ミドル人材
地域で暮らしてみたい。
または、既に暮らしているがより地域を良くしたい。
より濃いつながりを構築したい。
そんなアナタに向けてお送りするのが、ミドル人材のライフシフト戦略 『時代はLocal to Localへ〜地域(大山町)×地域(新庄村)をツナゲル』をテーマに行われたトークセッション。実際に地方で活躍するプレーヤーの3名の自由な対話をお届け。
前編では「地方での生き方や仕事づくり、働き方」についてお送りしましたが、後編ではより「地域と地域をツナゲル」ことをテーマに語っていただきました。
貝本氏(以下、敬称略):僕が住んでいる鳥取県大山町は、地域おこし協力隊など色々な人たちが移住して来ているのですが、定住率がとても高いんです。
貝本:なぜ定住率が高いのか、以前皆で話し合ったんですよ。そこで出たのは、多様性があって皆が一枚岩じゃないからという結論だったんです。
やりたいことをやっている人たちがそれぞれ多様なコミュニティを形成しているので、その中から必ず自分にハマるコミュニティがあって。あっちのグループにはハマらなかったけど、こっちのグループにはハマるとか。自分の居場所ができることで、それが定住につながっているのかと。
僕の会社に入って辞めた人もいるのですが、その人は今も近隣で働いていたりしますしね。
安川氏(以下、敬称略):それは良いですね。普通は居づらくなったら帰るしかないのですが、大山町はある種「寛容性」がありますよね。
貝本:あとは流されるままの人の方が何だかんだ上手くいくんですよね。流されていながらも、結局良い感じのところに流れ着くケースが多いので。
安川:それは私もよくやっています。ただ流されるのではなく、意思を持って流されるんですよね。流されていきながら意思を持つから枝を掴まえられる。地方で生きていくには大事なことかなと思います。
安川:今回のテーマでもあるLocal to Localの可能性についても話してみたいと思っています。貝本さんはどのようにお考えですか?
貝本:都会と地方の結びつきのようなものは今まで多く語られてきたように思いますが、ローカルとローカルって面白いですよね。
都会にいた時は都会と地方、むしろ東京とそれ以外という狭い視野で見ていた気がします。ですが、地方に解像度を上げて入り込んでみたら、隣同士の町でも全然違うんですね。文化も価値観も違う。そういう異なる文化圏同士がつながることで、新しいものを生み出すことができるのではないかと思っています。
同じような課題を抱えていながらも、地域によってアプローチが違ったりもしますしね。各地域からさまざまなスキルを持ち寄って、その人たちがつながることで、課題解決にもなるのではないかと思います。
安川:物理的な距離が近い地域でも、意外につながってないんですよね。
貝本:そうなんですよ。移住希望者が移住先を探す時も、その地域に何があるかだけを考えがちです。もっと積極的に地域同士がつながれば、そういうことも減るのではないかと思います。実際に住んでいる人は、買い物や仕事で地域外に出ていますし、そういった暮らしにまつわることを連携して発信していくのも大事かなと思います。
千葉氏(以下、敬称略):自治体の枠にとらわれる必要はないですよね。
千葉:今回貝本さんと話しているだけでも、私の住む岡山県新庄村と、貝本さんの住む大山町で何かできそうな気がしています。
貝本:僕が親の教えで唯一覚えているのが「やってほしいことがあったら、自分から先にしなさい」というものなんですが、今でも本当にその通りだなと思っていて。
地方は都会の人に対して、「来てほしいオーラ」をすごく出しているじゃないですか。本当に来てほしかったら、地方側も変わらないといけない部分もあると思うんです。自分たちがやってほしいことだけを発信するのではなくて、やってほしいことをやってみる。都会の人に来てほしかったら、地方からも都会に何かしら貢献する必要があると思います。ギブアンドテイクの関係づくりが必要かなと。
千葉:もう少し地域を俯瞰して見るためには、例えば東京で働いていたとか、そういう経験もあると良いのかなと思いますね。
貝本:Local to Localに当てはめても同じことが言えると思っていて。ローカル同士お互いがやってほしいことをやる。例えば観光客が来てほしいなら、お互い行き来するだけでも経済効果があるじゃないですか。もっとローカル同士の距離を縮めていくべきだと思います。
安川:今現在、行政を絡めてLocal to Localを推奨しているところはあまりないですかね。なかなか難しいとは思いますが。姉妹都市くらいでしょうか。
貝本:新しい流通や人の行き来も生まれそうで、メリットしかないと思います。
安川:それを貝本さんのいる大山町、千葉さんのいる新庄村で推進していくのはどうですか?とても可能性のある話だと思います。千葉さんはどう思われますか?
