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LOCAL LETTER

移住だけじゃない。地域と関わる、新しい選択肢「関係人口」

FEB. 16

ZENKOKU

拝啓『関係人口』という言葉は知っているけれど、自分の仕事や暮らしとどうつながるのか、まだ具体的に描けていないアナタへ

※本レポートは、2025年11月25日(火)に開催された『SHARE SUMMIT 2025』関係人口・二地域居住フォーラムの中からSession2『関係人口プレイヤーの最前線~地域と都市をつなぐ革新的な取り組みと新たなビジネスチャンス~』を記事にしています。

「いきなり移住はハードルが高い」

そう感じて、一歩を踏み出せずにいる人は少なくありません。

けれど今、無理なく地域と関わるための新しい選択肢が広がっています。今回のトークセッションでは、人と地域をつなぐ革新的な取り組みを続けるキープレイヤーたちが、地域と都市を結ぶ新たなビジネスチャンスやライフスタイルの可能性を語りました

 「来てもらう」から「関わり続けてもらう」へ。関係人口という発想

近藤氏(モデレーター、以下敬称略):それでは自己紹介をさせて頂きたいと思います。株式会社Unito代表をしております近藤と申します。「外泊すると家賃が下がる」という仕組みを導入し、賃貸市場に新たな価値を生み出してきました。都心の賃貸住宅を中心に約140棟を運営し、居住地を他拠点に広げる人を増やす取り組みをしております。

近藤 佑太朗氏 株式会社Unito 代表取締役 / 1994年生まれ。ルーマニア育ち、明治学院大卒。クロアチアで観光学を学び、国内外スタートアップやAirbnb Japanを経て起業。宿泊施設・コリビングを展開し、2020年「unito」創業開始。日経ビジネス「未来の市場を創る100社」選出、東洋経済「すごいベンチャー100」選出。

近藤:次に中島さん自己紹介よろしくお願いします。

中島氏(以下敬称略):面白法人カヤックの中島と申します。神奈川県鎌倉市に本社を構えております。私たちはゲーム制作や広告のクリエイティブなど、さまざまな事業を行っていますが、その中に地域とつながるプラットフォーム『スマウト』があり、現在約8万人の利用者、参加自治体は1100を超え、かなり地域の情報が集まるサービスとなっています。

中島 みき氏 面白法人カヤック執行役員 ちいき資本主義事業ユニット長 /大阪市生まれ。長野・千葉・東京など様々な地域で暮らしながら、広告代理店を経てオーバーチュア株式会社、ヤフー株式会社に入社。営業推進本部長を歴任後、PayPay株式会社の立ち上げに参画。2019年よりカヤックLiving代表。地域とつながるプラットフォーム「スマウト」や「まちのコイン」を運営。3拠点生活を経て、鎌倉へ移住。

佐別当氏 (以下敬称略):株式会社アドレスという会社で多拠点生活ができる住まいのサブスクリプションと、地域の空き家や空き部屋活用をしてどこでも暮らせるサービスを約7年前から提供しています。私たちは全国に約300カ所の物件を展開し、このサービスでは単に住まいを提供するだけでなく、地域とのつながりをつくる『家守』さんと呼ばれる方に入っていただき、地域のハブとしての役割を担ってもらっています。

毎年『社会的インパクトレポート』を発行し、単に関係人口を増やすのでなく、人と人とのつながりをどう作るか、そのつながりによってウィルビーイングが本当に向上しているかを重視しております。

佐別当 隆志氏 株式会社アドレス 代表取締役社長 / 株式会社ガイアックスで広報・新規事業を経て、シェアリングエコノミー専門メディアを立ち上げる。2016年にシェアリングエコノミー協会を設立し事務局長就任。以降、株式会社mazel、株式会社アドレスを創業し代表に就任。内閣官房・総務省・経産省の委員も歴任。

近藤:ありがとうございます。田端さんよろしくお願いします。

田端 氏(以下敬称略): 埼玉県横瀬町役場から来ました。小さなまちの『連携推進室』という部署で仕事をさせていただいています。横瀬町役場と地方創生にチャレンジしたい企業や個人などが一体となり、官民連携を積極的に進める『よこらぼ』という事業を約9年ほど展開しております。また、コロナ禍には町の第三セクターの子会社となる地域商社『株式会社ENgaWA』を立ち上げ、二地域居住者の受け皿となるようなサポートも行っています。

田端 将伸 氏 埼玉県横瀬町 連携推進室長 / 1974年横瀬町生まれ。横瀬町役場に入庁後、税務・財務・観光などを経て、官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げ、民間企業や学校と協働を推進。移住・二地域居住、空き家活用など連携型のまちづくりを担当。地域課題のビジネス化を目指し、行政主導で株式会社ENgaWAを設立。

近藤:最後に小林さんよろしくお願いします。

小林氏(以下敬称略):総務省地域振興室で課長補佐をしております小林と申します。今年7月までは京都市役所で京都への移住や二地域居住の推進に取り組み、現在は国の立場から、全国の関係人口の拡大や地方への新しい人の流れの創出を推進しております。今日ご紹介する『ふるさと住民登録制度』など、関係人口に関するさまざまな施策の検討にも携わっています。

