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LOCAL LETTER

地域の強さは現場力。ビジネスプロデューサーの視点でみる「ビジネスの種の見つけ方」

NOV. 09

拝啓、地域ビジネスの新たな可能性のヒントを掴みたいアナタへ

近年、「地方創生」「地域活性化」という言葉を耳にする機会も増え、「地域ビジネス」が盛り上がりを見せています。

自分の愛する地域をもっと良くしていくための、地域ビジネスに欠かせない思考法や視点とはどういったものなのでしょうか?

今回は、北海道上士幌町を舞台に開催した地域経済サミット「SHARE by WHERE」の中でも「ビジネスプロデューサーが描く地域のビジネスチャンス」と題して、実践者たちが行なったトークセッションをお届け。

地域での起業が増えたいま、先進的に取り組んできた起業家は、いま何を考え、何を見据えているのかーー。これからの地域でのビジネスチャンスを紐解きます。

あらゆる角度から俯瞰して、ビジネスの種を見つける

白石氏(モデレーター。以下、敬称略):このセッションでは、登壇者の皆さんがどんな発想や視点で地域ビジネスの種を進化させたのかお聞きしたいと思っています。

大瀬良氏(以下、敬省略):僕は、出身が長崎県なのですが、「地元の人にとって長崎が素敵なまちに見えていないんじゃないか」と感じたことが、ビジネスの起点でした。東京に行くと、たくさんの人に「長崎っていいまちだよね」と言われますが、長崎の人たちは「人口も減ってしまって、もう長崎はダメばい」と悲観的だったことに違和感があったんです。

どうすれば長崎の良さを見出すことができるか考えたとき、江戸時代に鎖国政策として造られた「出島」がヒントになっていて。「長崎は外から人が来て、ようやく面白くなるまち。ちゃんぽんのように外からの文化を混ぜて、新しい文化をつくっていくことには自信を持っている」と気づき、外からどんどん人が来る仕組みを考えていきましたね。

写真左>大瀬良 亮(Osera Ryo)氏 株式会社KabuK Style 共同創業者 / 1983年長崎市生まれ。2007年に筑波大学を卒業後、電通入社。2015年から官邸初のソーシャルメディアスタッフとして従事。2019年4月より旅のサブスク「HafH(ハフ)」のサービスを開始、2019年9月 電通退社。2018年4月~2021年3月 つくば市まちづくりアドバイザーに就任。2021年4月~(一社)日本ワーケーション協会顧問。

白石:現在、全国でHafHのサービスを展開されていますが、原体験を通して全国的な悩みも解決できると感じられていますか?

大瀬良:そうですね。戦後の日本は、壊滅してしまった東京を世界一のまちにすることがゴールだったので、全てのインフラや情報が東京に一極集中するようにつくられてきました。全てが東京に流れていた歴史から、まずは長崎に風が来るようになれば、他の地域にも横展開できるのでないかと期待をしながら事業構想に入りましたね。

齋藤氏(以下、敬称略):私たちは「とにかく稼がなくては」と、1粒1,000円の「新富ライチ」を売り始めたのがビジネスのきっかけです。糖度15度以上、50g以上とブランディングをして、今ではふるさと納税で2,000箱以上を販売しています。

よく「うちの地域は何もない」と言われますが、見えていないだけで現場にはビジネスの種が絶対にあると思っていて。他にも、平均年齢が上がっている農家の担い手不足解決に向けた取り組みもしており、そういった課題こそがビジネスの種になると感じています。

写真中央左>齋藤 潤一(Saito Junichi)氏 AGRIST株式会社 代表取締役CEO・クリエイティブディレクター、一般財団法人 こゆ地域づくり推進機構 代表理事 / 米国シリコンバレーのITベンチャーでクリエイティブ・ディレクターとして勤務後、2011年の東日本大震災を機に「ビジネスで地域課題を解決する」を使命に地方創生の活動を開始。2017年4月新富町役場が設立した地域商社「こゆ財団」の代表理事に就任し、1粒1,000円ライチの開発やふるさと納税で寄付金を累計70億円以上集める。2019年10月に農業課題を解決するために収穫ロボットを開発するスタートアップAGRIST株式会社創業し、代表取締役に就任。Forbes Asia 100など国内が10以上の賞を受賞

橋村氏(以下、敬称略):私はもともと地方創生や地域経済活性化を目指していたわけではなく、「自然の中で、仲間達と好きなだけ遊べる場所をつくりたい」という思いがビジネスのきっかけでした。

「自然=キャンプ場経営」と思いついたものの、マーケットを見て、キャンプ場経営だけでは食べていけないと判断して。だったら、圧倒的体験を提供し、単価を上げようと「船でしか行けない、1日1組のキャンプ場」を作ることを決意しました。場所探しからキャンプ場作りまで1人で行い、2011年にサービス提供を開始したんです。

写真右>橋村 和徳(Hashimura Kazunori)氏 株式会社VILLAGE INC 代表取締役社長 / 伊豆半島の辺境地を2年の歳月をかけて自力で開拓、2011年に「VILLAGE INC. 」を設立し船でしかいけない1日1組のキャンプ場を皮切りに辺境、廃墟を舞台にアウトドア事業を展開中。『何もないけど何でもある』をモットーにし、地域において新しいワークスタイルの創出にチャレンジしている。

