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LOCAL LETTER

都内で働く女性がUターンし、農業へ転職。こだわりのオーガニック野菜を育てる理由とは

MAY. 08

Minamiboso, CHIBA

前略
ふと自分が食べているものに不安を覚えたあなたへ

千葉県南房総市にある「大紺屋おおごや農園」。ここは、足達智子さんという一人の女性が、この地域では珍しい、タイ野菜やイタリア野菜を完全無農薬で育てている農園。足達さんの野菜は、完全無農薬だから安心なのはもちろん、新鮮で味が濃いため、都内の大手企業や有名料理店のシェフをはじめ、全国各地のお客様に喜ばれているそう。

そんな足達さんですが、実は数年前までは都内でバリバリ働いていた一面も。都内で働いていた足達さんがUターン後、家業を継いで新しく始めた農業とその想いについてお話を伺ってきました。

特にやりたいことのなかったOL時代

農業と民宿を兼業している家庭に一人っ子として生まれた足達さんは、幼少期の頃から家のお手伝いを欠かさなかったそう。

空豆の収穫方法を丁寧に教えてくださる足達さん
空豆の収穫方法を丁寧に教えてくださる足達さん
どんなに忙しくても、その日の仕事はその日にやる。あとは毎晩必ず、次の日にやることを書き出して、机に置いてから寝る。やることやっておかないと、次の日仕事が終わらないからね。(笑)
足達智子 大紺屋農園

そんなしっかり者の足達さんは、幼少期の頃からすでに出来上がっていたのかもしれません。しかし、足達さんが幼少期の頃、大紺屋農園で育てていた野菜は、キャベツやほうれん草、ジャガイモといった一般的なものばかり。現在のように珍しいイタリア野菜やタイ野菜を育てるようになったのは、足達さんが大紺屋農園を継いでからなのだとか。そこには、足達さんが都内進学の中で感じた様々な出来事や経験が関係していました。

「昔から料理が好きだった」という足達さんは、大学卒業後に料理の専門学校に通い、調理師免許を取得。しかしその後、特にやりたい職種もなく、かといって当時はまだ農業や民宿を継ぐ想いもなかったため、都内で金融関係の一般企業に就職し、朝から晩まで仕事中心の生活を送り続けます。

そんな生活を何年か続けていた頃、たまたまタイにいる友人に誘われて、タイへ旅行で訪れることになります。

最初は、そんなに乗り気じゃなかったんだけど、友達がすごく誘ってきてくれるもんだから、行ったの。バックパックを持って、ピピ島をはじめ、いろんな場所を巡ったんだけど、どこも本当にご飯が美味しくて、すっかりタイ料理に目覚めてしまったの。(笑)
足達智子 大紺屋農園

その後最初の会社を退職、日本語教師のライセンスを取得。不動産関係の会社で働きながら、英会話を実践しに4ヶ月間フィリピンに滞在。その後も、休日はまとめて海外へ旅行に出る日々を送ります。

旅行から日本に帰ってきてからもタイ料理を食べたくて、自分で作ろうと思って探し回ったんだけど、そもそもタイ野菜を売っているお店がほとんどなかったの。やっと見つけたと思ってもすぐに悪くなってしまう野菜ばかり。前日に買った野菜でも、夜仕事から帰って見てみるともう腐っていたりして。「これで本当に身体にいいのだろうか?」「作っている工程は安全なのだろうか?」と不安になったんだよね。それなら「自分が安心して食べられるものを自分で作ろう」そう思って、実家に戻って農業をすることを考え始めたかな。
足達智子 大紺屋農園

好きなことで働くことを選び、Uターンを決意

そんな時、ご実家では、社会問題にもなっている少子化が進むなかで、今後を見透し経営が安定しているときに、部部活やサークルの団体を請け負っていた民宿の経営に終止符を打つことに。これをきっかけに「代々守ってきた農業を絶やしたくない」と足達さんはUターンすることを決めます。

人生一度きりなのだから、自分の好きなことで働こう。
足達智子 大紺屋農園

農地を引き継いでからは、大好きなタイ野菜と、カラフルな見た目で可愛いイタリア野菜を中心に、完全無農薬での栽培に挑戦していきます。

「完全無農薬」という難しい栽培方法に一番反対したのは、足達さんのお父様とお母様だったそう。一生懸命作っても、その多くが虫に食われ、廃棄になってしまう完全無農薬にも、タイ野菜やイタリア野菜という珍しい野菜を育てることにも、大きな心配があったのだと言います。

それでも人間の体を作る大切なものだからと完全無農薬にこだわり続けた足達さん。農業を始めて、現在で4年目。だんだんと土がフカフカになり、野菜の味は濃く、日持ちもずっと良くなってきました。

