協力隊
総務省が2024年度までに全国で8,000人まで増やすことを目標に掲げている、地域おこし協力隊。近年“起業型”の地域おこし協力隊もじわりと増えています。
北海道・留萌市(るもいし)が同市で初となる“起業型”地域おこし協力隊を募集することになりました。留萌市を舞台に最大3年間、協力隊として活動をしながら自分のやりたい事業の自立を目指す起業家を支援するものです。
9月には協力隊に興味・関心のある方や地方での起業を検討する方におすすめの2泊3日の留萌市体験ツアーも実施されます。(定員が満員になったため募集を終了しました。現在は、個別相談会を実施しています)
今回は留萌市役所 地域振興部 地域戦略担当の佐々木さんとMAKOTO WILL(マコトウィル)の鈴木さんに、“起業型”地域おこし協力隊の特徴や留萌市で取り組んだ際の活動イメージをお聞きしました。
留萌市は北海道北西部に位置し、日本一の加工生産量を誇る「数の子」をはじめ水産加工が基幹産業の水産資源に恵まれたまちです。ハート型をした人口2万人の小さな港町ですが、豊かな自然環境に恵まれた暮らしができます。
「留萌市は夕陽がとてもきれいなまちなんですよ」と話してくれたのは、留萌市役所 地域振興部 地域戦略担当の佐々木さん。
生まれも育ちも留萌市という佐々木さんは、高校卒業後、留萌市役所に入庁した、まさに生粋の留萌っ子です。現在は地域おこし協力隊に関する業務といった民間事業者などとの連携施策の企画・立案や企業誘致といった業務を担っています。
これまでの地域おこし協力隊は、自治体が提示するテーマを実行したい人に3年間取り組んでもらうミッション型の協力隊でした。今回は、地方での起業に意欲ある人と共に留萌市を盛り上げていく“起業型”地域おこし協力隊の募集をする、留萌市では初となる取り組み。
“起業型”とはこれまでの地域おこし協力隊とどんな点が異なるのでしょうか?
「ミッション型の協力隊は、地域課題を自治体側が提示しますが、起業型は協力隊が自ら地域課題を発見し、解決を提案していくもの。協力隊は3年後に事業を自立させることを目指し取り組みます。協力隊は起業の準備ができ、役所はさまざまな視点から地域課題を解決できるといった、一石何鳥にもなる仕組みです」(佐々木さん)
都市部の人を対象とした募集を行うことで、地域の中の人たちだけでは気づけない課題やうまく活用が進んでいない資源を見つけ、地域の中に活かすという相乗効果を生み出そうと、“起業型” の採用へ踏み切ったと言います。
そしてもう一つ、留萌市が “起業型” の協力隊を受け入れるために行った決断が、協力隊と町との契約を「委託型(業務委託)」にしたこと。さらに、留萌市は地域に関する相談などのバックアップを行い、協力隊のメンタリングやコーチングを担う株式会社MAKOTO WILLが協力隊の起業支援を実施する役割分担も構築。万全の体制で、協力隊の起業サポートを行う意気込みを見せます。
「これまで募集してきたミッション型の地域おこし協力隊は雇用型で採用していたんですが、今回は業務委託に踏み切りました。これで協力隊の自由度が一気に上がります。役所として管理をすることは大事ですが、起業に向けてスピード感を持って活動したい人の立場を考えたとき、 “活動のしやすさ” を優先させ、業務委託にしたんです」(佐々木さん)
“起業型”地域おこし協力隊は、留萌市の地域資源を活かし、地域課題の解決につながっていくような地域に根ざした形の新たな仕事づくりをします。留萌市からの業務委託という形で最長3年間の期間で活動をすることが可能。
例えば、留萌市の特産品や使用されてこなかった資源、廃棄されるものを活用した商品開発、アウトドアアクティビティ体験、空き家を活用したカフェなどの店舗といったさまざまな視点から、留萌市でできる事業づくりのアイディアが広がります。
自分の想いを事業化させるチャンスがある中で、もっと具体的に考えると留萌市にはどんなチャンスが広がっているのでしょうか? MAKOTO WILLの鈴木さん、留萌市役所の佐々木さんそれぞれに聞いてみました。
