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LOCAL LETTER

正解がないからこそ考える「持続可能な循環型社会の在り方」。地域プレイヤーと “地域のリアル” に向き合った、若者たちの変化とは

APR. 01

拝啓、ブームで終わらない「持続可能性」を地域プレイヤーと共に考えた、若者の変化を知りたいアナタへ

近年、耳にする機会が増えた「SDGs(Sustainable Development Goals)」という言葉。

このSDGsが掲げる「持続可能な社会の実現」という国際目標に対し、世界中のあらゆる企業・団体が社会課題の解決に向け積極的に取り組んでいる。

今回取材を行った、ローカルSDGsユースセミナー「CIRCULAR YOUTH CAMP」も、持続可能な社会の実現に向き合う取り組みの一つ。

SDGsという言葉が生まれるずっと前から、ローカルに根付き、経済・社会・環境の循環の中で暮らしている地域プレイヤーが講師となり、“地域のリアル” を都心の若者に見せることで、日常では得られない学びや出会いを提供していくプログラムだ。 

わずか1ヶ月間という短い期間での開催ながらも、日常生活で何気なく使っているモノや食べている食について、深く考えさせられる「CIRCULAR YOUTH CAMP」。今年参加した若者たちは、一体どんな体験をし、何を考え、どのような学びを得たのか。

今回は参加者2名から話を伺いました。 

実践を通じて、ローカルSDGsを知り、学び、繋がる

「地域からポジティブな循環を生み出し、広げる」をテーマに環境省主催で開催された、ローカルSDGsユースセミナー「CIRCULAR YOUTH CAMP」。 

ローカルSDGs(地域循環共生圏)とは、2018年4月に閣議決定した第五次環境基本計画で提唱された概念であり、環境省ローカルSDGsサイトでは下記のように説明されている。

各地域が足もとにある地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し支え合うことにより、環境・経済・社会が統合的に循環し、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方であり、地域でのSDGsの実践を目指すものです。(参照:環境省ローカルSDGsサイト

環境省ではローカルSDGs施策の一環として、各種の研修やセミナーを実施している。「CIRCULAR YOUTH CAMP」もその一つで、18~30歳周辺の若い世代を対象とした参加型プログラムとして、今回が初開催になる。 

開催期間は、2022年2月24日~3月23日の1ヶ月間。その間に4回のミーティングがある。参加者は4つの地域から1つを選び、地域毎に設けられた事前課題に取り組んだ上で、現地との体験・交流に臨む。 

主催者が設定したポイントは、3つ。

  1.     地域からこれからの循環を生み出す実践への挑戦
  2.     地域・組織・立場をこえた同じ志を持った仲間との出会い
  3.     新しい知性と感性で挑戦する社会起業家たちとの出会い

では、参加者は何を求めて参加したのだろうか?東京でフードロス削減事業に取り組む会社に勤める関口一平さんは、参加理由をこう語る。

「神奈川県の都市部で生まれ育ち、生活の中に地域を感じる機会がありませんでした。だからこそ、逆に気になったのが、1つ目の参加理由です。

2つ目の理由は、日本の地域の課題は、これから他の先進国が直面する課題だと考えていたことです。こういう機会でリアルに関わることで、これからどのような社会モデルが求められるのかを、色々な方と触れ合う中で知りたいと思いました」(関口さん)

写真右:関口 一平さん
写真右:関口 一平さん

静岡県浜松市出身で、現在は京都の大学に通う村越美咲さんの参加理由は、SDGsに対する関心だったという。 

「大学の授業で環境問題を学ぶにつれて興味を持ちました。SDGsという言葉を最近よく耳にするけれど、そもそも何だろうと考えたこともあります。このプログラムを通じて、自分の中で答えが出たらいいなと思いました」(村越さん)

写真右:村越 美咲さん
写真右:村越 美咲さん

事前に地域に想いを馳せ、現地で新たな気づきを得る

4ヶ所の地域の中から、“森林からはじめる新たな価値のデザイン” をテーマに掲げた岐阜県/美濃市エリアを選んだ村越さん。一番の選択理由は、紹介文に掲載されていた、地域講師の萩原ナバ裕作さんに会ってみたいと思ったこと。

「ナバさんの『日本最大の天然資源である “森” をどこまで活かせるかが、これからの時代のカギになるでしょう』という言葉に惹かれました。森について考えてみるとわからないことがたくさんあって、生活の中で森と触れ合う機会も少ないと気づきました。もっと色々な視点で森を見られたら面白いなと、ナバさんとの出会いを通じて感じています」(村越さん)

