TOCHIGI
栃木
自分の「やりたい」という思いと、地域の資源を掛け合わせて挑戦したい人。
地域の思いをときほぐし、仲間とともに事業を進めていきたい人。
そんな人に、知ってほしいまちがあります。
それは、「挑戦しやすいまち」を目指す栃木県塩谷町(しおやまち)。
今、塩谷町では一緒に挑戦する新たな仲間となる地域おこし協力隊を募集しています。
栃木県塩谷町は人口約9千人のコンパクトなまちです。
栃木県のやや北寄りにあり、宇都宮市に隣接。東京へのアクセスは車で約2時間と、都市部へのアクセスは良好です。
一方で、「湧水の郷」としても知られ、高原山の麓にある塩谷町は豊かな自然に囲まれています。名水百選に認定された「尚仁沢(しょうじんざわ)湧水」は、地元の人々にとって貴重な自然の恵みとなり、美味しい作物を育んでいます。
塩谷町は、人と人の距離感、人と自然との距離感が心地いいまちです。
そんな塩谷町は「まだまだ未開拓の余白が多い。だからこそ、自分が関われる余白があって、自分の『やりたい』を叶えられる余白がある」。そう語るのは、塩谷町で地域おこし協力隊の支援を行う高塚桂太さんです。
今回、塩谷町で地域おこし協力隊として募集している人材は「チャレンジする仲間」になってくれる人。
「塩谷町には今、『これから一緒に未来のまちを作っていきたい』と本気で行動していらっしゃる方々がいます。日々迷いながら、とにかくやってみる。でも、自分たちだけではなかなか遠くに進めずにいる現状もあります。
そんな『今』だからこそ、ともに未来のまちづくりを考えながら走っていける仲間ができたら嬉しいです」(高塚さん)
高塚さん自身も、地元塩谷町にUターンしたチャレンジャーの一人です。
東京都内の大学に通い、海外で働く内定をもらいながら迎えることになったコロナ禍。海外へ渡航できない日々が続く中、ふるさとである塩谷町に戻り、高塚さんは自分のキャリアを見つめなおしました。
子どもの頃の目線と大人の目線では、地域を見る目が違う。徐々に「ここで何かをやってみたい」という気持ちが芽生えたといいます。
まず頭で考えて課題を解決しようとするのではなく、地域の中に飛び込んで話を聞き、自分もやりたいことを口にする。地域内での対話を繰り返すことで今の活動に結び付いたと、これまでを振り返る高塚さん。
現在は、自身が挑戦する中で得た経験や知見を活かしながら、地域おこし協力隊の伴走支援を行っています。着任した方々が塩谷町で安心して働き、やりたいことをカタチにしていくためのサポートに力を注いでいます。
そんな高塚さんが語る、チャレンジする人々を受け入れる塩谷町の土壌。そのキーワードは、ここならではの「ヒト・モノ・カネ」の集まり方にあります。
「田舎は声をかければなんでも集まってくる感覚があります。モノも集まってくるし、家も集まってくるかもしれない。だから、何かを始めるときの最初のコストが低くできるんです。僕自身もその恩恵を受けましたが、チャレンジャーとしてはすごくありがたいことなんですよね。
そして、このまちには一緒に走れる仲間がいます。田舎の資源を最大化し、仲間と協力する。そうすることで塩谷町は、自分のやりたいことに対して突進していける環境になるんじゃないかなと思っています」(高塚さん)
またお金の面では、塩谷町には独自の「ふるさとビジネス創業支援事業補助金」という仕組みがあり、事業の立ち上げの一歩目を支えます。町内で新しい事業を立ち上げる人、新たな事業に進出しようとする人に対して100万円を限度に補助しています。この補助金は、町内のチャレンジする人を思う、役場職員のアイデアから生まれたものです。
「チャレンジしやすいっていうのは、もう1つ意味があるんです」と塩谷町での「暮らし」について補足する高塚さん。
「ローカルでのチャレンジは、売り上げをめちゃくちゃあげないといけない事業モデルではなくても、継続しやすい。つまり、自分の暮らしを大切にしながら仕事ができることが強みだと思っています。これは固定費が安い地域だからこそ実現できるものですね」(高塚さん)
高塚さん自身は「仕事もプライベートもあんまり関係ない人間なので、ずっと仕事しているとも言える生活」と語りつつ、楽しみながら塩谷町での生活が送れていると、日々の暮らしを振り返ります。
