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LOCAL LETTER

国産の七面鳥に惚れ込み、移住を決めました。高知県中土佐町で「しまんとターキー」を販売する、元アスリートのこだわり

NOV. 29

NAKATOSA, KOCHI

前略、値段ではなく、商品や生産者の想いに触れた上で、食材を購入したいと思っているアナタヘ

この食べ物は一体どこからやってきたのか。
誰がどんな想いで、どんな育て方をしているのか。

ごくごく当たり前のようにスーパーやコンビニに行けば、野菜も果物も肉も魚も卵だって並んでいる光景を目にする。

誰がどんな想いで、何を食べさせて育て、なぜこの価格で陳列棚に並んでいるのか。何一つ知らないまま食材を買うことが、物心ついた時から私の「当たり前」だった。

そんな私がいつからだろうか。一番大きく表示されている「商品名」や「値段」よりも、後ろに小さく書かれた「産地」や「原材料」が気になり始めたのは。「これは長野のお母さんが育てているりんごだ」と、想いを馳せながら食事をするようになったのは。

これまでLOCAL LETTER編集部として、全国を巡る中で、皆様にご紹介したい食材、生産者さんに数多く出会ってきました。そこで、今回から編集部が出会った「心からオススメしたい食材と生産者さん」を少しづつ皆様にご紹介して参ります。

第1弾は、LOCAL LETTER編集部が満場一致でオススメしたいと共感した高知県中土佐町大野見地区の「七面鳥(しまんとターキー)」。日本国内の主要産地はわずか3箇所、約3,000羽しか育てられていない七面鳥を育てるために、移住した元アスリート松下さんを取材しました。

松下 昇平(Matsushita Shohei)さん 大野見七面鳥生産組合組合長 / 大阪府藤井寺市出身。2017年4月、中土佐町大野見で50年続く七面鳥生産の事業を継承するべく、スポーツ業界から畜産業界へ転身。七面鳥の魅力のひとつである「タンパク質」に注目し、「タンパク質でカラダは変わる、地域も変わる」をキーワードに活動のすべての時間を七面鳥に注ぐ。
松下 昇平(Shohei Matsushita)さん 大野見七面鳥生産組合組合長 / 大阪府藤井寺市出身。2017年4月、中土佐町大野見で50年続く七面鳥生産の事業を継承するべく、スポーツ業界から畜産業界へ転身。七面鳥の魅力のひとつである「タンパク質」に注目し、「タンパク質でカラダは変わる、地域も変わる」をキーワードに活動のすべての時間を七面鳥に注ぐ。

どれだけコストがかかっても、最高品質の七面鳥「しまんとターキー」を提供する

高知県中土佐町で50年以上前から飼育されている七面鳥「しまんとターキー」と、松下さんの出会いは、本当に偶然の出来事。

元トライアスロンの選手として活躍していた松下さんは、引退後もトライアスロンを継続。トライアスロンを行なっている時に訪れたのが中土佐町であり、そこで出会ったのが、高タンパク低カロリー、かつ、鉄分やビタミンが豊富に含まれる「七面鳥」だった。

「アスリートにとって、これほどまでに最高な食材はない。と惚れ込んでしまい、産業をもっと伸ばしたいと2017年に移住をしました」(松下さん)

実は、高校生の時にアメリカで生活していた松下さんにとって、七面鳥はとても身近な食べ物。ですが、中土佐町で食べた七面鳥は、アメリカで食べていた七面鳥とは全く違い、もちもちとした食感と、肉汁が溢れるほどジューシーな旨味に驚いたという。

「一般的に七面鳥は、鶏にあげているような配合飼料を食べさるんですが、大野見地区では、地元のものでなんとかできないかと、50年間試行錯誤する中で、人間は食べないお米の2番米や、ニラを飼料として与えていたことが、食感と旨味の秘訣でした」(松下さん)

飼料にこだわればこだわるほど、美味しい七面鳥ができる一方で、飼料にかかる金額と七面鳥の値段は跳ね上がる。

「お米はその年によって全く価格が異なります。30kg400円の時もあれば、1,000円の時もある。ですが1,000円の時は仕入れず、400円の時だけ仕入れるっていうのは、winwinな関係ではないので、大野見七面鳥生産組合では、毎年同じ金額で仕入れをするようにしています」(松下さん)

一方で現在の人手、飼育コスト、売値を考えると、七面鳥だけで生計を成り立たせることは難しく、松下さん含め、大野見七面鳥生産組合の方々はみなさん、半農半Xのように七面鳥の飼育と他の仕事を掛け合わせて生計を立てているという。

