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LOCAL LETTER

浅草芸者と世界的ダンサーがコラボ。クリエイティブの力で地域の魅力を表現し、盛り上げるプロデューサーの素顔とは

MAY. 11

TAITO, TOKYO

前略、リアルな繋がりや感動に飢えているアナタへ

突然ですが「イマーシブシアター」って、ご存知ですか?

イマーシブシアターとは、2000年代にロンドンで始まり、新しい演劇手法として注目を浴びている「体験型演劇作品」の総称。

これまでの “観客が客席に座り舞台上の演者を見る” という「物語を鑑賞する」スタイルの演劇に対し、イマーシブシアターは、演者が移動しながらパフォーマンスを行い、“観客の意思次第でどこへ行くのも誰を見るのも自由”。

まるで「物語に入っていく」かのような体験が出来る新しいスタイルの演劇は、100人観客がいれば100通りの物語が生まれると言われています。

今回は、そんなイマーシブシアターを日本の古民家や観光地で手がけているクリエイティブ集団「Dramatic Dining(以下、DD)」を取材。クリエイティブの力で地域を盛り上げる彼らの素顔に迫りました。

Dramatic Dining プロデューサー陣(左から、企画・舞台演出担当:竹島 唯 氏 / 企画・ダンス総括:近藤 香 氏 / フードディレクション担当:大庭 竹梨沙 氏) / イマーシブシアターの中でも最も有名だと言われている「Sleep no more」を、NYで見て「Dramatic Dining」を立ち上げ、第1回目の講演「週末HANNO」を埼玉県飯能市の古民家で開催し大成功を遂げた。今回が第2回目の講演となる「Shadows of the Flower」を浅草で、芸者さんとコラボして開催する予定。
Dramatic Dining プロデューサー陣(左から、企画・舞台演出担当:竹島 唯 氏 / 企画・ダンス総括:近藤 香 氏 / フードディレクション担当:大庭 竹梨沙 氏) / イマーシブシアターの中でも最も有名だと言われている「Sleep no more」を、NYで見て「Dramatic Dining」を立ち上げ、第1回目の講演「週末HANNO」を埼玉県飯能市の古民家で開催し大成功を遂げた。今回が第2回目の講演となる「Shadows of the Flower」を浅草で、芸者さんとコラボして開催する予定。

“イマーシブシアター” に “創作料理” を掛け合わせ、五感をつかって街にどっぷり浸かる「イマーシブトリップ」を提唱。

「イマーシブシアターって、結局なんだ?」そう思っている方もまだまだ多いのではないかと思うので、百聞は一見にしかずということで、まずはこちらの動画を見ていただきたい。

動画は、DDが記念すべき第1回目として、埼玉県飯能市の古民家を舞台に開催したイマーシブシアター「週末HANNO」。

DDは、通常のダンスとストーリーで表現するイマーシブシアターに、創作料理を掛け合わせ、五感を使って街にどっぷり浸かる「イマーシブトリップ」を生み出し、演者と観客が同じ時間、同じ物語、同じ食を体験することで、まち全体を楽しむ舞台を創り出している。

演者と観客が心と身体を一体にすることで、一つの作品を生み出すイマーシブトリップ。では、イマーシブトリップを生み出しているDDのプロデューサー陣は、そもそもイマーシブシアターのどこに魅力を感じたのだろうか。

「“イマーシブ” って “(その世界に)没入する” って意味なんです。例えばですが、ヨーロッパのお城に行って当時の王女様が暮らしていた部屋に行くと、“ちょっと昔の人の気配を感じるな” と思ったり、古民家に行くと初めて訪れた場所なのに “なんだか懐かしい” と感じたりすることがあると思います。その世界観を思いっきり体感するのがイマーシブシアターなんです」(竹島氏)

イマーシブシアターには明確な定義づけはないものの、世界観を思いっきり体感するという意味から、私たちの身近にある「ディズニーランド」や「結婚式」もイマーシブシアターの一つと言えるのだ。

「オンライン化が進んでいる今だからこそ、リアルな繋がりがとても重要だと感じています。イマーシブシアターは、演者と観客、舞台と客席が曖昧で、切り分けられない “リアルな繋がり” を体感できることに魅力を感じています」(竹島氏)

彼女たちが体感したイマーシブシアターの魅力に、さらに創作料理を組み合わせ、「イマーシブトリップ」という新たな体験を生み出すDD。設立の背景には、どんな想いがあったのだろうか。

「私自身、ずっとダンスを続けてきたこともあり、“パフォーマンスって、一体何のためにやるのか?” という課題と常に向き合ってきました。舞台をやったとしても、結局一部の限定された人にしか見られることはなく、その魅力が伝わりにくいんです。ですが、クリエイティブには言葉にはできないものを汲み取り、表現する力があると私は信じています。そして同時に表現力は、ダンサーだけでなく、役者やデザイナー、料理人など、表現に関わる全ての人が持っている力であり、まだまだ理解されにくいものだと感じています」(近藤氏)

現実を切り取る感性や、言葉では表現仕切れない「何か」を、文化、言語、社会的地位を超えて伝えるクリエイティブパワーをもつ表現者たち。

そんな表現者たちの感性が活きる新しい社会価値を生み出すために、彼女たちはDDを立ち上げ、それぞれの強みであったダンスと食を融合させた新たな作品として「イマーシブトリップ」を生み出したのだ。