小林 広生 氏 総務省 自治行政局 地域自立応援課 地域振興室 課長補佐 /1994年東京生まれ。2016年総務省入省。福島県、デジタル庁、京都市等を経て、2025年7月より現職。地域と住民の暮らしを支える自治体をバックアップする立場から、過疎地域の持続的発展の支援、関係人口の拡大(ふるさと住民登録制度の検討)、集落支援員のサポートなどの施策を推進。

近藤:このセッションでは関係人口の新たな潮流という観点から、今回の『ふるさと住民登録制度』について触れたいと思います。この制度は6月に閣議決定されたものですが、どういった内容なのでしょうか。

小林:この夏、『地方創生2.0基本構想』として、今後の地方創生の政策の方向性が示されました。その中で大きな柱の一つとなっているのが『ふるさと住民登録制度』です。

日本全体で人口減少が進む中、地域同士の移住競争ではなく、人をシェアしていく「関係人口」のアプローチが大事だという考えから創設されるものです具体的には、スマートフォンのアプリを通じて、関わりたい自治体に登録を行うと自治体側から関係人口だと証明してもらえるという仕組みです。

登録された方には自治体から情報提供を行い、より関わりの深い方は「プレミアム登録」として、地域住民ならではのサポートを受けていただける仕組みも目指しています。

近藤:今回、国として大きな方針が示された中で、自治体側の田端さんとしてはどう受け止めているのかお聞かせください。

田端:正直なところ、移住という言葉はハードルが高く、人が人生を変えてまで地域へ来ることは難しい面もあると思います。お試し移住に近い選択肢として「二地域居住」という考え方が広がったことで、これまでとは少し違う層の方々が実際に地域を見に来てくださっているのを見て「これはチャンスがあるな」と感じています。

一方で横瀬町では、人口減少が続くなかで、働き手の不足が大きな課題となっています。二拠点居住者に対して本当は、地域の企業で働いてほしいという思いもありました。ただ実際は、パソコン一つで働ける人たちが、東京の仕事を続けながら、横瀬町の二地域居住者になっているケースが多いんですね。

これからは、平日はこれまで通り仕事をしつつ、半日だけ地域の仕事に関わってみるとか、そんな関わり方があってもいい。今後は横瀬町の仕事そのものを、もっと魅力的に発信していく必要があると感じています。たとえば『ふるさと住民登録制度』のプレミアム登録のような位置づけの中で、実際に地域で働いてくれた方に対して、何らかの特典を用意できるといいな、と思っています。

佐別当:この1年ほどで自治体の動きが加速したという実感があります。北海道の厚真町(あつまちょう)のように、人口が5,000人弱でも、地域と人をつなぐ新しい取り組みを着実に進めている自治体があります。厚真町では2025年、国の制度に先行して『厚真町ふるさと町民制度』の取り組みをスタートさせました。

その制度を通じて、地域のお祭りやさまざまな活動の手伝いをすると、地域の保育園や小学校、公立の中学校に通うことができます。公共施設も住民と同じ条件で利用できるなど、関係人口が地域に加われる仕組みになっています。こうした実例がきちんと動き出すと、「選んでもらえる地域」になる実感があります。 

近藤:では次に、現在の新しい取り組みについてはいかがでしょうか。

中島:新たな取り組みはいろいろありますが、二地域居住に関するものでは自社のスマウトという仕組みを通して、地域特化型人材マッチング企業であるJOINSさんと一緒に地域と都市部の人材を繋ぐ活動をしています。

長野県白馬村(はくばむら)の事業では、国土交通省の『令和7年度 二地域居住先導的プロジェクト実装事業』に採択されました。その後押しもあって、副業を希望する方と地方のマッチングを想定以上のスピードで進めることができています。

今後は、こうした白馬村での実証結果をもとに本格的な事業化につなげていきたいと考えています。地域に行きたいと考えている方の多くは、スキルや経験を積み重ねてきた履歴書をお持ちだと思うんです。

ただ、その履歴書がそのまま地域で通用するかというと、必ずしもそうではない。このミスマッチのような部分に対して、何か取り組みができればと考えています。

近藤:そういう意味ですと、自治体側にぴったりなペルソナ、ターゲット像はどういった人ですか。

田端:自治体側の理想を全部満たす人なんて、正直いないとも思っていて。だから私は、マッチングは6割もしくは7割合えば十分だと思っています。挨拶ができて、謙虚で、世代の違う方ともコミュニケーションがとれる。この3つがあれば、多くの場合はうまくいく。特別なスキルを持っている必要はないんです。

佐別当:私たちとしても地域の担い手、「地域で稼ぐ人」を増やしたいです。今は実証実験として、繁忙期の農家さんの支援をしています。滞在場所として、農家さんの空いている部屋を貸してもらえたらいいなと思うんですが、なかなか難しい現実もあります。そこでアドレスの物件に滞在してもらい、スポットバイトのサービス事業者さんと提携を進めようとしています。

