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LOCAL LETTER

日本社会を活性化する術は地域を元気にすること。スポーツ産業から地域を盛り上げる

NOV. 30

JAPAN

拝啓、スポーツと地域の連携がひらく未来に関心があるアナタへ

※本レポートはこれからの地域経済をつくるための祭典「POTLUCK FES’23 -Autumn-」のオープニングセッション「地域密着から地域愛着、そして地域創生へ。Bリーグの「ココロ、たぎる」挑戦。」を記事にしています。

1つの地域に、産業が根付くことは簡単ではありません。信頼を得るためには地域と密着して長い時間をかけることが必要。受け入れてもらえ、ようやく定着しても、そこからの発展を考えなければなりません。

産業本位ではなく、地域と共に成長していくにはどうしたらいいのか。その方法について、各地で様々な試みやアイデアが生まれています。

本セッションでは、同様のチャレンジをしている方々の後押しになるような力強い経験をBリーグチェアマンの島田慎二氏から伺っています。

前編記事では、地域創生への貢献を見据えたBリーグの改革内容についてご説明いただきました。

後編では会場からの質問に回答する中で、スポーツと地域創生の連携がさらにスムーズにいくためのポイントをお話しいただきました。

コンパクトな規模のスポーツ産業は、地域経済で価値を出しながら支え合える

モデレーター:経営をする人材がスポーツ界に参画することが、地方ではまだまだできていない印象があります。Bリーグとして地域の有力な経営者をどう見つけるのか、お考えがあればお話しください。

島田:経験ある経営者が地域内にいらっしゃっることに越したことはないですが、外部から呼ぶとなると報酬が高くなります。「資金がないので呼べない→呼べないからクラブが稼げない→稼げないから経営がきつい」というループがずっとありました。

今、Bリーグの成長に期待してくださる経営者が増えM&Aが多く起きています。そのため大企業の資金力を持ってして、いい人材を確保できています。我々が経営者を育成するのは簡単なことではありませんが、Bリーグの可能性を標榜することでM&Aを通じて経営者を変えていくのがトレンドかと思います。

島田 慎二氏 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ チェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会 副会長 / 1970年生まれ。1993年に日本大学法学部を卒業し、株式会社エイチ・アイ・エスへ入社。1996年株式会社ウエストシップ 取締役に就任。その後、2001年株式会社ハルインターナショナル 代表取締役社長を務め、2010年株式会社リカオン 代表取締役社長となる(現任)。2015年公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事となり、2017年には同法人の副理事長(バイスチェアマン)就任。2018年、一般社団法人日本トップリーグ連携機構 理事となる(現任)。2019年、株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役会長に就任した他、一般社団法人全日本テコンドー協会 副会長も務める。2020年、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグのチェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会副会長、一般社団法人全日本テコンドー協会理事を務め、現在に至る。
島田 慎二氏 公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ チェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会 副会長 / 1970年生まれ。1993年に日本大学法学部を卒業し、株式会社エイチ・アイ・エスへ入社。1996年株式会社ウエストシップ 取締役に就任。その後、2001年株式会社ハルインターナショナル 代表取締役社長を務め、2010年株式会社リカオン 代表取締役社長となる(現任)。2015年公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ理事となり、2017年には同法人の副理事長(バイスチェアマン)就任。2018年、一般社団法人日本トップリーグ連携機構 理事となる(現任)。2019年、株式会社千葉ジェッツふなばし 代表取締役会長に就任した他、一般社団法人全日本テコンドー協会 副会長も務める。2020年、公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグのチェアマン(代表理事CEO)、公益財団法人日本バスケットボール協会副会長、一般社団法人全日本テコンドー協会理事を務め、現在に至る。

