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LOCAL LETTER

【後編】責任と共感を『シェア』する。持続可能な共創まちづくりの実践論

MAR. 04

ZENKOKU

拝啓、共助経済の考え方で地域をより良くしたいアナタへ

※本レポートは、株式会社WHEREが主催する『ひと・ちいきEXPO』でのトークセッション3「“小さな実験”から地域は変わる―共創まちづくりのプロトタイピング論」を記事にしています。

近年関心が集まる、共助経済という言葉。

しかし、制度論や理想論として語られることが多く、それを社会実装することや取り組みを継続していくことには大きなハードルがあるように思います。

今回は、共助経済の実践者4名が「小さな実験(プロトタイピング)」を通じて地域を動かしてきた現場のリアルをもとに、共創するまちづくりを語ります。

前編では、『シェア』や『共助』の考え方で広がる地域への関わりしろについてお届けしました。

立場の違いを越えて、責任もお金も『シェア』しよう

平林氏(モデレーター、以下敬称略):取り組み自体は良いという声があっても、新しい価値観として受け取られたり、「責任やリスクは誰が負うのか」「お金は誰が出すのか」といった点で実装が難しくなるケースもあるかと思います。菅野さんはそのような時どうされていますか?

平林 和樹氏 株式会社WHERE・代表取締役/ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社 CRAZY を経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディア「LOCAL LETTER」、地域経済サミット「SHARE by WHERE」、ローカルxキャリア開発の「ACADEMY」事業など地域、業界を超えた共創による人づくりに邁進中。内閣府地域活性化伝道師、地方創生SDGs課題解決モデル都市専門家、総務省地域力創造アドバイザー、ふじよしだ定住促進センター理事。

菅野氏(以下、敬称略):創業支援のお仕事をさせていただくなかで、福島県の伊達市で『起業文化祭』という企画をやったことがあります。

市の大人たちが普段の仕事とは別に「本当は小さい頃からやりたかったこと」を起点に、学生時代の文化祭のようにワイワイとしながら、小さく収益も意識した企画を公民館を借りてやったんです。

これはすごくヒットした企画でした。出店側も満足度が非常に高くて、来場者もたくさん来てくれて、大満足のイベントではありました。

その一方で模擬店では火を使ってもいいのか」「お金のやりとりはどこで発生するのかなど、前例がないがゆえに自治体側もリスクを把握しづらく、挫折しかけたことがあったんです。そのときは受託者として当社が責任を引き受けることで企画は実現できました。

そのときに分かったのは、責任のシェアをすることが重要だということ。何かあったときに、行政だけにリスクが集中してしまうと途端に進めづらくなることを体感しました。官民で共に責任を負うことができるようになれば、物事はやりやすくなるような気がしています。

菅野 永 株式会社全力優・代表取締役 / 宮城県仙台市出身。東北大学農学部卒業。七十七銀行を経て、北海道庁に入庁し、道内市町村の行財政運営に携わる。15年から東北で起業支援や地方の産業振興に関わり、18年より自治体支援事業を行う(株)全力優の代表に就任。総務省地域力創造アドバイザー。

平林:矢ヶ部さんも実装する上で難しさを感じることはありますか?

矢ヶ部氏(以下、敬称略):『シェア』や『共助』の良さを訴えても、結局誰がやるのかと、その責任とお金の話が、どうしてもついてまわります。そうすると、「私がやります」と言う人がいればうまく回りますが、責任の押し付け合いになってしまうとストップすることになります。

僕は公共不動産の活用を生業の中心にしているので、「全部直すことは難しいから、老朽化が進んだ橋を閉じよう」なんて話をよく聞きます。

例えば橋のようなインフラでも、もともと行政が作った橋ではないこともあるんです。地域の力で整備されたものが、のちに行政の管理に移っていったというケースです。

矢ヶ部 慎一氏 公共R不動産研究所・所長 / 1976年生。東京在住、埼玉県小川町出身。1998年より再開発コンサルティング会社にて事業コーディネートや経営企画部門に従事。現在は独立し、公共R不動産/アフタヌーンソサエティ/東洋大学 国際PPP研究所/Public Pivotなど、「まち」に多軸的に関わる。主に「公民連携で『まち』を変える」—ビジョン・プロジェクト・プログラムづくり、リサーチ、軽やかな政策提言などを行う。

