生き方
「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』。
第9回目のゲストは総務省から出向し、神奈川県理事(いのち・未来戦略担当)として働く傍ら、プライベートでは47都道府県の地方公務員と中央省庁で働く官僚をつなぐコミュニティ『よんなな会』を発足した脇雅昭さん。
『よんなな会』には現在5,000人以上の公務員が所属しており、仕事でもプライベートでも功績をあげている脇さんですが、今回の対談を通じて見えてきたのは、脇さん自身の “進路に対する葛藤” 。
国家公務員試験に受かったものの「老いていく親を幸せにできてない自分が地域のために頑張れるのだろうか」と、進路を決めきれずに3年間ロースクールに通う選択もしてきた脇さん。
「この道に進んでいいのか」と悩んでいるアナタにこそ伝えたい、脇さん流の一匙の刺激をお届けします。
平林:この対談企画でオファーをする方は「ご自身なりに “キャリアのつくり方” を考えている方」や「自分自身の人生軸で生きている方」です。
だからこそ、公務員の中でも「ご自身の考えを元に突き進んでいる脇さんにお話を聞くしかない!」とお願いをさせていただきました。
脇:そんな風に僕を見てくださっていて嬉しいな!確かに、総務省から神奈川県庁に10年出向しているという珍しいキャリアではありますね(笑)。
平林:キャリアもさることながら、脇さんはプライベートで公務員同士を繋げる『よんなな会』にも尽力されてるじゃないですか。今では5,000人以上の方が参加するコミュニティになっていますが、『よんなな会』はどんなタイミングで生まれたのでしょうか。
脇:実は何年にスタートしたのかさえ、定かじゃないんですよ(笑)。一応メディアで話すとき「2010年にスタートした」ということにしているんですが、そもそも「『よんなな会』を立ち上げよう!」とスタートしたのではなく、「目の前の人のために何ができるか」を考えた結果が『よんなな会』だったんです。
平林:脇さんの凄いところは、出会いを自分だけに留めるのではなく、周りにも拡散していくところだと思っています。それが『よんなな会』の土台にもなっていますし、1on1を100回以上繰り返して仲間集めをされているというお話もあって、行動力が尋常じゃないです(笑)。
脇:自分にできることは限られていますし、人は自分が持っていないものをたくさん持っているので、仲間が増えたらできることも増えるんですよ。あとはシンプルに人が好きなんです。
だからこそ「凄いことをしている」感覚ではなく、「ただ好きなことをしている」感覚で。義務感で動いていないことがポイントです。
平林:でも100回以上ですよ?その熱量の持続はすごい。
脇:僕からすれば何百万回目でも、相手からすれば初めて聞くことなので、常に同じテンションで愛を伝え続けることは意識しています。
今でこそ『よんなな会』も多くの人たちが関わってくれていますが、会う人会う人に「一緒にやりましょうよ」と想いを伝え続けられたからこそ、今があるのかなって。正直、皆さんが思っている以上に数打ってますよ(笑)。
平林:脇さんの個性は生まれつきなんですか?それとも習得したものでしょうか?
脇:どうなんでしょう(笑)。ですが、例えば地方公務員は全国に約338万人(平成12年度)いて、これは人口の約3%にあたるんです。この3%の人たちを「安定を求めている人たち」と決めつけてしまうのは、本当にもったいないと思っていて。
約300万人もいるんですから、それぞれに個性があって当たり前なんですよ。これこそが『よんなな会』の出発点。人口3%に1人で行動してリーチさせるのは必然的に無理なので、必死に仲間集めをしていました。
平林:脇さんを語る上で「まちづくり」は欠かせませんが、きっかけを教えてください。
脇:大学進学で地元(宮崎県)を離れたことだと思いますね。宮崎に帰省する度に疲弊しているまちを見て、「何かできることはないかな」とモヤモヤしていて。
大学時代はアカペラにハマって、サークル活動の日々だったんですけど、進路を決める時期になって、随分と頭を悩ませました。
平林:国家公務員以外にはどんな選択肢があったんですか?
脇:法学部だったのもあって、弁護士になる道も考えていました。実は僕が生まれたのは父が50歳、母が45歳のとき。だからこそ、幼い頃から親の老いを周りの人よりも強く意識していて、「老いていく親すら幸せにできていないのに、地域という抽象的なもののために僕は頑張れるのだろうか」と悩みました。
比較的どこでも仕事ができて、目の前の人たちの幸せをつくる弁護士になった方がいいのではないかと迷いに迷って、国家公務員試験に合格したのにも関わらず、大学院(ロースクール)に進学しています。
平林:合格したのに!
脇:そうなんですよ。当時は国家公務員の採用候補者名簿の有効期限が3年だったので、3年目に差し掛かり「いよいよ今年で決めないと」というタイミングで、両親に地域への想いをぶつけました。そしたら「とても嬉しいけど、お前の人生だよ、私たちが死んだあと、あなたは何を目指して生きていくの?」と言われて。
平林:素敵な親御さんですね!
脇:本当にそうですね。とはいえ今、長々とお話しさせてもらったことは全部後付けな気がしていて。
「親がどう」とか「地域がどう」と悩んできましたが、最終的には当時20歳そこそこだった僕に向かって、30歳後半ぐらいの総務省の方が「一緒に日本を良くしていこう」と目をキラキラ輝かせて話してくれたのにビビっときた、「超カッコイイ!」と思ったのが理由だったと思います。
脇:自分自身も同じぐらいの年齢(30歳後半)になったときに、20歳ぐらいの学生に同じように「日本を良くしていこう!」って自信をもって言えたら最高だなって思っていて。
あの時から約20年働いてみて思うのは、あの時の先輩のように、僕も今、若い人たちに真っ直ぐと想いを伝えられていることは嬉しいし、あの時の決断は正しかったなと自負しています。
目の前の人に向き合いながら、何百万回と愛を伝え続けてきたという脇さんの後編記事は2023年5月24日20時配信予定!後編では、その脇さんの原動力にフォーカスを当てながら脇さんの生き方を紐解きます。
「完璧でなければならない」と苦しんでいる方にこそ読んでいただきたい後編記事『悩むを辞めた。よんなな会発起人・脇雅昭の “完璧を目指さない” 生き方』もお楽しみに!
Editor's Note
「人が好き。でも、それが何に繋がるかわからない。」それが私自身が長年抱いていた悩みでした。後編でも語られているのですが、脇さん自身も「周りの人たちが立派な志を持っているように見える」と感じていたのだそう。ですが、脇さんのお話を聞いて、「人好きにも、人を繋げるという立派な使命があるのだ」と目の前がひらけた気持ちになりました。私と同じように悩んでいる方には特に勇気をもらえる後編も是非お読みください!
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香