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LOCAL LETTER

本気でやれば失敗はない。チャレンジし続ける理由とは

OCT. 15

TOYAMA

拝啓、何かやろうとしても一歩踏み出せないアナタへ

人生は選択の繰り返しです。
何かしようと決めるのも、やらないと決めるのもあなた次第。

今回お話をうかがったのは、富山県氷見市の細川好昭さん。同市で両親が営む精肉店に生まれた細川さんは、お店を継ぎ、現在は焼肉店や鉄板焼きレストラン、サウナ設備がついた宿泊施設なども手がけています。

順調そうに見える細川さんですが、家業を継ぐことに対する迷いや、事業を広げていくことに対する不安はなかったのでしょうか。

チャレンジし続ける細川さんが大切にしていることや原動力は何なのかをじっくりうかがいました。
一歩踏み出せずにいるアナタの背中を、きっと押してくれるでしょう。

家業を継ぐのは当然。人生を楽しむ父親の姿を見て育って

「なんでみんな継ぎたくないんだろう?」
素朴な疑問とでもいうように、細川さんは尋ねます。

祖父の代から精肉店を営んでいた家系に生まれた細川さんは、生まれた時から横にコロッケが並んでいるような環境で育ちました。

細川 好昭(ホソカワ ヨシアキ)氏 「氷見 牛屋」代表/1972年、富山県氷見市生まれ。祖父が1948年に始めた小さな精肉店を起点に、1992年には両親が有限会社細川を創業。2018年、2代目社長に就任。精肉店直営ならではの品質と価格でおいしい氷見牛をたくさん食べてほしいという思いで、「焼肉・しゃぶしゃぶ 氷見 牛屋」を開店し、指揮を執っている。
細川 好昭(ホソカワ ヨシアキ)氏 「氷見 牛屋」代表/1972年、富山県氷見市生まれ。祖父が1948年に始めた小さな精肉店を起点に、1992年には両親が有限会社細川を創業。2018年、2代目社長に就任。精肉店直営ならではの品質と価格でおいしい氷見牛をたくさん食べてほしいという思いで、「焼肉・しゃぶしゃぶ 氷見 牛屋」を開店し、指揮を執っている。

両親はいつも忙しく、気の強い二人は喧嘩が絶えなかったといいます。細川さんは、騒がしい中で寝たり、お小遣いをもらって喜んだりするような幼少時代を送りました。当時の思い出を語る細川さんは終始笑顔で、「愛情たっぷりで育てられたんやろうな」と目を細めます。

「親父は、船で魚釣りにもよく連れて行ってくれました。そうやって、仕事をしながらも自然の中で遊んだり、好きなことをして自分の人生を楽しんでいる父親の姿を見ていました」(細川さん)

子どもながらにそんな生活が楽しそうだと感じていたそうです。

そんな風に家族の温かさを感じたり、父親の背中を見たりしながら育った細川さん。
肉屋になりたいとまでは思っていなかったものの、決して嫌というわけではなく、「ここで仕事をするのが楽しそうだと思っていたんでしょうね」と過去の自分を振り返ります。

高校卒業後は、大阪の大学に進学。そこから違う道に進むこともできましたが、富山市内の肉屋に修行に行くと決めます。

「心のどこかで、いつかは故郷に帰ろうという想いがありました」(細川さん)

働き始めてわかったのは、肉屋があまり儲からないことでした。そのとき改めて、両親が頑張って自分を育ててくれたんだという感謝の気持ちが生まれたそうです。「だから、なんとかして、良いものにしていかないといけないと思って」と話します。
この経験が、細川さんが色々なことにチャレンジしていこうと思ったきっかけの1つでした。

