地域創生
※本レポートはPOTLUCK YAESU様、株式会社SHIFT PLUS様のスポンサードによって行われた、地域経済活性化カンファレンス『SHARE by WHERE』で行われたトークセッションを記事にしています。
日本全国の各地域の共通課題として「人口減少・少子高齢化」が叫ばれる中、その根本的な解決策は未だに見つからず、各地域が手をこまねているように感じます。
今回のトークセッションでは、各地域の第一線で地域創生に関わるプレイヤー5名が「人口減少、少子高齢化ではない地域創生ビジョンとは!?」をテーマに様々な切り口から、地方創生について考察。
トークセッションの中で出てきたのは「関係人口」の重要性と、寛容性を高めることで生まれる「関わりしろ」の可能性。地域・個人の枠を越え、一緒に地域を面白がってくれる仲間を見つけたいと思っている方にぜひご一読いただきたい内容です!
高木氏(モデレーター:以下敬称略):初めに地方創生の概念について、富田町長教えていただけますか?
富田氏(以下敬称略):地方創生はここ10年の概念で、大きなテーマは2つです。1つは、都会に流出する人を地方に呼び戻す。もう1つが、少子化対策。
10年間で地方創生のプロセスは微妙に変わっていて。途中、総務省から “SDGs” の概念が出て、そして今 “ウェルビーイング” が出始めている。大きなトレンドは変わってきているけど、実際に現場でやっていることは変わらないと思っています。
田村氏(以下敬称略):僕自身地域に関わる中で当初は、各自治体からご当地映像をつくりたいという相談が多くて。「うちの地域はこんな酒・魚が美味しくて、人が優しくて、という映像を制作したい」という内容がどんどん変化していったなと感じています。
大瀬良氏(以下敬称略):僕は地方創生を大きな政策の柱に掲げた当時の安倍政権に関わる中で、「人口減少・少子高齢化にどうにか対処する」という総理の原稿の枕詞に違和感がありました。そもそも人口減少や少子高齢化は問題なのか。そこが今回のテーマのきっかけになると思います。
結婚しない・子どもを産まない選択など、多様な生き方を尊重すると言う一方で、人口減少を問題視することは矛盾している。人口減少に対して、行政や町の仕組みが対応できていないことが問題ではないかと。
富田:行政サービスにおいて、人口減少対策は説明がしやすいんですよね。「移住促進・少子化対策・切れ目のない子育て支援」全部が人口減少対策のカテゴリーに入ってくるので、まずこの課題にあたっていくという大前提があって、いろいろな政策を作ることに繋がっていると思います。
田村:流山市はなぜ人口が増えているんですか?
河尻氏(以下敬称略):鉄道(つくばエクスプレス)が通った影響に加え、来て欲しい移住者像を明確にしたことで、その人たちが引っ越して来てくれたと思っています。
富田:流山は人口の流動性がある地域なので強い。通勤圏だから、みんな千葉県の何市に住んでもいいと考えていて、その中で比較優位とか相対優位を作ったのが今の流山ですよね。
高木:僕は地域にはどうやって地域がユニークに目立って、選ばれていくかというマーケティングの視点が大事だと思っていて。富山県の成長戦略会議では面白い人・新しい価値を生む人に関わってもらうしかないという話になりました。
ただ地方ほど居住者を大事にして、外部から来る人との線を引きがちです。富山で面白い活動をしていると僕が感じた人は、一回県外に出た経験があったり、富山出身のパートナーがいた移住者だったり。つまり町を面白くしているのは関係人口だと思いますね。
高木:ただ関係人口をつくるためには、まずは地域が認知されないといけない。そのために、香川県の “うどん” など、入口となるイメージが地域には必要で、富山では “寿司” を観光のフックにし関係人口増に繋げようとしています。
田村:なぜ “寿司” をフックにしたのでしょうか?
高木:日本海で獲れる魚種800種の内、500種も獲れるほど富山の水産資源は豊かですが、以前は金沢の寿司屋で提供されることが多かったんです。それが、最近山の中にできた L’évo (レヴォ) というオーベルジュがSNSなどで有名になり、世界中の人が富山の山奥に集まるようになりました。
立地が悪くても人が来ることがわかったので、寿司に関わるシェフやクリエイターを集めたり、寿司職人の海外留学プログラムを作ったり、富山でもとことん寿司を突き詰めることにしたんです。寿司を起点に一度富山を訪れてもらい、今後関係人口を増やすための具体策は、地域の人や行政と一緒に考えています。
大瀬良:地域にクリエイティブを取り込もうとすると、芸術分野のアーティストのみを想像しがちですが、実は地域にアーティストはいっぱいいると思っていて。僕の出身地である長崎のトマト農家さんは、トマトが実っている様子が葡萄に見えたらしいんです。それならばと、世界で初めてトマトワインを作りました。
飲んでみると、全然美味しくない(笑)でも彼のクリエイティブは止まらず、なぜかワインボトルを海底に2年間沈めてみることにした。2年後にトマトワインを取り出すと、これがめちゃくちゃ美味しくなっていて。僕はここにものすごく価値を感じたんです。
大瀬良:こういった地域の人たちに会いに行ける仕掛けとして “長崎友輪家(ながさきゆーりんちー)” というオンラインのコミュニティを作りました。LINEのオープンチャット機能を使っているんですが現在、県内外から300人以上の人が登録をしていて。コミュニティでは「今から長崎行くので美味しいご飯屋さんないですか」と誰かが聞くと、別の誰かが長崎で好きな飯屋をざーと送っている。オープンチャットを作るだけなので、簡単でどこの地域でもできます。
河尻:魅力はあるけど埋もれているものを “見える化” する仕組みを作っただけで盛り上がったんですね!
