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LOCAL LETTER

「人財」で世界一のまちにする。Uターン協力隊の熱い挑戦

NOV. 06

TOKUSHIMA

拝啓、仕事の選択肢を作りたいアナタへ

地元に戻りたいけれど、働きたいと思う仕事がないから、起業するしかなくて不安。
飛び込みたい地域があるけれど、地域おこし協力隊の募集がないので困る。

生きるために不可欠な「仕事」は、地方での暮らしを実現する際の壁になることがあります。

地域おこし協力隊。2009年に制度化されてから、数多くの隊員が生まれ、短期のインターン制度などを含め6000人以上の隊員による、様々な活動が全国で展開されてきました。

ふるさとを、世界一のまちにしたい。

今回は、そんな強い想いを10年間持ち続け、地域おこし協力隊の仕事を自分で生み出した、山口大地さんの生き方に迫ります。

やりたい仕事はつくればいい。地域おこし協力隊になるまでの軌跡

2022年4月、山口さんは徳島県三好郡東みよし町に地域おこし協力隊として着任しました。
東みよし町は徳島県西部、香川県との県境にある山間地域のまちです。

東みよし町で生まれ育ち、中学時代までを過ごした山口さん。
中学3年生のときに、「東みよし町を世界一のまちにしたい」と意気込んだといいます。

東京圏には人がたくさん集まるけど、地元はどんどん人が減っていく。それがやるせなかったんです当時は東京にあまりいいイメージがなかったので、『東京より東みよし町のほうがいいはずだ』と思っていました。個人的に東京に対してライバル意識があったんです。

中学3年生の時、『東みよし町を世界一のまちにするには、外の世界をもっと勉強しなきゃいけない』と思い、一般的に選ばれる高校よりちょっと東の学校へ行きました。その後、大学進学の際には、『東京圏に絶対行くぞ』と1年間の浪人生活を大阪で過ごして、横浜国立大学に合格。、少しずつ東へ東へと引っ越していきました」(山口さん)

山口 大地 徳島県東みよし町 地域おこし協力隊 / 徳島県東みよし町出身。横浜国立大学進学、(株)リクルート就職を経て、地域活性化を多角的に実践・研究。2022年4月に帰郷し、「学び」と「交流」を軸としたコミュニティ拠点CO-MORIを設立。
山口 大地 徳島県東みよし町 地域おこし協力隊 / 徳島県東みよし町出身。横浜国立大学進学、(株)リクルート就職を経て、地域活性化を多角的に実践・研究。2022年4月に帰郷し、「学び」と「交流」を軸としたコミュニティ拠点CO-MORIを設立。

地元を離れるときから、東みよし町に戻ってくることを前提に、学生時代はまちづくりや地域経済に関する勉強をしていましたが、意外にも大学卒業後すぐに故郷に戻らなかったといいます。

「大学生活が終わって、その後すぐ地元に戻ってくるつもりだったんですけど、家族の大反対にあってしまって。『せっかく東京まで行ったんだから、東京で就職しなさい』と言われたんです。

就活して株式会社リクルートに入社しました。短期で成長できるし、すぐに辞められると考えていたところもありました。入社を期に東京に行くことができました。法人営業に配属され、ビジネスについて勉強しながら、2年ぐらい働いたのち、東みよし町に戻ってきました」(山口さん)

いざ、地元に戻るというタイミングで、一つの壁がありました。

就職先を調べた結果、家族を養わなきゃいけないとか、いろんな条件を考えたときに、ここだったら働きたいと思える職場がなかったんです。

魅力的な求人情報がインターネット上に載っていないという課題もあるんですよね。調べられなくて就職先が見つからない。地元に戻るなら起業・独立しなきゃいけないんだと感じていました。

ただ、起業と言っても、都市部で起業するのと地方の関係性の中で起業するのでは話が変わってくる。一人でいきなり起業するのは難しいので、役場の方に『東みよし町に帰ってこんな仕事がやりたいんですけどどうにかなりませんか?』と相談していました。

そこで地域おこし協力隊の制度を教えていただいたので、『それ、僕にやらせてくださいとお願いして、募集枠を作っていただいたんです

ちょっと変なパターンですよね。東みよし町ではほとんど地域おこし協力隊を採用していなかったんですが、役場の方々がたまたま僕のことを知ってくれていたので、『山口君なら』と言っていただけました。

現在は、地域のコミュニティ活性化をテーマに活動しています。逆オファーだったのでこのミッションは役場から提示されたのではなくて、僕のやりたいことも踏まえた募集要項を一緒に考えてくれたのです」(山口さん)

ひとを活かすまち、世界一は「人材育成」で勝負

東みよし町を世界一のまちにしたいとずっと思っていましたが、何だったら世界一になれるか考え続けた結果、人の良さを100%活かせるような人材育成のまちとして世界一を目指すことにしました。どこの地方もそうかもしれないですけど、人財とか、人の良さは資源ですよね。
それを実現させるためには、教育、そしてコミュニティの活性化が重要と思い、子どもたちの教育から動き始めたところです。

最終的なゴール地点である人材育成のまちに部分的でも共感してもらえる人を増やして、仲間が増えていくような作りにしたいなと思っています。

子どものたちの教育も実は将来の仲間を作るための作業でもあるんです。子どもたちにまちの良さを体感し知っておいてもらって、将来帰ってきた時に『一緒にまちのために頑張りますよ』って言ってもらえるようにしたいなと思っているんですよね」(山口さん)

