NAGANO
長野
地域活動を通じてもっと地域を盛り上げたい。
地域とともに歩み、その魅力を全国・世界へ発信したい。
そんな熱い想いを抱いているアナタにこそ、知ってほしいスポーツチームがある。
その名も『松本山雅(まつもとやまが)FC』(以下、松本山雅)。長野県の中信エリアに位置する松本市で、1965年に産声を上げたこのクラブは、単なるサッカークラブではない。
Jリーグでの戦いに挑みながらも、地域密着型の総合スポーツクラブとして、ホームタウン活動に力を注ぐ松本山雅。夢、希望、そして感動を届ける存在として、いま、多くの人々の心を動かしている。
今、アナタの情熱が動き出すきっかけが、ここにある。
地域とともに挑み続ける松本山雅の姿に、きっと次の一歩を踏み出したくなるはずだ。
取材の場所となったのは、松本市緑町に佇む『喫茶山雅(きっさやまが)』。
JR松本駅より徒歩15分。観光客が溢れる商店街「なわて通り」からわずかに小路に入ったところにある。
「このカフェがこの場所にあるってこと自体に、僕らには意味があるんです」
そう語るのは、「オザッシュ」の愛称で親しまれる小澤修一さんだ。
小澤さんは、元・松本山雅のプレイヤーであり、現在はクラブを運営する株式会社松本山雅の代表取締役。そして、この『喫茶山雅』の立ち上げにも深く関わってきた一人だ。
『喫茶山雅』は単なるカフェではない。ここは、コーヒーとサッカーの魅力を同時に楽しむことができる憩いの場。「COFFEE & FOOTBALL」というコンセプトのもと、訪れる人々にオリジナルメニューを提供するとともに、サッカーの魅力を伝えている。
「もともとは松本駅前に『純喫茶 山雅』という喫茶店がありました。そこに、地元高校のサッカー部の卒業生たちが自然と集まるようになったんです。そこへマスターが『どうせ暇してるなら、サッカーやってたんだからサッカーやりなよ』と言って、ユニフォームをくれたのが松本山雅発足のきっかけだと言われています」
残念ながら、1978年に『純喫茶 山雅』は駅前の再開発により閉店。
しかし、その約40年後の2017年、現在の松本市緑町に『喫茶山雅』として復活を果たした。
そんな歴史を持つこのカフェは、時代の移り変わりとともに形を変えながらも、松本山雅と地域の人々をつなぐ。いわば “タイムカプセル” のような存在であり続けている。
また、松本山雅発足の当初には、こんな「逸話」もある。
「フットボールクラブの結成当初、注文したユニフォームを見たら、山雅の『雅』の字が幼稚園の『稚』になっていて(笑)。すごく弱そうな字面になっちゃったんです。でも、結局1年間そのユニフォームを着て活動していたという逸話が残っています」
このほっこりとしたエピソードを象徴するユニフォームをはじめ、店内1階には松本山雅の歴史を感じられるグッズが飾られている。『喫茶山雅』は、松本山雅の歴史を今も店内に刻んでおり、訪れる人々にこれまでの歩みを伝えているのだ。
松本山雅のクラブカラーは緑。
『喫茶山雅』の位置する「緑町」の名前と重なる「緑」というキーワードに、惹きつけられた背景もあるという。しかし、込められた意味合いはそれだけではなく、この緑町という場所にあることこそ、特別な「意味」を持つという。
「喫茶店や飲食店をやろうと思ったら、やっぱり駅前とか大きい国道沿いとか、そういったところに作った方が人が来やすいんですよ。
昔の緑町は、飲食店がすごいたくさんあって、実は松本の中でもすごく栄えてたエリアなんです。しかし、だんだん人の流れが駅前に行って、ここの人たちが困っている状況がありました」
まちの苦しい状況を振り返りながら、小澤さんはこう続ける。
「スタジアムに集まっている熱を、まちの活性化に使えないかなと思って。あえてここにお店を作ったんですよね」
松本山雅は、J1時代にはホームスタジアムへの平均来場者数17,000人を記録するなど、熱狂的なサポーターで有名だ。
