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LOCAL LETTER

【前編】ふるさと納税「後」を静かに見据える、地域商社の収益モデルと現在地

MAR. 10

ZENKOKU

拝啓、地域でお金が循環するビジネスを作りたいアナタへ

※本レポートは、イベント「ひと・ちいきEXPO」のTalk Session4「地域商社鼎談!ふるさと納税で注目を集める『地域商社』のインパクトと30年後の姿」を記事にしています。セッションの様子を前後編に分けてお届けします。

約1兆2,728億円*ー

これは、令和6年度におけるふるさと納税の受入額です。
*総務省MIC,自治税務局市町村税課,令和7年度実施,「ふるさと納税に関する現況調査結果」,https://www.soumu.go.jp/main_content/001022815.crdownload

巨大なマーケットへと成長したふるさと納税。その最前線で、ふるさと納税の中間事業に加えて、マーケティング、販路開拓などで地域を支援する地域商社。寄附額が増えることは、自治体だけでなく、地域商社にとっても大きなビジネスチャンスとなります。

ふるさと納税に依存しなくても、地域商社は存続できるのかー

その答えは、「地域のために」を考える人たちに、新たなきっかけを教えてくれることでしょう。地域へのアプローチを模索し続ける三名の登壇者が、それぞれの視点でこれから築こうとする一歩を語ります。

まちと組み、まちで稼ぎ、まちを育てる人たち

平林氏(モデレーター、以下敬称略):株式会社WHERE代表取締役の平林と申します。よろしくお願いいたします。

本セッションは関係者が注目する地域商社によるセッションです。地域商社は、「地域商社=ふるさと納税関連事業」のようなイメージを持たれることも多いかと思いますが、「地域のために」というところは共通しながらも、それぞれ考え方やアプローチの仕方が三社で違うと思います。

このセッションでは、三社の事業の進め方を聞けるのを楽しみにしています。それでは三名の皆さん、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか。

平林 和樹氏 株式会社WHERE・代表取締役/ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社 CRAZY を経て、株式会社WHERE創業。地域コミュニティメディア「LOCAL LETTER」、地域経済サミット「SHARE by WHERE」、ローカル×キャリア開発の「ACADEMY」事業など地域、業界を超えた共創による人づくりに邁進中。内閣府地域活性化伝道師、地方創生SDGs課題解決モデル都市専門家、総務省地域力創造アドバイザー、ふじよしだ定住促進センター理事。

黒瀬氏(以下敬称略):皆さんこんにちは。LOCUS BRiDGE(ローカスブリッジ)の代表の黒瀬と申します。

私は元々、長崎県の平戸市役所に19年勤めていました。それから共同代表と二人でLOCUS BRiDGEを立ち上げました。2022年10月から一緒に働く社員を増やし、今では40人弱の社員がいます。中長期的なまちづくりを支援するために、地域と伴走するふるさと納税支援事業、自治体広報・シティプロモーション支援事業、を中心に活動させていただいております。

どうぞよろしくお願いいたします。

黒瀬 啓介 氏 LOCUS BRiDGE 最高経営責任者・共同代表/2000年に長崎県平戸市役所へ入庁。広報担当時には、長崎県広報コンクール広報紙の部門で5年連続最優秀賞受賞。ふるさと納税担当時には、2014年寄附金額日本一を達成。2019年に独立し、LOCUS BRiDGEを創業。

大関氏(以下敬称略):ビッグゲートの大関と申します。

私は外資系ITの会社に勤め、ITを専門にしていました。もともと地方に縁があったわけではありませんが、ITを使って都市を効率的に運営するスマーターシティプロジェクトの営業を担当することになったのが、2011年2月のことです。