村越さんが惚れ込んだ、萩原 ナバ 裕作さん / 岐阜県立森林文化アカデミー 准教授。20歳の時、日本のインタープリターの父、小林毅氏と出会い環境教育&インタープリターの道を歩み始める。以来、奥多摩(東京)でインタープリター、オーストラリアでエコツアーガイド、そして野生動物のドキュメンタリー番組(主にタンザニアやオーストラリアの野生動物)制作に携わる。オーストラリアのタスマニア島に家族と永住する予定だったが、岐阜県に森林文化アカデミーというオモシロイ学校があることを知り急遽帰国。環境教育の指導者養成のための教員として2007年4月に配属。日本にも格段に環境教育の理念が広まっていた一方で、子ども達の土台となる大切な部分(自由、考える力、生きる力等)を育む環境がないことに気づき、「自由な学び」と「森と人をつなぐ」という活動に焦点を絞りはじめる。2008年、野外自主保育「森のだんごむし」設立、2011年「みのプレーパーク設立、2017年「morinocoナイフ」開発、2020年、森林総合教育センター「morinos(モリノス)」設立、の仕掛け人。2019年 JOLA(ジャパン・アウトドア・リーダーズ・アワード)大賞受賞。
村越さんが惚れ込んだ、萩原 ナバ 裕作さん / 岐阜県立森林文化アカデミー 准教授。20歳の時、日本のインタープリターの父、小林毅氏と出会い環境教育&インタープリターの道を歩み始める。以来、奥多摩(東京)でインタープリター、オーストラリアでエコツアーガイド、そして野生動物のドキュメンタリー番組(主にタンザニアやオーストラリアの野生動物)制作に携わる。オーストラリアのタスマニア島に家族と永住する予定だったが、岐阜県に森林文化アカデミーというオモシロイ学校があることを知り急遽帰国。環境教育の指導者養成のための教員として2007年4月に配属。日本にも格段に環境教育の理念が広まっていた一方で、子ども達の土台となる大切な部分(自由、考える力、生きる力等)を育む環境がないことに気づき、「自由な学び」と「森と人をつなぐ」という活動に焦点を絞りはじめる。2008年、野外自主保育「森のだんごむし」設立、2011年「みのプレーパーク設立、2017年「morinocoナイフ」開発、2020年、森林総合教育センター「morinos(モリノス)」設立、の仕掛け人。2019年 JOLA(ジャパン・アウトドア・リーダーズ・アワード)大賞受賞。

“福島の地で安心安全な食を守り、行動し、自分の生き方を見つめる旅” がテーマの福島県/浪江町エリアを選んだ関口さんは、自分の仕事にも引き寄せて考えたという。

「仕事で食やサスティナビリティ関連のことをやっているので、農業がテーマの福島県浪江町を選びました。東日本大震災から11年経った今の状況を見てみたいとも思って」(関口さん)

村越さんが取り組んだ、岐阜県/美濃市エリアの事前課題は、木と森に関する以下の2つ。

① ⾃分の⾝の回りにある⽊材製品の価格と、その製品のできる⼯程(材がどこから来たのか、どこで作られているか、どのようにどれくらいの時間をかけて作られているのか)や、⽊材の原価を調べる。(1⼈2製品、国産 or 外材1製品ずつ)

② ⽊が私たち⼈間に与えてくれているもの。「⽊の恵み森の恵み」には⼀体何があるのか、どんな機能があるのかをできるだけ多くまとめてみる。

村越さんは、課題1の題材として自分の机を取り上げた。小学校から使っていて、現在の京都の住まいにもわざわざ持ってきてもらったほど、愛着と思い入れのある机だという。

「地元浜松市の企業が販売していて、すごく愛着があるんです。それでも作る過程などは知らなくて。改めて調べてみることで、机の部材の形になる前にも複数のプロセスがあり、その度に様々な人が関わっていることを知りました。机は、色々な人が関わってできているものだと、本当の意味で実感が湧きましたね」(村越さん)

2つ目の課題「森林の価値」を調べる前に自分で考えてみたが、森の中を歩くと癒されること、地元で天竜杉を植えて洪水を止めた人のことくらいしか浮かばなかったそうだ。調べてみたところ、その2つ以外にも色々あることがわかった。 

「一番印象的だったのは、森の栄養素が川に通じ、それが川のミネラルなどの資源になっていること。森が川とか人間とか色々なものに繋がっていることでした」(村越さん) 

現地で体験してみて、「人を繋ぐ手段」も森の価値の一つであることに気づいたという。

「行く前は、森を知ることが目的で、その手段として人がいました。でも、この活動がまだ終わってない今の時点ですら、もう1回みんなで会いたいねとか、ナバさんがいるから、もう1回あそこに会いに行こうという話が出ています。人が目的で、森が手段みたいに変わったなと感じました」(村越さん)

関口さんが選んだ福島県浪江町エリアは、東日本大震災によって発生した福島第一原子力発電所事故の影響を受け、町民の9割近くが今も町外で避難生活を送っている。それを踏まえて、下記の2つの事前課題が設定された。

① なぜ農家は浪江で農業再開することに、再びこの地で暮らすことを選んだのか。そこにはどんな困難、葛藤、想いがあったのかを想像する

② あらゆる痛みを引き受け、わたしたちの未来を持続可能な地域社会を作っていく上 での、農業の価値とはなんだろう

「一つ目の課題の、再びこの地で暮らすことを選んだ理由について、使命感みたいなところが大きいのだろうと想像していましたけど、実際に農家の方々と話してみたら意外に自然体だと感じました」(関口さん) 

