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※こちらの記事は、パーソルイノベーション株式会社「lotsful」主催のオンラインイベント「副業人材と大田区が挑む!地域活性化プロジェクトの軌跡とこれから」をレポートにしています。
東京都23区の中で最大の面積を持ち、都内最多の商店街が存在する大田区。
地域の顔とも言える商店街も、コロナ禍で打撃を受けました。
そうしたなかで大田区は、副業人材を活用し大田区商店街の組織力を強化する取り組みを行いました。
今回の記事では、大田区における副業人材活用のきっかけや体験談をお届けします。
佐久間氏(司会、以下敬称略):lotsfulでは各法人様のプロジェクトのサポートをメインに担当しております。まずはモデレーターの浦上さん、自己紹介とlotsfulのご紹介をお願いします。
浦上氏(モデレーター、以下敬称略):モデレーターを務めさせていただきます。lotsfulでconsulting&salesグループのマネージャーを担当しております。
lotsfulはパーソルグループの新規事業として立ち上がった副業人材マッチングサービスとなっております。「可能性を広げる体験機会を提供し、主体的なエネルギーあふれる人と組織を創る」というミッションを掲げて運営しております。
浦上:2030年までに人手が644万人不足するというデータも出ている通り、人材不足が今後さらに深刻化していくと言われています。より柔軟な人材活用の手法が求められてきて、その代表例である副業を希望する個人の方が非常に増えてきています。
lotsfulでは現職でも成果を出され評価されている方に、「何か新しいことにチャレンジしたい」「転職にはまだハードルがある」という方に多くの登録をいただいています。
そのような個人の方と企業様や団体様をマッチングすることで、お互いが成長できるようなサイクルをつくっていく「キャリア副業」を実現していきたいというところから、lotsfulの立ち上げに至りました。
lotsfulはビジネスサイド・ハイスキル層に特化した現役社員の方を、副業という形で企業様や団体様にお繋ぎしています。転職市場だとなかなか出会えないようなスキル・ノウハウを持った方々を、lotsfulが間に入るような形でマッチングさせていただいております。
佐久間:浦上さん、ご紹介ありがとうございます。
それでは次に、本日のご登壇者様お2人の自己紹介と、事業やプロジェクトのご説明をお願いいたします。
吉原氏(以下敬称略):大田区産業経済部産業振興課で商業振興の担当として、商店街支援を担当しております。本日はよろしくお願いします。
河野氏(以下敬称略):大田区の商店街連合会事務局長をしております。 普段は区内に140ほどある商店街の組織開発や業務改革を推進する仕事をしております。
浦上:2021年度から副業人材活用をしていただいておりますが、簡単に取り組みについてお伺いできますでしょうか。
吉原:lotsfulさんには今年含め3年間お世話になり、毎年試行錯誤を重ねてきました。
2021年の第1弾は、連合会と副業の方がタッグを組むような形で、商店街の現状分析をしていただきました。分析した結果をもとにその後の支援方針を策定したり施策の方向性を決めたりと、非常に大事な年だったなと感じています。
初年度の現状分析から見えてきたものとして、PRや広報の領域になかなか手が回っていないということがありました。
その結果を踏まえ2022年の第2弾は、商店街が抱えているイベント活動の広報や、清掃活動、見守り活動などの日々行っている商店街の活動をもっと知ってもらうためのPRのモデルづくりに注力しました。
商店街の若手の育成の観点でも、若手がイベントを手掛けてみるグループにも副業の方に入っていただき、メンター的役割で支援をしていただきました。
2023年の第3弾は現在はじまって1ヶ月ほどですが、昨年と同じく商店街もしくはその会員である個店さんのマーケティングやプロモーションの強化のため副業の方に入っていただいています。
オンラインツールを駆使しながら若手の方とマンツーマンのような形で、SNSの基礎知識のレクチャーや運用を伴走してもらっております。
河野:2年目は商店街の個店さん複数人対副業者さん1人で合同ミーティングの形をとっていて、副業の方の工数が時間の調整に取られてしまったのが少しもったいなかったということもありました。