2011年3月の東日本大震災をきっかけに、事業の一貫として宮城県石巻市で復興支援プロジェクトに参画しました。気が付いたらそのまま石巻市で起業していました。

今は北海道から沖縄までエリアに関係なく地域商社を作り、ふるさと納税関連事業でのコンサルティングや、自社開発のITシステムを活用した運営サポートを行っています。

大関 将広 氏 株式会社ビッグゲート・代表取締役/大学卒業後、株式会社CSK(現SCSK株式会社)に入社、以降、複数のIT企業を経て、2011年4月に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。2014年7月に株式会社ビッグゲートを創業。また、一般社団法人全国道の駅支援機構の理事、みついしょうじ株式会社の取締役を兼任している。

舩坂氏(以下敬称略):株式会社ヒダカラの舩坂です。よろしくお願いします。

私は生まれは奈良県ですが、新卒で入社した楽天のご縁で飛騨市役所に出向しました。そこで、ふるさと納税やネットショップなど、ふるさと納税支援業務を経験し、ヒダカラという会社を立ち上げました。

会社のビジョンは、「地域のタカラで世界を驚かせる」。最近は合言葉のように、「地域をビジネスの出発点にする」ということを中心に考え、地域の人が喜んでくれることを事業として行うことを大事にしています。ふるさと納税運営代行や、産地直送の通販ショップ、デザイン制作の他、地元企業の深山豆富店を事業継承し豆腐作りまでやっている会社です。

よろしくお願いします。

舩坂 香菜子 氏 株式会社ヒダカラ・共同代表/楽天グループ株式会社でECコンサルタントに従事した後、地域活性マネージャーとして飛騨市役所に出向。2020年4月より、地域の魅力を見つけ輝かせる地域商社、(株)ヒダカラを創業。主な領域はEC・企画・商品開発・マーケティング。2021年に岐阜県白川村の『深山豆富店』を未来に残すためM&A。地域に、豆腐に、奔走中。

ふるさと納税はゴールではなく「ツール」

平林:ふるさと納税は、毎年すごい勢いで変わってきているように思います。最近では、ポータルサイトのポイント廃止が大きなニュースとなりましたね。

実際に事業としてふるさと納税に関わっていくなかで、どんな形で変化してきていると感じますか。

黒瀬:私は元々は自治体の職員としてふるさと納税に携わり、ふるさとチョイスを運営する株式会社トラストバンクへの出向でポータルサイト側も経験しました。今は中間事業者という形で、民間に寄り添ってふるさと納税の制度を支える側に立っています。

平戸市役所の職員のときには、平戸市のふるさと納税額が日本一になりました。これが2014年のことで、国内全体の寄附金総額は400億円ほど、平戸市への寄附金総額は14億円超です。その当時は、全国の自治体職員もそうだったのですが「何億円を目指そう」と金額を追い求めるというよりか、「この町の、この事業者を応援したい」とか「この特産品に光を当てたい」という想いでやっている方が多かったですね。

黒瀬:2014年当時は、自治体が主体となってふるさと納税を運営していましたが、コロナを経てからは中間事業者に委託する流れが加速しています。今は全国の8割から9割ほどの自治体が、中間事業者にふるさと納税の業務を委託しています。

変わったことはそれだけではないですね。総務省は年に一度、寄附金額をランキング形式で公表します。これが結果的に全国の自治体で寄付額を争う構図を生んでいるように思います。

そもそも何のためにふるさと納税の制度を活用して寄付を集めてるのか、寄付制度としての本来の目的が見えにくくなっているなと感じています。

平林:地域商社にとって、ふるさと納税は事業の一部かと思います。皆さんの会社のなかでふるさと納税事業はどんな位置付けでしょうか。

大関:僕の会社では、ふるさと納税事業の目的は、地域事業の資金調達の手段です。地域商社はやりたい事業があり、ふるさと納税の中間業務で収益を得た資金を、自分のやりたい事業に投資する。なので、ふるさと納税は資金調達の手段としてやりたいことをやるためのツールだと思っています。

黒瀬:僕らの会社でも、ふるさと納税はツールだと思っています。

ふるさと納税の支援事業は、地域に入り込んで関わっていくためのひとつの方法です。大関さんが話されていた通り、財源調達のためのツールという見方もしています。ふるさと納税で増やした財源は、地域の課題を解決するために投下する資金ですね。