「町中で焚き火会が突如始まったり、いきなりバーベキューに誘われたり。そうしてお肉をごちそうになった1時間後には、また事務所に戻ってパソコン仕事をしている。僕の場合は、そこらへんのオフとオンはなくて、ただ、楽しいと感じています。
チャレンジしやすいまちを作ることを会社の理念に掲げているので、それに向かって走ることに充足感を得ているし、出会う仲間たちと集まって焚き火をしたり、飲んだりする時間も心地よいんです」(高塚さん)
日中は、町役場近くのコミュニティースペース「Step One」を運営している高塚さん。Step Oneは誰でも立ち寄ったり、仕事ができたりする場所であり、活動中の地域おこし協力隊のメンバーも度々顔を出していると言います。
塩谷町の地域おこし協力隊は、日々の活動や今後の事業設計まで、気軽に高塚さんに相談できる環境があります。はじめから「チャレンジするぞ」と意気込むのではなく、まずは暮らしの延長からできることを広げていく。スモールステップで独自のキャリアを歩んでみる。
そんな軽やかな挑戦が、塩谷町では実現できると感じさせてくれます。
地域おこし協力隊の任用期間は最大3年間。
その中で、日々の業務をこなし、地域に入り込み、退任後の自分の未来まで思い描くのはなかなか難しいことです。
塩谷町では、そんな3年後を見据えて挑戦する人を支え、時には一緒に悩みながら伴走する仕組み作りを進めています。役場の受け入れ担当課のサポートに加え、現在は民間の中間支援組織も設けられ、地域全体としてもチャレンジを応援する環境を整え続けている塩谷町。
しかし、当初からこういった仕組みが整っていたわけではありませんでした。
昨年、高塚さんが地域おこし協力隊の中間支援として入り込む以前、8名の協力隊が着任していましたが、退任後の定住率は8名中2名。栃木県内では協力隊の定住率が5割を超える中、非常に低い割合でした。
塩谷町役場で地域おこし協力隊を担当する、まちづくり推進担当の職員も危機感を抱いていました。
「活動に対してのサポートは一定ありましたが、退任後に向けたサポートが不足していたと感じています。例えば、退任前の最後の1年は多くの隊員が起業に向けて準備する期間になるのですが、そこでうまく起業のサポートが十分にできていなかった。こうした課題を感じていました」(風見さん)
そこで、高塚さんと連携し、地域おこし協力隊の中間支援組織を立ち上げ、地域おこし協力隊の伴走支援、退任後の事業設計の支援を始めました。
地域おこし協力隊の中間支援組織を置いている自治体は栃木県内には少なく、塩谷町は県内の先進的な事例として注目を集めています。
退任後の出口まで見据えた伴走支援を提供する仕組みを作ると同時に、隊員が孤立しないようなコミュニケーションも意識しているとのこと。役場の内部でも、協力隊自身も困ったら聞く、それを職員は手伝う、といった関係性を超えたやりとりが広がり始めています。
「最初から定住を求めるのは、口だけのお願いになってしまう。本当に地域の良さを知ってもらって、住みたいという気持ちになってもらえるようにサポートすることを心がけています」(古久保さん)
危機感を持って工夫を重ねたことで、すでに手ごたえを感じているといいます。
現役の地域おこし協力隊5名のうち2名は、退任後に向けて起業準備中。塩谷町での新規就農やインタリアンレストランの開業に向けて準備を進めているなど、まちに新たな風を吹き込んでいます。
「定住」は誰かに縛られることで、果たされるものではありません。
塩谷町で暮らす中で、自然と「もっとここにいたい」と思える。そんな気持ちが育つような、あたたかなサポートが期待されています。
「地域おこし協力隊が、まちの中で3年間頑張ったのに何も残らないというのは、僕の中ではショッキングです。嫌な気持ちでまちを離れていくのは、お互い不幸ですし、できればそうなってほしくない。
僕は、ローカルでチャレンジすることで豊かな人生を描けると思っているんです。
本当に心が踊るようなワクワク感を自分自身で作り出せたり、やってみたかったことを素直に実践できたり。そういうことを比較的ハードル低くできるのがローカルの良さだと思っていて。そうして、豊かに生きていける人が増えれば、世界はもっとよくなるはずです」(高塚さん)
