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LOCAL LETTER

“暮らし” を提供する住宅工務店・アトリエデフ流「古くて新しいこれからの家づくり」

DEC. 26

拝啓、地球の自然を守り・循環する暮らしをしたいアナタへ

※本記事は「ローカルライター養成講座」を通じて、講座受講生が執筆した記事となります。(第2期募集もスタートしました。詳細をチェック

「家づくりは暮らしづくり」。

そう語るのは、本物の自然素材の家づくりを追求して27年になる工務店・アトリエデフ。

長野県上田市に本社を構え、今回取材した八ヶ岳営業所をはじめ、関東・中部エリアに5事業所を持つ彼らが体現する「古くて新しい家づくり」とは。

30年来環境のことを考え続けてきた代表取締役の大井明弘さんに、その在り方を取材しました。

大井明弘(Akihiro Oi)氏 株式会社アトリエデフ代表取締役社長 / 長野県上田市出身。サラリーマン時代に建てた自宅が原因で家族がアトピー性皮膚炎を発症したことをきっかけに「安心、安全に住める家」をつくろうと、1996年アトリエデフを設立。その後2007年にNPO法人エコラ倶楽部を設立し理事長に就任、2019年にサーキュラーエコノミージャパンを共同創設し理事に就任。未来の子どもたちにより良い地球を残すために、待ったなしの環境問題への解決に向け、さまざまな企業・団体と連携しながら活動を行なっている。

アトリエデフが作っているのは、自然素材と伝統技術を活かした「100年受け継ぐ家」

「家はいつか朽ちる時がくる。だからこそ僕らは、家が壊れたときに土に戻る素材や、100年後でも再び使える素材を使ってゴミにならない家を作っているんです」(大井さん)

アトリエデフが作るのは、自然素材を使うことにこだわり、その素材の性質を知り尽くした職人の伝統技術を生かして作る、強くて美しい家。

外壁には火山灰、壁は土壁。壁に使われる断熱材は、使い道が無く山に残された林地残材を使って作られる。家の骨格には、防腐剤や接着剤の使われていない日本の木だけを使う。

建材の組み立ても、木の性質を理解した大工が接合部を加工することで、現場で細かい組み上げをすることが可能になっている。

リサイクルや、自然に還すことができる建材を、ゴミにならない作り方で家として完成させていくのだ。

家の作りにしても、軒下が長く作られることで夏は強い日差しを適度に遮り、冬は低い位置から入る太陽光を効率よく取り込んでくれるなど、化石燃料を使わずとも現代の人が快適に過ごすことができる技術が、家づくりの要所に活用されている。

「いま、前橋工科大学と共同研究で、土の効果を調べています。今の時代に土壁?という方もいますが、土って物凄い威力があって、夏はすっごい涼しいし、冬はものすごく暖かい。日が入ってくると熱をため込む。夏は蓄冷といって涼しいので、エアコンを使わないんですよ」(大井さん)

古くからある技術を使い、自然素材にこだわって、データに裏付けされた、新しい家づくりを行っている。

家づくりに欠かせない国産の木に必要なのは、日本の山を守り育てること

「環境のことを30年来思っていて、そのために日本の山を守り育てることをやっている」(大井さん)

アトリエデフは、創業期からただ自然素材を使った家を作る工務店としてだけでなく、「環境」のことを考え続けて活動してきたと言う。

人にとって化学物質というのは、ないほうがいいんですよ。
大井 明弘 株式会社アトリエデフ

サラリーマン時代に建てた自宅に使われていた化学物質が原因で、息子さんがシックハウスに、娘さんがアトピーになったことをきっかけに、国産材を使い化学物質を使わない安心安全な家づくりをすることに決めて独立した大井さん。

海外から輸入される木材には、その品質を保つために防腐剤などの薬剤が使われていることが多い。化学物質が使われていない国産の木材を探すなかで、「日本の山の現状」が見えてきた。