もともと地域には、つながりの強いコミュニティがありましたが、現在は新たに加入する若い人が減ったことで、地域の担い手不足やつながりの希薄化が進んでいます。そういった状況の中で、山口さんは新たに築約170年の古民家を活用したコミュニティ拠点「CO-MORI(こもり)」の活動にも取り組んでいます。

地域の中に、自分の趣味や好きなこと・得意なことを活かした、新しい形のリーダーをどんどん排出したいと思っています。

例えばボードゲームが好きな人が、ボードゲームという趣味を人に紹介して一緒に遊ぶ場を作ったりとか。僕の場合は料理が好きなので、料理を通じて人とコミュニケーション取ったり、料理体験のワークショップをしたりとか。

好きなことが軸だと、主体的に関わることができる。『それがもうリーダーシップだよね』と自覚できるような、リーダーになるきっかけづくりを考えています。

そして、僕ら世代がリーダーシップを取ること自体も大事ですが、チャレンジできる環境で育つ子どもたちへの良い影響にも期待しています。

子どもたちが、地域の大人たちの楽しそうに活動する様子を身近に感じることで、いつか東みよし町を離れたとしても『自分も地元に戻って、キラキラした大人たちのような生活を送りたいな』と思い出してくれるかもしれない。

それは子育てするときなのか、スローライフを送りたいと思ったときなのか、タイミングはそれぞれだと思いますが、東みよし町へのUターン率を上げるきっかけになると思っています」(山口さん)

また、山口さんはコミュニティ拠点の活用とあわせ、団体活動補助金制度「わかよし」を立ち上げました。

「地域のコミュニティ団体とか地域住民の団体が何か新しいことを始めたいと思ったとき、一番ネックになるのがお金の部分。活動を考えている団体さんが動きやすくなるように、わかよしという仕組みを役場職員さんと一緒につくりました

わかよしとは、補助金を活用したい団体にそれぞれプレゼンテーションしていただいて、そのプレゼンテーション中で良かったものに対して町が補助金を出すというものです。実際に運用し、団体の伴走まで全部担当しています。

地域のコミュニティづくりから、人づくりまで、人材育成のまちをゴールに活動を広げています」(山口さん)

まち全体で人財が活躍できる仕組みをつくる。今後の展望とは

山口さんは、東みよし町を世界一のまちにする活動を続けていくために、今後の仕事づくりについても展開を考えています。

実際移住してくるときに一番困ったのはやはり、稼ぎや仕事の部分でした。

僕はもともと企業で営業をやっていましたが、地元の企業には営業があまりいないんですね。営業を雇いたくないわけじゃなくて、営業を1人雇うだけの仕事もないし、お給料も出せないっていうのがリアルなところだと思います。

だから、1社じゃなくて複数社まとまって、『まちの営業部』のようなものができればいいと思っています。そこに仕事が集まってきて、専属の専門人材が取り組んでいく。

1社との雇用契約では10万円、20万円しかもらえなかったものが、5・6社からそれぞれ5万、10万ずつもらうことができるようになれば、収入はもっと大きくなる。企業側も低負担で専門人財の力を借りることができます。

そういう仕組みを作りたいと思っていて、僕自身が最初のプレーヤーとして実践準備を進めています」(山口さん)

拠点施設CO-MORIを事務所とし、まちの魅力を伝える営業部、デザイン部や人事部をつくり、地域一丸となって日本一の人材育成のまちを作っていく。そうした未来を山口さんは描いています。

周囲に波及し、輝く大人たちであふれる東みよし町へ

地域コミュニティ拠点CO-MORIで、好きなことや得意なことを生かす人に集まってほしいという思いで活動する中で、少しずつ実現しているものがあります。

地元の大工さんに改修をお願いしたところ、「こういうことをやりたかった」と、依頼していない庭木を剪定してくれたり。地域の若者の自治組織に場所を提供したら、『ピザを作りたい』と山口さんが作った団体活動資金支援「わかよし」を使ってコミュニティ拠点にピザ窯をつくる活動を始めたり。

じわじわと変化が感じられるようになってきたといいます。

誰かが動き出したことによって、地域の人たちの眠ってた活力が見えてきています。地元で育った人間としてもそういう地域の変化が嬉しいですね。

地域おこし協力隊の活動としてうまくいってるのか、何が良くなってるのか、わからない部分も正直ありますが、こうした変化を実感する機会は増えました。

今、個人的に満足感が高い状態なんです。奥さんからは『好きなことをやっていていいね』って言われるんですよ。地元に10年ぶりに戻ってきて、お仕事というよりは、10年ぶりにやりたかったことをさせてもらっている感覚です。
地域おこし協力隊というところに関わらず、暮らしを楽しんでいるんです」(山口さん)

夢に向かって行動するまっすぐな想い。、それが、自分のやりたかったことに向き合う、山口さんの暮らしの根底にありました。

Editor's Note

編集後記

地域おこし協力隊になると一言で言っても、いろいろな背景があり、募集枠をつくるという情熱的なパターンもあるということに驚きました。10年間という長い充電期間を経てまちにかかわる楽しさは、今後も山口さんや東みよし町の方々の暮らしに彩りを与え続けるのではないかと感じました。

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