スタジアムに集まるファンの流れを、まちの活性化へつなげられないか。
そんな想いが身を結び、『喫茶山雅』にはホーム・アウェイ問わず、全国からサッカーファンが足を運んでいる。このカフェを目当てに松本を目的地とする人もいると言う。小さくとも確実に、まちの活性化に寄与している。
「サッカー好きで全国を旅行している人たちが、あえてここに来ることもすごく多いです。サッカーに詳しくない方が、サッカーファンに連れられてくることもあります。僕としては、どんな方でもウェルカムです」と小澤さんは陽気に笑う。
このカフェには、単なるコーヒーとサッカーの魅力を超えた、地域と人をつなぐ力があると感じた。喫茶店での井戸端会議から、新たな地域の輪が広がり続けているのだ。
松本山雅は地域の輪を繋いでいくなかで、地域に対してできることも日々模索している。
地域のサッカークラブとして始まった松本山雅は、2015年に悲願のJ1昇格を果たし、その後もJリーグの舞台で戦い続けている。クラブの基盤が強まるにつれ、地域との関わり方にも変化が生まれた。
「地域貢献活動は、まちの人にクラブを知ってもらい、応援してもらうために、地域とクラブとのタッチポイントを増やすという目的でやってきました。
しかし、そもそも地域が良くなっていかないと、クラブの応援する力も増えていかない。掛け算のようなものだと思っています。地域のためにできることがないかと、マインドチェンジが起きてきました」
年間約600回ほどの地域貢献活動を行っている松本山雅。
「たとえば、『健康運動教室』といって、選手が『福祉ひろば』でお年寄りの方たちと座りながらできる体操や、ボールを使った軽運動を行っています」
これは、当時『健康寿命延伸都市』を宣言していた松本市と始めた連携事業。行政の各分野と連携して、『心と体』の健康づくりと『暮らし』の環境づくりを一体的に進めている。
松本山雅は、サッカーを『生涯スポーツ』として考え、親子や高齢者も気軽にスポーツへ参加できる環境を提供している。松本山雅の地域貢献は、単なるサッカークラブの枠を超えた存在になりつつある。
まちを歩けば、風になびく松本山雅のフラッグや、マンホールに刻まれたクラブのエンブレムが目に入ってくる。
松本山雅が地域に根ざす様子を肌で感じられる一方で、クラブが置かれた状況は決して楽観できるものではない。2025年現在、松本山雅はJ3に所属。J1とのカテゴリーの違いは、クラブの経営のみならず、地域経済にも大きな影響を与えている。
「ホーム試合がある日は、アウェイチームのサポーターが松本まで足を運んでくれます。J1の時は平均2,500人くらい来ていましたが、J3の今では平均340名くらいまで減っています。
そう考えると、やっぱりカテゴリーによって、まちに与える経済的なインパクトはかなり変わってきます。まちの方からも『早くカテゴリーを上げてくれ』という声をいただきます」
ただ、逆境の中だからこそ、得られるものもある。
「自分の経験ですが、苦しい時間を共有した仲間ほど、絆が強くなります。
去年の平均観客数が8,500人くらいなのですが、これはJ3の中でも突出した人数です。この8,500人の応援していただける方たちと一緒に壁を乗り越えた時に、今よりももっと松本山雅が好きになり、この活動に深く関わるようになってくれると思います。
そして、コアな方々を中心に、もっともっと周りに応援の輪が伝播していく。
今は苦しいですが、次に来る喜びのための苦しさだと思っているので、あんまりネガティブにばかりは捉えてはいないです」
「楽観主義者だから、そう感じるだけかもしれませんが」と、笑顔を交えながらも、その目には確かな覚悟が宿っていた。地域とともに歩む挑戦は、これからも続いていく。
