前略、100年先のふるさとを思ふメディアです。

LOCAL LETTER

「マルチワーク」で自分を見つける。多彩な働き方で地方移住をもっと自由に

FEB. 20

YAMAGATA

拝啓、自分に合った働き方を探しているアナタへ

「自分をより生かせる働き方ってなんだろう」
「新しいことをしてみたい」
「もっと自由に働きたいけど、何から始めよう」

こうした思いを抱きながら立ち止まって働き方を見つめるアナタに、山形県白鷹町から「マルチワーク」という選択肢をお届けします。地域のなかで正社員として働きながら、複数の仕事を経験できる。今、注目が集まっている働き方です。

この度は、2024年6月に立ち上がる「しらたかマルチワーク事業協同組合」の事務局長となる菅原大夢さんと組合理事の土屋明美さんにお話をうかがいました。

働きながら「生き方」を見つける、白鷹町のマルチワークとは

マルチワークとは、季節や時間によって複数の仕事に携わる働き方のこと。例えば、午前中は畑仕事をして午後は副業でリモートワーク。夏場は果樹園で働き、冬は醸造所で働く。…このように各人の希望や、地域に合わせて業務を組み合わせられる仕事の在り方です。

そうしたマルチワーカーを地域に受け入れ、伴走支援する「しらたかマルチワーク事業協同組合が2024年6月に始動します。組合ができる場所は山形県白鷹町。県都・山形市まで車で40分程度、最上川沿いに田園が広がる景観の美しい土地です。

風光明媚な白鷹町で、「多様な仕事をして、いろんな人に出会って、自分と向き合う時間にしてほしい」と話すのは、組合理事の土屋明美さん。

土屋 明美氏 やさい畑 i-make(しらたかマルチワーク事業協同組合理事に就任予定) / 福島県出身。結婚を機にパートナーの実家がある白鷹町へ。「やさい畑i-make(アイメイク)」の園主として、「やまのえくぼトマト」を栽培している。水が綺麗で、寒暖差が大きな白鷹町で育つトマトは味のバランスが抜群。
土屋 明美氏 やさい畑 i-make(しらたかマルチワーク事業協同組合理事に就任予定) / 福島県出身。結婚を機にパートナーの実家がある白鷹町へ。「やさい畑i-make(アイメイク)」の園主として、「やまのえくぼトマト」を栽培している。水が綺麗で、寒暖差が大きな白鷹町で育つトマトは味のバランスが抜群。

「ワーカーさん一人ひとりを中心に置いて、『自分は何の仕事が楽しいと感じるだろう』『ここでどんなことがしたいかな』と『生き方』を考えてもらう機会を作れたら嬉しい」と語ります。

土屋さんは未経験から農家へと転身し、手探りの中でキャリアを築いていった移住者の1人。

農業に興味を持ったきっかけは、もともと大の苦手だったトマトを農家さんからお裾分けされて食べたところ、その美味しさに衝撃を受けた体験。そこから、地元農家の元での見学・研修を経て、個人農家として独立されました。

土屋さんのように、個人の興味関心を原点に、未経験からでも安心して仕事の経験を積むことができる環境を整備するのが「しらたかマルチワーク事業協同組合」の役割です。移住してきたワーカーの要望を聞きながら、組合を支える町内の事業者への派遣をコーディネートします。

ワーカーは正社員として組合と雇用契約を結ぶので、安定した給与を受け取りながら、様々な仕事に挑戦できます。派遣先には、ホップ農家・果樹園・電気屋・観光タクシー会社・宿泊施設などが候補となっており、その他にも幅広い業種が想定されているとのこと。

派遣予定先の一つである「株式会社サンファームしらたか」の仕事風景。一足早い春を運ぶ「啓翁桜」の出荷準備中
派遣予定先の一つである「株式会社サンファームしらたか」の仕事風景。一足早い春を運ぶ「啓翁桜」の出荷準備中

とはいえ、「新しいことがしたいけど、何から始めたらいいか分からない」という方もいるでしょう。組合では、スキルアップに資する研修や、定期的なヒアリングによるキャリアアドバイスもご用意。仕事の道筋は事務局とのやりとりの中で立てていくので、安心して飛び込んでほしいとのこと。

複数の仕事を試しながら自分の特性を発見したり、いくつかの職場で勤務経験を重ねたり、柔軟にキャリアを構築できるのがマルチワークの特徴です。自分にあった働き方を模索するのに適しています。

また、仕事を通じて多様な人々と繋がることができるため、地域内での起業を検討している方にもおすすめです。組合で求められる労働時間は最低週20時間なので、起業準備等をしながら働くこともできます。