さらにもう1つ、自分の会社で社員に伝えていることですが、ふるさと納税の返礼品は、光が当たっていない文化や産業に光を当てるものだと考えています。地域の魅力を世に知ってもらうことが、ふるさと納税の仕組みなら叶えることができます。

舩坂:地域商社と括られた中でも、私たちの会社では地域商社事業と自治体支援事業の二つに分けて考えています。ふるさと納税は自治体支援事業の中に位置付けています。自治体支援でいうと、ふるさと納税はいかに自治体のためになる運営ができるかがすごく大事だと考えていて、中心にあるのは財源開発です。それと同時に、地場産業を盛り上げるという想いでやっています。

これまでは地場産業振興を中心とした事業の考え方をしていましたが、今は、自治体の財源開発にもっと重きを置くべきなんじゃないかと感じて、事業の方向性をブラッシュアップしていこうと思っています。

もしも、「ふるさと納税」がなくなったら。地域商社が考える、次のビジネス

平林:三社間でふるさと納税が事業原資をつくるための手段という考え方は共通していますね。

平林:財源を支える大事な柱ですが、ふるさと納税の制度が厳しくなり、これからどう変わっていくか予想ができない状況だと思います。

特に12月は毎日のようにふるさと納税のニュースが飛び交い、緊張感もありますよね。

もしも、と仮定してみなさんに伺いたいのですが、ふるさと納税の制度がなくなったら、地域商社としてどのように事業を進めていきますか。

大関:地域商社がふるさと納税の業務の委託を受けて、得られた収益でビジネスを回し始めると、そのビジネスでも収益が得られるようになって安定企業になります。安定企業になれば、ふるさと納税の底上げがなくなっても会社として存続できるようになります。なので、ふるさと納税がなくなっても、最初に導入する事業をほかのものへ変えるようにすれば、地域商社によるビジネスは変わらないと思います。

黒瀬:ふるさと納税は、寄付額という結果を出せれば収益が得られる事業ではあるので、今後制度自体がなくなるリスクというのは事業を拡大する時から想定していることではありました。なので、会社としてもふるさと納税に私たち自身が依存してはいけないと思っています。僕らの会社は民間ではありますが、行政が担っている事業で支援できる領域を広げて、制度がなくなっても会社として存続できるよう新たな事業領域にチャレンジしています。

ただ、ふるさと納税のように収益化しやすい事業は簡単に生まれるものではありません。収益化が見込める事業で、地域商社がどういう価値を提供できるのかは、これからも考えていくことだと思います。

舩坂:実は、ふるさと納税は地域のいいものが届けられる反面で、届けられる商品が偏ってしまうというリスクがあります。納税する側は、寄附できる限度額を考えながら「1万円の寄附金でお肉と野菜のどっちを選びますか」という選択を迫られます。限度額の上限まで行くと商品を手に取る機会もなくなってしまいます。

舩坂:私たちの会社は、いい商品を消費者へ届けたいという想いと、生産者さんが気軽に商品を売れるお手伝いをしたいという想いで、2024年から産直ECのサービスを始めました。通販の手間は当社が代行する産地直送の通販サービスで、今では350ほどの生産者さんに利用していただいています。

この産直ECは、まさにふるさと納税の制度がなくなった時の備えですね。生産者さん側も制度がなくなったらどうしようとなってしまうので、そうなったらECサイトでの販売にシフトチェンジができます。ビジネスとしても成り立ち、かつ、地域振興もできるモデルは、多分他にもあって、そういう事業をひたすらやっていくことになると思います。そうは言っても、ふるさと納税がなくなったらと考えると、すごく不安ですね。

平林:なるほど。ふるさと納税がなくなるリスクにも備えながら、事業を進めているのですね。

後編はこちら

Editor's Note

編集後記

地域商社にとってふるさと納税事業とは、ビジネスの側面だけではありません。収益の先に見る「地域」には、自治体、生産者、その地域で働く事業者がいるのだと教えていただきました。

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