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LOCAL LETTER

地域で “自然発生” 的に起こることが、いい関係人口づくりの入口? 産学官民の立場で考える「生産的な関係人口づくり」とは

AUG. 02

JAPAN

前略、生産性のある「関係人口づくり」のヒントを学びたいアナタへ

地方創生の新しいキーワードとして2017年頃から使われはじめた、定住人口でも交流人口でもない、地域や地域の人と多様に関わる人のことを指す「関係人口」。

地域のファンを増やそうと、全国で様々な関係人口事業の施策が行われる中、移住や定住よりも実態を捉えづらく、どのようにすれば生産的な関係をつくれるのかと、日々頭を抱えている方も多いはず。

そこで今回は、「関係人口をまちの資産として活かし活かされる関係性」をテーマに、山田 崇氏(長野県塩尻市役所 地方創生推進係長*1)、坂本 大祐氏(合同会社オフィスキャンプ代表 クリエイティブディレクター)、坂倉 杏介氏(東京都市大学 都市生活学部 准教授)、菊地 伸氏(北海道東川町役場 東川スタイル課課長)、杉山 泰彦氏(株式会社WHERE根羽村支社 / 一般社団法人ねばのもり代表理事)の豪華5名のトークをお届け。

関係人口に携わる5人が考える、生産的な関係人口づくりについて迫ります。

関係人口は「自然発生」的に生まれるもの

杉山氏(モデレーター:以下、敬称略)モデレーターの杉山です。今回のメインテーマは、 関係人口ですが、そもそも 関係人口” という言葉がまだ新しく、少し抽象的だと思っていて、初めに今回のセッションにおける 関係人口” の方向性を統一したいと思います。

写真右上> 杉山 泰彦(Sugiyama Yasuhiko)氏 株式会社WHERE根羽村支社、一般社団法人ねばのもり代表理事 /  株主会社WHEREにて、地域PR・移住定住サポート事業で20地域の案件を担当。現在は地域おこし企業人の制度を使い、長野県根羽村でPR担当を担い関係人口の創出を手掛ける。2020年8月に一般社団法人ねばのもりを設立し、森林や山村をフィールドに学びの事業を提供している。
写真右上> 杉山 泰彦(Sugiyama Yasuhiko)氏 株式会社WHERE根羽村支社、一般社団法人ねばのもり代表理事 /  株主会社WHEREにて、地域PR・移住定住サポート事業で20地域の案件を担当。現在は地域おこし企業人の制度を使い、長野県根羽村でPR担当を担い関係人口の創出を手掛ける。2020年8月に一般社団法人ねばのもりを設立し、森林や山村をフィールドに学びの事業を提供している。

杉山: 関係人口における 関係とは一体何なのか。それは、「各地域から発信される熱源に、人々が自然と惹かれ、集まること」だと私は思っていて、ある種「友達づくり」に似た、“強制してつくるものではなく、自然発生的に生まれるもの” だと考えています。

杉山:今日集まって頂いた皆さんは、現在何らかの形で関係人口に関わっている方々です。視聴者の皆さんは、行政・民間・教育機関といった立場における、関係人口づくりの差異も楽しんでいただければと思います。

関係人口づくりは、行政の積極的な姿勢からはじまる!?

杉山:では登壇者の皆さん、まずは自己紹介をお願いします。

山田氏(以下、敬称略):長野県塩尻市役所の山田崇です。塩尻市役所でシティープロモーション担当係長として、地方創生を担当しています。塩尻市は令和2年度総務省の関係人口創出・拡大事業の25のモデル地域に選ばれていて、今は短期・リモート・副業という形で、個人方が塩尻の地方創生に関わっていただけるように実施しています。