そして今では、足達さんの活動を誰よりも応援しているご両親。「いつも娘に手伝わされて、私には定年がないんです」と嬉しそうに話すお母様の姿が印象的でした。

早朝に収穫したばかりの空豆を選別・包装している
早朝に収穫したばかりの空豆を選別・包装している
ちなみに、こちらが今回収穫した空豆たち
ちなみに、こちらが今回収穫した空豆たち
皮を向くと、中からプリッと大きな空豆が出てくる
皮を向くと、中からプリッと大きな空豆が出てくる

一次産業だけでなく、六次産業へも挑戦

年間80種類の野菜を一人で育てる傍、足達さんが早くから着手したのが加工品の製造と販売です。これは最近では、生産者が加工から販売までを行っていく、一次産業と二次産業、そして三次産業の掛け合わせから「六次産業」と呼ばれている農業形態。

せっかっく一生懸命育てた野菜が売れ残ってしまったり、形が悪くて販売できなかったりして、廃棄になってしまうことがとても残念だなと思って。日本人特有の「もったいない精神」かな。(笑)
足達智子 大紺屋農園

足達さんの作る加工品はどれも人気が高く、この日は、道の駅にタイの激辛唐辛子プリッキーヌスワンを使ったタバスコ風の調味料「プリスコ」や、生姜をじっくり乾燥させたパウダーなどが並んでいました。

これからは「食育」に力を入れていきたい

 

消費者のことを考えて、試行錯誤しながら一生懸命野菜を育てています。野菜は私たちの身体を作るものですから。イタリアでは無農薬が当たり前で、野菜に虫が付いていても驚かれることはそう多くありません。そういう面では、私たち日本人はまだまだ野菜に虫が付いていたら抵抗を持つ方の方が多いですよね。これからは「食育」も見直していく必要があると思っています。
足達智子 大紺屋農園
空豆の葉っぱの上にカタツムリを発見!土作りがしっかりしていれば、全ての野菜が虫に食べ尽くされてしまうことはほとんどないそう
空豆の葉っぱの上にカタツムリを発見!土作りがしっかりしていれば、全ての野菜が虫に食べ尽くされてしまうことはほとんどないそう

すでに様々な活動を精力的にされている足達さんですが、他にも地元の学校給食にお野菜を提供しており、管理栄養士さんと一緒に、子どもたちに美味しく野菜を食べてもらうだけでなく、食育の観点も大切にしているそう。

そして今後は、畑の中で行う料理教室「畑でキッチン!」を行いたいと楽しそうにお話ししてくださいました。足達さんの畑から採ったばかりの新鮮なお野菜を豪快にも外で調理して、野菜本来の味や野菜の特性を知っていく料理教室だなんて、なんとも楽しそうです。

自分で選んだ道だから、お客様のために精一杯全力を尽くす

ここまでこれたのは、私の才能ではなく、お客さんのおかげ。みんなが発信してくれるから広がっていく。
足達智子 大紺屋農園

本当に多忙な日々を過ごしている足達さんですが、常にお客様への感謝を忘れずに、仕事をされていることが、足達さんがお話ししてくださる言葉一つ一つから伝わってきます。

足達さんが育っていらっしゃるグリーンピース
足達さんが育っていらっしゃるグリーンピース
こちらも足達さんが育てていらっしゃるレタス
こちらも足達さんが育てていらっしゃるレタス

それでも、完全無農薬で年間80種類の野菜を育てながら、野菜の梱包・配送、加工品の製造・販売、食育まで行っている足達さんに思わず、「大変だな、やめたいなと思うことはないのですか?」と質問してみると、、

自分が選んだ道だからできるんだよ。大変だけど、楽なことはないからね。楽しみながらできるようにするのは自分の努力次第。楽しみながら出来ているのは人様のおかげ。自分が手を抜くと他人に迷惑をかける仕事だから。どんな状況であっても最低限はしっかりやります。
足達智子 大紺屋農園

今回の取材を通して一番感じたことは、「足達さんがつくる」から美味しい野菜になり、「足達さんがつくる」野菜だから人が集まってくるということ。

今回取材にお邪魔した際には、足達さんのお野菜の大ファンであるというご夫婦とご友人が東京から遊びにきていらっしゃいました
今回取材にお邪魔した際には、足達さんのお野菜の大ファンであるというご夫婦とご友人が東京から遊びにきていらっしゃいました

あなたも是非、足達さんに、足達さんが作るお野菜に出会ってみてはいかがでしょうか?

草々

 
 
 

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