生き方
「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する企画『生き方 – 人生に刺激を与える対談 -』。
第5回目のゲストは、“日本一おかしな公務員”から、民間企業へ転職した山田崇さん。
公務員時代には「地域の課題を想像で捉えるのではなく、実際に当事者になってみないと商店街の現状・課題は わからない」と、閉まった商店街のシャッターを開ける賑わい創出プロジェクト 『nanoda(なのだ)』を展開したり、TEDトークでの動画『元ナンパ師の市職員が挑戦する、すごく真面目でナンパな「地域活性化」の取組み』が話題になったりと、数々のユニークな活動をされてきました。
そんな山田さんが「24年の市職員生活に終わりを告げたのが2022年の3月。その決断の背景に迫った前半でしたが、後半では山田崇流「挑戦への思考術」に迫ります。
一歩を踏み出したいと願うアナタに注ぐ、一匙の刺激をお届けします。
平林:一歩目を踏み出す天才の山田さんですが、それでもやっぱり不安はつきものだと思います。山田さんは不安とはどう向き合っているんですか?
山田:自分が何を考え感じているのか「細分化」して、自分の認知を客観的にとらえるようにしています。まずは自分が不安な状態であることに気づいて、その不安を自分で受け止めることが大事なんです。
仏教哲学者で社会活動家のジョアンナ・メーシーは、愛しているからこそ痛みを感じ、痛みは大転換を起こすクリエイティビティだと伝えているんですが、この「痛み」をテーマにしたワークショップを経験したことがあるんです。印象的だったのは「悲しみ」や「怒り」、「無力感」や「恐れ」には、“ある感情” が隠れているということ。
山田:例えば「悲しい」感情には「愛」が隠れている。愛する人が亡くなったとか、愛する人から拒絶されたから悲しいというように、ただ悲しいのではなくて、「悲しい」の先には「愛」があるんです。
同じように「怒り」の感情には「情熱」が隠れてる。譲れない「情熱」があると、それが表面的には「怒り」として現れるんです。そして、「無力感」には「可能性」、「恐れ」には「勇気」の感情が隠れていて。
「恐れ」は「不安」とも言い換えられると思うんですが、何か新しいことをする直前に「恐れ」を感じるのではと。だから私は「不安」は、新しいことに挑戦する前触れであり、私が抱いているのは「不安」ではなく「勇気」なのかと思ったんですよ。
山田:この捉え方を知ってからは、不安になったときは「私はどんな勇気を持とうとしているのか?」と考えられるようになったり、すごく怒っている人に対峙したら「この人が持つゆずれない正義感は何だろう?」と思ったり。
だから、もしすごく不安になっている人がいたら「それは勇気の裏返しだよ、一歩踏み出してみたら見える景色が変わるよ」と伝えたいですね。
平林:今のお話にもあったとおり、山田さんは本からの知識や、ご自身の人生を通じた仮説検証(行動)を繰り返して、血肉にされているじゃないですか。ぜひこれから新しいことに挑戦しようとしている人たちにアドバイスをお願いしたいなと思っているんですが、山田さんの行動って「知識」と「行動」だと、どちらが先なんですか?
山田:「行動」ですね。2月に和歌山県白浜町でウェルビーイングをテーマに島田由香さん(株式会社YeeY 共同創業者・代表取締役/一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会 代表理事)とトークイベントを一緒にした際に、島田さんがおっしゃっていたのが「言葉が変わると脳が変わる」ということ。だから「準備ができていないから言えない」ということはないんですよ。だって言語として喋ることはできるんだから、発言をすることは行動の一つだと思っているんです。
山田:あと、よく聞かれる質問にあるのが「なぜ山田さんはモチベーションが高いんですか?」。これも「BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは(青砥瑞人 著)」という本で知ったんですけど「自分の脳で決めてこそモチベーションがあがる」「モチベーションを高めるには自分の脳で決めることが重要」ってこと。
つまりさっきの話でいうと、「学んだから、準備ができたから、行動する」ではなくて、自分でやると決めて、行動することの連続がモチベーションにつながる。それが脳神経科学でも証明されているんですよ。
山田:ドコモgaccoのパーパスもまさに「テクノロジーによる学び体験で誰もが自信を持って自分の人生を選べる世界を」。gaccoでは、すぐに役立つスキルからずっと役立つ教養(リベラルアーツ)まで人生100年時代の学びが体験できるオンライン動画学習サービスを提供しています。私のイメージですが、これはテクノロジーを使って図書館や大きな書店をつくろうとしているんだなと。
私たち人間は、自分の感心があるものには目が行きますが、興味がなければ出会うことすらできないことも多いじゃないですか。でもちょっと本屋に行ってみたら、「こんなこともあるんだ!」って発見があったりする。そういったものがテクノロジーでできるんじゃないかって。
だから私自身、もっと直観を大事に、「行ってみて、知ってみる」という行動を大事に選択していきたいと思っています。
平林:山田さんの行動力の裏側を知ることができた気がします。
山田:もう1つ「一歩目の踏み出し方」でヒントになりそうなのが、同じタイミングで複数のことを実行すること。2016年に発売された本『LIFE SHIFT(ライフシフト)』の第6章に「新しいステージ」があって、その中にポートフォリオワーカー(複数の仕事をかけ持つスタイルで働く人)の可能性が言及されているんです。
山田:この先、自分がどんな生き方をするのか、どんな仕事をするかがわかりづらい世の中になっているからこそ、わからない前提で、小さくはじめてみて、同じタイミングで複数のことをやる。副業やプロボノとかね。
平林:「同時進行はよくない」みたいな空気もあると思いますが、山田さんはそこをどう考えますか?
山田:同時にいくつもやる状態の「終わりの日」を決めることが大事かなと思います。それこそ、3ヶ月だけ同時にいくつかの仕事をやると決めるみたいな。そうすると、今の自分の生き方を変えざるをえないので、生き方のイノベーションにつながると思いますね。
平林:今回山田さんのお話を聞きながら改めて思ったのは、山田さんの当事者力の凄さ。
例えば、いま山田さんの目の前に課題が落ちてたら「あ、課題が落ちてる。どうやって解決しようか?」って考えると思うんですよね(笑)。
山田:そうなんですよね。「見てしまった」ということに意味があるって思っちゃうんですよ(笑)。
平林:そんな山田さんを本当に尊敬します。今日はお話をありがとうございました!
Editor's Note
山田さんのモチベーションの高さ、当事者意識の高さの所以に触れることができた対談。明日から活用できる実例がたくさんで、私同様、ちょっと一歩踏み出してみようかなと心を押してもらった方も多いのではないでしょうか。素敵なお話をありがとうございました!
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香