高木:面白い。富山にはBtoBの産業しかなくて、クリエイターがいないなと最初は思ったんです。例えば、新潟はブルボンや亀田製菓、スノーピークなど、デザイナーが関わっていて最終製品がある企業が多い。でも、BtoB産業ばかりの町は不利だというわけではなく、例えば酒蔵や農家はすぐ最終製品化ができると気づいたんですよね。トマトワインなら、そのラベルをどうしようとか、余白ができたところにデザイナーやフォトグラファーが関わることもできる。
田村:僕は福井でデザイナーや事業家を育成し、事業の種を生み出すことを目的にした『XSCHOOL』というプログラムに関わっています。福井ではレースメーカーの人たちが、レースを使った照明を作り始めたことをきっかけに、素材とアイデアを活かして、今までにないものを作る流れが出来た。その動きが派生して、今いろんなところで新しい動きが始まっているので、実は素材って大事だなと感じました。
高木:やり方次第で最終的にはできますもんね。あとはお店やギャラリーで発表できる場があるといいですね。
河尻:できるという事実を作るのがとても大事ですね。
田村:行政の話で、すぐ事業化するとかビジネスにする施策を進めて、途中の段階を踏み越えちゃうことがあるなと感じます。“地域は奥に行けば行くほど寛容度が下がる” という話があり、その感覚はすごくわかるなと。
逆にそれをひっくり返して上手くいったのが、福井県の鯖江だと思います。半年間何もせず、ただ住んでもらうだけでいい “ゆるい移住” を市長が推進し、様々な人たちが自分達の関わり方を勝手に見つけ出した。行政が旗を振って地域の寛容性を高めることによって、役割を与えられない人たちが自由に地域との関わりを作っていて面白い。
河尻:流山も昔はまあまあ不寛容でした。今は女性が活躍する町とも言われますが、以前は女性が町で起業すること自体にすごく抵抗感があって。今は市でやっている女性向け創業スクールから卒業生が約180人出て、その人たちが町で活動し始めています。わからないものに対してはみんな不寛容だけど、事実があると、町に活力が生まれてきて「いいよね」という風潮になります。
富田:長所と短所は表裏一体だったりします。不寛容というのは、裏を返せば義理堅い親父だったり、面倒見が良くてお節介なおばさんだったりする。田舎が一般的に不寛容の傾向があるというのはよくわかるので、不寛容のいいところを出しつつ、寛容性を持たせることを横瀬は意識しています。
田舎には強いコミュニティがあって、伝統がある。それはリスペクトしつつ、1度振り子の針を振りたいというのもありまして、横瀬では “オープン&フレンドリー” を掲げています。
高木:人口増加時代は必然的に子どもという流動性があったけど、人口減少で流動性が減り、人が煮詰まってしまっているのが問題ですね。
富田:だからこそ「寛容性」と「ゆるさ」は大事ですよね。横瀬の地域おこし協力隊の初期はずっとフリーミッションで、「あなたのやりたいチャレンジをやってください」としていました。常に私たちは余白部分を大事にしています。
田村:寛容性の高い地域の例では、別府があると思います。別府はアート都市としてここ15年ぐらいで有名になりました。アーティストというちょっと独自性が強い人たちに対して町は寛容なんです。
半分が外国人のAPU(立命館アジア太平洋大学)もあり、200ヶ国ぐらいの人が町に出ていて。この受け入れの土台はどのようにできたのかを考えると、観光地であり、100年前からずっと人が行き来していることが、流動性に対する免疫につながっているかなと。
Information
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LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは、「Co-Local Creation(ほしいまちを、自分たちでつくる)」を合言葉に、地域や社会へ主体的に関わり、変えていく人たちの学びと出会いの地域共創コミュニティ。
「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。
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・本業をしながらも地元や地域に関わりたい
・地域で暮らしも仕事も探求したい、人が好き、地域が好き、旅が好き
・地域を超えた価値観で繋がる仲間づくりがしたい
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・地域や社会課題を解決する事業を生み出したい
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Editor's Note
日本全体の人口が減っている中で、どの地域も人口増を目指す違和感が私の中にもありました。では何を目指せばいいのかは、非常に難しい。
今回のセッションで、各地域ごとに取り組んでいる具体策とその背景が見えてきたのはとても勉強になりました。
答えは、これだ!とは断言しづらいけれど、各地域が目指すべきビジョンが見えてきたように思えます。
TSUKINO YAMADA
山田 月乃