今日はみなさんと一緒に関係人口に対する問いを立て、知識を共有できればと思っております。よろしくお願いいたします。

写真右下> 山田 崇(Yamada Takashi)氏 長野県塩尻市役所 地方創生推進係長*1 / 1975年長野県塩尻市生まれ。空き家プロジェクトnanoda代表、信州大学ローカルイノベーター養成コース特別講師地域ブランド実践ゼミ、内閣府地域活性化伝道師なども務める。また「MICHIKARA」という "市民・企業・行政” の3つの力が紡ぐ新しい地域未来をつくるプロジェクトの立ち上げや、地方創生プロジェクト・シティプロモーション等を担当する。著書「日本一おかしな公務員」(日本経済新聞出版社)。
写真右下> 山田 崇(Yamada Takashi)氏 長野県塩尻市役所 地方創生推進係長*1 / 1975年長野県塩尻市生まれ。空き家プロジェクトnanoda代表、信州大学ローカルイノベーター養成コース特別講師地域ブランド実践ゼミ、内閣府地域活性化伝道師なども務める。また「MICHIKARA」という “市民・企業・行政” の3つの力が紡ぐ新しい地域未来をつくるプロジェクトの立ち上げや、地方創生プロジェクト・シティプロモーション等を担当する。著書「日本一おかしな公務員」(日本経済新聞出版社)。

杉山:山田さんは事前ミーティングで「公務員はクビになりにくいことが強み」と話されていましたが、視聴されている公務員の方に、特に持ち帰っていただきたいメッセージはありますか?

山田:公務員の方に伝えたいことは「警戒せず、とにかくやろう!」ということですね。こっち側(行政)がやる気と背中を見せない限り、地域のために何かをやりたい人なんて集まってこないですよ。だから、今日聞いてくださっている公務員の方々には、「山田さんがここまでやってるんだから、私たちも挑戦しよう」と思ってもらえるようなセッションにしたいですね。

杉山:ありがとうございます。次は、東川町の菊地さんお願いします。 

菊地氏(以下、敬称略):北海道東川町役場の東川スタイル課で課長をしております菊地です。東川スタイル課は、まさに関係人口づくりの中心のような課で、東川町の外から新しいことをキャッチして、まちに落とし込むことを行っています。他にも、ふるさと納税等を駆使しながら東川町以外の方々にもまちづくりに参加してもらったり、企業との関係性をつくりながら、東川町の必要な財源を集めたりと、様々な取り組みを行っています。

写真上から3番目> 菊地 伸(Kikuchi Shin)氏 北海道東川町役場 東川スタイル課課長/  人口8000人ほどの町である東川町役場の職員で、ふるさと納税等を担当する「東川スタイル課」で課長を務める。一般的なふるさと納税と違い、ふるさと納税の寄付を「投資」と捉え、寄付者が参加する「株主総会」を通じ町づくりに参加してもらうユニークな取り組みが話題に。2016年には北海道東川町の全貌に迫る「東川スタイル」(産学社)が発売される。
写真上から3番目> 菊地 伸(Kikuchi Shin)氏 北海道東川町役場 東川スタイル課課長/  人口8000人ほどの町である東川町役場の職員で、ふるさと納税等を担当する「東川スタイル課」で課長を務める。一般的なふるさと納税と違い、ふるさと納税の寄付を「投資」と捉え、寄付者が参加する「株主総会」を通じ町づくりに参加してもらうユニークな取り組みが話題に。2016年には北海道東川町の全貌に迫る「東川スタイル」(産学社)が発売される。

菊地:東川町は1993年を底に、ずっと人口が微増続けている町でなんです。これは関係人口づくりに起因しているというか、一言では言えないのですが、ふるさと納税やオフィシャルパートナー制度、コワーキングスペース等、いろんな取り組みを続けてきたことで、25年以上人口が増加を続けているという特徴があると思っています。

杉山:菊地さんが事前の打ち合わせで話されていた人に依存せず、常に行政でまわせることを目指しているという点ですが、そこもみなさんに共有いただけますでしょうか?

