前略、100年先のふるさとを思ふメディアです。

LOCAL LETTER

道具に頼らず、自分の頭で考えて実行する。野営の達人の「生きるを学ぶ」キャンプスクールとは

DEC. 02

拝啓、キャンプを通じて、何にでも役に立つ根源的な生きる力を身に付けたいアナタへ

※本記事は「ローカルライター養成講座」を通じて、講座受講生が執筆した記事となります。(第2期募集もスタートしました。詳細をチェック

コロナ禍を機にブームになったキャンプ。キャンプで自然を味わうことに憧れながらも、「車を持っていない」「道具を揃えるのが大変」「教えてくれる人がいない」と、つまづいている人もいるだろう。

そんなアナタに、車も山積みの道具もいらないスマートなキャンプの方法を教えてくれる、大人のためのキャンプスクールがある。そして、そのスクールを修了すると、ただのノウハウに留まらない、生きる力や論理的思考力までもが身につくとか。

この『大人のためのキャンプスクール』を運営する、野外活動創造集団「週末冒険会」の代表である伊澤直人さんに、スクール立ち上げの背景や想い、キャンプを通じて学べることについてお話を聞いた。

伊澤直人(Naoto Isawa)さん 週末冒険会代表/宮城県出身。幼少より参加したボーイスカウト活動では最高賞を受勲し、総理大臣と皇太子殿下に拝謁。米国発アウトドア・サバイバルスクールを卒業。会社員をしながら野外学校の運営等に携わるも、東日本大震災での経験をきっかけに起業を決意し、管理されたアウトドアではなく、本物の自然を感じられる”野営”を経験し楽しむ事業を運営。自らの力と自己責任で、自然の中で過ごせる人材を育成中。2021年5月にはTBS「情熱大陸」にも出演。

初心者はベーシックキャンプからステップアップ可能。レベルに応じた2段階のプログラム。

週末冒険会が運営するスクールのプログラムは、キャンプ初心者の勉強&交流の場である「ベーシックキャンプ」と、ソロでの野営を学び極める「スマートキャンプラボ」の2種類。

「うちのスクールの流れとしては、ベーシックキャンプという初心者向けのプログラムから入って、『ヤバい、楽しい、もっと覚えたい!』と感じてもらい、次のレベルであるスマートキャンプラボに進んでもらうのが主流です」(伊澤さん)

【各プログラムの概要】

ベーシックキャンプ(1泊2日) スマートキャンプラボ(1泊2日×4回)

【学べること】

・基本的なテント、タープの建て方、キャンプサイトの選び方

・焚き火技術の基礎と、火を使った美味しくて簡単な野外料理法

・いろんなタイプの装備(テント、タープ、バーナー、ランタン)の特徴、使用法

・キャンプに必要な装備の種類、選び方、賢い買い方について

・キャンプ場選びのコツ

・安全にキャンプを行うためには

【学べること】

・ナイフとマッチ1本で、確実に焚き火を熾こす事のできる“実行力”

・自然の中で活動する際、基本的な身の施し方、作法が身につく“自活力”

・天候や地形を読んで、野営時の様々なトラブルに備える“予測力”

・その日に手に入れた材料を使い、カンタンで美味い料理を作る“創造力”

・その日その時の環境に合わせて寝床を作る“応用力”

・時間や天候、目的地までの距離などからスケジュールを組み行動する“段取り力”

・野外で一人、寝泊まりできる“精神力”

週末冒険会HPより。各プログラムの詳細はこちら。
ベーシックキャンプ:https://backcountry-boys.net/monthly-camp
スマートキャンプラボ:
https://backcountry-boys.net/smartcamp

「いきなりソロキャンプはちょっと‥」という人は、まずは「ベーシックキャンプ」に参加してキャンプの楽しさに触れてみるのがお勧め。なお、ベーシックキャンプは埼玉県比企郡ときがわ町でも開催されるため、首都圏在住の人も参加しやすくなっている。

ソロでの野営を学び極める「スマートキャンプラボ」は、全4回のカリキュラムに分かれており、月1回、長野県の八ヶ岳BASEに通って段階的にソロキャンプの知識と技術を習得していく、より本格的なプログラムになっている。

八ヶ岳BASEの前に広がる景色。傾斜がなだらかな広葉樹の森、という条件で拠点を探していた伊澤さんにとって最も理想に近い場所だった。畑が広がり、向こうの山まで見える景色が、伊澤さんが一時期住んでいた北海道を彷彿させるのだとか。