モデレーター:バスケットボールの魅力を発信することで、参画したい人が増えるわけですね。

島田:そこに期待していますし、実際ようやく利益をあげることが可能になってきました。経営者にとっても魅力的な状況になってきていると思います。

モデレーター:スポーツ産業に5年以上携わった島田さんからご覧になって、地域に貢献できるコンテンツとしてのバスケットボールにはどんな魅力があるでしょうか。

島田:コンパクトな点ですね。バスケットボールはある程度メジャーですが13人しか登録選手がいません。野球は2軍まで入れたら50〜60人、サッカーだって30〜40人はいます。バスケットボールはメジャーですが選手13人分の投資でいいので、他の競技に比べると事業規模は小さいですが、地域経済で価値を出しながら支えることが可能です。

これまでのスポーツ界の経営においてはどこかで無理をしたり、巨額のマネーが入ってこないと成り立たなくなることが通例でしたが、そうではなく身の丈に合った経営にしたいと考えていました。地域経済に負荷がかかりすぎる、極端な値段にしないと観客が会場に来れない、地元がスポンサードしても価値を見いだせないなど、相手にされない構造になってしまうと厳しいです。その点バスケットボールはある程度成長性を保ちながらも地域で支えられるスポーツコンテンツという意味で、ジャストフィットするサイズです。

内外のバランスを取り、地域密着から地域愛着へ

会場:先日参加した会議で街づくりの話を聞く機会がありました。「地域起こしは地域の会社を巻き込んで地域のメンバーだけで行うという考えはユニークで強みに思っていたが、それだけだと閉じたものになる。だから外部から、世界で一番いいものをその地域に集めてパートナーを選ぶ」という話が印象的でした。質問は、バスケットボールが街づくりをする場合、地元からと地元以外からとの、内外からのクラブへの支援のバランスをどう取るのかをお聞かせください。

島田:地域密着から地域愛着、そして地域創生というと全てを地域で完結するように聞こえてしまうかもしれません。そういうクラブもたくさんあります。現行のB1・B2・B3では下のカテゴリーであればあるほどその要素が強く、上に行くほど地域だけで支えるのみならず外からの投資が起こって動いています。それなりの事業規模でないと戦えないのが実情です。

改革後の最上位カテゴリーになる「B.LEAGUE PREMIER」は、現行のB1よりもさらに一段上のグローバルなスケールのクラブを作り、選手を輩出していきます。資金面では地域だけで完結できなくなってきますので、ナショナルクライアントからの資金、さらに海外からの投資も呼び込んでいきます。

会場:クラブの立ち上げの時は地域が頑張って、徐々に外と連携していくイメージでしょうか。

島田:そうですが、スピード感はクラブの成長度合いによって違います。自分たちで行いたい色が強い地域もあり、そうなると経営者が変革したくても浸透せずに時間が経過して、ローカルに閉ざされてしまうクラブもあります。かといって思い切り改革をやると難しくなることもあります。そのバランスを取ることがスポーツクラブ経営者の力量だと思います。地域を巻き込みつつお金も集め、ビジョンを語る。「今はこのポジションだけど、変えないといけない」と説得していくことができるか否かは経営者のリーダーシップ次第だと考えます。

モデレーター:Bリーグでは地域の方が経営を担っているところが多いと思いますが、その中で地域を巻き込んで面白いことをやっているところがあれば教えてください。

島田:どこも地域を巻き込んでいると思います。例えば、長崎ヴェルカは、長崎スタジアムシティというサッカー場とアリーナと商業施設を作って、まち作りを民間でやってのけています。水戸の茨城ロボッツにしても茨城放送の株を茨城県から譲り受けてメディアを取り込み、街の中心にスポーツカフェを作るといった取り組みも行っています。

地域で商いをする以上は地域密着が当たり前で、そこから地元の評価が上がって価値も上がり、外部から人を吸引できるレベルにいく状態が地域愛着です。その手順で進んで行ってほしいです。

営業が全ての基本。スポーツの魅力と熱意を伝えよ!

