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LOCAL LETTER

The Saunaに留まらない経営哲学。年間4万人が集まる宿泊施設の裏側

OCT. 24

NAGANO

拝啓、自分らしさを活かしながら、個性が輝く場所やサービスをつくりたいアナタへ

ストレスなく働きたいーー。
自由に暮らしたいーー。

こう願う人は多いはず。

“自分らしさ”を活かしながら活躍できる場所を求めるアナタに、知ってほしい宿泊施設があります。その名も「LAMP」。長野県北部の信濃町、美しい緑に囲まれた湖のほとりに位置します。

食・サウナ・遊び・宿泊を通して「心が満たされる体験」を提供し、人々の心にあたたかな光を灯している「LAMP」。特に湖畔で楽しめるフィンランド式サウナ「The Sauna」は、サウナ好きが憧れるスポットとして脚光を浴びています。

photo by mocchy
photo by mocchy

「BRIGHT UP LIFE 人生を明るく」

そんなコンセプトでつくられているLAMPですが、2014年のオープン時にはガラガラだったといいます。そこから10年が経ち、今では年間のべ4万人が訪れる人気スポットに。さらには「LAMPで働きたい!」という若者が全国から集まってきています。

どのようにして、人々を惹きつける場所はつくられているのでしょうか。その背景には、働き方よりも「生き方」を尊重する代表の想いがありました。

岡本 共平(Okamoto Kyohei)氏 株式会社LAMP代表取締役社長 / 1982年埼玉県生まれ。2015年よりLAMP野尻湖の料理事業を担当。支配人を務めたのち、2020年より現職。photo by mocchy
岡本 共平(Okamoto Kyohei)氏 株式会社LAMP代表取締役社長 / 1982年埼玉県生まれ。2015年よりLAMP野尻湖の料理事業を担当。支配人を務めたのち、2020年より現職。photo by mocchy

田舎でやる意義。各地での経験から見えた「ピュアなアウトプット」

事業を軌道にのせたのは代表の岡本共平さん(以下、まめさん)。

埼玉県出身で、専門学校を卒業後は都内で料理人としてのキャリアを築いたのち、LAMPの料理事業を一任されることが決まりました。2014年に信濃町に移住。前職と変わらない料理分野とはいえ、都内とは大きく異なる人口8,500人(当時)のまちで新たな挑戦をスタートさせます。

『田舎』でも『都会』でも挑戦してきたまめさん。当時を振り返りながら、両者の違いを「アウトプットのピュアさ」という視点で比較します。

LAMPのランチメニュー、地元素材を使ったハンバーガー(LAMP野尻湖HPより拝借)
LAMPのランチメニュー、地元素材を使ったハンバーガー(LAMP野尻湖HPより許可をいただいて掲載)

「例えば東京で同じクオリティ、同じ席数、同じ味の料理を出すとします。でもそこには当然ライバルがいるんですよ。自分が原価とコストを考えて、1,000円で提供しようとしても、隣の店が似たようなメニューを900円で出すことが起こりうる。そうしたら、自分のお店の価格をさらに下げざるを得なくなるんですよね」と、健全さとは少しかけ離れた価格競争の在り方をまめさんは指摘します。

ライバルが密集し、安さとクオリティの追求を余儀なくされる環境で生き残るためには、どうしても人件費や固定費に「歪み」が生じてしまうケースも。(一概に、東京でこのケースが当てはまる訳ではありませんが)ライバルが密集しやすい都会では、「生み出した価値を適切な価格で提供し、正当な対価を得る」ことが難しかったとまめさんはいいます。

「東京が『ピュアな価格』になりにくいのは、飲食という労働環境にいたので感じていました。飲食店は水商売も含めて、日本全国に6万6,000店舗ありますが、10年続く飲食店は100分の1ぐらいと言われています。でも、飲食店は減らない。人口が減っているにも関わらず、潰れたところに入店し続けているんです。このサイクルって正しいのかなと考えると、どこか謎じゃないですか?」と問いかけます。

飲食店が数年で移り変わるサイクルは、多くの人にも覚えがあるはず。お気に入りのお店が閉業することも稀ではありません。

価格競争によって、事業の継続が困難になるーー。

こうした負の連鎖から抜け出すためにも、「田舎で市場を開拓する」ことの有用性を語ります。

「田舎はライバルの数が圧倒的に少ない。需要に対して、供給する側の数が非常に少ない場所なので、ピュアなアウトプットができる。価格競争の中で価格を決める必要がなく、自分でマーケットをつくることができます。価値に対して適正な価格をつけて、その商圏範囲を捉え、サービスに対してマーケットを広げていくのは楽しいです」(まめさん)

photo by mocchy
photo by mocchy

人口7,400人の信濃町の環境を大きな強みと捉えるまめさん。身近に比較対象がいないエリアだからこそ、生み出した価値には「純粋な」対価を設定できるのです。 

「自分の欲しいものは自分でつくるというフェーズに入り始めたら、むしろ田舎の方が圧倒的にアウトプットの質が高い。純粋なアウトプットに対して、純粋なお客様の声がいただけるので、やりがいがあります」と、信濃町のLAMPで働く楽しさを笑顔で語ってくれました。

自由に生きるために欠かせない、個性を活かす「余白」と「責任」

LAMPには全国からスタッフが集まります。しかし、ほとんどがその分野の「素人」です。なぜ、経験のないメンバーがのびのびと活躍しつつ、安定したサービスを提供できるのでしょうか。

そこには、綿密な仕組み化がありました。

「スタッフ1人1人の伸びしろをつくるために、業務フローやシステムを構築し、土台を整えていて。どんな人でも常に、平均80点のサービスが出せる仕組みにするのが、スタッフへのバトンタッチの仕方だと思っています。これは、無個性で『ガストや吉野家やサイゼリヤと戦う』という意味ではなく、システムを構築すると、個性が発揮しやすい『余白』が生まれるんです」(まめさん)