「今、留萌市ではふるさと納税に力を入れているので、留萌市の海産物や特産品を活かした商品開発に携わりたい方や、空き家を活用した取り組みをしてみたい方は留萌市で事業化するチャンスがあるのではと思います」(鈴木さん)
「留萌市は山と川と海が近いコンパクトなまちなのに、まだまだアウトドア事業が開発されておらず、アウトドアの達人たちが落ち着いて楽しめると訪れる場所なんです。なので、アウトドア事業ももってこいだと思いますし、鈴木さんがおっしゃるように、ふるさと納税への出品連携や、空き家の利活用も大歓迎ですね」(佐々木さん)
「他自治体であれば、事業者側からふるさと納税の出品をお願いして叶うかどうか。もちろん、出品できる商品かどうかは精査が必要ですが、空き家活用も含めて、前向きな理解がある自治体は珍しいんですよ」(鈴木さん)
これまで卒業した協力隊の中には、任期後に農業をするために起業した人や、観光関連に携わって活動していた人が岩盤浴やセラピー事業を興したという事例があるそうですが、まだそれほど多くの起業事例があるわけではありません。
豊富な資源と、柔軟な受け入れ体制を示す役場、そしてMAKOTO WILLの起業支援があると同時に、まだまだ未開拓の分野も多い留萌市は、自分なりに事業づくりをしていくにはぴったりの地域かもしれません。
「起業をしたい」「地域に貢献するビジネスをしたい」という想いを持っていても、起業をしたことがない人からしたら「本当に自分が起業できるのか?」と不安を持つ人も少なくないでしょう。
そこで大きな安心材料となるのが、MAKOTO WILLの存在。
MAKOTO WILLは、創業支援や地域おこし協力隊の事業支援、中小企業支援など起業・創業支援事業の実績が多数あるだけでなく、民間企業とは異なる制約も多い自治体との連携に定評を持つ企業。
起業家の悩みはもちろん、自治体側の想いも理解したうえで、間に入ってコミュニケーションをとりながら起業家を支えていくプロフェッショナルであり、起業を目指して協力隊になる人にとっては、フラットに自分の考えを聞いてもらえる心強いサポーターです。
「新しい活動をしていくのに悩みを持たない人はいません。私たちMAKOTO WILLは、協力隊のみなさんの壁打ち相手になるイメージです」(鈴木)
最初は各活動や生活に慣れるのに必死になり、なかなか自分の事業を話したり、ブラッシュアップする機会をあまり多く持てない可能性もあるからこそ、スタート時点から「起業支援の組織が身近にいることは大事」と鈴木さんはいいます。
MAKOTO WILLと協力隊は月に1回程度のミーティングで状況を共有し合い、事業の相談や専門家からアドバイスをもらうことで事業を磨いていきます。
さらに、地域外の協力隊やプレイヤーとも人脈をもつMAKOTO WILLは、事業の悩み事や事業への想いをヒアリングしながら、必要に応じて留萌市内外のプレイヤーを紹介してもらえるように働きかけを行うなど、最大限のバックアップ体制を用意。
起業家のメンタリング、コーチングをするようなサポートを受けながら、自分のやりたい事業の実現に近づくことができます。
事業面のサポートを行うMAKOTO WILLに対して、それ以外のサポートを行うのは、留萌市役所。
最初は留萌市での生活や地域の人たちと馴染めるのか不安を感じるかもしれませんが、そこは留萌市役所の佐々木さんや民間企業経験者の長谷川さんといった市の担当者たちが、協力隊と地域をつなげるサポートをします。
もちろん自治体として守るべき部分もあります。しかし、起業を目指す人が地域おこし協力隊となって留萌市で活躍いただけるように、なるべく柔軟に対応していきたいと思っています。佐々木 捷 留萌市
佐々木さんのような余白を残すスタンスを持つ行政マンは、全国的に見れば見るほど多くない貴重な存在。起業を目指す人にとってみれば、この余白(自由度や柔軟さ)があるからこそ、大胆な取り組みにも挑戦しやすくなります。