いじめられっ子だった子ども時代に、ボーイスカウト活動で身についた「生きる力」。

週末冒険会ならではのプログラムであるスマートキャンプラボの内容は、伊澤さんが幼少期から12年間取り組んだボーイスカウト活動がベースになっている。

「小さい頃は、いじめられっ子、喘息持ち、インドア派という弱い子どもでした。そんな自分を見かねた親に入れられたのがボーイスカウト。最初はキャンプに行くたびにテントの中で喘息になり嫌で嫌で仕方なかったんですが、それでも続けたことで、小学校高学年くらいからは身体も強くなり、火も起こせるようになっていました。

 今、サバイバルと呼ばれているものは、僕自身が子どもの頃にボーイスカウトでキャンプとして習ったもの。テント一個、タープなし、食事も全て焚き火。自転車とザックで物を運ぶ。そんなことをやっていると、ただ野外で楽しく過ごすだけではなくて、生きていく自信、力につながってくる」(伊澤さん)

実際、伊澤さんはボーイスカウトでどんなスキルや知恵を身に付けたのだろうか。

「ボーイスカウトで学んだことは、最も根源となるキャンプスキル。道具がないから、何かがないからできない、と言うのはダメ。便利な道具があれば当然快適で、道具を持っていけるときはそれでよいけれど、大事なのは道具がなくてもなんとかなる、というスキルを持っているかどうか。キャンプは本来一夜の仮の宿なのだから、豪勢なものを作る必要はなく、自分のスキルと最低限の物を組み合わせて、最低限の機能を確保できればいいんですよ」(伊澤さん)

取材は伊澤さんが起こしてくれた焚き火を囲みながら行なった。奥に見える家は伊澤さんが約3年をかけて自分で建てたというのが驚き。

東日本大震災を機に起業を決意。一緒に遊ぶ仲間づくりのために始めた事業が、生きる強さを学べるキャンプスクールに発展。

ボーイスカウトの活動を終えた後、米国発のアウトドア・サバイバルスクールを卒業するなど、自分のスキルを磨いていった伊澤さん。そのスキルを人に教えようと考えるようになったきっかけはどこにあったのだろうか。

「会社に勤めた後も、僕自身はずっとサラリーマンをやっていくタイプではないと思っていたんですが、どうやって独立するかのアイデアもなく、会社に留まっていました。そんな折、東日本大震災で実家の宮城が被災し、友達も何人か命を落とした中で、お金のために会社で働いている場合ではないと感じ、独立を決意しました。そして、自分の『やりたいこと』『できること』『お金になること』の3つが交わるものは何かと考え抜いた結果、キャンプにしよう、と決めたんです」(伊澤さん)

市場を分析した結果からキャンプスクールにニーズがあることも見えてはいたが、当初の目的はあくまでも一緒にキャンプができる仲間づくりだったそう。当時も今も、キャンプができる仲間を増やして、焚き火をしながら楽しく飲んでいたい、という気持ちは変わっていませんと伊澤さんは笑う。

起業して最初の3年程は苦しい時期が続き、貯金の底が見えた時期もあったそうだが、Facebookのいいね数の1,000件超え、八ヶ岳への転居、初の書籍の出版、の3つが重なった2017年を転機に事業が上向いていく。その中で、『大人のためのキャンプスクール』参加者の顔ぶれは伊澤さんの予想を裏切るものに。

やっていて驚いたのは、女性の参加者が多いこと。女性の方が、面白いと思ったものには迷わず飛び込むのかも知れない。当初は自分と同じようなおじさんたちと焚き火をするイメージだったのに、参加者が全員女性で、ガールズトークに全く混ざれずに一人で黙々と焚き火の世話をすることになった回もありました。また、年配の方の参加も多く、参加者には10数キロのザックを担いで一人で山の中を進ませるので、75歳の方から、受講後のレポートに『伊澤さんを恨みました』と書かれたこともあります(笑)」(伊澤さん)

