Fujiyoshida, YAMANASHI
山梨県 富士吉田市
前略
日本のものづくりを伝える仕事がしたいと考えているあなたへ
それは、かわりゆく時代や経済の中で、大きなことを世界へ伝えなくては、と肩に力が入ってしまうようなことかもしれません。
ーー高い志と責任感をもつあなたに、会わせたい人たちがいます。「ハタオリの街」山梨県富士吉田市の職人たちです。
「ファッション」「流行」の風に吹かれながら、世界ブランドのテキスタイルや寺社仏閣の布、私たちの生活に身近な衣服の裏地など、あらゆるテキスタイルを、日々コツコツと織り続けている人たちがいます。時代の流れによって、求められるものは大きく変わってきたけれど、彼らはただ、求められる感性に意識を注ぎ、ひたむきにものづくりに向き合っています。その「ひたむきさ」は、遠い何かを見据えて大きな夢へのプロセスを加速させる発展や革新ではないかもしれないけれど、いつも途上にいながら一歩先へ確かな歩みを築いています。その姿はいつかきっと、日本のものづくりを伝えることになると思うのです。
そんな彼らの「ひたむきさ」とともに、私たちが今一度見直したいと思っているのが、世界ブランドの生地を織る職人を支える「ハタオリの機械を直す職人」=「機屋番匠(はたやばんしょう)」さんの姿です。
ハタオリの機械を直す職人?番匠?ーーと聞いても、ピンと来ない人もいるでしょう。例えるなら「画家・ゴッホの筆をつくった職人」と言いますか、「写真家のロバート・フランクのカメラをつくった職人」とでも言えるでしょうか。すばらしい作品を世に残す舞台裏にいる職人です。
富士吉田市には、多くのハタオリ工場があり、ハタオリの職人やテキスタイルデザイナーが活躍しています。しかし今、「その感性をかたちにする織り機」を直す職人=「機屋番匠」は、この地域に二人しかいません。
そんな貴重な職人の姿を伝えるべく、富士吉田市にあるアートギャラリー兼アーティストサロン〈FUJIHIMURO〉では、「織り機につどう」という企画展を開催しています。
この企画展の構成は、大きく分けて3つです。
1 ヴィンテージの織り機の展示
2 ハタオリ職人の言葉
3 機屋番匠の日々を記録したドキュメンタリー映像のインスタレーション
ここでは会場の様子を写真でお伝えするに留めておきますが、詳しくは「織り機につどう」の公式サイトを要チェック!
http://weaving.yosowoigarden.com/
さらに現在は、「番匠」の今を伝える活動として、クラウドファンディングも実施しています。ぜひ本企画をいっしょに応援して、日本のものづくりを未来に伝えていきませんか。
▽クラウドファンディング「織り機につどう」実施中
https://faavo.jp/yamanashi/project/4215
まずは一度、「織り機につどう」のインスタレーションを体感しに富士吉田市〈FUJIHIMURO〉へ!
Editor's Note
富士吉田市の人たちは、どこかおしゃれ。いや、おしゃれと言うと的を得ていないような気がする。「自分なりの品」をきちんともっている。ーーそう感じさせられたのは、山梨の機織りを伝える「ハタオリマチフェスティバル」に関わる人たちの姿を見てからのことでした。何風とか、トレンドとか、そういうことではなくて、「こういう色が好き!」とか「あの人のスタイルってあの人らしくていい」とか、お互いの「素直さ」みたいなものを尊重し合っている気風を感じたからでした。そして、今回の展示で、その「素直さ」の理由がわかりました。
ハタオリの街として、美しさとか彩りとか、やわらかさとか、テキスタイルが表現する繊細さに毎日向き合ってる「ひたむきさ」を、この街の人たちは大切にしています。そして、表立ってスポットを浴びることのない機屋番匠さんのような職人の背中を、みんなが尊敬しています。「素直な心意気」が、この街のおしゃれを物語っているのだと気づかされたのです。
そういえば、この街を訪れる度に、「次代の人たちが、自分らしい表現をできる街にしよう」と熱く語る人生の先輩たちにたくさん会います。
ーー番匠さんの機械に支えられ、生地を織り、次代につなげるということ。支えてくれてる身近な人を思う誠意のことを、おしゃれというのだと教えられたように思います。
TAKASHI KIYOSUMI
清住 隆史