「最初から市役所側が『良い物事は柔軟に受け入れていく』というスタンスなのは、活動する側からしたらありがたいですよね。起業したい方にとって、生業を形成しやすい地域だと思いますよ」とMAKOTO WILLの鈴木さん。市役所の柔軟に対応しようとする姿勢は、きっと協力隊の活動にも大きな力となると強調します。
事業側と地域側のサポートの元で活動できる留萌市の“起業型”地域おこし協力隊。なんとなくのイメージを掴んだ人もいるかもしれませんが、「そうは言っても留萌市のことを知らないまま協力隊に応募をしてもいいの?」「留萌市のことをもっと知りたい」と思ったアナタ。
まずは留萌市を五感で感じていただける2泊3日の「お試し地域おこし協力隊ツアー」に参加してみてはいかがでしょうか?(定員が満員になったため募集を終了しました。現在は、個別相談会を実施しています)
開催は9月10日(土)〜12日(月)。初日は留萌市に到着したら懇親会を行い、2日目は市内の資源となるようなスポットを複数見学、3日目にはMAKOTO WILL主導でビジネスモデルを描くワークショップを実施します。この3日間で、今回の協力隊募集の内容について、実際の着任場所や業務内容なども具体的に聞くことができるので、迷っているアナタにおすすめです。
留萌市はどんなところなのか? 着任したらどんなところで暮らすのか? まちの中にどんな資源があるのか? 浮かぶ疑問を自分自身で直接見聞きできる貴重な機会。
「山と川と海が本当に近い。車で20分圏内でそれぞれ行ける距離にあるので、素材がいろんな所に落ちてるなと、僕自身も実際にまちをみたからこそポテンシャルを大いに感じたんです」(鈴木さん)
2泊3日のツアーは、熱意を高める場。最初からどんな事業で起業をするか定まっていなくても、自分の想いを確認しに行くだけでもきっと有意義な時間になります。
留萌市にとって今回初めての起業型地域おこし協力隊の募集。実際に活動がスタートすればさまざまな課題にぶつかることもあるでしょう。市役所やMAKOTO WILLのサポートと共に自分の想いを、留萌市でカタチにしてみませんか?
直接担当者に相談できる「個別相談会」を実施しています。協力隊募集の詳細を聞いてみたい!まちにどんな人がいるか知りたい!そんなアナタは、ぜひお気軽にご連絡ください。
※今回は同時募集している「ミッション型(アウトドア)地域おこし協力隊」と、同じツアーを開催しております!ツアーに参加してみてから、ご自身にあった雇用方法を選ぶことも可能!まずはぜひ現地に足を運んでみてくださいね!
■日時
9月10日(土)15:00~9月12日(月)12:00
※月曜は仕事などで出られないなど途中で帰宅しなければいけないという方は事前にご連絡ください。また定員は10名程を想定しております。定員を超えた場合は選考作業を行わせて頂きますのでご了承のほどよろしくお願い致します。
■場所
北海道留萌市
※定員を10名程に想定しておりますので定員を超える場合は人数を選定させて頂きます。
現地ツアーは協力隊応募への絶対条件ではなく、選考にも関係致しませんのでご参加できなかった方も是非ご応募ください!!
■ツアー内容
・プロジェクトの全体像のご説明
・着任場所、業務の説明
・留萌市の観光場所や資源の確認
・ワークショップ
■参加費
移動費は実費となります。(※交通費1万円まで支給)
宿泊費、1日目夕食、2日目昼食、夕食はこちらで負担致します。
Editor's Note
自分の好きを追求したり、社会課題を解決できる取り組みで「いつかは自分も起業したい」と想いを口にする人が多くなってきた印象があります。では、「いつか」とはいつやってくるのでしょうか。やはりそれは、その人自身の行動力が必要になってくると思います。留萌市の“起業型”地域おこし協力隊は、行動するチャンスを与えてくれるプロジェクト。どんな方が留萌市の協力隊となり、どんな面白い事業が生まれるのか、今から楽しみです。
ASUKA KUSANO
草野 明日香