「スペインに行ったら、FCバルセロナの試合を見て、次にサグラダファミリアを見にいく。そんな人がいるように、何の魅力があって松本へ来訪するのか?となった時に、世界中から松本山雅というクラブを見に来てくれる流れを作れないかなと思っています」
小澤さんがそう熱弁するほど、松本山雅のホーム試合の魅力は計り知れない。その理由の1つは、ホームスタジアム『サンプロアルウィン(以後、アルウィン)』にあるという。
アルウィンは松本市の郊外にありながら、信州まつもと空港が隣接しており、高速インターチェンジも近い。松本山雅のホーム試合がある日は、松本駅から無料シャトルバスが出ている。
最大20,000人を収容可能である一方で、選手と観客との距離が近いのも魅力だ。その利便性や快適さから、口コミやサッカーファンからの評価も高い。
「空港の横にあるのでスタジアムが掘り下げて作られており、ピッチレベルが地下1階です。すり鉢状になっているので、外から見ると小さく見えますが、中に入ってみると意外と広い構造になっています。
一般にスタジアムに行くと、周りの景色が全然見えないですけど、アルウィンはメインスタンド側に北アルプスの山並みが見えるんですよ。
景観が素晴らしいのが特徴です。以前、外国人の観光客の方は『こんなに美しいロケーションのスタジアムは世界中探してもそうないんだ』と話してくれました。それぐらい価値のある場所だということを改めて思っています」
アルウィンは、信州・松本を最大限実感できる構造にもなっている。しかし、本当に大切なのは施設の機能性や利便性だけではない。そこに集う『人』の存在こそが、スタジアムの特別な空間を生み出しているのだ。
小澤さんが最後に語った言葉が、特に印象的だった。
「施設もすごく大事なんですけど、この空間を作るのってやっぱり人だなと思っています。例えば、僕らのチームには、『TEAM VAMOS』というボランティア団体があるのですが、ホームゲームの際には毎試合80人くらいが手伝ってくれています。
『TEAM VAMOS』はいわゆる『おもてなし』をすごく大事にしており、その雰囲気に僕らもすごく共感しています。スタジアムに来た人たちが笑顔で帰ってもらえるように、できることを全部やっていく、そんな文化がある。
松本山雅のホーム試合は、施設の魅力と人のあたたかさが融合した、唯一無二の空間になっていると思います」
地域の温かみを強く感じられる言葉だ。スタジアムやクラブを支えるのは、単なる施設のスペックではなく、そこに集まる人々の情熱と絆だということが改めてわかる。
地域を愛するアナタだからこそ、できることがある。
松本山雅や小澤さんが示すその姿勢が、アナタの住む地域のスポーツクラブをもっと魅力ある存在にできるヒントとなるだろう。
アナタ自身が、地域の未来を築くきっかけとなるかもしれない。
Information
「自信のあるスキルがなく、一歩踏み出しにくい…」
「ローカルで活躍するためには、まず経験を積まなくては…」
そんな思いを抱え、踏みとどまってしまう方に向けて、
地域活性に特化したキャリア開発アカデミーをご用意しました!
「インタビューライター養成講座」「地域バイヤープログラム」「観光経営人材養成講座」など、各種講座でアナタらしい働き方への一歩を踏み出しませんか?
<こんな人にオススメ!>
・都心部の大手・ベンチャー企業で働いているけど、地域活性に関わりたい、仕事にしたい
・関わっている地域プロジェクトを事業化して、積極的に広げていきたい
・地域おこし協力隊として、活動を推進するスキルや経験を身に着けたい
まずは体験会へ!
参加申し込みはこちら
Editor's Note
オザッシュさんからは、やはりこれまでの経験とキャリアから放たれるオーラをビシビシ感じました。しかしそれ以上に、温かい人柄でクラブや地域に愛される存在であることがよく伝わり、サッカーに馴染みのない筆者も、クラブやオザッシュさんが持つ魅力に引き込まれました。
FUJIKAWA REN
藤川 廉