この「余白」が、各スタッフの個性を輝かせる秘訣。

特に「お客様が不便に感じるであろうこと」をシステムで取り除いて「余白」を生み出すことで、お客様とのコミュニケーションの機会を増やしています。スタッフは日々の業務に追われるだけにならず、「人間らしさ」を活かしたサービスを提供できる。その結果としてLAMPは高い顧客満足度を保ち続けているのです。

また、「余白」の中で「各スタッフが努力して1ミリでも成長したら、LAMP全体の成長にも繋がる」と、個人の成長が組織にプラスの影響を与えることにも期待しています。「オペレーションの構築は、逆説的に人間臭さや個性をより浮き彫りにする」と、いわゆる仕組み化が連想させる『無機質さ』とはかけ離れた考えを教えてくれました。

LAMPのキッチンの様子(LAMP野尻湖HPより拝借)
LAMPのキッチンの様子(LAMP野尻湖HPより許可をいただいて掲載)

合わせて、「自由と責任は比例する」と話すまめさん。

「僕たちよりかっこいいことをやっている人たちは、たくさんいるんですよ。でも『俺たちは俺たちにしかできないことをやっている』というのが、すごく重要。自分で決めて、そこに責任を持って動いていくのが大切だと思います。

あと、『自分で決める』ときの核になるのは『自分の生き方』ですね」(まめさん)

「働き方よりも生き方を優先した方がいい」と主張するまめさんを筆頭に、LAMPには「生き方」を追求するメンバーが集まっています。面接で問われるのも、理想の働き方ではなく、大切にする「生き方」なのだとか。

一方で、「自由に振舞って、自由に『生き方』を優先するなら、それに比例して責任も大きくなるから、結局努力しなきゃいけないんですよ」とまめさんは続けます。自由を享受するためには、それに見合う責任を持ち、努力は惜しまないという考え方です。

実際に全国から飛び込んでくるLAMPのスタッフたちは、千差万別の「生き方」を大切に、それぞれが責任をもって追求しています。彼らが自由にのびのびと働いているように見える裏側には、尽きることのない工夫で生み出された「余白」と、各人の「生き方」への探究心があるのです。

LAMPスタッフのみなさん(LAMP野尻湖HPより拝借)
LAMPスタッフのみなさん(LAMP野尻湖HPより許可をいただいて掲載)

目指すは「やさしい世界」。サービスを通じて、生きづらさを消していく

「自分が幸せに暮らすためだったら、個人事業主でもいいんですよ。人を雇用して、管理コストを上げて、経営するっていうのはすごい大変です」と経営者の苦悩を垣間見せるまめさん。

それでもLAMPを続けていく原動力には、会社の理念である「人生を明るく」にかける熱い想いがありました。

「人生を明るく」という言葉は、まめさんの「魂の叫び」だと言います。個人としても「人生をかけて達成しなきゃいけない使命」なのです。

「例えば、サウナに入って、美味しいご飯を食べて、夜寝る前に空を見上げて、『生きててよかったな』みたいに思う人が1人でも増えたら、この世からいじめや自殺、戦争はなくなると、俺は本当に信じている。生きている実感が芽生えたら、みんな優しくなりそうだなって。やさしい世界になったら、生きづらい世の中に起因しているものが、1個でもなくなるんじゃないかな」(まめさん)

「The Sauna」の黒姫山の伏流を引き込んだ水風呂(LAMP野尻湖HPより拝借)
「The Sauna」の黒姫山の伏流を引き込んだ水風呂(LAMP野尻湖HPより許可をいただいて掲載)

人生を明るく照らす「やさしい世界」では、ストレスから解放され、生きやすくなると考えているまめさん。LAMPには「『一歩立ち止まる場所』として、『何もしない余白』をお客様にも堪能してほしい」「別に生き急ぐ必要はないんだよ」というメッセージを込めています。

「俺1人で飲食店をやっていたら、どんなに頑張っても年間3,000人ぐらいにしか届かない。チームじゃないと、社会に対して『人生を明るく』は実現できない」(まめさん)

困難な道だと理解していても、より多くの人々の人生を照らすためにチームを築き、会社経営をするまめさん。そんなLAMPの中期的な目標は、年間10万人の来客です。

この目標に向かって、まめさんは会社の理念であり、自身の使命でもある「人生を明るく」を軸に、仲間とともに真っ直ぐに歩み続けています。これが彼の追求する「生き方」。これからもLAMPを起点に「やさしい世界」の広がりが期待されます。

「生き方の先に、働き方があるべき」

このマインドが伝播する空間、LAMP。

訪れると、アナタの追求すべき「生き方」の輪郭がはっきりし、その先の光に気付くきっかけになるかもしれません。ぜひ「余白」を体感しにLAMP野尻湖へ。

サウナから野尻湖へダイブ(LAMP野尻湖HPより拝借)
サウナから野尻湖へダイブ(LAMP野尻湖HPより許可をいただいて掲載)

さらに、個性輝く取り組みを知りたい方は、LOCAL LETTERのメールマガジンから記事をチェック。

Editor's Note

編集後記

「今、『生き方』を追求できているかな」
LAMPを訪れてから、このように自問することが増えました。大人になるにつれ、「働くこと」ばかりに気を取られている気がします。自分の心地よさを第一に、日々を送れたらいいな。私の人生にも大きな影響を与える、大切なメッセージをまめさんからたくさんいただきました。もし「余白」を忘れてしまったら、すぐに帰りたい場所がLAMPです。

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