「人生を変えなくても、地域とは関われる」二地域居住と関係人口が示す、地方のリアル

近藤:次のテーマである『ビジネスと地域』『地域で価値をつくるとは何か』という問いにいきたいと思います。地元の方と二拠点で暮らしている方たちが『どう関係を築いていくのか』『どう関わるか』という点は避けて通れません。

運用していくうえで、トラブルが起こる可能性も含めて考えていく必要があります。そこは、今まさに解像度を上げて議論すべきところだと思っています。

中島:私たちは地域の魅力を発見するコミュニティ通貨『まちのコイン』を2020年から運営しています。『まちのコイン』は法定通貨の決済手段ではなく、地域を回遊したり、人とのつながりを通してコインをもらったり、つかったりすることで地域のファンを増やすことができるサービスです。導入地域の1つに滋賀県のビワコというコインがありまして、ここでは、国交省が定義した『関係人口 関わり度の4段階』という考え方を参考に、ビワコでは運用を整理し、実践、可視化しています。

オンラインなどで知る、興味や関心を持つといった軽い関わりを最初の段階として、次に参加や交流へと進みます。その先で、仕事をする、住むといった関係が生まれていくという流れです。

この一連の流れに地域の外から関わる人をすべて関係人口と呼んでいますが、『まちのコイン』では、体験を分類しながらデータとして集め、分析してきました。使用しているのはどんなユーザー層なのか。興味や関心の段階にいる人が、どうすれば参加や交流に進むのか。交流した地元の人はどう感じたのか。そうしたことをデータで可視化していくと、少しずつ共通言語が見えてきます。

まだ明確な答えがあるわけではありませんが、まずは見える化することが大事だというのは確かです。単に関係人口と言われても、少しピンと来ない部分がありますよね。

田端:私たちのまちも、もともとは有名な観光地ではありませんでしたが「観光を頑張ろう」と、いろいろな取り組みをしてきました。その結果、観光客は少しずつ増えましたが、それだけでは語れない価値も見えてきました。

それは、まさに地域の暮らしそのものです。地域には四季があり、体験には最適なタイミングがあります。その前提を理解したうえで関わってもらえれば、観光地でなくても、リアルな生活そのものが楽しい体験になります。

受け入れる側にとっても、暮らしそのものを共有することはミッションであり、喜びでもあります。来る人の喜びが、受け入れる側の喜びにもなる、そうした相乗効果が生まれていけば、観光地であるかどうかは、実はそれほど重要ではなくなっていきます。

佐別当:外から来た人にとっては、何気ない日常こそが、とても価値あるものに映ります観光客向けにつくられたコンテンツよりも、暮らしそのものに惹かれる人も多いんです。

だからこそ、自分たちの魅力を自分たちで再認識することが大切です。そのきっかけとして、地域居住者や関係人口の存在は大きい。「ここが良かった」と言ってもらえることで、地域の人が初めて気づく価値もあります。

「地域と関わる人を増やすという選択」人口減少時代の持続可能な地域のかたち

近藤:最後に、企業や地域が今日から取り組めるアクションや今後の展望について、それぞれお願いします。

小林:『ふるさと住民登録制度』ができることで地域を語れる切り口が増えると感じています。たとえ観光地ではない地域であっても「テレワークしやすい」「子育てしやすい」といった視点で関わる人を増やすことができる。広い観点で地域の魅力を伝えられるよう、制度開始前から準備しておくことが大切です。総務省としても支援していきたいです。

田端:横瀬町は二地域居住者を受け入れる地域として、たとえばビジネス、教育、コミュニティなど何か1つに特化するのではなく全部を解決しながら『地域全体の底上げ』に取り組んでいきます。「横瀬町でできたなら、ほかでもできる」そう言ってもらえる存在になりたいと思っています。

佐別当:ぜひ考えてほしいのが『人口が少ない地域』という視点です。地域の魅力が外からの視点で再発見され、訪れる人が増えることで『行けば歓迎してもらえるまち』になっていく感覚も生まれてくると思います。

私たちが言いたいのは、人口が少ないことは決してマイナスではないということです。人口が少ないからこそ起こせるインパクト、活かせる強みを、もっと前向きに形にしていけるといいのではと思っています。

中島:私たちは約1,100の自治体・地域で取り組みを行っていますが、地域の民間企業からの求人も確実に増えています。

二地域居住や関係人口に関心を持つ企業が増え、最終的には何らかの形で共に地域の経済活動に寄与することが大事だと考えています。次のフェーズでは、自治体だけではなく民間企業にもこのテーマに積極的に関わってもらう機会をもっと増やしていきたいです。

 

Editor's Note

編集後記

「住む」「住まない」だけでは語れない、地域とのかかわり方。今回のトークでは、そんな新しい選択肢がたくさん語られました。日常の延長にある小さな関わりが、地域の力になっていく。この言葉の積み重ねが、これからの地域づくりにつながっていくことを願っています。

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