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LOCAL LETTER

地域創生に貢献するためのB.LEAGUEビジネスモデル改革。スポーツが地域にもたらす可能性を探る

NOV. 23

JAPAN

拝啓、プロスポーツチームと地域のコラボレーションに興味があるアナタへ

※本レポートはこれからの地域経済をつくるための祭典「POTLUCK FES’23 -Autumn-」のオープニングセッション「地域密着から地域愛着、そして地域創生へ。Bリーグの「ココロ、たぎる」挑戦。」を記事にしています。

日本各地に存在するプロスポーツチームが地域経済に大きな役割を果たすようになってきました。そのなかで、FIBAバスケットボールワールドカップ2023にてバスケ男子日本代表が大活躍したこともありB.LEAGUEに大きな注目が集まっています。

そのBリーグが地域経済に貢献すべく、大きく組織改革を行うとのこと。バスケットボールクラブと地域が今後どのようにコラボレーションしていく存在になるのかB.LEAGUEチェアマンの島田慎二氏に語っていただきました。

スポーツと地域をつなげるために。Bリーグビジネスモデルを大改革

島田氏(以下敬称略):今日のテーマは「地域密着から地域愛着、そして地域創生へ。Bリーグの「ココロ、たぎる」挑戦。」です。「たぎる」とは「心が一瞬にして沸点に到達する」こと、会場で試合を見ているファンの皆様が興奮する様を表現しています。そんな瞬間をたくさん生み出すリーグであることを標榜して、昨シーズンこのキャッチフレーズを作りました。

島田 慎二氏 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ チェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会 副会長 / 1970年生まれ。1993年に日本大学法学部を卒業し、株式会社エイチ・アイ・エスへ入社。1996年株式会社ウエストシップ 取締役に就任。その後、2001年株式会社ハルインターナショナル 代表取締役社長を務め、2010年株式会社リカオン 代表取締役社長となる(現任)。2015年公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事となり、2017年には同法人の副理事長(バイスチェアマン)就任。2018年、一般社団法人日本トップリーグ連携機構 理事となる(現任)。2019年、株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役会長に就任した他、一般社団法人全日本テコンドー協会 副会長も務める。2020年、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグのチェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会副会長、一般社団法人全日本テコンドー協会理事を務め、現在に至る。
島田 慎二氏 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ チェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会 副会長 / 1970年生まれ。1993年に日本大学法学部を卒業し、株式会社エイチ・アイ・エスへ入社。1996年株式会社ウエストシップ 取締役に就任。その後、2001年株式会社ハルインターナショナル 代表取締役社長を務め、2010年株式会社リカオン 代表取締役社長となる(現任)。2015年公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事となり、2017年には同法人の副理事長(バイスチェアマン)就任。2018年、一般社団法人日本トップリーグ連携機構 理事となる(現任)。2019年、株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役会長に就任した他、一般社団法人全日本テコンドー協会 副会長も務める。2020年、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグのチェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会副会長、一般社団法人全日本テコンドー協会理事を務め、現在に至る。

島田:Bリーグでは10シーズン目にあたる2026年に「B.革新」として大改革を決行します。改革の軸となるのは、これまでJリーグのビジネスモデルを踏襲してきていたのを我々独自のビジネスモデルへ転換することです。今日は「なぜビジネスモデルを変えるのか」「どのように変えるのか」「それが地域創生にどう紐づいているのか」という3本柱でお話ししたいと思います。

ビジネスモデル変革の理由を説明するにあたり、前提となるBリーグの現状を紹介します。

Bリーグ設立から7年間の入場者数の推移ですが、誕生した2016年は224万人、昨シーズンは320万人でした。今年は約350万人、2028年には500万人を予想しています。クラブの事業規模も2016年の196億円から昨シーズンは435億円となり、今年は470〜80億円と予想しています。