菊地:関係人口において人に依存することは当然のことかと思いますが、東川町では、誰がどんなポジションにいても、同じ方向を向きながら仕事ができることを意識しています。私は日頃から情報をキャッチするために動き回っていますが、東川町の強みは、私のようなタイプの職員がたくさんいることなんです。

キャッチした情報を自分以外に引き継いで落とし込むのって難しいじゃないですか。そういったことを意識して取り組んできた結果、人に依存しないスタイルが東川町の強みになっていると思います。

定期的な交流が「自然発生」のヒントになる

杉山:次は奈良県東吉野村の坂本大祐さん、お願いします。

坂本氏(以下、敬称略):奈良県東吉野村の坂本大祐です。合同会社オフィスキャンプ代表社員と、一般社団法人LOCAL COWORK ASSOCIATION代表理事をしています。

関係人口でお話をすると、オフィスキャンプと奈良県が一緒にやっている事業で、クリエイティブスクール「OKUYAMATO CREATIVE SCHOOL(奥大和クリエイティブスクール)」があります。

受講生には公務員の方や、大手建築会社の社員さん、林業やデザイン業の方もいて、多種多様な方々が奥大和に関わりを持ちながら、プロジェクトを推進している状況です。今日はいろんなセクションの方がいらっしゃるので、事業の次年度に向けてのヒントをもらえたらと思っています。よろしくお願いします。

写真上から2番目> 坂本 大祐(Sakamoto Daisuke)氏 合同会社オフィスキャンプ代表 クリエイティブディレクター、一般社団法人LOCAL COWORK ASSOCIATION 代表理事/  身体を壊したのを機に、東吉野村へ移住。商品や店舗のデザインなどを手がける。2015年には県と国と村でタッグを組みコワーキングスペース「オフィスキャンプ東吉野」を設立し、運営を担う。また、クリエイティブスクール「OKUYAMATO CREATIVE SCHOOL」を奈良県と共に実施。
写真上から2番目> 坂本 大祐(Sakamoto Daisuke)氏 合同会社オフィスキャンプ代表 クリエイティブディレクター、一般社団法人LOCAL COWORK ASSOCIATION 代表理事/  身体を壊したのを機に、東吉野村へ移住。商品や店舗のデザインなどを手がける。2015年には県と国と村でタッグを組みコワーキングスペース「オフィスキャンプ東吉野」を設立し、運営を担う。また、クリエイティブスクール「OKUYAMATO CREATIVE SCHOOL」を奈良県と共に実施。

杉山:僕は2016年に、それこそ東吉野の関係人口的な立ち位置で坂本さんに出会って、結果的には奈良県ではないところに移住してるんですけど(笑)、でも今でもこうやって坂本さんと交流をも持たせていただいていることが、ある種、関係人口としての素晴らしい関わり方だと思いますね。では最後に、東京都市大学の坂倉さんお願いいたします。

坂倉氏(以下、敬称略):東京都市大学の坂倉です。主にコミュニティマネジメントの研究を行っていて、最近ではウェルビーイングといった、人の関係性や人の幸せといった観点のまちづくりについて考えています。

写真右下> 坂倉 杏介(Sakakura Kyousuke)氏 東京都市大学 都市生活学部 准教授 /  コミュニティマネジメント研究。地域コミュニティの拠点「芝の家」や大学地域連携の人材育成事業「ご近所イノベーション学校」の運営などを通じ、地域づくりのプロジェクトに多く携わる。2014年からは「24時間トークカフェ」を定期的に開催し、2019年からは「一般社団法人おやまちプロジェクト」の理事を務める。
写真右下> 坂倉 杏介(Sakakura Kyousuke)氏 東京都市大学 都市生活学部 准教授 /  コミュニティマネジメント研究。地域コミュニティの拠点「芝の家」や大学地域連携の人材育成事業「ご近所イノベーション学校」の運営などを通じ、地域づくりのプロジェクトに多く携わる。2014年からは「24時間トークカフェ」を定期的に開催し、2019年からは「一般社団法人おやまちプロジェクト」の理事を務める。

坂倉:長年、地域に根付いた活動を続けていく中で、いい関係人口が育っているなと実感したことがあって。それは、ゼミで関りができた山形県置賜地方の方々が、一人暮らしのゼミ生を心配して、置賜の美味しい物が詰め合わせた「Tamazon(タマゾン)」を学校に送ってくれたんですよ。

杉山:Tamazon!めっちゃいいですね!