「氷見 牛屋」本店
「氷見 牛屋」本店

最初のチャレンジは焼肉店「牛屋」の開業でした。今から15年ほど前。細川さんが修行先から氷見市に戻って家業を手伝っていた頃のことです。

「親父たちは、新しいことを始めるのに当然不安を感じていましたね。今思えば、よく許してくれたと思う」と細川さんは笑います。

その後もどんどん事業を広げていった細川さん。現在は、氷見市の他に富山市と高岡市でも焼肉店を営んでおり、居酒屋も3店舗経営しています。

さらに今年の1月には、鉄板焼きレストランとサウナ設備がついた宿泊施設であるプライベートヴィラ「GYU-YA VILLA」を氷見市内にオープンさせました。

取り組みの背景にある「家族」と「氷見」への想い

「牛屋富山店」の内観
「牛屋富山店」の内観

焼肉店、サウナ、宿泊業など、次々と事業を拡大し精力的に動いている細川さん。そこにはどんな想いがあるのでしょうか。

細川さんが大切にしている理念は「食を通じて人々を幸せにすること」だそうです。しかし、深掘りしてうかがっていくと、それ以外にも大事にしていることが見えてきました。

温かい家庭で育った細川さんにとって、キーワードの一つは「家族」。

「自分にとって一番大切なのは家族です。どんなに仕事に必死になったからといって、家族が崩壊するような仕事はしたくないと思っています。

旅行に行くようなことはなかなかできませんが、店の裏を自宅にして、家族と会いやすい環境づくりをしています。奥さんも一緒に働いています。子どもとの時間は少なくなりがちですが、みんな仲がいいです」(細川さん)

一方、目を外に向けると、細川さんが焼肉店をオープンさせた当時、氷見にはファミリーで行けるような焼肉店は多くありませんでした。そのため、家族で食べに来て、家族団欒で幸せな時間を過ごせるような場所をつくりたいと細川さんは考えたのです。

氷見牛
氷見牛

もう一つ細川さんの根底にあるのは、氷見を盛り上げたい気持ちです。そのために「氷見牛」を広めようと、細川さんは頑張っています。

氷見牛は希少性が高いため、なかなか商品が県外に出にくいという状況があります。

「だから氷見だけじゃなく、市外にもお店を出して、市外や県外から氷見に人を呼ぶようなことが出来たらと思ってやっています」(細川さん)

また、氷見牛は生産者あってこそのものです。しかし、生産者不足という課題に直面しています。「流通や消費を多くすることによって、生産者も経営がちゃんと成り立つような市場を僕らは作らなければいけないと考えています」と細川さん。

そして、プライベートヴィラ「GYU-YA VILLA」をつくったのも、一番の理由は美味しい氷見牛を食べていただくこと。それに加えて、氷見に宿泊施設が少ないことも理由の1つでした。

「氷見はね、いろんな魅力があるまちなんですよ。お肉もあるし、魚もあるし、自然もあります。ぜひ氷見に来て一泊して、市場の食堂に行くとか、山や海の景色を見に行くとか、そんなことしてもらえたらいいなと思っています」(細川さん)

現在、氷見は消滅可能性自治体(※1)に入っています。
「やっぱふるさとはなくしたくないよね。だから、それも止めなあかん」
そう話す細川さんは少し寂しそうでしたが、同時に、氷見への愛や今後の意気込みも感じられました。

(※1)「人口戦略会議」が24日に発表した「消滅可能性自治体」は、2050年までの30年間で20代と30代の女性が50パーセント以上減ると推定される自治体
出典:https://www.hit-north.or.jp/information/2024/04/24/2171/

細川さんはこれからも、様々な事業を展開していきたいと考えています。

「楽しいことをやりたいと思っています。やりたいことは、いっぱいあるかもしれませんね」(細川さん)

例えば、今考えているのはペットと一緒に食事をしたり宿泊したりできる場所をつくること。ご自身もトイプードルを飼っているという細川さんは、「皆さん、家族同様にペットを連れて旅行に行くからね」と話します。

もう一つ考えているのは、仔羊の肉「ラム」に関する事業です。

「ラムは魅力的な肉なんですよ。めっちゃヘルシーで、食べてもあまり胃もたれしないんです。日本ではあんまり食べないんだけど、新しい食材として、ラム関係の店をやるのも一つかなと思っています」(細川さん)

