協力隊
コロナ禍で追い風になったキャンプブーム。そんな中、キャンプを楽しむだけでなく、「自分のスキルとアイデアを活かしキャンプ場の場づくりをしたい!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そんなアナタにお届けするのは、福岡県赤村の地域おこし協力隊『キャンプライフ・コーディネーター』という働き方。
実際に『キャンプライフ・コーディネーター』として現役で働いている方々をゲストにお招きし※1、「キャンプ×場づくり」の仕事の魅力とキャリアの可能性、取り組む際のポイントについて紐解きます。
※1 本記事は、NPO法人グリーンズが実施した『あなたのアイデアで、キャンプ場を盛り上げよう。「キャンプ×場づくり」の仕事の魅力と可能性 co-presented by 福岡県赤村』と題して行われたオンラインイベントの様子をまとめた内容の前編です。
山中(司会):キャンプライフ・コーディネーターとして働く、赤村の地域おこし協力隊の3名から、今に至った経緯や3年働いての感想について教えていただきたいと思います。
竹田:以前は登山用品店で販売スタッフを行いながら、ツアーガイドとして登山やラフティングに同行したり、乗鞍高原のゲストハウスで働いていました。それぞれの仕事も充実していたのですが、「自分でも仕事をつくってみたい」という想いが強くなり、「自分の経験が活かせる仕事を!」と赤村の地域おこし協力隊「キャンプライフ・コーディネーター」に応募しました。
赤村に移住をしたのが、一番最初にコロナで緊急事態宣言が出た2020年頃。私自身海外経験もあるので、当初はインバウンド向けの展開ができたらと思っていたのですが、情勢が変わってしまい「とにかく何かやれることを!」と模索しながら、地域の学びを深めた1年だったと思います。
竹田:2年目は、赤村にあるキャンプ場『自然学習村 源じいの森』や、赤村の豊富な自然を活かした情報発信・イベントを展開。キャンプライフ・コーディネーター3名と行った『たき火マルシェ』では、赤村の素材だけを使った串焼きを販売し、直接お客様とコミュニケーションをとることができました。
竹田:3年目の今年は、私たちがいなくなった後、どんなことを赤村に残せるのかを考えるようになりました。「地域の人を繋ぐ」をキーワードに、地域で活躍されている方を『源じいの森』へお招きしてイベントや、先日開催した「収穫した野菜をキャンプをしながら食べてもらう農業体験」には、約50名ほどのお客様にお越しいただくことができ、たくさんの繋がりをつくれているのではと感じています。
竹田:もちろん全てが初めての取り組みなので、正解がわからない中でも手探りで進んでいかなければならず、苦労を感じることもありましたが、地域おこし協力隊をサポートしてくださる方々のおかげで、チャレンジすることができました。
自然が好きな方は、赤村にある自然をつかったコンテンツを考えることができるので、特におすすめの職業だと思います。
本田:私は千葉県船橋市から移住をしたシングルマザーです。以前はフリーペーパーの編集として働いていましたが、同職でシングルマザーの先輩が、北海道の地域おこし協力隊に応募をし、子どもたちとイキイキと生活をされていたんです。
「そんな生き方があるんだ!」と思い調べたところ、「赤村の地域おこし協力隊はキャンプに関われる」と知り、応募の締切まで1週間しかなかったのですが、ワクワクした自分の心を信じ、慌てて応募をしたという経緯があります。
本田:私の主な業務はイベント企画やデザイン作成です。イベントのチラシやグルメマップをつくることを中心に、興味が湧いたものをとことんやらせてもらいました。
イベント企画だと、今実施しているイベントに『赤村ふるさと竹あかり』がありまして。前回はあまり人を巻き込めなかったので、今回はその反省を活かして地域の内外の方を巻き込むことを意識し、今回は約30名の方がスタッフとして関わってくれています。
飲食店をされているオーナーさんや、手先の器用なおじいちゃんなど、それぞれの得意とする分野で関わりを持ってくれていて、「学生時代に戻った気持ち」と喜んで参加してくれているのがとても嬉しいです。
本田:ほかにも『恋活デイキャンプ』を実施しました。福岡県筑後市の地域おこし協力隊の方が婚活プランナーで、参加者をキャンプ・アウトドア好きに絞った恋活デイキャンプを企画。異性だけでなく、同性の友達関係が広がっている参加者の姿をみて、改めてアウトドアの素晴らしさを体感しました。
本田:キャンプライフ・コーディネーターとして働いてよかった点は、自分が発案したイベントを立ち上げる楽しさを知ったこと。また、イベントを通してお客さんの笑顔を見ることができるのもこの仕事の醍醐味だと知りました。
逆に大変だったことは、自分で立ち上げることへの責任の重さ。もちろん途中で投げ出せないし、自分のテンションを上げてどんどん広げていってしまうと、収拾がつかなくなってしまうことも痛感しました。
ですがキャンプライフ・コーディネーターとして働いたことで、火おこしやテント張りもできるようになり、フットワークも軽くなって、以前の自分よりも生きる力が強くなったと感じています。
藤木:福岡県出身の37歳です。ソロキャンプにも行くぐらいアウトドアが趣味で、キャンプライフ・コーディネーターとして働けていることを嬉しく思っています。元々の仕事はキリンビールのマーチャンダイザーとして、「商品をどう売るのか」を考えていました。
キャンプ好きが高じて「ビール × キャンプ」の掛け合わせの売り場を考え、表彰されたこともありますが、このときから「キャンプと何かを掛け合わせた仕事ができないか」と考えていて。
その後、アウトドアを学ぶためにコールマンジャパンで販売員として学ばせていただきましたが、次第に独立への想いが強くなり、「何か挑戦を!」と考えていたときに赤村のキャンプライフ・コーディネーターの募集を知り、現在働いて3年目になります。
藤木:元々起業を志していたのですが、その当時はまだ自分に実績も信用もなかったため、キャンプライフ・コーディネーターの経験をすることで、スムーズに起業に踏み出せると思ったことが背景にあります。
本田さんや竹田さん同様にHP作成や情報発信、イベント企画などさまざまな業務を行っていますが、「私が退任した後も『源じいの森』に何か残したい」と『源じいの森』のブランディングを考えることに。その中の取り組みの一つが『源じいの森スパイス』です。
藤木:赤村にある『源じいの森』はキャンプ場なので、他の地域でPRを行うことが難しいという課題点があったのですが、「何か商品があればどんな場所でもPRができるのでは」と考え、味付けやコンセプトを含めたくさんの方に関わってもらいながらつくった商品です。この商品を元にキャンプイベントに出店したり、アウトドアショップに置いてもらうために営業を行いました。
藤木:3年間実施してみての感想ですが、組織がまだまだ未熟なことで苦戦したことは多くありました。ですが、組織間の調整をすることで自分自身のスキルも向上しましたし、念願だったアウトドアの仕事づくりに携わることができてとてもよかったです。赤村のキャンプ場自体が非常にポテンシャルの高い施設だと感じているので、興味のある方は一緒に仲間になってもらえたら嬉しいです。
Editor's Note
後書き:自分の趣味が余暇を楽しむだけのものではなく、スキルとして誰かのために活かすことができたら。そんな想いを実現することができたのが「キャンプライフ・コーディネーター」のお仕事。登壇者3人ともがとてもイキイキと話されているのがとても印象的でした。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香