千葉:ビジネスを絡めながら、社会課題や地域課題を解決できたら面白いと思います。大山町は15,000人の町で、新庄村は850人の村で人口に差がありますが、日本全体で見たらどちらも小規模になりますし、同じような規模感の地域同士で何かできたらそれがモデルとなって全国にも波及していけるのはないでしょうか。
ただ、社会課題を解決するとなると自治体が関与してお金を出すケースが多いのですが、それよりもビジネスベースでやっていくのが良いのではないかと思います。
安川:二拠点居住という言葉が流行ったりもしましたが、ローカルとローカルの二拠点って少ないんですよ。都市部にいて、もう一つ地方に拠点を持つのはよくあるパターンですよね。
今私が個人的に考えているのは、日本海側と瀬戸内と太平洋側の三拠点居住です。こういう多拠点ライフをやっている方はまだまだ少なくて。都会と地方ではなくて、Local to Localの中に多拠点居住を組み込むと、豊かかなと思います。
大山町と新庄村でも、生活を半分にしたら面白いのではないかと。例えば家交換制度とか。場所を移すことで発想の転換があるし、アイディアも浮かぶのではないかと。
千葉:実際、離れていても仕事をする上ではそんなに困らないんですよね。Messenger(メッセンジャー)やLINE、Slack(スラック)等で全部仕事が成り立つので。近くにいると相談しやすいかもしれませんが、必ずしもいなくても良いとは思います。
貝本:都会のミドル人材だけではなくて、地方のミドル人材も別の地方に行くのは良いかもしれませんよね。
千葉:異なる地域同士が一緒に仕事をする中で、「もっとこんな相談したいんですけど、あんな相談もしたいんですけど」という風に、仕事がどんどん増えていきそうな気がします。
貝本:相談は成長の機会だと思っていて。「こういう悩みあるんだよ」と顕在化されると、悩みの解決方法も考えられるじゃないですか。地方は悩みだらけなのでアイディアを創出する場面はとても多いし、同じような地方だったら悩みを交換して話し合うだけでも、お互い学びが生まれそうな気がします。
安川:今回はLocal to Localやミドル人材という話でしたが、今日出てきて面白かったのは、地方のミドル人材の総合利用・交換。これは次のテーマにしても面白いかもしれませんね。
貝本:それはとても良いですね。一つの町だけでビジネスを成長させるのは難しい面もあるし、別のローカルを一つの選択肢として、そこでビジネスが生まれたら会社自体も大きくなっていきますよね。
安川:二つの市町村で働くって面白いですよね。
千葉:自分のスキルを面で展開する感じですよね。今、完全に貝本さんとどんな仕事をしようかなと考えています(笑)。
Editor's Note
「移住」といえば、やはり都会から地方へというイメージが強かったのですが、地方から地方へ移住する、もしくはローカルの二拠点ないし多拠点で活動するという案は、とても興味深いと思いました。お互いにパイを奪い合うのではなく、共有し、連携していくことで潤う地域が増えたら幸せだなと思います。
前編・後編とお送りしてきましたが、トークセッションを通して地方の可能性をすごく感じましたし、そこへある程度人生経験を積んだミドル人材の方が入り込むことで、可能性は更に無限大になるのではないでしょうか。本記事が、アナタの生き方を再考するきっかけになっていると幸いです。
KANA KITASHIMA
北嶋 夏奈