「ひどいんですよ、もう荒れ放題になっちゃって。山ってのは、水を綺麗にしてくれる。雨が降っても濾過してくれる。年月をかけて綺麗な水にしてくれる。ところが山が悪いと濾過できない硬い土が増え、濾過できなくて流れてしまう。だから山をよくしていくことは、水がよくなることに繋がるんですよ」(大井さん)

大井さんが環境のことを考え、アトリエデフでの家づくりとは別に荒れた森を自身で整備して開いた「エコラの森」では、「手入れの行き届いた森」を体で感じることができる。

「森を育てるもう一つの重要性は、空気です。木は二酸化炭素を吸って大きくなる。年寄りの木はちょっとしか二酸化炭素を吸わないので、切って家作りに使う。若い木を植えれば、二酸化炭素を吸ってくれる。私たちにとっても嬉しい循環が起こります」(大井さん)

荒れた森に育った年老いた木は切って家づくりに使う。手入れの行き届いた森には、家づくりに欠かせない太い木が育つ。育った木を切ったあとは、適度に植林をする。

日本の山を適度に手入れをすること、国産の木を使って家づくりをすることは、繰り返せば繰り返すほど環境をよくする循環を産んでいるのだ。

アトリエデフが大切にするのは、家づくりだけでなく「暮らしづくり」

山を手入れし、国産材の木をはじめとする自然素材を使って家を建てているアトリエデフだが、彼らの活動はこれだけではない。

「家ってただのハードなんですよ。デフ(アトリエデフの略称)の家がどんどんできたとしても、環境が変わらないとやっている意味がない。僕らは環境を変えるために家づくりだけでなく、暮らしづくりをしているんです」(大井さん)

アトリエデフが手がけたモデルハウス「循環の家」には、自然と共生し・循環する「暮らし」を、現代人の生活に合わせて体験できる設備が整っている。

例えば、雨水を溜め込んでトイレなどの排水へ活用したり、下水道が無い代わりに合併浄化槽を使って微生物が汚物を濾過して、その浄化した水を活用してビオトープが作られている。

ミントなど料理に使えるハーブを育てるスパイラルガーデンや、宿泊者がお米を炊いたり料理に使うかまど、枯れた竹を燃やして電気を使わずお湯を沸かす竹ボイラー、太陽光で発電した電気を電気自動車に供給するスタンド、リビングの電源をまかなうオフグリッドソーラーなどもある。

古くからある生活基盤と現代人の生活を成り立たせるために必要な要素を融合させ、人だけでなく地球にも優しい暮らしを実現することができるのが、アトリエデフが作る家なのだ。

「かまどでご飯を炊いて、自分たちで野菜を作って、お昼に食べる。野沢菜を樽に漬け込んで、冬の食糧にする。蕎麦の実を育てて、脱穀して、蕎麦を打って。アトリエデフに興味をもった人は、そういう家に住みたい、そういうくらしをしたい、と言って僕らの元に訪れます」(大井さん)

自分で薪を割って、薪ストーブにくべて暖を取る。
自分で畑を耕して、米や野菜を自分で作る。
自分で耕した畑で蕎麦の実を育てて、収穫して蕎麦を打つ。
自分で大豆を使って、味噌を作る。
自分でかまどを作って、ご飯を炊く。

アトリエデフではこうした「自分で食べる・使うものは自分で作る」といった「暮らし作り」を、イベント開催やアトリエデフに興味を持って訪ねてきた人とのやりとりを通じて、家づくりと共に提案もしている。

アトリエデフで働くスタッフにも1人1人自分の畑を持ってもらい、取った野菜を使ってお昼にまかないを作ったり、家に持って帰って食べる、という暮らしを体験してもらっているそうだ。

僕らは、こういう暮らしをしてくださいなんて何も言いません。一緒に蕎麦を作りましょう、大豆を作りましょう、味噌作りをしましょう、といっているだけ。
大井 明弘 株式会社アトリエデフ

暮らしづくりの提案だけでなく、アトリエデフの全営業所では調味料や日用品を販売する「eco shop 木もれび」というお店を営業しており、

そこでは国産原材料と伝統的な濾しの技術に拘った古式醤油や、洗剤の成分を使わずに竹炭のアルカリ成分で汚れを落とす洗濯洗剤など、オーガニックで人と環境にやさしい製品が並んでいる。