矢ヶ部:市民ベースで作ったものが、いつの間にか公共インフラとして行政が管理をするようになっている。それで「老朽化したからどうしよう」と議論にはなっても、行政には予算がない場合もあります。

「行政が何とかして」と言われる構図になりやすいのですが、地域のインフラを地域がどう支えられるかという問いからはじめてみてもいいのではないかと思います。

最初から完全に行政頼みということではなく、「お金が無いなら自分たちでちょっとずつ出し合えば、このくらいのことできるんじゃない?」と市民が中心となって進めている例もあったりするんですよ。

起点は、分かり合えなさ。『共感』の接点をつくる対話の方法

平林:共助経済を実装していく上で、行政と企業、民間、住民とがうまく噛み合っていくことが大事なのではと聞いていて思いました。それぞれの立場もあるなかで、共通認識の作り方や連携の仕方などはありますか?

矢ヶ部:『連携』と言うと、話し合えば連携できそうに思いますよね。同じ日本にいて同じ日本語を喋っているから、話せば通じると思ってしまうんですけど、立場が違えば価値観や文化も想像以上に大きく異なります。

違う文化圏で、何を良いと思うかも違う自分にとって「これが良いこと」と思ったものでも、相手に通じるとは限りません。異文化交流のように、分かり合えないことを前提にスタートした方がいいと思っています。

そしてお互い、責任の負い方やスピード感、何を求めているかなど、きちんと対話していくことが大切です。「あ、そこは引けないんだ」「ここはちょっと譲歩できるんだな」と違いを事細かにすり合わせていく必要があります。

逆に衝突してしまう時は、文化圏が違うことに気づかないまま「なんでこんなに伝わらないんだ」とお互いに噛み合わなくなっているときが多いように感じています。

平林:対話が大切なのですね。どのように進めていますか?

矢ヶ部:『小さくやってみる』ことからはじめています。会議のような場を持つことも、小さいスタートになり得ると思います。

また僕たちは公共空間を扱うなかで、「1日だけトライアルでやらせてもらえませんか」という提案をしています。行政の方にとって、ずっとその場所を使い続ける許可はできないけれど、1日だけであれば話を通しやすいことがある。暫定的なものほど進めやすいんです。

矢ヶ部:『トライアル』は、本当に一時的なもので終わってしまうことも多いです。それでも住民や民間企業にとっては公共施設をお試しで使ってみることができるし、行政側にとっても、実際に使ってもらうことで、どんな変化が起きるのかを確かめる機会ができる。今までとは違う使われ方をした空間がその1日で生まれるんです。

それを今度は他の人たちが目にして「面白そうだな」「こんな風景っていいな」と思ってもらえたら、そこから先の会話の仕方が変わっていくこともあります。

同じ出来事を共有することで、お互いの立場や事情を理解する共通体験をつくることが重要だと考えています。「やってよかったですね」「次はこれを一歩進める方法はないでしょうか」と、少しずつ対話を重ねていくようにしています。

平林:石山さんも日々いろんなバックグラウンドの方とコミュニケーションをとられていると思うのですが、対話で意識していることはありますか?

