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LOCAL LETTER

【後編】まだ何者かじゃなくたっていい。未知だからおもしろい、地域でのキャリア

JAN. 29

ZENKOKU

拝啓、地域で活躍したいけれど踏み出すのはまだ早い、と思っているアナタへ

※本レポートは、イベント「ひと・ちいきEXPO」のTalk Session1「私たちは地域にどう関わるのか?地域課題とキャリアの行く末」を記事にしています。

「今、地域に飛び込んでいって、自分にできることはあるのだろうか」

地域の活動に興味を持ちつつも、今の自分に何ができるのか確信が持てない——。

新しい挑戦に不安はつきものですが、試しに動いてみたら案外、道が開けるかもしれません。

前編では、それぞれの地域との出会い、事業の生まれた経緯を語っていただきました。後編では、地域で働くことについて、活躍する人はどんな人なのか、具体的に探っていきます。

前編はこちらから

あとに続こう。地域で出会う仕事のリアル

平林氏(モデレーター、以下敬称略):実際に地域では、どんな人が活躍している印象ですか?逆にマッチしないケースもあるのでしょうか?

平林 和樹氏 株式会社WHERE・代表取締役/ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社 CRAZY を経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディア「LOCAL LETTER」、地域経済サミット「SHARE by WHERE」、ローカルxキャリア開発の「ACADEMY」事業など地域、業界を超えた共創による人づくりに邁進中。内閣府地域活性化伝道師、地方創生SDGs課題解決モデル都市専門家、総務省地域力創造アドバイザー、ふじよしだ定住促進センター理事。

中島氏(以下敬称略):人材のマッチングはお互い様なので、受け入れ側もしっかりしないといけないと思います。うまくいっている話でいうと、僕はクラウドファンディングのプロジェクト支援で社員と一緒に全国を回る機会が多いのですが、その地域で頑張っているコミュニティに入って一緒に活動するうちに、そのまま移住する社員が増えています。

最初に地域と接点を持ったときに、充実した経験ができたり、この人と一緒に何かやってみたいという気持ちになれると、その後も楽しんで取り組める人が多いように思えます。初めはプライベートの時間でつながったり副業で関わったり。空いた時間で手伝えることを手伝った結果、仕事につながっているという印象です。

社員たちは「移住を決めました」と事後報告で教えてくれることも多いです。

中島 真氏 株式会社CAMPFIRE・代表取締役/アクセンチュア、ディー・エヌ・エー、リブセンス取締役などを経て、2018年3月CAMPFIRE取締役に就任し、2024年11月代表取締役CEO就任。ギフティ社外取締役、Inspire High社外取締役、公益財団法人Soil理事、社会変革推進財団理事等。

平林:事後報告なんですね(笑)西塔さんからも、地域の仕事事情について伺えますか?

西塔氏(以下敬称略):仕事はたくさんあります。人事の専門部署を持たない中小企業がハローワークやネット上に求人を載せていないだけで、事業者さんにアンケートをとると6割以上が人手が足りないと言います。給料は東京と同じようにとはいきませんが、皆さんダブルワーク、トリプルワークをされています。

地域おこし協力隊員を卒業して起業している人は少数派で、地域に残った人の7割以上が就職しています。その上で副業もしているのですが、副業の部分だけを切り取ると、みんな起業して生計を立てているかのように見えてしまいますね。

さらに地域に残る方の就職先の半数以上は公的機関です。市役所、農協、漁協など。比較的安定した働き方を選びやすい職場が選ばれています。

西塔 大海氏 合作株式会社・取締役副社長/地域おこし協力隊制度・地域プロマネ制度設計の専門家。総務省委嘱アドバイザー、内閣府専門委員、大学研究所員。震災復興起業や協力隊経験をもとに自治体と人材育成を支援。

平林:不安があって踏み出せない人は、働ける場がたくさんあると聞くと少し安心できそうですね。

応援し応援される、模索のあとについてくるキャリア

西塔:協力隊に向いている人は、やりたいことがはっきりしていない人です。これと決まっているなら、それに合った支援制度で起業した方が早いように思います。地域の皆さんが一生懸命に取り組んでいることをお手伝いできる時間があるのが、協力隊の魅力です。

自分にできることやしたいことに少しずつ気がついていく中で「ちょっとうちで働いてくれない?」と向こうからオファーが来ます。3年間、地域を応援しきると自分が応援してもらえる存在になります。

