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LOCAL LETTER

伝わるPRのカギは、入り口の設計。その大切さを下川町への試住が教えてくれた。

FEB. 04

SHIMOKAWA

前略、自分の”好き”の届け方に困っているアナタへ

森は美しい、誰しもがリラックスができる場所だ。と、私は思っていた。

しかし、「森とともに暮らす」を掲げる町の人々とお話する中で、その考え方は変わった。

そのキッカケは精油事業を手がける田邊さんのお話を聞いたときに言われた言葉だ。

「森が綺麗だったとしても、知らない森に『じゃあ1人で行っておい で』と言われたら怖いですよね。そしたらリラックスはできないです。だから大事なのは、安心できる入口があるかどうかなんです。」
株式会社フプの森 代表取締役 田邊真理恵

目から鱗だった。そうか。「安心できる入口」がなければ場所がどんなに魅力的でも、訪れた人には不安が先に襲う。そうすると、場所が持つ魅力には目が行かない。伝えたい価値がその人に伝わらない。

これは一般的なPRに通用する考え方だ。

ビジネスにおいてとても大切なことを、北海道下川町の森と人は教えてくれた。そんな下川町滞在での体験をお伝えしたい。

おもわず森に入りたくなる。そのキッカケが、町中に溢れていた

北海道下川町。1980年代に人口減少率NO.1を記録したこの町は、その後「森林資源」を中心に新しい産業を生み出し息を吹き返す。2012年以降は転出者より転入者が上回るほど移住者が増えており、地方創生の先進事例として注目されている。昨年12月には、ライフスタイル雑誌FRaU(フラウ)が「SDGs」をテーマに特集をした際にも取り上げられた。

今回、会社の研修の一環でこの町に1週間滞在することとなった。筆者自身も長野の森の活性化に携わっているため、この町の取り組みにはとても興味があった。そして、様々な学びを得たがその中でも一番印象的だったのは、「入口」だった。

この地域には、森に安心して関われる「入口」がたくさんあったのだ。

たとえば、町の中心にある下川町まちおこしセンター「コモレビ」。小学生から大人まで、様々な用途で使われていたこの場所は、もちろん木で美しく内装が作られている。

数日間滞在した宿泊施設「エコハウス美桑」にも木がふんだんに。薪ストーブで家の中を暖め、床や壁は木が貼られ、匂いが私たちをリラックスさせる。

そして、地域のNPOが提供する森歩きツアー。1人では不安になりながら歩くかもしれない森も、ガイドがつくことで安心して歩くことができ、あふれる魅力を教えてくれる。

 私は下川の森の虜にどんどんなっていった。 

心を込めて届けてくれる。だから、受け手も特別に感じる

多くの人々を虜にする下川町の森。しかし、実際に行ってみると特別的な何かがあるわけでもなく、珍しい品種が生えていることもなかった。構成要素としては全国の他の森とはそこまで差はないだろう。

だからこそ、ここには凄さがある。関わっている人の考え方、魅せ方、そして伝え方。1つ1つに意図があり、魅力が心に伝わってくる。

私はその要因に、関わる人々の「心」が大きく関係していると思った。

森のガイドしてくれた藤原さんは、元北海道道庁で働いてた方。安泰なキャリアを捨て、地域に根付き、自分が伝えたいと思うことを伝えらえる仕事を探し、下川町のNPOにたどり着いた人だ。とても楽しそうにガイドをしてくれ、山の中にある植物や葉っぱをたくさんお土産にしてくれた。森丸ごとを使った心からのおもてなしを提供してくれた。

地面から拾って「これ可愛くないですか?」と。確かに可愛い。

冒頭でお話した「入り口」話を教えてくれたのは、精油事業を営む株式会社フプの森の田邊さん。彼女が手がける下川の森の匂いがギュッと詰まったアロマオイルは、日常の忙しさで失いかける心の豊かさを取り戻してくれ、筆者は以降持ち歩いている。

彼女らは自分たちで町内の伐採現場へ出向いて自らの手で森から葉っぱを蒸留所まで運び、自らの手でオイルを作る。そして、この魅力がもっと伝わる方法がないかと、オイルだけでなくハンドクリームや、枕にするなど、様々なチャレンジをしている。この日は冬場のため実際の作業の姿は見れなかったが、おそらく丁寧に心をこめて、精油抽出を手がけているんだろう、と思った。

蒸留所に飾られていた絵と商品一覧。

森に心があり、製品に心がある。そして心が伝わるための入り口を用意し、入り口に入ってきた人に心を届ける。

こんなおもてなしをされたら、虜にならざるを得ない。

一方的に届けては伝わらない。思わず足を踏み入れたくなるような、匂いのある入り口こそ、PRのカギだ。

足を踏み入れたくなるような入り口を認知させ、入ってきた人に魅力を伝え興味を引き立て、リピートしたくなるようなサービスを提供する。下川町の森はまさに、PR・マーケティングの基本が自然と詰まった森だった。

私にとってこの気づきが何よりの収穫だった。「わかりやすい入り口を作ること」が大事なんだ。

下川の森歩きツアーの終わり、私が帰り支度をしようとしているとツアーガイドの藤原さんから「モモンガを見に行きませんか?」とお誘いをもらった。

どうやら夕暮れ時、オフィスの裏にある森にモモンガが現われるらしい。極寒の中、望遠鏡を持って森の中に一緒に入った。

15分、ひたすら待った。が、現れなかった。

でも、モモンガは現れなくても心は満たされていた。暗くて寒い森、森に詳しい地元の人と一緒に入れていることで、私は森の魅力を1秒1秒、五感で満喫していた。あのときに感じた冷たい空気と、音一つない静けさと、針葉樹と広葉樹の匂いは私の心に深く刻まれている。

いつかまた、あの森に行こう。

Editor's Note

編集後記

森が好きな人、森を使ってなにかしたい人は絶対に一度は訪れた方がいい。やみつきになる森です。

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