前田氏(以下、敬称略):僕は富山県が大好きで、富山には何でもあると思っていて。そもそもほとんどの人が「何もない」と思っていることが、実はすごくチャンスだと感じています。

地域ビジネスは「不足・不満・不便・不安」と言われることがありますが、これを解決し、何もなかったところにワクワク感を与えられると、ビジネスになるものが出来上がっていく。そして、その地域に愛着があって、課題をなんとかしたいと思っているプレイヤーが揃っていることは、地域のビジネスの種になります「東京を何とかしよう」と思う人は世界に出てしまっていますからね。

写真右>前田 大介(Maeda Daisuke)氏 前田薬品工業㈱、㈱GEN風景、㈱GENFARM立山、㈱Double Score、㈱裏門 代表取締役社長 / 薬都富山の製薬会社3代目代表を務める。また、製薬事業を柱に、心身と地域の健やかさを創造するモノ・コト・空間事業を次々とローンチし、2020年にはアロマとハーブ(薬草)をキーコンテンツにした美と健康の複合施設『Healthian-wood』をオープンさせ、限界集落で新しい村創りに挑戦している。

齋藤:地域の強さって現場力ですよね。ただプレイヤーが居ないだけで種が種だけで終わってしまっている状態ってすごく多いので、テクノロジーを使って、外の人と繋がっていくことがキーになってくると思います。

ビジネスの鍵は「ビジネスの目的」を明確にすること

白石:今回のセッションは北海道の上士幌町で開催していますので、上士幌の地域資源に対しての可能性などをお聞きしたいと思います。

前田:富山県って17市町村あるんですが、横の市町村同士が競争していたりするんですよね。一方で上士幌の皆さんは「十勝の一員としての上士幌」というスタンスで、いくつかの市町村がきちんとまとまっている印象を受けました。地域の人たちのチーム力にビジネスの可能性を感じています。

大瀬良:地域で事業を立ち上げる時に、自分がやりたいことを考えつつも、「どういう位置付けのビジネスなのか」を俯瞰しておいたほうが良いと思っています。

要は、金儲けのためにやるところに悦を感じるのか、ソーシャルキャピタルの繋がりが生まれることに悦を感じるのか、自然資本を守ることに悦を感じるのか。これらをフェアに選べるのが地方の強みでもあると思います。東京だとソーシャルキャピタルが難しいですからね。

大瀬良:地方経済を回すときに、何を大事にしたいのか、きちんと明確になっていることはすごく大事なんです。

そんな中で、北海道は、やはり自然資本が強いですよね。これらをいかに経済やコミュニティにも使えるようにしていくか、上士幌はそのバランスを取るのがすごく上手だなと思いました。

「何もない」なんてことはない。隠れたビジネスチャンスを見つけ出す視点を持つ

白石:残り時間も少なくなってきましたので、最後にみなさん一言ずつお願いします。

前田:僕は、全地域になにかしらのチャンスがあると思っています。人間としての潜在的な意識の中に「地域が良い」と思っている人、多いのではないでしょうか。

橋村:僕らは「何もないけど何でもある」を掲げていて。本当にローカルとか気にしていなくて、東京だってローカルじゃんと思っているくらいです。

地方と都市部って分けやすいですけど、地方には宝の山が眠っているんですよ。人が居なくなるってことは好き勝手できるってことでしょ?(笑)

限界集落になったら、うちの社員をどんどん行かせて、町長になることもできるわけじゃないですか。村もつくれちゃうくらいのチャンスだと思っているので、材料をどう生かすかは「人」にかかってるそこに尽きるかなと思いますね。

齋藤:今日はありがとうございました。宮崎県の齋藤以外、面白かったとアンケートに書いていただければと思った次第です(笑)。地域経済は見えないところでも、みんなで支え合っているので、明るいところだけがまちづくりだと思うなよと言っておきたいと思います(笑)。

大瀬良:最後に、僕が感じる地域経済の未来のヒントを2つ共有したいなと思います。一つはコロナ禍で、人間関係の “余白” や “のりしろ” がすごく奪われたなと感じていること。全てオンラインでよくなりましたが、会議の後の立ち話や、ちょっとご飯に行ったときの乾杯で信頼関係を深めていたはずなのに、それができなくなってしまいました。くっつくはずの、のりしろが重なるだけの今だからこそ、この余白を敢えてつくりに行かなきゃいけない時代になっているここに僕はチャンスがあると思っています。

もう一つはコロナ禍で日本という海に囲まれた国は、ある種、数百年ぶりの鎖国状態になりました。改めて、どうやって世界と繋がるのかを見直さなければならないと思います。今、全員のスタートラインが同じになっているんですよ。いかに国境を越えたビジネスを地域から起こせるかすごいチャンスが来ていると思います。

白石:皆さん、本日はありがとうございました!

Information

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LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは、「Co-Local Creation(ほしいまちを、自分たちでつくる)」を合言葉に、地域や社会へ主体的に関わり、変えていく人たちの学びと出会いの地域共創コミュニティ。

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Editor's Note

編集後記

実際に地域ビジネスで活躍している方々の目線は、勉強になるものばかりでした。視点を少しずらすだけでも、見えてくるビジネスチャンスは無限大だなと思いました。地域ビジネスの更なる盛り上がりから目が離せません。

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