石山氏(以下、敬称略):今の共通体験の話に重ねると、肩書きなどに関わらず、一市民の視点でまず語れるものを作ることが大事だと思っています。お互いの利害ではなく「人としてそれ大事だよね」というところから、未来のあり方を共有することを大事にしています。

石山 アンジュ 一般社団法人シェアリングエコノミー協会・代表理事 / 1989年生まれ。シェアの概念に親しみながら育ち、シェアリングエコノミーを軸にライフスタイルと政策の両面から社会を変える活動に取り組む。2018年にPublic Meets Innovationを設立、拡張家族Cift家族代表も務める。テレビのコメンテーターとしても活動。デジタル庁伝道師。著書に『シェアライフ 新しい社会の新しい生き方』『多拠点ライフ』(共にクロスメディア・パブリッシング)。

石山:例えば、ライドシェアに対してマスメディアで否定的な意見が流れると、市政を担う側にも慎重、あるいは批判的なムードが広がってしまうことがあります。

しかし免許を返納した高齢者が移動手段がないために、「病院に行きたくても行けない」現状があります。とくに過疎地域では電車やバスも少ない。人手不足や高齢化を理由に事業を続けられず、タクシーがない地域もあります。

そうした状況を踏まえて、送れる人が無理のない範囲で送迎を担える仕組みがあったらどうか、という話をすると、それ自体に反対されることはほとんどありません。

石山:私が最初から「ライドシェアはこれから期待される成長産業なんです」とマーケットの話として説明していたら、受け取られ方はずいぶん異なっていたはずです。

一市民視点でどのような共感の接点を対話としてできるかをコミュニケーションの中で大切にしています。

アナタと社会との間に。持続可能な取り組みに必要な視点

平林:ここまでのお話を聞いていて、個人の思いだけでなく、組織や仕組みとして推進していくことが必要だと感じました。最後に、取り組みを持続させるうえで、大切にされていることを教えてください。

菅野:私が経営していくなかで一番大切にしているのは、「そこで長く続けられるのか」ということです。

いろんな地域での創業を見ていると、内省することが意外と大事なのかなと思っています。「自分は本当にこれがやりたいのか」のように。

これまでの制度や、仕組みがうまく機能しなくなった部分を立て直そうとすると、時間や労力もかかります。だからこそ「本当にこれをやりたいのか」を見極めることに時間をかけたほうがいいと思っていて。

時間はかかる前提で、じっくり少しずつ積み重ねていける道を最初に選ぶことが一番大事な気がします。究極、人生という軸でその課題と関わっていきたいかですかね。

平林:石山さんは持続可能にするために意識していることはありますか?

石山:あえて、どんなに小さなプロジェクトや個別の地域の話でも、いかに国レベルの社会問題と紐づけるのかが大事だと思っています。

「数百人、数千人のまちの課題を解決することが、ひいては日本が抱える社会問題を解決することにつながるんです」というように、いかに全体の問題として接続するか。

そうすることで、関わりしろを増やしたり、行政や民間だけの問題にせずにセクターを超えた応援を促進できるのではないかと考えています。どんなジャンルの小さな課題でも、消化していくと誰にでも自分事にできる接点があるはず。そのポイントは何か言葉を紡いで、ビジョンを対話していくことが大事だなと思います。

矢ヶ部:私の場合はまず自分が関われる地域はどこだろうという視点で考えています。個人的に関わっているのは、出身地である埼玉県小川町です。小川町に限らなくとも、埼玉に関わることであれば特に熱を込めて、少しリスクのあることも挑戦できるような気がして。だからこそ、関わる地域は選んで、そこでゆっくり関わりを広げていくことを大切にしています。

まずは「どういう方々がいるのか」地域の人と顔見知りになって、知ることからはじめてみる。道路や公園の活用の話も、この延長線上にあります。2拠点で活動していても、地域の人から認知されないとそこから先に進めないことがあります。地域から声がかかるようになることや、「また来たの」と言ってもらえるようになることが、基本的なスタートであるように思います。

Editor's Note

編集後記

小さな実験をすることが、関わる人全員にとっての共通体験となり、その後のコミュニケーションを変えていくというお話から、「まずやってみること」の重要性を感じました。よりリアルな地域との関わり方を学べる時間でした。

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