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「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』。
第9回目のゲストは総務省から出向し、神奈川県理事(いのち・未来戦略担当)として働く傍ら、プライベートでは47都道府県の地方公務員と中央省庁で働く官僚をつなぐコミュニティ『よんなな会』を発足した脇雅昭さん。
社会人になる前の進路の葛藤から『よんなな会』の原点までを振り返った前半では、「何百万回も同じテンションで愛を伝え続けたからこそ、今があるんだと思う」と教えてくれました。
後半では、「悩み続けてしまうからこそ、悩まないと決めた」と話す脇さんの心の葛藤にフォーカス。「完璧でなければならない」と苦しんでいるアナタにこそ届けたい、一匙の刺激をお届けします。
平林:前半に脇さんからあった「国家公務員になるか、弁護士になるか迷った」話を聞いて改めて思ったのが、脇さんは「自分に対する違和感」に対して徹底的に向きあう人だということです。
多くの人は違和感が生まれたら動けなくなったり、違和感を見て見ぬ振りしたりするのに、脇さんは違和感と向き合いながら進み続けていらっしゃる。これって凄いことだし、大事なことだと思います。
脇:そんなことないんです!むしろめちゃくちゃ優柔不断だからこそ、3年も迷い続けましたし、29歳の時は「リスクを取って前進する起業家の生き方と自分の生き方を比べて、どっちが人のためになってるんだろう」と悩んで、「自分の人生を何に使うべきか」と答え探しをはじめたこともありました。
ワークショップにも行って、「答え」を探そうと必死になりましたが、答え探しを2年続けた時に「もう悩むのは辞めよう」と決めたんですよね。悩んでても仕方ない、僕は自分の周りにいる凄い人たちに圧倒されて、つい同じになろうとしてしまいがちだけどそうではなく、自分が出来るものに特化しよう。そう振り切れたんです。
なぜか僕は「この人はこんなことをしたら喜んでくれるんじゃないかな」とアイデアが次々に浮かんでくるタイプなので、その強みを活かして、目の前にいる人たちを笑顔にしようと行動していたら『よんなな会』が始まっていたんですよ。
脇:「違和感」はそもそも自分の中に何かがあるから抱く感情なんです。自分の中に何もなければ、その違和感にさえ気がつかない。だからこそ、違和感に気づくことができたら、それが「自分だけの指標なんだな」と思うようにしています。
平林:違和感に気づくためには、「まずはやってみる」精神がポイントなんでしょうね。
脇:僕は夢を言語化するのが得意ではないからこそ、まずは小さくやってみることを大事にしています。思いつくことを行動に移すうちに「それいいね」と言ってくれる人たちが現れて、その人たちが「なぜ素晴らしいのか」を言語化してくれるんですよ。
例えば『よんなな会』だったら、「公務員の志や能力が1%上がったら、世の中がめちゃくちゃ良くなるかもしれないね」っていう言葉をもらいました。相手から頂いた言葉を自分にフィットさせていく感覚ですね。
平林:脇さんの「官僚」という立場を考えると、なかなか行動へのハードルが高そうにも感じてしまうのですが、実際はどうですか?
脇:その通りです(笑)。僕自身「そんなの関係ねえ!」って言えるタイプでもないので、『よんなな会』もスタートから5年ぐらいはメディア露出を避けてました。知られてしまったら、いろいろ言われそうで怖いじゃないですか!(笑)でも、みんなが「いいね」って言ってくれるようになってきたことで、そろそろ大丈夫かなと思えるようになっていったんです。
平林:一歩ずつ一歩ずつ地を固めていったんですね。
脇:最近すごく感じているのが、「皆さん100を目指したがりすぎ」ってこと。僕は0より1の方がいいという感覚で、「1だけでも進めればいいか」と思うタイプなんです。1だけでも、進みはじめるといろんな人が助けてくれて、結果60ぐらい出来ることもある。
100を目指して、60しかできないとテンションも下がりますが、1を目指して60出来たら「自分マジで最高!」って思いますよ(笑)。僕は自分にも優しいからこそ、続けられてきたのかもしれません。
平林:きっと今の言葉で救われた人がたくさんいますよね。多くの人は生きていく過程で100を狙いがちですから。
脇:光が当たる人って、100になってから光が当たりはじめるから、外から見ると「生まれた時からできたんだろうな」と思われてしまうんです。でも生まれた時から100なんてことはなくて。案外マイナスからスタートしてることもあるので、そんな過程を知れるといいかもしれないですね。
…あれ?だからこの「生き方」の対談企画が生まれたのか!めっちゃ凄い!(笑)
平林:ありがとうございます!本当にその通りで、読者からも「ずっと完璧だと思いこんでいた人の『生き方』を読んで、そんな時代もあったんだと、一歩踏みだす勇気をもらえた」なんて言葉をいただいてます。
脇:改めて面白い企画ですね。外から見るとキラキラしている人も、「案外そうじゃないよ」って伝えるのも大事じゃないですか。
平林:完璧な人から「一緒にやりましょう」って言われるのもいいけど、得意なところと不得意なところがあって、「それでも一緒にやりましょう」の方が健全ですよね。
平林:最後に、今脇さんが挑戦していることを教えてほしいです。
脇:『よんなな会』の中に『オンライン市役所』という企画があって、1,788自治体中1,200ほどの自治体が参加してくれているんですけど、もっと多くの人たちにリーチすることができれば、日本がもっと元気になると思うので、やっていきたいことは色々あります。
でも僕の中で「挑戦」という言葉の定義は、「今やっていることをやりきること」だなって。
脇:だから、挑戦というと、つい新しいことばかりを追い求めがちなところもあるんですが、原点に戻って「全国の公務員の志や能力が1%上がったら、世の中めちゃくちゃ良くなるんじゃないか」をやり抜くことが、僕の中で目指すべき挑戦なんじゃないかな。
平林:めちゃくちゃかっこいいです。今日は貴重なお話ありがとうございました。
Editor's Note
「話続けることで、人がいいところを言語化してくれる」「完璧を求めすぎ」などなど、金言がたくさん飛び出した今回の対談!文中にもあるように、脇さんの名言集に、「救われた」という気持ちになっている人たちがたくさんいるはず。人と本気で向き合ってこられた脇さんだからこそ心に響く言葉なんだなと感じました。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香