参加する人に共通する特徴を聞くと、「チャレンジ精神、やってみたいという好奇心、強くなりたいという想い」だと伊澤さんは言う。

取材の合間に行なってくれたロープワーク講習。木にシートなどを括る際の「ふた結び」を教わる。伊澤さんの手際のよいロープさばきには美しささえ感じた。

では、ファミリーキャンプでは得られず、伊澤さんのスマートキャンプで得られる「強さ」とは何なのだろうか。

道具に頼らない、すなわち、自分の頭で考えること。本当に生死の危険が迫ったタイミングでは、危険を回避するためにはどうすればいいか、今夜ここで快適に過ごすためには何が必要か、という論理的な思考に加えて、実際にそれを実行するための、木を切る、刃物を扱うなどのスキルを含めた総合的な力が必要になります。ポイントは、必要最低限の機能をなるべく最短で達成すること。例えば、冬になるとこの場所はマイナス15度になるため、凍死を避けるためには、焚き火を確実に、なるべく早く起こさなければならないんです」(伊澤さん)

スマートキャンプラボの修了生は累計で90名程にのぼる。その中には、スクールを通じて「人生が変わった」「世界が広がった」という人もいる。また、「普段の生活では会えない人に会える」「会社にはいないタイプの人に会える」というコメントからは、考え方や人生のスタイルが異なる人に出会えることもこのスクールの魅力だとわかる。

修了生の一人が自ら作り、ゴールデンウィークを過ごしたという小屋。自分で考え実行する力を身に付けたキャンパーの凄さを目の当たりにした。

キャンプスクールで身につくのは何にでも役立つ根源的な強さ。これからも「生きるを学ぶ」場として、自分が培ったものを伝えていく。

それでは、スクールで身につく「強さ」は日常でどう役に立つのだろうか。伊澤さんに聞いてみた。

スクールで身につくのは根源的な強さなので、何にでも役立ちます例えば、何かをやるときの諦めない粘り強さや、物がないところでもなんとか結果を出すために工夫をする姿勢などもそうですね」(伊澤さん)

加えて「山の中で道具もなく一人放り出されるキャンプ体験と、起業したばかりでお金、コネ、人がない、ないない尽くしの中でお金を稼いで食べていかないといけないベンチャー企業の状況は似ている」とも語る伊澤さん。実際に依頼を受けて企業向けのキャンプ研修を行うこともあるらしい。

個人にも組織にも役に立つキャンプのスキルを、伊澤さんは今後どう広めていこうとしているのか。

「新しい商品や切り口も考えていきたいとは思いますが、根っこにあるものは一緒なので、あくまで見せ方や楽しみ方を変えるだけ。最近、うちの事業のコンセプトを改めて考えたときに『生きるを学ぶ』が僕らのキーワードだと気づきました。大人が遊びながら、楽しく、生きるを学ぶのがうちのスタイルです」(伊澤さん)

インタビューの最後には、米国発のサバイバルスクールのプログラム中に体験した、命にかかわるレベルの壮絶なピンチのエピソードを披露してくれた伊澤さん。そんな目に合ってもサバイバルを止めなかった理由を聞くと強くなりたい。その想いは今でも自分の根源としてあります。でも結局は、キャンプが好きなだけなんですと笑顔で話してくれた。

キャンプに興味がありながらも踏み出せないでいる人も、道具に頼るキャンプの先に一歩踏み出したい人も、キャンプ本来の楽しさを知り尽くした伊澤さんのもとで、「生きる」を学びに行ってみてはどうだろうか。

Editor's Note

編集後記

私自身、伊澤さんの言う「車に道具を山積みする、まるで夜逃げのようなキャンプ」を趣味にしている人間だったので(笑)、「そういうキャンプに慣れている人が、強いキャンパーを目指すための第一歩はありますか?」と伊澤さんに聞いてみたところ、「持っていく道具を半分にして、それでなんとか過ごしてみること」という、的確かつ耳の痛い答えが返ってきました。

「今ではサバイバルの達人なんて呼ばれているけど、実は里山のじいちゃんたちには敵わない」と謙虚に笑っていた伊澤さん。自分の知識とスキルを発揮しながら、自然とともに生きる。昔の人が当たり前にできていたことを、今の我々は出来なくなってきているからこそ、伊澤さんのスクールは他にない魅力を発しているのかも知れません。

「お前はどれほど本当の生きる力を持っているのか?」と問われ続けたような、しびれる取材の時間でした。

伊澤直人さんの活動をシェアで応援しませんか?

伊澤直人さんの活動をシェアで応援しませんか?

伊澤直人さんの活動をシェアで応援しませんか?

LOCAL LETTER Selection

LOCAL LETTER Selection

ローカルレターがセレクトした記事