坂倉:私たちが置賜の方々に「学生のためにやってくれ」と頼むんじゃなくて、「あの子(学生)たち独り暮らしだけど、ちゃんと食べてるかな」って想像して、「じゃあうちは米を送ろう」「じゃあうちは酒を送ろう」と動いてくれたんです。そういったことが地域で “自然発生” 的に起こることが、いい関係人口づくりの入口なのかなと思いました。

杉山:自然発生っていうのがキーワードになりそうですね。

坂倉:そうですね、やっぱり関係人口を意図的につくりにいこうとすると、違和感が生まれるんですよね。オンラインであったりしても、定期的に交流をするであったり、関係が自然に生まれやすい状況を保つことが、関係人口づくりのヒントになると実感しているところです。

地域課題の解決を考え、辿り着いたのは “地域外” への意識

杉山:ここからはフリーセッションに入っていきたいのですが、まずはみなさんが関係人口に対して「どんな意識や目的で行動されてきたのか」についてお伺いしたいです。

山田:私は塩尻市の職員の立場から、2015年に策定された 9年間の第五次総合計画と人口ビジョン” のもと仕事をしています。そのときから変わらずに掲げていることは、「地域課題を自ら解決する人と場の基盤づくり」です。

山田:恐らく2015年にはまだ、「関係人口」という言葉はなかったと思いますが、地域課題を考える上で辿り着いたことは、塩尻市に関わる人は、①塩尻市に住んでいる人、②塩尻市で働いている人、③塩尻市に住んでも働いてもいないけど、塩尻市の挑戦する姿勢に共感を抱き、地域課題に関わりたい人 という3つのカテゴリーがあるということだったんです。

つまり、塩尻市外にも、地域課題の担い手がいる」という仮説を持ち、東京やいろんな地域でプロモーションを行っていたのが、今、塩尻市としての関係人口における事業につながっていると思います。

変化する時代に求められる適応的パフォーマンス

杉山:なるほど。関係人口という言葉ができる前から、その重要性に気づき、他地域でプロモーションされていたんですね。その中で気付きってありましたか?

山田:行政として、一年間の予算の中で計画を達成するということは、絶対にぶらしてはいけないと思っているんですが、さまざまな活動を通して思うことは、“戦略的なパフォーマンスをしっかりと実現していく部署” と “適応的なパフォーマンスを求めらる部署” が必要なのではないかということです。

今って、いろいろな変革期じゃないですか。一年前、コロナを想定して予算を組んでる自治体なんて一つもなかった。でも、目の前で起きていることに対して、適応することへの期待値もすごく増えてきたなと思っています。

杉山:では、山田さんと同じ行政の立場である菊地さん、お願いします。

菊地:東川町は一言で言えば、とにかく外へと攻め続けている町です。例えば地域おこし協力隊は40名以上、地域おこし企業人は7名いるとか。ここ15年、いろんなことに挑戦し、人口増加や経済効果も出てきましたが、今でも、住民の方の中には「外へのPRばっかりで、行政はどこを見ているんだろう。私たちのことを本当に考えてくれているのだろうか」と不安感にかられる方がいらっしゃるんですよね。

だから、僕らが町民の方と接する時に意識しているのは、「何のために外へPRをしているのか、それは東川町のためなんだよ」と、しっかりと考えていることを相手に説明することです。いろんな経済的効果を高めることで、結果的に住民のみなさんが幸せな生活を送ることができると思っているので、その攻める姿勢と地域の方への意識のバランスを、どう保っていくのかが大事だと、ここ数年特に感じていますね。

杉山:攻め続けたからこそ、守ることも大切ということですね。

草々

*1 山田 崇氏の肩書き「地方創生推進係長」は、本カンファレンス登壇時の所属になります。現在は、「官民連携推進課 課長補佐」としてご活躍中です。

Editor's Note

編集後記

なくなく割愛した部分もあるのですが、関わられた地域について、終始楽しそうに話されていた登壇者の皆さん。楽しくセッションを聞くにつれ、いつの間にかその地域に感心を寄せている自分がいることに気づきました。

今回取り上げられた関係人口づくりのキーワードに「自然発生」がありましたが、今日お話されている姿を見て、「地域を楽しむ力」も、人々を自然と引き付ける大事な要素なのかもしれないと感じました。

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