ここまで成長してきた源泉は、野球やサッカーに比べて女性ファンの比率が多く、ファン全体の平均年齢が35歳と若いことです。光と音の演出に力を入れ、DJも入れるなどエンターテインメント要素を取り入れた会場そのものが面白いこと、会場で撮った動画を15秒以内であればSNSで拡散可とするなど、デジタルを積極的に活用したことも人気を後押ししています。さらにワールドカップ効果でWEB訪問者数、チケット販売数とも2倍になりました。

このセッションが行われているまさに本日、「SOCIAL INNOVATION HUB 構想」をリリースし、2026年までにバスケットボールを通じて地域を盛り上げる「地域創生リーグ」を目指すと宣言しました。これから改革の目的を説明します。

勝敗に左右されないサステナブルなビジネスモデルで地域創生を後押し

島田:「B.革新」という改革の背景にあるのは、まず危機感です。Bリーグが立ち上がってから7年間、「バスケで日本を元気に」を掲げて、サッカーを超える存在を目指してきました。一定の成果はあげてこられたと自負していますが、まだマイナースポーツに留まっています。

具体的な数字をあげると、屋台骨である競技者人口は、スラムダンクの頃の100万人から現在は約60万人に減っています。興味関心もまだまだ低く、ワールドカップ後の世界ランキングは26位。アジアでは1位に上り詰めたので、将来的には世界10位以内を目指していきたいと思っています。

この危機感の下で、Jリーグのビジネスモデルに別れを告げ、勝敗による昇降格制度を止める「B.革新」を行う。その理由は、地域創生に紐づいています。

BリーグはB3も含めて全国で56クラブあります。優勝したところはパレードなどで盛り上がりますが、他のところが全部盛り上がるわけではありません。勝敗だけに依存していくと、サステナブルではなくなるのではないかというのが我々の考えです。

島田:事業に投資ができる仕組みにすることでスポンサー・自治体・商店街等、地域のステークホルダーとの結びつきを強化し、チームの勝敗に依存しないビジネスモデルに転換していき長く繁栄する状況に変える。その促進により地域が活性化し、チームの存在価値が上がる。チーム人気が上がると収入も増え、資金が選手に回ります。

選手の給料を上げるために稼ぐのではなく、地域のために稼いだ結果投資できる範囲内で選手に投資する。本来のビジネスの在り方に変えるべきというのが「B.革新」の本筋です。

サステナブルに地域に必要とされることを目指せば強いチームができあがる

島田:ここからは具体的な改革内容を説明します。

勝敗による昇格制度を廃止、一定の事業規模に到達した際に上に上がれるようにします。お客様や事業規模も増やし、我々が目指しているような世界観のアリーナが準備できない場合は、どんなに勝利してもトップカテゴリーには行けません。サステナブルに地域に必要とされることが証明された状態を作ったクラブが上に行くことになります。上に行くクラブは当然資金力も事業力も魅力もあるので、実力のある選手も行くことになり、その結果勝利を獲得することになります。競技は後、ビジネスから試行していこうというものです。

そのために、現行のB1・B2・B3から、バスケットボール界での役割によるディビジョンに変更します。新たなディビジョンは上から「B.LEAGUE PREMIER」「B.LEAGUE ONE」「B.LEAGUE NEXT」です。「B.LEAGUE PREMIER」は世界で通用する日本代表の強化、地域活性化のシンボリックな存在になっていくクラブです。「B.LEAGUE ONE」は全国の一番クラブ数が多いディビジョンで、一番下の「B.LEAGUE NEXT」は新しいクラブに登竜門として来てもらう役割になります。「B.LEAGUE PREMIER」の基準は、平均の入場者数4000人、売上高が12億円、基準を満たすアリーナを保有しているかの3つです。

今シーズンの成績をもって来年の秋に3つのディビジョンへクラブを振り分けるため、全国のクラブでスポンサー確保、観客数増加、アリーナ確保の動きがあります。現在3つのアリーナがオープンしていますが2028年には15以上になる予定です。

