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※本レポートは、株式会社WHEREが主催する『ひと・ちいきEXPO』でのトークセッション3「“小さな実験”から地域は変わる―共創まちづくりのプロトタイピング論」を記事にしています。
地域により深く関わってみたいと思ったとき、「実際に何をしたらいいのか」「なにができるのか」を、パッと思いつく人はそう多くないのではないでしょうか。
人口減少、財政縮小、担い手不足などにより、これまで行政が担ってきた地域の多くの役割は限界を迎えつつあります。今、地域の持続可能性を左右する重要なテーマとして浮上しているのが、お金・もの・場所・スキル・役割をシェアする『共助』の仕組みです。
今回は、共助経済の実践者4名が「小さな実験(プロトタイピング)」を通じて地域を動かしてきた現場のリアルをもとに、共創するまちづくりについて語りました。
平林氏(モデレーター、以下敬称略):今回は「お金・資産・役割をシェアする時代のまちづくり 〜共助経済で地域はどう変わるのか〜」をテーマにお話していきたいと思います。はじめに、みなさんそれぞれ簡単に自己紹介いただいてもよろしいですか?

矢ヶ部氏(以下、敬称略):公共R不動産研究所 所長の矢ヶ部と申します。
まち全体にいろいろな関わり方をさせていただいているのですが、なかでも強く感じているのが、学校や公民館、公園、道路といった行政が扱っている公共不動産の使われ方です。その使われ方が変わることで、まちの風景や人の動きが変わっていく。だからこそ、公共不動産の使われ方を見直し、更新していくことが、僕自身が目指していることです。
一例として、現在廃校となる学校はおおむね1日1校のペースで生まれているとも言われています。廃校になることで、まちに使われない不動産が増えてしまう。壊すのも切ないし、かといって使うのも難しい。そのような公共不動産を「どうしていったらいいんだろう」「どんな新しい使われ方があるんだろう」と、メディアとして取材して紹介したり、行政との間に立ってコンサルティングをさせていただいたりしています。

菅野氏(以下、敬称略):株式会社全力優、代表の菅野と申します。私自身は公務員を経験した後に、ベンチャーキャピタルにキャリアチェンジし、その時の同僚と立ち上げた会社が『全力優』です。
自治体から依頼がされたお仕事を、事業委託として私たちが引き受け、地域の創業者の育成や誘致を行っています。他には、『首長マガジン』という自治体のトップだけを読者対象にした媒体の運営もしています。

石山氏(以下、敬称略):さまざまな場でのシェアを普及させるための活動を行う『シェアリングエコノミー協会』の代表理事をしている、石山です。
まちづくりの観点で言うと、『シェアリングシティ』という概念があります。これは日本発ではなく海外発の考え方です。韓国のソウル市、オランダのアムステルダム市、スペイン、イタリアといった場所で、2012年ぐらいから行政から始まった概念です。
それを日本に持ってくるために政府にロビー活動を行い、『シェアリングシティ』を進めてきました。今では、約210自治体が加盟し、どんどん各地に広がっています。

石山:日本においては都市よりも地方のほうが人口が減っています。人口が減っていくと、自治体としては税収が減っていく。税収が減っていくと地域の公共インフラや公共サービスをこれまでと同じように維持していくのが難しくなります。
一方で、『共助』の考え方は小さくなってしまっています。市民同士がおすそ分けし合っていたような、今は薄れてしまった「共に助け合う仕組み」をシェアリングエコノミーによって広げていくことで、下火になりつつある公助を共助で補完していきたい。そんな思いで、日本で活動をしています。
平林:みなさんアプローチは異なるものの、何かしらシェアをしていたり共助を促進するような働き方をされています。今感じている良さや手応えがあれば教えていただけますか?
矢ヶ部:少しイメージしやすくするために、道路と公園の話をしたいと思います。
まずは道路の話で、道は基本的に通行するためのものなので、勝手に椅子やテーブルを出して「なんか気分がいいなぁ」なんてできない空間なんです。だけどコロナ禍でお店の中ではなかなか飲食できない時、少し屋外空間を使うことを許可する形で飲食店支援をしようという動きがありました。
コロナ禍をきっかけに屋外空間の活用が進み、その後も『歩行者利便増進道路(ほこみち)』など、一定のルールのもとで道路空間を使いやすくするしくみが整ってきましたね。
こういった話をする時に大事なのは、市民側が単なる利用者でいるのではなく、ちょっと一歩踏み込んで、その使い方を一緒に考え、責任を分担できる形をつくることだと思うんですね。例えば団体を作ることもその一つです。