「今の人出では、どうしても飼育数が限られてしまい、注文があってもお断りをせざるを得ない状況になることが多々あります。だからといって、今の価格で人を雇うことはできないので、じゃあ単純に価格を倍にしますという訳にもいきません。なるべくコストを下げれるように企業努力をしていますが、すでに限界が見えている状況です」(松下さん)

七面鳥はあくまでもツールの一つ。大切なのは「しまんとターキー」を通じて、何を伝えていくか。

「七面鳥は地域の方も僕自身も、基本的に “半農半X” で考えているんです。いくら身体にいいタンパク質と言っても、タンパク質を摂ろうと思ったら、正直、他のものからでも摂れてしまいますからね。それでも、大野見地区の七面鳥を応援したり、気に入ってくれる人たちに食べてもらいたいと思っています」(松下さん)

元々、七面鳥だけで生計を成り立たせようとはしていなかったという松下さん。この先一度でも自身の七面鳥や近隣で鳥インフルが蔓延すれば、大野見地区で七面鳥を再び飼育する体力は残っていない。それだけのリスクも理解しながらも、松下さんはあえてこの地域に移住を決め、七面鳥の生産・PRに力を入れている。

「最初に大野見地区に興味を持ったきっかけは、タンパク質に魅了されたことですが、今僕が唯一できることは、大野見地区の広告塔として七面鳥を対外的にPRしていくことだと思っています。食べ物が美味しくて、自然が豊かで、人が優しい地域は、全国にごまんとある中で、どうやって大野見地区が生き延びていくかを考えた時、いくら大野見で摂れるお米が美味しいといえ、やっぱり七面鳥に紐づけて販売して方が突破口が開きやすいんです」(松下さん)

人口減少が著しい大野見地区では、どれだけ品質の高いお米や野菜を育てることができても、大量に生産することができず、販路を拡大させることは難しい。さらに全国に競合も多い中で、今からPR活動をしていくには体力が必要だからこそ、七面鳥という特産品を際立たせることによって、松下さんは地域に注目を集めようとしているのだ。

「七面鳥というワードで、大野見地区に振り向いてもらったら、僕はそこで1つ達成かなと思っています。あとはその人の好みや地域との相性があると思うので、まず振り向いてもらって、こんな地域です、こんなことやってます、こんなものもあるんです。って3時間話すことにしているんです。そうすると、最後まで聞いてくれる人と、1時間30分までは聞いてくれる人、最初の10分で諦める人と、いろんな人が出てくる。最初の10分しか話を聞いてくれない人と何かを一緒にしようと思っても、結局、継続することができなくなるんですよね」(松下さん)

七面鳥の卵を孵化させ、1年かけて大切に育てた七面鳥を屠殺、加工、配送まで、一連の流れを全て行なっている大野見七面鳥生産組合。その組合長として、県外へのPR活動に力を入れている松下さんは、最後にこんな話もしてくれた。

「大野見七面鳥生産組合 “組合長” という肩書きがあるから、僕自身が七面鳥を育ているとか、僕自身がすごいと取り上げられてしまうこともありますが、決してそうではないんです。大野見地区に七面鳥がやってきて50年、大野見生産組合ができて32年、これまで生産者さん、役場の方々、地域の協力者さんが一緒に頑張ってきたからこその今なんです。僕は、たまたま良いタイミングで七面鳥に出会い、バトンを受け継いだだけにすぎません。皆さんの理解がなくては、挑戦することすらできなかった。だからこそ、僕自身は自分ができるPRという部分で貢献していきたいんです」(松下さん)

大きなリスクを認識しながらも、移住を決めた彼には、七面鳥を通じて、その美味しさはもちろん、大野見地区全体を地域の人と一緒に背負い、守っていくという強い意志があった。

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Editor's Note

編集後記

いつお会いしても、楽しそうに七面鳥のお話をする松下さんですが、今回取材をする中で、改めて七面鳥愛を感じる瞬間がたくさんありました。中でも、特に印象に残っているのが、松下さんのこの言葉。

「大野見七面鳥組合としてしまんとターキーは最高品質だと、自信を持っていますが、アメリカの七面鳥が美味しくないと言いたい訳ではないんです。僕はアメリカの七面鳥も好きですし、それぞれの良さがありますから」(松下さん)

七面鳥も大野見地区も大好きだからこそ、今の活動に結びついているのだと、改めて実感する取材でした。

これからも「しまんとターキー」の応援をよろしくお願いいたします!

これからも「しまんとターキー」の応援をよろしくお願いいたします!

これからも「しまんとターキー」の応援をよろしくお願いいたします!

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