Well-being
ウェルビーイング
2021年7月に発足した『LOCAL LETTER MEMBERSHIP』。全国から想いのあるメンバーが集い、交流を深めています。
本記事では、毎月開催されているメンバー限定のイベント『LOCAL偏愛トークライブ』から、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の取締役・人事総務本部長島田由香さんをゲストにお迎えした「ウェルビーイング偏愛ビト編」の一部を公開。
働き方改革を推進して来られ、この度は行政改革推進会議のメンバーに入られた島田さん。働き方に留まらず、生き方・在り方としてウェルビーイングの重要性を説き、実践も重ねて来られました。さらに数年前からは、「地域deWAA(Work from Anywhere and Anytime)」という自治体と連携したワーケーションの導入をはじめ、地域でも熱く活動しています。
時代に先駆けた活動を続ける彼女が辿ってきた道、挑戦を続ける秘訣とはーー。
平林:今日は、会ったらみんなファンになってしまう、島田由香さんにお越しいただきました。まずは、由香さんから簡単に自己紹介をお願いします。
島田氏(以下、敬称略):ありがとうございます。いつも素敵な場を平林さんにいただいていて、今日も本当に楽しみにしてきました。
私は、ポジティブ心理学とか、ウェルビーイングにフォーカスして活動しています。子どもの頃から、「私たち一人ひとりの人生はもっと楽しくて、いい時間と体験を得ることができるんじゃないか」と思っていて。社会人になってからは、働き方を変える動きをあちこちで行っています。
平林:今日参加してくださっている方、コミュニティに入っていただいている方々の中にも、働き方や新たなチャレンジへの踏み出し方に興味を持っている方がいらっしゃると思います。今日はその辺りに関する由香さんマインドを、皆さんにぜひ受け取ってもらえたら嬉しいです。
平林:由香さんが人材開発や組織開発に携わられたきっかけは、大学の時に組織論に出会って衝撃を受けたこととお聞きした覚えがあります。今日はあまり語られていない由香さんを知りたいと思うので、組織論に出会う前、例えば高校生の時の由香さんのことをお聞きしてもいいでしょうか?
島田:基本は変わらないですね。人のことが好きで困っている人がいたら助けたい。みんなで笑っていたい、みんなと何かやりたい。そういうところは変わっていないと思います。ただ、中学の1年の終わりか2年生ぐらいの時にいじめにあって、その経験が私の人生を大きく変えたのかな。
平林:由香さんがいじめにあったというのは意外な気もしますが、どういう風に乗り越えていったんですか?
島田:ある日突然、昨日まで仲の良かった友達に無視されて、体操着をビリビリに破かれるとか、結構すごいことをされたんですよね。最初はびっくりして、気づかないうちに自分が何かしてしまったんだろうと思って、とにかく謝っていたことを覚えています。
でもどんなに謝ってもいじめは続いて。いじめがエスカレートしていったある日、稲妻がバーンと落ちてくるみたいに「私、悪くないのになんで謝っているんだろう?」って思ったんです。「私が私であることを恥じること自体がおかしい」と思って、もう誰にどう言われても自分らしく生きよう、すごく好きな人とか尊敬している人の言うことだけには耳を貸す。それ以外の人の言うことはもういいと、話を聞かないことを決めました。
平林:すごい変化ですね。
島田:そうそう(笑)。自分の中で大切にするものが決まると、私の態度が突然変わるわけですよ。そうすると「ちょっと来て」ってまた呼び出されるんですよね。「またいじめられるのか」と思いながらついて行くと、なんと「今までごめんね」と言って謝られたんです。
その時に自分の心が二つに割れた気がしました。一つは「何言ってるの、今まで散々酷いことをしてきて。赦すもんか」みたいな気持ち。もう一つは、仙人みたいな気持ちで、「いいよ。そっかぁ」みたいな。この二つの心のどちらを選ぶか悩んだ結果、私は後者を選びました。それが自分の人生においてすごく大きかった。だから、いじめられて本当に良かったと思っています。
平林:お話を聞いていると由香さんの中に美意識みたいなものが強くあるような気がします。「こういう自分は許せない」とか、「こういうスタンスはダサいよね」とか。その美意識に沿って「中学生の時から素直に突き進んでいるんだな」と思いながら聞いていました。
島田:あ、でも、中学でいじめにあうまでは、自分が嫌な思いをしても、みんながいいんだったらいいというタイプだったの。一瞬よく聞こえるけど、実際は自分を裏切っていて、自分を大切にしていない。偽善者なわけですよね。「そうじゃないんだ」って爆発したのが、中学生だったと思う。
平林:爆発という言葉が合い過ぎますね(笑)
平林:由香さんは今、ユニリーバで取締役に入られていますが、最初の段階から、ポジションも見据えていたんですか。
島田:全くそんなことはありません。キャリアって、ラテン語で「轍(わだち)」、馬車が通った後にできる道のことなんですよね。目指すものではないんです。だから、自分ができるのは、どっちに進むかを決めることだけ。どっちに行ったら得なんだろうとか、お金が稼げるんだろうとか、色んな判断軸があるけど、私はどっちがワクワクするかを判断基準にしていますね。
平林:本部長になるまでには、ワクワクする方向の決断としてはどんなものがあったんですか?
