NAKATOSA, KOCHI
高知県中土佐町
絵本に出てくるような大きな鳥の丸焼きを食べてみたい。
誰しもが一度は憧れを持ったことがあるのではないかと思う夢。
大人になってから、鶏だと思っていたあの鳥が七面鳥であったことを知り、夢を実現できないまま、毎年アメリカ全土で盛り上がる「Thanksgiving Day」のニュースをテレビでみながら、再び憧れを抱く、を繰り返していた。
そんな憧れの七面鳥に、高知県中土佐町で出会ったのは、今から約1年前のこと。国産の七面鳥を、しかもアメリカの淡白でヘルシーな味とは全く異るジューシーな七面鳥を、育てているというから驚き、早速取材に訪れた。
まずは、アメリカで行われている「Thanksgiving Day」と「七面鳥」をご紹介。
「Thanksgiving Day」とはアメリカの祝日のひとつで、秋の収穫を祝い、家族や親族と収穫の恵みに感謝をしながら、七面鳥をはじめとしたご馳走を食べるお祭りのこと。七面鳥というと、クリスマスのイメージを持つ方も多いと思いますが、実はThanksgiving Dayはアメリカで最も「七面鳥」が消費される日であることから、別名「Turkey Day」と呼ばれることも。
そんな「Thanksgiving Day」の発祥は、1620年にイギリスの清教徒が宗教的自由を求めて、イギリスからアメリカへ入植した時まで遡理、アメリカの環境に適合できず飢えに苦しんでいた清教徒をアメリカの先住民が救ったことから、清教徒が先住民への感謝と収穫のお祝いをしたこと。
なぜ七面鳥を出すようになったのかについては、諸説ありますが、安価で大きな七面鳥を使うことで、一羽で家族全員がお腹いっぱいになること、さらに、清教徒が開催したお祝いの場に先住民が七面鳥を持って行ったことが有力説なのだそう。
淡白で、チキンよりもヘルシーであるが故に、クランベリーソースやグレービーソースと呼ばれるソースが必須といわれるアメリカの七面鳥に対し、あまりのジューシーさに塩胡椒で食べられるという国産の七面鳥は、一体どんなものなのだろうか。
日本国内の主要産地は、北海道滝上町、石川県輪島市、高知県中土佐町大野見地区で合計おおよそ3,000羽の七面鳥を育てている(アメリカで飼育されている七面鳥は2億羽を超える)。
中でも高知県中土佐町大野見地区は、人口約1,200人という限界集落で、約600羽の七面鳥を育ている、人口の半分は七面鳥という地域。
大野見地区の七面鳥文化について、七面鳥の飼育・販売している「大野見七面鳥生産組合」の組合長、松下昇平さんにお話をお伺いすると、少しづつ、大野見地区で七面鳥が育てられるようになった背景が見えてきた。
「最初の始まりは、今から50年以上も前に、当時大野見地区(旧:大野見村)の村長さんが、地域おこしの一環として、村の特産品にするために、村に七面鳥を持ち込んだのが始まりです」(松下さん)
大正時代の文献をたどると、1600年代徳川家光の時代にはじめて七面鳥が日本に入ってきたとされており、昭和天皇即位の礼の際におこなわた饗宴の儀では七面鳥の炙り焼きが出されるほど、ポピュラーな食べ物だったという。
「月間七面鳥という雑誌があるのですが、戦後GHQが日本に入ってきたときに欧米の食文化として、一気に七面鳥が入り、当時は名古屋に七面鳥組合があったり、大阪で七面鳥の大試食会が行われたりと、全国的に七面鳥文化が広まっていたようです」(松下さん)
最初は自分たちが食べる用として、数軒の家が2,3羽ずつ七面鳥を飼いはじめたが、昭和62年には10軒の家が100羽飼育している状態に。そこで、大野見村と5軒の家が大野見七面鳥生産組合を立ち上げ、クリスマスの期間だけ、大野見村の村民に向けて七面鳥の販売を開始していった。
「当時の大野見村にも4,000人を超える人が住んでいたので、村民向けに100~200羽の七面鳥を売っていたようです。大野見村は、地域に入ってこれる道が3つしかないので、閉鎖的であり、かつ、平地が多く自然も豊かな村なので、お米、野菜、果物、ほぼ全てが揃ってしまうんです」(松下さん)
2006年、隣町であった中土佐町と大野見村が合併したことをきっかけに、七面鳥の存在をはじめて知った中土佐町の公務員が少しづつ地域外に売り出し、生産量・販売量を増やしていき、クリスマスシーズンには、役場に七面鳥注文専用の電話を引いて、みんなで七面鳥の予約を受けていたという。
実は、高校生の時にアメリカで生活していた松下さんにとって、七面鳥はとても身近な食べ物。ですが、中土佐町で食べた七面鳥は、アメリカで食べていた七面鳥とは全く違い、もちもちとした食感と、肉汁が溢れるほどジューシーな旨味に驚いたという。
「一般的に七面鳥は、鶏にあげているような配合飼料を食べさるんですが、大野見地区では、地元のものでなんとかできないかと、50年間試行錯誤する中で、人間は食べないお米の2番米や、ニラを飼料として与えていたことが、食感と旨味の秘訣でした。実際に昔の文献を読んでいても、青野菜がいいという記載があります。家畜の美味しさはほぼ飼料で決まるため、今まさに研究を進めているところです」(松下さん)
大野見地区の自然の恵みと先人の知恵が掛け合わさることで生まれたジューシーな七面鳥「しまんとターキー」。生産量が限られるため、松下さんの直通電話を知っている人しか注文できない時もあるんだとか。
そんな松下さんがつくる七面鳥「しまんとターキー」の味を皆様にもぜひ知っていただきたいと、今回は特別に数量限定で販売中。
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ハロウィン、クリスマス、忘年会、年越しとお祝い事が続く10月末〜12月に、国産の七面鳥「しまんとターキー」で食卓を囲んでみてはいかがでしょうか?
NANA TAKAYAMA
高山 奈々