3年目は1対1の形に直してみて今のところ1ヶ月間うまくいっているなと感じています。
吉原:副業者に来ていただく前は、商店街の課題についてはなんとなく肌感覚で見えてはいたんですけれども、定量的なエビデンスに基づいて「これが課題だ」というものが見える化できたのが大きい収穫でした。
商店街の運営は、一般企業に比べまだまだ属人的でありアナログ的な運営が現状としてあります。本来はやるべきだが手が回っていない業務があり、その1つに広報やPR、マーケティング周りのことになかなか手が回っていないということが見えてきました。
後継者不足についても、商店街から「人手がいない」「若手がいない」とお伺いすることは多々あったんです。けれども、後継者を育てるアクションがなかなか取れていなかったり、“人材育成”がタスクとして明確になっていないことも分析結果から改めて把握することができました。
そういった現状把握と分析を踏まえて、まずは「運営業務を効率化すること」、そして「人材育成の体制をつくること」を、区の支援方針として改めて打ち立て直しました。
業務の効率化が進むことで余力が生まれ、新しい活動やクリエイティブな活動など、より生産的で前向きなことに商店街の生産的なリソースを使えるようになることが狙いとしてあります。
最終的には区の目的に掲げている「商店街の活性化」や「地域の活性化」「地域コミュニティの強化」に繋がると思っています。
浦上:商品のPRや後継者の育成などは、やらないといけないとわかっているものの、普段の業務に忙殺されて後ろ回しになってしまうみたいなことがよくあると思います。
『「緊急性は高くないが重要な業務」を副業人材に任せるとかなり助かる』というお声も実際に活用してくださっている方からいただいているので、まさにそのような課題感にヒットしたのかなと思いました。
浦上: 副業人材の受け入れを継続されている理由についてお聞かせください。
吉原:先ほど今までの経緯についてはお話しましたが、3年間続けているなかで実はまだ「こういうやり方が正しいよね」ということが見出せていないということが率直なところです。
商店街と副業者をマッチングすることについては今のところ効果が出ているので続けていきたいと考えています。ですがここ3年間やり方をその時々で変えているところもあり、現在も試験的に進めているプロジェクトの1つと位置づけています。
浦上:今も検証中ということですが、最初の段階で「副業人材でやってみよう」とか、「lotsfulでやってみよう」と思っていただいた理由は何かありますでしょうか。
吉原:商店街への行政の支援策は、補助金で助成をさせていただくなどいくつかパターンが決まっていますが、新しい別の支援の手法が何かないかと模索をしていました。
専門家を商店街に派遣して、一緒に伴走しながら悩みを解決していく制度もあるにはあるのですが、概念的なレクチャーで終わってしまったり、課題を持っている商店街と制度がフィットしないという現実もあるのかなと感じていて。
元々副業という形に個人的にも興味がありましたが、コロナを経て、いよいよ「商店街への支援の形をスピーディーに抜本的にやっていかないと立ち行かない」と思い、副業という仕組みを思い切って使ってみたことがきっかけでした。
河野:連合会としては、大企業の最前線で活躍してる人材のノウハウを吸収できることにも魅力を感じましたし、公募型のプロジェクトなので副業人材の熱量や向上心なども期待していました。
副業人材のマッチングに関するプラットフォームはいくつかありますが、一番深く業務理解をいただけたと感じ、lotsfulさんにお願いさせていただくという経緯がありました。
浦上:大変嬉しいです。ありがとうございます。
前編では、大田区での副業人材活用をはじめたきっかけや、3年間の歩みについてお届けしました。後編では、副業人材を受け入れる時のポイントや実際に活用して得られた気づいたこと、理想の副業人材像などに迫ります。
lotsfulサイトに掲載されているセミナーレポートはこちら。
Editor's Note
課題にピンポイントで副業者が関わることで、受け入れ側はもちろん助かるし、副業者も本業とは別の形で刺激をもらえるなど、相互にとって嬉しい支援の形なのだろうなと感じました。
SAKI SHIMOHIRA
下平 咲貴