので、一緒に業務に参加しながら相談内容や、必要な対応を学んでいきます。並行して、市の職員と一緒に地域のキーマンや移住者を訪ねて回り、ネットワークを形成していく期間です。

2年目は、1年目にインプットしたものを活用して、移住相談やイベントの実施に取り組みます。「最終的には体験移住のイベントなどを企画してもらいたいと考えています」と青木さん。

市内にある蓮沼海浜公園。県内最大級のプールで、ダイナミックなスライダーや水上アスレチックを楽しめる。

3年目は、それをさらに発展させていくフェーズに入ります。同時に、協力隊員自身の次のキャリアへの準備を進める時期と想定しているとのこと。

「ご自身の次のキャリアを検討する必要もあると思います。次への準備と協力隊の業務を半々に考えていただきながら、進めてもらえればと思っています」(青木さん)

3年間の活動を通じて移住相談の業務が面白くなってきたら、任期を終えた後、市役所に残って移住相談を続けるキャリアも検討中。「(続けてもらえたら)うちとしても、願ったりかなったりのところです」と青木さんは笑顔を見せます。

とはいえ、定住してもらうことだけを期待しているわけではありません。

「3年間の仕事と暮らしを通じて、山武市のいいところも悪いところも知っていただく。定住されなくても、山武市のことを周りに伝えられる人になってもらえればなと」(青木さん)

3年間の任期を通じて協力隊員個人のやりがいとして感じてほしいのは、自分が相談を受けた人が実際に山武市に来てくれるという成功体験の積み重ね。市全体の変化としては、認知度の向上と、発信するプレイヤー層の形成・可視化を期待しています。

現在、山武市ではまちの魅力を外に発信している移住者が少なく、市としてもまだ把握しきれていない状況です。

「協力隊員自身も発信プレイヤーとなり、草の根の口コミ・周知を広げていってほしいと思っています。そのための環境は市としてもサポートしていきます」(青木さん)

自ら発信しながら、他の地域プレイヤーの活動も可視化していく。そうした動きが進んでいけば、山武市の魅力を外に伝える流れが生まれていくはず。内にこもっているムードから、積極的に魅力をアピールしていく文化への転換。それが、市が描く未来の姿です。

人と話すのが好きで、二人三脚で歩ける人に

初めての協力隊員として、どんな人に来てほしいと考えているのでしょうか?

「基本的なコミュニケーションスキルがあれば、特別なスキルは必須ではありません。事務仕事が多いので、パソコンが使えることは必要です。情報発信をしていくため、写真撮影や軽いレタッチの経験があれば助かりますが、必須ではありません」(青木さん)

求める人物像で一番大切なのは、「対面で人と話すのが好き」なこと。

「いろいろな人と会って、話を聞き、その情報を発信していくことになります。移住者から相談を受ける業務もありますから、人と話すのが好きなことが一番大切ですね」(青木さん)

2人1組で動くことを想定しているため、互いのペースを尊重しながらやりたいことを進められる方がいいと話します。

「2人の方向性とペースが最初からぴったり合うことって少ないと思うんです。ですから、ある程度折り合いをつけられ、歩調を合わせられる人が向いていると思います。そんな柔軟さとほどよい温度感のバランスを楽しめる方が、適しているのではないかと」(青木さん)

多くの人と関わりながら進めていくことになるので、思いを持って突き進むことも大切ですが、人と協調できる力も求められる仕事です。

そのため、一定の社会人経験がある方を想定しています。実務の経験があれば、物事がどのくらいの工程でできるのか、簡単にいくものではないことを理解してもらえると考えているからです。

また、移住相談では子育て世帯からの問い合わせも多くなる見込みです。

同じ立場や経験を持つ方であれば、より共感を持って向き合いやすいと思っています。もちろん子育て世代に限らず、さまざまな経験を持つ方を歓迎します。山武市は子育てをしっかりできる環境が整っています。その魅力を一緒に伝えていきたいですね」(青木さん)

一緒に不安を解決して、共に作っていく

どれほど魅かれるものがあっても、地域のことを知らない人が新しい土地に飛び込むことは簡単ではありません。もちろん、久しぶりに地元に戻ることになる人でも不安を感じるのは当然だろうと青木さんは気遣います。

それは青木さん自身、大学時代は京都で過ごし、地元に戻るかどうか悩んだ経験があるからかもしれません。もともと金融業界への就職を志望しましたが、大学4年の時に親から「それでいいの?何が残るの?」と問われ、公務員を目指すことにしたと振り返ります。

「金融業界で働くのも楽しそうだと思いましたが『自分がその仕事で何を残せるか』と問われるとイメージが当時は湧かなくて。地元に恩返しというか、地元のために仕事をしたい気持ちもあり、進路を変えました」(青木さん)

進路の大きな方向転換と公務員試験の対策に1年間の浪人を覚悟していた青木さんですが、その年の末に山武市から採用の通知が届き、地元で働くことになったのです。

初めての協力隊募集ですから、職員自身も手探り。「一緒に不安を解決し、一緒に作っていく。そんな関係を築いていきたい」と、青木さんは語ります。

「初めてのことをやりながら、我々も学んでいます。互いにフォローし合いながら、一緒になって作っていく形になると思います。一緒に不安を解決していく体制を作っていますので、あまり考え込まずに飛び込んできてもらえたらうれしいですね」(青木さん)

可もなく不可もなく。だからこそ、暮らしやすい。

山武市が初めて募集する地域おこし協力隊。あなたの挑戦を待っている人たちがいます。

山武市地域おこし協力隊「さんむ移住コーディネーター」詳細

募集説明会イベントを開催中!

山武市地域おこし協力隊
「さんむ移住コーディネーター」募集説明会<参加者募集中>

少しでもこの募集企画に興味をお持ちいただいた皆様へ向けて、オンラインでの事前説明会を開催します。
業務の内容や、募集の背景、誰とどんなところで働くか?山武市で暮らすってどんな感じ?など、担当職員がお話しします。
(画面OFF、耳だけの参加も歓迎です!)

<開催日時>2025年12月11日(木) 20:00~21:00
<概要>オンライン(zoom)・参加無料

▼山武市地域おこし協力隊「さんむ移住コーディネーター」募集要項

<勤務時間>
■(原則)月曜日〜金曜日
9時00分から17時00分 (12:00~13:00休憩、7時間勤務)
※土日等の勤務は、週勤務時間内で振替対応となります。

<着任期間>
■令和8年4月〜5月での勤務開始予定。(時期については応相談)
※初年度の任用予定期間は任用の日から令和9年3月31日までです。
■1年毎の契約更新で、最長3年まで延長可能

<兼業・副業>
時間外で副業可(別途届出が必要)

<報酬>
月収約20万円 年収約330万円 (時給1,341円で月21日間勤務想定)

<選考フロー>
1.第1次審査【書類審査】
2.第2次審査【面接審査】
3.任用の決定

>応募フォームはこちらから

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