島田:例えば、27歳で留学したことです。「27歳で留学?」とか「会社を辞めずに休職したら?」とか、周りから色々言われましたけど、「会社を辞めて留学する」という自分がワクワクする選択をしましたね。
平林:すごいですね。新しいことを始める時に不安とかはないんですか?
島田:まだやってないことに対して、失敗したらどうしようって考えること自体がエネルギーと時間の無駄だと思っていて。成功する方しか考えてないですね、基本。
平林:そうなんですね。めちゃくちゃ面白いですね。
島田:そうは言っても、自分の人生を振り返ったときに、「どうしよう」ってなったこともちろんありますよ。1回は「取締役になります」って言われた時。もう1回は最近で、行政改革推進会議っていう政府の会議のメンバーにというお話をいただいた時です。
チャンス!と思うポジティブな気持ちと、自分に務まるのか、人選ミスじゃなのかというネガティブな気持ちの両方が湧いてきました。
平林:一つひとつしっかりと向き合って積み重ねて来られたからこそ、新しい道が出来上がっていくというか、予期せぬチャンスというか機会が訪れているのかなと思いますが、ご本人は葛藤しておられたのですね。
聴いてくださっている皆さんも、程度は違えど、葛藤する時はあると思いますし、僕自身もありますけど、そういう時、由香さんはどういう風に自分と向き合われるんですか。
島田:不安に感じたり、二の足を踏んでしまったりするのは、「恐れ」から来るものなんですよね。だから、自分に恐れがあることをまずしっかり受け止めて、どんな恐れがあるんだろうと自問自答します。そこから「知識のない自分を恥ずかしいって思っているんだ」「呆れて見られた時の目が恐いんだ」とか、具体的にイメージして言語化しますね。
平林:漠然と何か恐い、何か不安だで終わらせずに、一個一個紐解いているんですね。確かに明確にすると、楽になる気がします。
島田:そうなんですよね。具体化すると、「あれ?別によくね」とか、「すいません、私の専門ここなんで」って言えばいいじゃんと思えてくるんですよね。今回の行革推進会議の6人のメンバーには、それぞれの分野があるんだろうから6人でパフォーマンス出せばいいやと思えたら、気が楽になりました。
平林:WAA (Work from Anywhere&Anytime)という取組みを含めて、由香さんもいろんな地域に行かれていますよね。地域にいる人たちとウェルビーイングがつながるところに可能性を秘めていると思っています。由香さんなりの地域との結びつきとウェルビーイングの関係性の辺りも、今日めちゃくちゃお聞きしたかったんです。
島田:日本が国力を高めるきっかけとなるのが、「働き方が変わること」と「地域」だと思っています。この二つのキーワードが、今の自分にとってはとても大切。
私は東京生まれ東京育ちで夏休みに田舎に行くとかがなくて。社会人になってからも、日本という国土のことを知ろうという意識がなかったの。もちろん、馬鹿にしていたわけではなくて、単に興味がなかったんですよね。それが6.7年前にある方に誘われて、その方のゆかりの地域に行ったことから意識がすごく変わりました。日本ってこんなに綺麗なんだってびっくりしたし、空気が美味しくて、お水が美味しくて、ご飯が美味しくて。
その時に衝撃だったことが二つあって、その一つが、一次産業やばいってこと。もう一つは生きるエネルギーを持っている地域の人たちに触れたこと。その地域の人たちにひと言でポジティブな影響を与える人がいるのを見て、リーダーシップ学びにアメリカに行っている場合じゃないよ、ここにあるじゃんって。魂に火がついたような気がして。組織云々の話じゃなくて、私たちは人間で、生きているんだよ!みたいな。それがきっかけで、地域に行くようになりました。
平林:それはめちゃくちゃわかりますね、本当に。そこから始められて、WAAの方は、今何名くらいいらっしゃるんですか?