「多分本人の中で葛藤とかもあったのでしょうけど」と前置きしつつ、関口さんは言葉を続けた。

「自分の土地があるからとか、ある種自然に戻ってきたみたいな方が結構多かったなと思います。自分のやるべきことがあるから前向きに楽しく生きておられ、驚かされました」(関口さん)

 2つ目の「農業の価値とは」については、村越さんと同様に、人を繋げる場所としての社会的な価値に気づいたという。 

「今回、花の苗を植える体験をしました。その苗が育って花が咲くのは3,4ヶ月後です。その時にまたここに戻ってきたい。そういう時間的な繋がりも生まれるし、普段暮らしている場所で浪江産の野菜を見たら気になるという空間的な繋がりも生まれます。そこは農業の一つの価値なのかなとは思っています」(関口さん)

自然と人との交流が生む、気づき、そして変化

岐阜県美濃市エリアの現地体験は、「⽊が⽊材になるプロセスを体感し、その価値を理解すること」がテーマだった。

参加した村越さんは、木を切った体験から2つのことを学んだと、目を輝かせて語る。 

「まず一つは、木や森が生きていると強く感じたことです。切り立ての木を自分の手元で見ると、まだ少し湿っていたり、皮の質感がとてもよくわかったりするんです。匂いも強くて。加工される前の新鮮な木々を体験を通じて感じ取れたのは、すごく大きかったと思いました」(村越さん)

「もう一つは木や森を通じて人との繋がりができたことです。このプログラムを一緒に体験した人との繋がり。それからナバさんという現地の方や森との繋がり。今まで、森を通じて人と繋がるという考え方がなかったので、それを知れたのが良かったですね」(村越さん)

参加する前は、森を通じた繋がりとは、森に対して意識の高い人が森について話し合って繋がるようなことだと思っていた村越さん。実際はそんなに難しく考える必要はなく、そこに生えている木とか葉っぱで火をつける方法を一緒に考えたり、焚き火の前で話したりといったことでも人が繋がれるきっかけになると知ったのだ。

福島県浪江町エリアに参加した関口さん。午後に予定されていた野菜の収穫体験は強風のためにあまりできず、薪割り体験などに変更になっていた。

「短い時間でしたが、実際に体験してみることで、スーパーに並んでいる野菜は形が揃っているのに、畑では様々な形があって。むしろ、色々な形があるのが当たり前で、普段スーパーで見ている風景とは全然違うことを知れました」(関口さん)

「もう一つ、気になったことは、このプログラム自体が、循環型社会SDGsの文脈で参加しているメンバーが多い中で、現地の人が果たしてその変化を求めているのかどうかということ。

“今後、地域をどうしていくか?” という観点で考えると、人によって多少ギャップがあると思っていて。現状維持でいいか?というと、それも違うかもしれない。どうやって見方を合わせていくかは、まだまだこれからなのかなと感じました」(関口さん)

「楽しさ」を入口に持続可能性を考える

最後に、今回のプログラムを通じて、持続可能性について考えたことをおふたりに聞いた。

関口さんがあげたのは、後継者問題。

「浪江町の農家さんの平均年齢は70代後半から80歳です。その方たちが亡くなられた後、どうなるのだろうと。みんな『農業が大事だよね』と言うけれど、自分がやるかというと違うんですよね。

完全に農家になることはできなくても、週末自分の分だけ作るというような緩い関わり方ができるようになると、もう少し食の持続性は広がっていくのかなと感じました」(関口さん)

少しでも意識を持って行動する人が増えることが大切だと思います。私を含めて現状を知らない人が多いのが問題で、まずは認識するところから始められたらいいんじゃないかなと思います」(村越さん)

「『社会課題こうだよね』という硬い入口ではなく、楽しくやったことが社会課題や自分の生活と繋がっていることに気づいて、ちょっと暮らしを見直してみようかな、となる。そんな緩い入り方がいいかなと思っています」(関口さん)

周りの人に興味を持ってもらえるだけでもすごく大きなこと。「木を切る体験はなかなかできないので、体験した自分が興味を持ってもらえるように伝えたい」と語る村越さんに、関口さんがエールを送る。

「村越さんをはじめ、岐阜の参加者が楽しそうに話すのを聞いて、自分も木を切ってみたくなりましたよ」(関口さん)

楽しそうな姿に惹かれて自らも体験し、「この楽しさを持続させたい、次世代以降にも味わってもらいたい」そう思う人が増えていく。

その想いが未来を創るパワーになっていく様子が目に浮かんだ。

Editor's Note

編集後記

プログラムを見ただけでも参加してみたいと思うセミナーでしたが、お二人が楽しそうに話すのを聞いていると、何とかして参加すればよかったと悔やまれてきました。

危機、問題、課題といった文脈で語られがちなSDGsですが、お二人がおっしゃる通り、「楽しそう」を入口に肩に力を入れ過ぎずに取り組んでいくのが近道なのかもしれません。

さり気なく語られる数々の気づきを含め、お二人の魅力に圧倒された取材でした。。

これからも LOCAL LETTER の応援をよろしくお願いします!

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