土屋さんは自身のキャリアを振り返り、「心の豊かさがここにはある。白鷹町の穏やかな環境下で、地域の人に面倒をみてもらったからこそ、今にたどり着いた」と語ります。

今後は、自身も「なりたい自分を見つける」ためのサポートを提供すべく、マルチワーカーの受け入れ事業者に名乗り出ました。土屋さんの農園では、ワーカーさんの興味や得意に合わせて取り組んでほしい業務が幅広くあるといいます。

農作業のみならず、まちの人とのコミュニケーションがとれる配達・マルシェへの出店、ラベルデザインや経理など、全ての業務を1人でやっている土屋さん。「自分が作ったものを、自信を持ってお客さんに勧められるのは楽しい」と語る一方で、「人手不足が一番の課題」と話します。

「人手が足りないためにやりたいけどやれていないことがある人は私以外にもたくさんいます。ワーカーさんの力を借り、やりたいアイデアが実践できたら、収入が上がって新たな雇用がうまれたり、農作物のクオリティも上がったりと効果があると思います」

事業者との密接な連携や、身近な変化が見えやすい環境は「誰かのためになる仕事がしたい」という方にとって日々のやりがいにも繋がりそうです。

「ワーカーさんと早く出会いたいです」と笑顔で話す土屋さん。ワーカー視点から生まれる新しいアイデアによって事業がさらに広がっていくことも見据え、期待に胸を膨らませています。

「こんなところに人はくるのか」地域の意識革命へ

人口減少や少子高齢化が進む白鷹町では、まちの産業や文化・暮らしを守っていくための新たな取り組みが必要とされています。

マルチワーカーの参画は、担い手不足の解消や地域産業への新たな視点の提供など、地域にとっても嬉しい効果が見込まれます。一方で「こんなところに人はくるのか」という後ろ向きな声も地域からは上がっているのだとか。

「彼らが『こんなところ』と思ってる白鷹町は、外からは魅力いっぱいのまちに見えている」と断言するのは、事務局長となる菅原大夢さん。

菅原 大夢氏 白鷹町地域おこし協力隊(しらたかマルチワーク事業協同組合事務局長に就任予定) / 山形県白鷹町出身。東北芸術工科大学卒業後、都内のメディア制作会社に就職。コロナ禍を機に白鷹町にUターンし、2022年9月より地域おこし協力隊として活動中。
菅原 大夢氏 白鷹町地域おこし協力隊(しらたかマルチワーク事業協同組合事務局長に就任予定) / 山形県白鷹町出身。東北芸術工科大学卒業後、都内のメディア制作会社に就職。コロナ禍を機に白鷹町にUターンし、2022年9月より地域おこし協力隊として活動中。

菅原さんは地元である白鷹町を一度離れ、再び戻ってきたことで、まちの見え方が大きく変わった1人。青い空と白い雪が織りなすコントラストや、広大な田園、そうした景色を眺めながら仕事ができる環境など、都会では得られない魅力が計り知れないほど見つかったといいます。

また、土蔵を改装した一棟貸しの宿泊施設「NIPPONIA白鷹 源内邸」での勤務経験を通じて、まちを訪れる人々の生の声を聞いてきました。

白鷹町の日常風景に感嘆する多くの方と出会う中で、「こんなところ」と称されるまちの「あたりまえ」には、町外の人にとって特別な魅力があると確信を深めています。

まちの魅力を確かめるために、2023年10月には「〝マルチワーク〞体験ツアー」を実施。全国から集まった参加者に白鷹町での仕事と暮らしを体験してもらいました。

参加者は、七色に変化する山に囲まれたまちの風景を写真に収めながら、「もっと知られるべきだと思う」と感動する様子を見せたといいます。

さらには「こんなに働いてやっとお米ができるのか」と普段口にする食物ができるまでの手間暇に気づきを得る方や、「ちょうどいい距離感で接してもらえた」と温かくて開放的なまちの方々の人柄に好感を抱く声も報告されました。

白鷹町の見慣れた風景に感動する参加者の様子は、その場を共にした地元事業者にもきっと自信を与えたはず。そんな体験を重ねていくことで、「自信が無い地域の人たちの根幹を変えたい」と菅原さんは意気込みます。

目指すところは、マルチワーカーの参画によって外からの視点が日常的に流入し、地域の人たちも気づきを得ていくこと。組合は町内の「架け橋」のような役割として、ワーカーやすでにいるまちの「おもしろい人たち」同士を繋いでいきたいといいます。

そのためにも必要なのは、「ワーカーさんにこのまちを好きになってもらうこと」。一人ひとりが「好き」を原動力に、暮らしも仕事もイキイキと楽しむことで、結果的に地域の人へもパワーが伝播していくと考えています。

パワーがあるところに人は集まると力強く語る菅原さん。ワーカーがまちの魅力を発掘し、活躍することで、まちの吸引力を高めていくと同時に、まちの人たちが自信をつけていく。この相乗効果で、人が人を呼ぶまち・白鷹町へと進化させるべく、今、組合が立ちあがろうとしています。