島田:Facebookグループに「いいね」してくれている人が、2,100人くらいかな。
平林:共感して活動してくださる人たちが、それだけたくさんいるというのは、地域の人たちにとっても希望ですよね。
島田:2,100人の全員が地域のことをやりたい人ではないとしてもね。例えば、福岡県のうきは市では、チームWAAというコミュニティで2年間かけてワーケーション施設をみんなで作っていたり、どんなことがあるとうきは市に人が来てくれるかをみんなで考えたりしました。その活動を通じて、地域の方や行政の方と仲良くなって、プロジェクトが終わっても会いに行くんですよね。
平林:最高ですね。
島田:会いたくて会いに行く。「あの人に会いたい」「あの景色を見たい」「あれが食べたい」というところがいっぱい増えてきて、縁とゆかりはつくるものなんだって感じていますね。
平林:たくさん質問してしまったんですが、最後にもう一つだけどうしても由香さんに聞きたいことがありまして。今後の野望というか、まだ手をつけていないけど、こういうことをやっていきたいというものがあれば、それをお聞きしたいです。
島田:全ての人が笑顔で自分らしく生きる、自分の人生って豊かだなと思っている人で埋め尽くすことをやりたいのね。そのための手段は色々あるから、これからやっていきたいこともたくさんあります。定年を無くしたいとか、副業を盛んにするとか、色々あるけど、中でも、地域の人と都会の人が接点を持つ仕組み作りをコロナが収束したらビューって加速させたいですね。
平林:由香さんは教育にも興味あると思いますが、どこかのタイミングでやり出したりしないんですか?
島田:教育は本当に大事なことだと思っているから、興味ありますよ。「トビタテ留学JAPAN」を立ち上げる時には、求める人物像の言語化や選考プロセスなどに関わっていましたしね。
「教育」と一言に言ってもいろんな側面がある中で、私がやりたいと思っていることは二つあって。一つはずっとやってきているキャリア教育。もう一つはデュアルスクール。ワーケーションを推進すればするほど、デュアルスクールをもっとスムーズにやれるようにするべきだと思うようになりました。関わっている地域ごとに少しずつやり始めているところだけど、パーっと広げたいですね。
平林:拠点を移すとなった時に障害になるのがお子さんの学校ですよね。それは大事なことだから全力で応援しますね。
島田:平林さんがやっていらっしゃるこの活動も、すごく熱い方たち、本気でやっている人たちじゃないですか。そういう人たちがつながっていくのは凄いことだと思います。
平林:すごいパワーが生まれますよね。
島田:すごい爆発だね。
平林:今日のキーワードは爆発で(笑)
Editor's Note
SUMMIT by WHERE、SHARE by WHERE で島田さんのお話をうかがい、すっかりファンになってしまいました。他媒体の働き方関連の記事で、島田さんの活動を何度か取り上げさせていただいてもいます。
今回は、島田さん通だと思っていた私も初耳のエピソードが盛り沢山でした。参加者の中には涙を拭う姿も。オフレコのQ&A部分では、地域とウェルビーイングに関する更に熱いトークが展開されました。
島田さんの「爆発だね」の言葉通り、立ち上げ以来、エネルギー全開で突っ走っている印象の『LOCAL LETTER MEMBERSHIP』。ここから何が生まれるのか、楽しみでなりません。
FUSAKO HIRABAYASHI
ひらばやし ふさこ