全国で成功事例と言われてテレビに出ているような人は、意志が強くて起業している人が多い。その影響か、「やりたいことが決まっていないと協力隊になれない」と誤解されています。じわじわと信頼を得ていって、地域で働きながらお祭りや消防団の担い手にもなっている、メディアに一切出てこないけど幸せそうに暮らしている人はいっぱいいますよ。

平林:うちもメディアを運営しているのでちょっと責任を感じました。たとえ目立っていなくても、日々の仕事や暮らしの中で地域を元気づけている人たちも取り上げていかないと、ですね。何者かじゃないと地域おこし協力隊になれないようなイメージもあるけれど、そうではなく、自分にできることを模索している人がいいんだと。

西塔:何者かである、例えばマーケッターだからそのスキルだけで貢献しようと思っていると、高すぎるスキルと地域の現状が噛み合わないことがあります。マーケッターであっても「草刈りでも何でもやります」みたいな人はうまくいくと思いますが。

尾田氏(以下敬称略):高校生も一緒です。都会の中学生は、便利で快適な環境に暮らす一方で、画一的な価値観で評価され続けて、偏差値が高くないと何者にもなれないと思っている子が多いです。地域みらい留学には自分らしさを求めて行くとか、やりたいことを探しに行く子がほとんどです。

強い意志を初めから持っている子もいますが、「やりたいことがまだ決まっていない人たちが合う」という先ほどのお話と重なるものがあります。地域に支えられ見守られることで、自分はこのままでも受け入れてもらえる、という感覚をもって頑張ることができる。

尾田 洋平氏 一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム・専務理事/島根県浜田市出身。大阪大学大学院工学研究科修了。2011年(株)リクルート入社。観光情報「じゃらん」の中国エリアの責任者などを歴任し、2018年より地域・教育魅力化プラットフォームに入職。常務理事・事務局長を経て、現在は専務理事として、全国約170校が参画し、累計で4,000人を輩出した、都会から地方の高校への進学を促進する「地域みらい留学」の総責任者として事業を牽引している。

平林:地域には寛容性、受け入れる余白みたいなものがあるんでしょうか。

西塔:高校生に対しては寛容だと思いますが、これが大人となると地域によるかもしれません。例えば冬の厳しい寒さを乗り越えなくてはならない地域だと、どうしても内と外を分ける意識が生まれて、警戒心がでてしまう。でもそこに、上から目線ではなく「何でも手伝います」という姿勢で入っていくことで受け入れてもらえるのだと思います。

平林:何事も早くやるのがいい、という傾向とは違った、スピードの許容感がある気がします。

西塔:都会で四半期で成果を上げなきゃならないような仕事と、地方の50年100年スパンで見ている林業などは、そもそもの視点が違いますそこにギアチェンジできるかどうかは、やってみないとわからないですね。

何をポイントに選ぶ?選択肢を並べて見えてくる地域との相性

中島:尾田さんにお聞きしたいのですが、親の立場から子どもの選択肢として考えるときのために、地域みらい留学のいいところとデメリットみたいな部分もあれば教えてください。

尾田:ありがとうございます。競争社会の閉塞感や「自分の力が足りていないんじゃないか」という劣等感のようなものから一歩離れて、自己決定や失敗も含めて地域で認められる経験ができること。またその経験を通して自分軸、やりたいことが見つけられるのが地域みらい留学のいいところだと思っています。

デメリットがあるとすれば、都市部と同じ受験環境ではないので、難関大学に行くと決めている子には向いていないかもしれません。留学先の高校では1学年の人数が平均で60人ぐらい。大規模校だからこそできる学園生活みたいなものは味わえなかったり、都会の価値観に触れることもできませんね。

平林:地域にある仕事をどう選び、自身のキャリアにつなげていけるでしょうか。

西塔:例えば20万人のまちと5000人のまちでは、できる暮らしと仕事の選択肢は全く違います。何度か通って実際に仕事を探してみるということをしないとイメージしにくいものです。

最初から一生住もうという勢いでポンと行くより、いくつか地域を巡って暮らしてみるのが安全な移住先探しだと思います。CAMPFIREさんのような会社で働きながらとか、子どもが地域留学した先で見つけたりとか。合わなかったらやめられる選択肢をもちながら、探すのがいいと思います。

中島:そのまちが醸し出す空気感とか匂い、食べものが合う合わないっていうのもありますよね。

西塔:1か所で決めずに5か所ぐらい行ってみて、相対的にここがいい、と言えることもあると思います。食なのか気温なのか、自分の重視するものがわかるのも大事です。

尾田:地域みらい留学の子に「この高校をなぜ選んだか?」とアンケートをとると、カリキュラムで選ぶのは5位ぐらい。多いのは地域の空気感や、お試しで行ったときに山が綺麗だったとか、ブース出展していた在校生に憧れたといったセレンディピティみたいなものなんです。