多様なゴールに向けた、記念すべき一歩目

組合で募集するのは「都市部から地方に移住したい人」「誰かのために役立ちたい・スキル活かしたい人」「白鷹町へUターンしたい人」「何をしたいか模索している人」。

組合のメッセージには「すぐに活躍できなくても、ずっとここに暮らす覚悟を決められなくても、今のあなたの‟やってみよう”を、私たちは応援します。ともに一歩を踏み出しましょう」と記されており、移住者の背中を優しく押しています。

この「ともに一歩を踏み出しましょう」という言葉の背景には、柔軟な体制を目指す、初年度への思いが込められています。

「正直、まだまだ形をつくってるところで、ワーカーさんとも密接にコミュニケーションをとってどんどん成長させていく段階です。完璧な体制で受け入れるというより、ワーカーさんには要望を出してもらいながら一緒に成長していきたいです

また、人口減少対策の施策は「定住」がゴールになりがちで、そのプレッシャーが移住者にのしかかることも度々ですが、「定住だけがゴールでないと思っています」と話すお二人。組合を離れることを「卒業」と表現します。

マルチワーカーのゴールは、独立・地元企業への就職・多拠点居住・別地域への移住…いかなるものでも晴れやかな「卒業」。

白鷹町を成長の場としてもらいたい。たとえまちから出たとしても非常に濃い関係人口になっていると思うので、ワーカーさんのゴールに関しては広く捉えています」と、寛容な姿勢でワーカーを待っています。

アナタの「なりたい自分を見つける」手がかりは白鷹町にあるかもしれません。新たな取り組みが芽吹く今、ともに一歩踏み出してみませんか?

白鷹町マルチワーク協同組合の正職員募集要項

雇用形態:正社員

○入社時期:通年採用

○定員:2名

○勤務地:山形県西置賜郡白鷹町

○対象者:
・普通運転免許を持っている方 (ない方はご相談ください) 
・最低一回は「説明会」もしくはマルチワーク体験に参加できる方
・厚生年金に加入できる方
・(現在学生の場合)2024年6月時点で卒業見込みの方

○厚生年金加入時の資格取得要件:
・雇用期間が1年以上見込まれること
・週の所定労働時間が20時間以上
・賃金の月額が8.8万円以上
・加入時点で学生でないこと
・厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の法人・個人の適用事業所、または国または地方公共団体に勤めていること

選考フロー:
1. 「説明会」に参加する (オンライン・現地)
※都合が合わない場合は相談可
2. 応募書類提出(履歴書)
3. マルチワーク体験(現地)
4. 面談・面接(オンラインもしくは現地)
5. 採用 
6. マルチワーク開始(現地)
※体験ツアー・面談時の旅費等については応相談

派遣先企業:農業、製造業など組合に加盟する企業

収入:
専業(40時間/週):17~18万円前後
副業(21時間/週):8.8~9.9万円前後

○【参考】自治体の助成・補助 ※1:
・白鷹町若者移住定住支援交付金
 ※以下の条件を満たす世帯が対象です。
 - 転入時に夫又は妻のどちらかが45歳未満である夫婦世帯または、45歳未満の者と子が中学生以下の者が1人以上(出産予定も含む)いる世帯。
 - 5.5年以上定住の意思がある世帯。
 - 世帯主が転勤・進学による移動でない世帯。
 - 基本額:10万円
 - 子育て加算金
   1~2人まで:10万円
   3人目以降:一人につき5万円ずつ加算

・山形県移住世帯向け食の支援事業
 - 単身世帯:米40kg、味噌2kg、醤油2Ⅼ
 - 2人以上世帯:米60kg、味噌3kg、醤油3Ⅼ

・ふるさと山形移住・定住推進事業家賃補助事業
 - 月額最大1万円(転入翌月から最大24月)

※白鷹町の移住・定住支援施策については、以下を参照
https://www.town.shirataka.lg.jp/1192.htm

※1 令和5年度の支援内容であり、令和6年度には変更となる可能性もあります。あらかじめご了承ください。

Editor's Note

編集後記

「土屋さんや菅原さんがいるなら…!」と人が集まってくるだろうと感じさせる、あたたかなお二人でした。この機会に一期目のワーカーとして働けるのはなんとも魅力的。前向きで、野心的な方は、ぜひ白鷹に飛び込むことをおすすめします。

シェアして白鷹町マルチワーク協同組合を応援!

シェアして白鷹町マルチワーク協同組合を応援!

シェアして白鷹町マルチワーク協同組合を応援!

LOCAL LETTER Selection

LOCAL LETTER Selection

ローカルレターがセレクトした記事