しかしストイックに自給自足をして欲しいわけではなく、それらを「使ってください」と言うわけでもないという。

「暮らし手の人たちが家を建てて数年後に、『ようやくデフになってきました』と言うんですよ。『 “デフになってきた” って何ですか?』と聞くと、『醤油が変わった』『洗剤が変わった』というんです。それを聞くと嬉しいなぁ、と思いますね」(大井さん)

「自然に近い暮らしをしているとだんだん、ぜいたくな暮らし、というのがわかってくる。洗剤が変わると環境が変わるし、食べ物が変わると環境が変わってくる。そういう暮らし作りをご提案している、ということですね」(大井さん)

アトリエデフの活動に興味を持ち、人と環境にやさしい家を建てた人は、生活をするうちに少しずつ自身が使うもの・食べるものへの考え方まで変化させて行く。少しお金と手間がかかっても、そのほうがよいと感じる。

自然を害さない生活を行う人が増えていくことで、ようやくアトリエデフの目指すよい環境をつくることができる。だから家づくりにこだわるだけでなく、「暮らし」を変えていくことが重要なのだ。

アトリエデフに共感し集まる人たちと、今伝えたいこと

国産材を使った工務店も増えているが、自然素材・自然との共生にこだわった家と循環する暮らし作りへの徹底ぶりが、世間の関心も相まって共感する人を増やし、惹きつけているアトリエデフ。

最近では、都心を離れられないがアトリエデフの家を建てたいというお客様のために、生活の一部をリノベーションする事業「Re×S(リーバイエス)」を手がけたり、アトリエデフの活動に興味を持ち、働きたいと県外から訪れるスタッフを育てていくことにもより一層力を入れています。

植松和恵(Kazue Uematsu)氏 アトリエデフ環境事業チームリーダー /自然豊かな信州八ヶ岳の麓で生まれ育ち、建築を勉学の後、建築CADオペレーターとして出産後も勤めた後、農業や花卉栽培の培養経験と幅広く携わる。現在は、4児の母でもあり、昨今の気候危機を何とかしたいと「みらいの子ども達のために」環境問題を主に、株式会社アトリエデフにて活動をしている。環境事業チームチームリーダー。全国に広がる竹林問題の解決へ従事する。

なんでも大切にしようという心を産んで欲しい。訳のわからないものだったら大切にしたいと思わないじゃないですか。大切なものが無いのに家をつくったら、20年後にはゴミになる。

大切な思い出があれば、古くなってもメンテナンスをして、100年200年つないでいこうと思うじゃないですか。その大切なものを子どもや孫につないでいけばいいんです。それができるのが自然素材の魅力なんですよ」(大井さん)

家を建てたいと言う人がアトリエデフを訪れると、山に行って自分の手でチェーンソーで木を1本切ってもらい、大黒柱などに使うのだそう。そうすると、家を建てた人は、家づくりがかけがえのない大切な思い出となり、家をとても大切にする。

そうして大切にされた家はやがて古民家になるが、改修に改修を重ね、建て替えることになってもゴミになることが無いのが、アトリエデフが作る自然素材と伝統技術を駆使した家なのだ。

最近では、荒れた竹林が放置されることを日本の山の中でも特に大きな問題と捉え、竹林問題に目を向けてもらえるような、イベントやワークショップ、小中高への出前授業など様々な活動を行うなど、ますます活動の幅を広げているアトリエデフ。

少しでもアトリエデフに興味を持った方は、さらに大井さんについて取材を行った以下の記事を通して、その多様な活動内容と根幹にある山づくり・環境に対する思いを是非知って欲しい。

Editor's Note

編集後記

家づくりがよい山や森づくりにつながる。人の暮らしが変わることで環境全体が改善されていく。「環境を変えるためのよい循環とは?暮らし方とは?」自分ももっと詳しく調べて、明日から1つでも行動を変えようと思えた、大きなきっかけになりました。

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