平林:実際に行ってみて比較して、相性が感じられるといいですね。一方、給料については、都市部より下がるというお話もありました。

西塔:そうですね。ただ、生活コストなども含めて考える必要があって、都市部と単純な比較はできないと感じています。過疎化した集落でも生きていく、稼ぐ余地はあります。例えば東京でイラストが描けるといっても同業者は何万人もいる。でも人口1万人のまちなら絵を描く人がそもそも少ないため、意外と仕事があるかもしれない、とか。

平林:確かに。

中島:うちは全国採用でやっているので、東京で採用して移住する人もいますし、地域での採用者も増えています。採用地で給料が変わることはありません。

地域での暮らしは、金銭面も大事ですが人と知り合うことがセーフティーネットになると思います。誰かひとりでも頼れる人、次に会ったときに声をかけられる人を見つけてほしいですね。

東京の仕事をリモートでやりながら地域で暮らすこともできます。その地域をこれから好きになれそうという気持ちを大事にしていくのもいいと思います。

西塔:最初は海がいいな、島がいいな、といった漠然とした暮らしのイメージでもいいと思います。行ってみて、先に移住した人やキーマンになる人を紹介してもらって話を聞いてみるといいです。

失敗も経験値、行動の先にある可能性を見つけに

平林:会場の参加者さんから質問をいただいています。

質問者:今大学生で、周りでは官僚を目指す人もいて、何者かにならなきゃ生きていけないような雰囲気があります。先ほどのお話と真逆なんですが、その中でどう過ごしていくのがいいか、ヒントをいただきたいです。

西塔:自分も同じような立場でしたが、地域では学歴があってもむしろジャマなくらいでした(笑)ただ、物理学をやっていてよかったと思っています。地域課題に対して皆さんは起きている現象に目を向けるんですが、物理学では現象の奥にある本質的な構造みたいなものを見つけ出し、定式化できるかを考えていくんです。

地域の課題解決ってとても難しいので、この思考をしてきたことが直接的な知識としてではなく、ものの考え方として役に立っています。学問をやると役に立つので、ちゃんと大学の勉強はしておいたらいいと思います。それから官僚になる人とは是非、つながっておいてはどうでしょう。

中島:何者かになりたい、何かに貢献したいと思うこと自体はいいことだと思います。周りにもそういう人が多いのなら、巻き込んで今からネットワークのようなつながりを作っておくことは、後で自分たちを助けてくれるのではないかと思います。

平林:最後に、地域で何かやりたい人、地域の活動を応援したい人に向けて、応援メッセージをいただけますか。

中島:僕は単純に地域がすごく好きです。それぞれ個性があって全部知りたくなる、僕にとって自分を豊かにしてくれるものです。皆さんにとってのそういう場所を見つけてほしいと思います。

それから、地域をよくしていこうと思う人たち同士、もっとつながっていくべきだと思っています。自分の活動で精いっぱいのところもあるとは思いますが、定期的にもうちょっと広く別の地域にも目を向けて、関係性をアップデートしていけたら、さらに地域がよくなると思っています。

西塔:ローカルキャリアを考える皆さんは不安があると思います。このまま東京で働いていくと想像できる未来がある。地域に行ってからの未来はわからないから不安になる。それは当然で、体験してみないとわからないものです。

失敗もあると思います。お試しで地域に行ったとして、正直思っていたのと違ったという可能性も9割あります。ただ、わからないことがわかることは人生の楽しさだと思うんです。僕も限界集落で15年暮らしていますが、めちゃくちゃ楽しいです。興味を持ったなら、合うかどうかはやってみて体感していただきたいと思います。

尾田:最近、日本って狭いけど広いなと感じています。私は年間200〜250日ぐらい出張するんですが、北海道から沖縄まで、空気感も人も食べ物も全部違います。

私たちは高校生に対して選択肢を作っていますが、各地域にはいろいろな選択肢があります。必ずおもしろい地域、自分に合った地域があると思います。行動したら可能性は広がっていきます。一歩を踏み出してみて、ダメだったら戻ってきたらいいんです。

 

Editor's Note

編集後記

もし「何者かにならないといけない」と肩に力が入りすぎているなら、いったんゆるめてもいいんですね。会いたいから行ってみよう、求められたらこたえてみよう、とシンプルに考えたら、地域でのキャリアも人生も、想像以上に可能性が広がりそうです。

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