矢ヶ部:今の公園は、禁止事項がとても多いんですよ。フリスビーだめ、サッカーだめ、スケボーだめ、そのうち歌を歌うのもだめなんて場所も出て来るかもしれません(笑)うるさくすると周りの人の迷惑になるからと、子どもが遊んでいると「静かにしてほしい」みたいな話になったりとか。
平林:もはや「公園とは」みたいな感じですね。
矢ヶ部:そうなんです。でも、使われていない公園って逆に怖いじゃないですか。寂しい、薄暗いしみたいな。それなら、むしろ「使ってもらったほうがいいよね」と思うんです。これも、単に行政に要望をぶつければいいという話ではなく、「こういうふうに使いたい」と市民の側でまとめて伝えていくことで使われ方が変わっていくと考えています。
平林:具体的な地域の例などはありますか?
矢ヶ部:消滅可能性都市の話が最初に出たとき、東京23区のなかで豊島区が消滅可能性都市に挙げられたんですよ。それをきっかけに区が奮起して、消滅可能性都市から脱するどころか、住みたいまちランキングで上位になった事例があります。
これは『豊島区が頑張った』というだけのエピソードではありません。
いろいろ要因はありますが、「マイナスなイメージでまちが覆われるのは良くないな、嫌だな」と思った、豊島区に住む様々なプレイヤーたちが、「自分のまちだから」とまちの運営に主体的に関わったことも大きいと思います。

平林:『能動性を引き出す』ことが1つのポイントなんですかね。
矢ヶ部:そうですね。豊島区には「としま会議」というのを開催している方がいるんです。3人くらいのゲストを呼んで、話して、その後ただ飲み食いするようなことをしていたんですよね。
繰り返すうちに、豊島区にはプレイヤーリストのようなものができていったんです。
今度公園がなんかこう変わるらしいぞ、変えるんだったら自分たちで関わりたいよねとなった時に、「あ、としま会議で会ったあの人がいる」と連絡を取りあえることで、市民側、住民側、民間側のチームができたという話を聞きました。
一緒にやれる誰かがいるかどうかが、いざコトを起こす時にありがたいのかなと思います。
平林:石山さんはさまざまな地域を見ていらっしゃると思います。実際にシェアリングシティを実装されはじめている地域で起きていることや、「これ面白いな」と思う事例のお話を聞いても良いですか?
石山:都市におけるまちづくりは、地方とは違うのかもしれないと今の矢ヶ部さんのお話を伺って思いました。私自身は現在、住民票が渋谷区にあるのですが、何年か住んでみても、いわゆるシビックプライドのような感覚は、まだ強くは生まれていません。「自分が渋谷に貢献しよう」という気持ちってなかなか湧きにくいんです。
これは私自身の実感でもありますが、都市では企業や行政のサービスを「利用者」や「お客様」として受け取っている人が多いと感じています。
まちに何か自分がするとか、自分たちで作っている感覚をもちにくいというのが、都市の現状としてあります。そして、これを解決するのがシェアの考え方だと捉えています。
これまで行政と企業から一方向型で受けることしかできなかった「まちづくり」ですが、近年はむしろ都市部の市民が自分のアセットを観光やまちの資源として活かすことができるようになりました。
このような、まちづくりに参画できる機会をいかに作れるかが、やはり都市部では必要なことだと思っています。

石山:個人もまちに還元できる資源をたくさん持っているのに、意外とそれに気が付いていないんですよね。
子育てを例に挙げると、家事代行がだんだん普及するにつれて、家事をサービスとしてお金を払い、お願いしようという文脈が広がってきました。
一方で、例えば同じマンションのお母さんたちがコミュニティとなって、昔のようにおすそ分けの精神で子どもを預け合えたら、外部の育児サービスに頼る必要はないのかもしれない。
でも現実としてそうなっていないのは、お願いするのが申し訳ないという意識があるからだと思うんです。地域の人や周りにお願いすることに慣れておらず、他所の子どもを一時的に預かるような経験もしたことがない世代が親になってしまっている背景もあります。
自宅で他の子どもを預かってもいいけど、それで責任は取りたくない。だったらお金払ってでも、そこでリスクヘッジした方がいいと考えてしまう。
結局は、市民側がサービスとしてまちに住み続けた結果、消費者意識になってしまっている。この消費者意識を、どうやって自分の資源を誰かにシェアする発想に転換していくのかが、相当難しいことではあるけれど重要だと考えています。
Editor's Note
防災の文脈で語られることの多い『共助』という言葉。その重要性は理解しつつも、なかなか自分事として捉えるのは、現代の私たちにとって難しいことのように思います。立場に関わらず1人の住民として地域に貢献できる関わり方の視野を広げる貴重な機会となりました。
MIKI KOYAMA
小山 美樹