島田:「B.革新」を成功させるために重要なのは経営力・社会性・日本代表の強化です。経営力なくして地域を盛り上げていく活力はないため、クラブの経営力がまずは大切になります。スポンサーもいつまでも応援してくれる甘い時代ではないため、地域に必要とされるリーグになるために社会性は必須です。そして今回のワールドカップで日本代表強化の必要性を改めて感じました。また現在は41都道府県にクラブがありますが、これを47に増やし全県制覇を目指します。

ソーシャルイノベーションハブとなる「地域創生リーグ」を目指して

島田:最後に、今日の趣旨であるBリーグと地域の繋がりの中で何が実現できるかという話をさせていただきます。

「地域創生リーグ」を目指し、B.LEAGUEは本日「SOCIAL INNOVATION HUB構想」をリリースしました。バスケットボールとアリーナを通して地元を盛り上げ、地域活性化そして地域創生に寄与したいと考えていますもうひとつの軸は、ダイバーシティ、インクルージョンとインバウンドですダイバーシティにチャレンジをしていこうということで、一昨日発表させていただいたBリーグの理事も、15人中7人が女性です。これはスポーツ界で初めてとなります。こういったことを継続して仕掛けていきます。また、選手の年俸総額に上限を設ける「サラリーキャップ」や新人選手獲得のドラフト制度といった仕組みを導入して戦力均衡を図り、クラブが健全かつ成長できるような仕組みにしていきます。

地域創生に貢献するにあたり、スポーツの領域の他に、コミュニティの構築が重要と考えます。Bリーグに関係するテーマを5つに分けて、それぞれにコミュニティを想定しました。

島田:5つのコミュニティの中のひとつ、地域創生コミュニティをさらに6つのターゲットゾーンに分けています。具体的な取り組みのイメージを簡単にお伝えします。

まず、子育てファミリーを対象に、育児サポート、貧困家庭サポート、保育園、幼稚園での運動プログラムの実施、バスケットボール会場でのフェスやフードドライブの実施といったことを行っています。

子どもと学生については、居場所作り、教育、過疎地域での機会創出などを行っています。離島などを対象としてモバイルを用いたスポーツの遠隔指導がその一例です。

働く世代に関しては、域内の社員が楽しめるホスピタリティ作り、ビジネスセミナー、地方創生セミナーを全国各地を周って開催しています。

インバウンドについては、海外出身の選手も増えているので、出身国の富裕層を対象にしたイベントを仕掛けたり、部活動を誘致したり等をしています。

このように各ターゲット像に対して様々な手を打っていくソフトの部分と、アリーナを中心、商店街や廃校を利用して、コミュニティ施設や観光施設を作るハードの部分、そこにデジタルを加えて、スポーツを通じた地域貢献を実現します。

島田:誕生から10年も経たないBリーグはこの度「B.革新」を行いますが、組織を変えようという声が出てきたのは実は数年前からでした。発足してわずか数年でリーグが体制を変えるべく動き出す、そのスピード感が我々の強みです。

野球・サッカーに比べて後発でマイナーな競技だったからこそ、できることを常に貪欲に探してきたところに追い風が吹いています。その意味で、明確に地域創生を目標に掲げているスポーツ産業は他にはないと思います。

Bリーグは地域創生とスポーツビジネスをコラボさせて地域経済への貢献を目指しています。B3も含めて全国に56のクラブがありますので、そこで繋がり、貢献できることを模索したいと考えていらっしゃる方は、ぜひお声がけください。

Editor's Note

編集後記

Bリーグの熱戦はメディアで追っていましたが、バスケットボール界自体の強化を図りながらもこんなにきっちりと将来を見据え、また地域貢献とリーグとが共に発展していくビジネスモデルを構築していたことに驚きました。地域に喜ばれる未来に向かって真摯に進んでいくリーグの姿勢が印象的でした。

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