会場:北海道から参加しました。3人制バスケ「3×3(スリー・エックス・スリー)」HOKKAIDO IWAMIZAWA FUのオーナーをやっています。3×3はBリーグに比べると規模は小さくリーグもこれからです。島田さんから見て、3×3をBリーグのように盛り上げていくためのアドバイスがあれば教えてください。

島田:バスケットボールはコンパクトとはいっても年間十数億円の商業規模になっています。3×3はBリーグよりもコンパクトで、既存の施設や場所があればできますよね。コストもBリーグよりはかかりませんし、商業施設と組めば人も集められる。既に協賛を受けていると思いますが、あとは営業を頑張るしかないですね。基本的に知らないものには協賛できませんから。

実は営業って、やっているようでやれていないものです。「行ってもどうせ聞いてくれない」とか、モヤッとしたものがあるじゃないですか。そこはもうガツガツいくしかないですよ。ガツガツいって初めて熱意が伝わりますから。

例えばですがBリーグなら一千万円出さないとスポンサーになれないところが、3×3ならそれ以下の金額でもOKかもしれませんよね。「少額でも大事にしてくれる」という、小規模ならではの強みはあるはずで、そこをいかにフィーチャーできるか。お金を出す人の満足度は千差万別で、スポンサードに価値を感じる経営者はいますからそれを探し続けましょう。

規模ではなく存在価値。コンパクトに負荷をかけすぎずに地域を盛り上げていく

会場:地元・浜松ではプロスポーツチームが増えつつあります。サッカー、ラグビー、バレーボールなども地域活動を始めています。そこで質問ですが、バスケットボールでは他のプロスポーツチームと地域活動を連携することはお考えでしょうか。

島田:リーグとしては、他のプロスポーツチームと連携することはあまりありません。互いにメリット・デメリットがありますので。リーグのレベルがそろわないと互いにメリットを享受できないし、ミスマッチになります。無理にくっつけようとしても限界があります。

地域ごとの思想やクラブの規模感で、うまく連携できるところはすればいいと思いますが、所詮どこまでいってもライバルです。通年で応援するようなスポーツ好きな人たちを、プロスポーツチームが互いに取り合っているので。

「スポーツ渋滞」といって1つの地域に支えるべきスポーツが多すぎてしまうと、地域で支えることが困難になります。1つの地域にプロスポーツチームがいくつも固まることが本当に必要なのか、考える時期に来ていると思います。その意味で我々はコンパクトである程度のメジャーであること、競技者人口も若くビジネスの体現を明確に示していて、このスポーツ渋滞の中で勝ち抜くために手を打っています。

モデレーター:これからは競争の時代なんでしょうか。

島田:規模が大きい所が勝つわけではなく、要はクラブの存在価値です。そこを見誤らないようにしないといけない。野球とサッカーが強くて次をバスケットボールが追いかけているねという序列にとらわれすぎることがないようにしたい。街おこしのやり方はいくらでもありますからね。

会場:沖縄県庁職員です。沖縄はBリーグの成長のおかげで恩恵を受けている地域のひとつだと思います。地域との距離感も近く、規模もだんだん大きくなって立派なアリーナもできました。そこから行政側に必要とされていることがありましたらお話しください。

島田:ワールドカップもですが、オールスターでも沖縄には来年お世話になります。琉球ゴールデンキングスは既に外からの投資を呼び込める段階になっていて、それもひとえに沖縄県や沖縄市などの行政のサポートのおかげです。引き続き応援していただき、今後のクラブの成長を支えていただければと思います。

モデレーター:最後に皆様にメッセージをお願いします。

島田:地域を元気にしていくことしか、今の日本社会を活性化する術はないと我々は信じています。国や地方自治体もいろんな手を打っていますが、我々はスポーツ産業にいますので、コンパクトに、負荷をかけすぎずに地域を盛り上げていきたいです。それぞれの地域で、各クラブと連携したいという方がいらっしゃいましたらお声がけください。本日はありがとうございました。

Editor's Note

編集後記

スポーツをどう地域と連携させたらいのか、その方法や関係性に悩む組織にとっては、これまでBリーグを盛り上げるべく奮闘されてきた島田チェアマンの言葉が心に沁み渡ったのではないでしょうか。経験を踏まえて柔軟に勝負する姿勢に、学ぶことが大いにあったセッションでした。

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