塩谷町が地域おこし協力隊に求めるチャレンジの内容は、全部で3種類。
それぞれに込めた思いを伺いました。
1つ目は、空き家の利活用分野(モデルケースづくり、拠点づくり等)。
空き家活用モデルづくりや、 協力隊拠点づくり・運営(コミュニティマネジャー)、空き家バンク管理運営、 地域プロジェクト開発などを通して空き家の利活用を進めることがミッションです。
塩谷町には、空き家バンクという制度はあるものの、なかなか空き家の登録が増えないという課題がありました。空き家バンクという形にとらわれず、古民家の店舗活用など、発想力を掛け合わせて課題を解決したい人を募集しています。
2つ目は、有機農家として新規就農を目指した有機農業研修生です。
こちらは退任後に有機農業への新規就農することを前提とした準備、受け入れ農家での研修を受けることがミッションです。
塩谷町では、2023年に「オーガニックビレッジ宣言」を行い、町全体で有機農業をはじめとした環境にやさしい農業を推進中。持続可能な町づくりを目指しています。現在、有機農業の情報発信に取り組む地域おこし協力隊がいますが、来年度からは実際に新規就農を目指す研修生を募集します。
3つ目は、地域商材を活用した商品開発コーディネーター。
地域プロダクトの洗い出し、商品づくり業務(食品・サービス等)、商品デザイン、ポップアップイベント開催、商品造成に向けた取り組み(OEM先開拓、加工場整備など)等がミッションです。
塩谷町には特産品があるものの、現在、都市部に向けた流通経路が充実していません。今後特産品を流通させていくために、地域商社の設立も見据え、塩谷町のブランド力向上、商品のブラッシュアップに取り組む挑戦者を募集しています。
この3つのプロジェクトは、塩谷町で地域づくりに取り組むプレイヤーの声や職員の感じるまちの強みや弱みを取り入れて設定されたもの。どれも、地域の課題と自分の挑戦を掛け合わせながら塩谷町をパワーアップさせるミッションです。
挑戦の一歩目はここから
「新しい視点で地域資源を活かせる人」
「地域住民や関係団体と積極的なコミュニケーションをはかり、チームでプロジェクトをしたい人」
「前例にとらわれず、地域課題に対して主体的にチャレンジできる人」
「地域内で起業して、まちの未来を一緒に作っていきたい人」
「“やりたいこと”の実現に向けて、努力できる人」
これが、3つのミッションに共通する人材像です。
この塩谷町の思いに共感したら、それが、チャレンジはの1歩目です。
この記事を読んで塩谷町でチャレンジすることに興味を持った、もっと知りたいと感じたアナタは、ぜひオンラインでの説明会にご参加ください。
「塩谷町って、よく『何もない』って言われるんですけれども、何もないからこそいろんなことができる、挑戦できるまち。ここ1、2年、挑戦できるまちとして取り組んでいる塩谷町に興味があったら、ぜひ話を聞きに来てもらえればと思います」(古久保さん)
「塩谷町は実は、人口も1万人を切っている県内で1番小さい自治体なんです。でも逆に言えば、競合も少ないところなので、色々取り組むにあたってやりたいことをやりやすいと思います。ぜひオンライン説明会に参加いただければ非常にまちとしてもありがたいなと思います」(風見さん)
説明会では、高塚さん、風見さん、古久保さん、そして現在活躍している地域おこし協力隊の方の話を聴くことができます。熱い思いを持った塩谷町の方々に会いに来てみませんか?
塩谷町地域おこし協力隊オンライン募集説明会
地域おこし協力隊業務分野
○日時
令和6年9月25日(水)19:00~20:30
令和6年10月17日(木)19:00~20:30
○内容
・塩谷町/現役地域おこし協力隊の紹介
・募集ミッションの詳細説明
・質疑応答等
○場所
ZOOMウェビナー(オンライン)
○参加費
無料
イベントお申し込みはこちら
Editor's Note
職員の皆さんと、中間支援の立場にある高塚さん。いろいろな人が関わりあって地域おこし協力隊の挑戦を支える、とても温かい町だと感じました。「塩谷町だからこそ」挑戦したいと感じる方との出会いにつながればいいなと思います。
AYAMI NAKAZAWA
中澤 文実