酒蔵
酔人(よいびと)の酔人による酔人のための宿『うきは酒宿 いそのさわ』。
世界で唯一、酒蔵が敷地内にある築約130年の古民家を改装した宿が、福岡空港から車で約1時間のうきは市にあります。
酒蔵がやっている宿でも、元酒蔵の宿でもなく、酒蔵の中にお宿がある『いそのさわ』では、酒蔵で働いている人たちと顔を合わせて挨拶するシーンも。今回はそんな『いそのさわ』に宿泊したときの様子をお届け。
日本酒あり、バレルサウナあり、うまい飯ありの最高な1泊をお楽しみください!
「日本酒」や「日本酒を囲んだお酒の場や文化」が好きな人を “酔人” と称して、歓迎している『いそのさわ』。
“酔人” であるお客さんを酒米として、チェックイン(精米)からチェックアウト(出荷)までの間に、美味しい日本酒になれる過程を過ごします。
日本酒をつくる上でまず行われるのは、原料である酒米を厳選し、磨き抜くことで「精米」をつくる工程。チェックイン時のお宿の説明によって、まずはキラキラした精米へと磨かれていきます。
酒蔵らしく「洗米」するのは、日本酒の醸造に使われるタンクを特別に改造したもの。脱衣所とシャワールームを完備した “特製醸造タンク” から出てくるお水ももちろん、日本酒の “仕込み水” 。本物の酒米と同じように、仕込み水で洗米し、身体を清めていきます。
精米で身体を清めたあとは、“酒樽のバレルサウナ” で酒米を蒸しあげ、仕込み水が常時流れ続ける “醸造タンク水風呂” でたっぷりと補水。さらに、外気浴で自分自身を “ととのえ” て。この「浸漬」と「蒸米」を行い、美味しい日本酒へと近づいていきます。
酒蔵のバレルサウナでととのった酒米は、続いて麹菌を繁殖させていく「製麹」という工程へ。「そろそろ、ととのったかな?」というタイミングで、『いそのさわ』の女将が “酒麹バナナスムージー” を持ってきてくれます。
このスムージーと、酒粕石鹸や酒粕化粧水で十分に麹を酒米にすり込み、発酵効果で体の内部から良い菌を増やしていきます。
続いて行うのは、麹・水・蒸米に酵母を加えて、「酒母」の培養を行っていく工程。ととのえた身体を一休みさせ、日本酒を身体に流し込む気持ちを最高潮まで高めていきます。(が、日本酒が待ちきれず、今回はこの時間はほとんどありませんでした)。
いよいよ仕込みの工程へ。お待ちかねのウェルカム日本酒と、特製の “あて” をつまみに、ようやく夜に備えて団欒をスタートさせます。
すでに仕込み段階でほろ酔い状態ですが、会場を広間に移して、お食事も本格的にスタート。本格的なお料理にますます日本酒が進むことで、火入れが行われます。
長くあっという間の夜を過ごしていたらいつの間にか瞼が落ちて、貯蔵工程へ。サウナや水風呂、外気浴、仕込み水や酒麹バナナスムージー、日本酒で心身ともに満たされ、いつの間にか、じっくりと熟成が進んでいきます。
眠りから目を覚ましたあとは、いよいよ出荷に向けた最終工程へ。熟成された日本酒の味を確かめながら、加水やブレンドを行うことで、日本酒の味の最終調整を行います。
『いのさわ』では、気に入った日本酒を直売で購入できるのも嬉しいポイント!気に入った日本酒を持って帰るために、昨晩の記憶を手繰り寄せながら、日本酒を選びます。
いよいよ日本全国へ出荷していきます。日本酒を美味しく保つために重要なのは温度管理。別れを名残惜しみながら、女将に送り出されチェックアウト。
『いそのさわ』を運営するのは、うきは市(浮羽町)で明治26年創業した酒蔵『磯乃澤』と、日本全国でプライベートキャンプ場をはじめとする場をプロデュースする『VILLAGE INC』。
『磯乃澤』が創業当初から大切にしている「この酒はこの1年だけ」という真剣さを一滴一滴に込める気持ちが、日本酒だけでなく、宿からも伝わってくるひと時でした。
ぜひ今度は、現地に足を運んで酒米体験をしてみてくださいね。
Editor's Note
お仕事とは思えないほど、サウナと日本酒で宴を楽しみまくった2日間。世界で唯一、酒蔵に泊まれる場所。蛇口から出てくる水は全て仕込み水。あんなにマイルドなお水があったのか…。というほど驚く水風呂でした。また行きたい…!
NANA TAKAYAMA
高山 奈々