辞めたいと思ったことはない。好きだから走り続ける

今まで多くのことにチャレンジしてきて、これからもやりたいことがたくさんある細川さん。怖いと思ったり、辞めたいと思ったりすることはないのでしょうか。

「怖さはありますよ、ありますよね」と独り言のように繰り返す細川さん。「夜中に目が覚めるのもよくある話ですよ」と続けます。

明るい表情で話してくれる細川さんからは想像がつきませんが、経営者として不安がつきまとうのは当然なのかもしれません。

「でも、やらなきゃいけないし、進まないといけないし。いろんなトラブルが出てきますけど、どうにかなりますしね。悔いのないように、自分で一歩一歩やっていけば、それが成功につながると思って頑張ってやっています」(細川さん)

朝から晩まで働くような生活が十年ぐらい続いた時期もありました。それでも細川さんは「辞めたいと思ったことはないんじゃないかなぁ」と話します。

「肉も切らなあかん、配達もしなあかん、焼肉もせなあかんって。必死でしたよ。でも楽しかった。

やっぱやらされてるのと違うからね。自分でやりたいと思ってるし、これからなんとかしようと思ってるし」(細川さん)

また、家に着くのが23時や24時で、そこから寝ながらご飯を食べることもあるそうですが「やっぱり好きだから出来るのかなと思いますね」と細川さんはしみじみと語ります。

失敗から学んだ姿勢「全てに愛と感謝を」

走り続けてきた細川さんですが、上手くいくことばかりではありませんでした。ある時期、従業員が次々と辞めていったこともあったそうです。

「『店の経営さえなんとかなればいい』と思っていたところがあったかもしれんね」
と、細川さんは当時の自分を振り返ります。

それをきっかけに、細川さんは「愛」や「感謝」を大切にするようになったそうです。

「愛・感謝やね。すべてに感謝。こうやって生きてるのにも感謝して、愛を持って行動する。人に対しても自分に対しても。例えば、本気で社員が幸せになるように行動する。一緒にね。社員も、社員の家族も幸せになれるように。そういう会社を作っていかないと、と思っています」(細川さん)

普段から各店舗を見て回ることも多いという細川さん。特別なことをしているわけではないが、常に愛や感謝を持ちながら従業員に接しているそうです。

「響いてないかな?響いてくれてると思うんやけど」
そう話す細川さんの表情はとても穏やかで、従業員の方々への愛情が溢れていました。

「本気」でやれば失敗しない

好きだから行動できていると話す細川さんですが、世の中には、好きなことが見つけられなかったり、新しいことに挑戦しようと思っても足踏みしてしまったりする人たちも多くいます。

細川さんはどのように考えているのでしょうか。

「いろんなことをやってみて、人生経験を積むことが大事なんじゃないですか。チャレンジはしないとダメですよね。やってみてダメなら、やめればいいじゃないですか。みんな考えすぎなんでしょうね。計画も大事だけど、やっぱりやってみるのが大事だと思います。本気でやれば絶対失敗しないですからね」

失敗しないとはどういう意味でしょうか。

「本気なら、それが失敗とは思わないんじゃないですかね。それが経験だと思って」

実際、細川さんも痛い目にあったことは多々あるといいます。しかし、それを乗り越え、何かを得て、その失敗にも意味があったと思えるそうです。

そんな細川さんが、迷っている人に対して伝えたいのは「本気」になること。
「本気で考えて、本気で進めばなんとかなるから、やっぱ本気でやってほしいなと。本気でやることによって絶対道は出てくるから」(細川さん)

そして、更にこう続けます。

「迷ったときは、自分もいろんな人に意見は聞くけど、でもやっぱり自分が答えを持ってるから。絶対」(細川さん)

自分の中にあるはずの答え。

みなさんも、まずはそれを探して「本気」で一歩踏み出してみませんか。

本記事はインタビューライター養成講座受講生が執筆いたしました。

Editor's Note

編集後記

「本気」という言葉を繰り返す細川さんがとても印象的でした。
また、氷見牛のお話をするときの熱量がとても高く、好きな気持ちが伝わってきました。
好きなことを仕事にしている人は強いですね。

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