クリエイティブファーストで「良い作品をつくりたい」という熱量が、人を、まちを、動かし続ける。

今回で2回目の開催を迎えるDDは、すでに50名以上のチームメンバーがおり、第1回目の舞台は埼玉県飯能市の古民家、第2回目の舞台は浅草の浅草見番で行う予定。

なぜこれだけの協力者がDDに集まるのだろうか。

「私たちはみんな作り手気質が強くて、クリエイティブファーストなんです。作品を創りたいという熱量がトップにあって、どうやっても良い作品をつくろうという精神があります。ダンサーの方は、私たちのスタンスに共感してくれたり、面白いと思ってくれたりする方が多いですね」(近藤氏)

DDに参加しているダンサーは、MISIAや米津玄師のバックダンサーとして活躍しているダンサーもいれば、本職を別に持っている方など、それぞれだが、自分の本当に表現したいものをとことん追求できる場所に魅力を感じ、自らの意思で参戦している。

「DDにはダンサー以外にも、プロモーションや制作、SNSを担当しているメンバーもいます。彼らは、学生時代に何かを命がけで創り上げていたような人が多くて、社会人になって仕事に慣れたことで生まれた余白で、何かをやりたいと思っているけど、何をしたら良いかが見つかっていないという人たちにDDがフィットしたんだと感じています。私たちは担当をあえて細分化することで、それぞれの能力ややりたいことを叶える組織体制にしているんです。DDは、関わる人たちが自己実現をするための実験場で良いと思っているので、私たちが何かを求めるのではなく、個々のやりたいを尊重する組織体制に多くの人が集まり、力を貸してくれるんだと思います」(竹島氏)

実績も予算もない中で、イマーシブトリップを行うには重要な要素になってくる「会場」はどのように見つけ出したのだろうか。

「とても泥臭いんですが、とにかくいろんな場所に足を運んで、地域の方とお話をしていきました。千葉県に片道2時間かけて行って役場の方とお話をしたこともありますし、田舎の畑に行ったこともあれば、コンペに出したこともあります。結果的には、人が人を繋いでくれて、出会う場所が一番多かったですね。ただ、私たちにも軸があって、貸してくれる人がいるからその場所に決めるということはしません」(近藤氏)

彼女らの場所を選ぶ軸は「その場所にドラマを感じるか」だという。その場所にあるリアルな歴史やストーリーを肌で感じられるか、さらに、その場所を自分たちが本気で気に入り本気でやりたいと思う熱量が湧き上がるかどうか。言葉にするのは難しいが、自分たちが納得した場所でなければ開催場所には絶対にしないという芯を持っている

「いつも “本物でやりたい” という話をチームでしています。お芝居って、そもそも作り物なので、言ってしまえば “嘘” なんです。でもDDは、自分たちの心と場所を共鳴させることで作品を生み出すからこそ、何が本当で何が作り物かわからなくなってくる。まるでRPGの世界に入り込んだような、現実と非現実が曖昧になる没入感をとても大切にしています」(竹島氏)

東京最大の観光名所「浅草」での開催を決定。地域住民の理解を得るためにかけた時間は、1年半。

冒頭から度々登場しているDDの記念すべき第1回目の公演「週末HANNO」は、埼玉県飯能市の古民家を舞台にし、大成功で幕を閉じた。そして第2回目の公演は東京の「浅草」で開催するという。

もはや国内に留まらず、国外でも知っている人が多い、東京最大の観光名所「浅草」に、彼女たちは一体何を感じたのだろうか。

「次回公演を考えるにあたって前回同様、都内に限らず、いろんなところを訪れました。正直、浅草は全然考えていなかったんですが偶然、浅草で生まれ育った学生時代の後輩に出会って話をしたんです」(近藤氏)

浅草は大好きなのに、今や見せかけの日本風のものが多くて、本来の魅力が失われている

この言葉が彼女たちを動かしたという。

「東京最大の観光名所であり、歴史も古い浅草にもそんな一面があるのかと驚きました。そして、すぐに浅草に足を運んで、いろんな方にお話を聞きに行ったんです」(近藤氏)

そして、彼女たちは「浅草にドラマを感じてしまった」のだ。

「浅草の観音裏には花街があって、芸者さんの世界があって、昼間は住宅街のような形で人が少ないのに、夜になるとガッと提灯に明かりがついて、暖簾が出て、人が現れて、料理の匂いや音が聞こえてくる。まさに “夜になると現れる街” だと思いました。ここを物語にできたらどんなに素晴らしいかと惚れてしまいましたね」(近藤氏)

浅草見番の提灯
浅草見番の提灯

とはいえ、歴史ある浅草の花街に一見さんがひょいひょいと顔を出せるわけはない。

「人生であんなに営業をしたことはないと断言できるくらい、まずは地域の方と信頼関係を築くためにひたすら自分のできることを探しました。夏の灯籠流しでボランティアをやったり、イベントの打ち上げにも積極的に参加したり、顔を覚えてもらえるように浴衣を着ていったり、とにかくできることはなんでもやりました。それでも私たちは部外者なので、門前払いを受けることもありましたが、1年半通い続けました」(近藤氏)

何が何でも浅草の花街でイマーシブトリップをやりたい。もう次回作は浅草でなくてはだめだ。そんな「感性」と「こだわり」がひたすら彼女たちを動かし続けていたという。

「今となっては、あの1年半があって良かったと心から思っています。彼らが心から信頼しあえている関係性も、花街が居心地がいい理由も、きちんと中に入り込むまで粘ったからこそ理解できましたし、この人たちが生きる世界を描く覚悟を持つことができました。花街は、男性主導みたいな考え方が根強く残っていて、旦那さんの10歩後ろを奥さんがついていくような世界。正直、花街の外の世界(女性の自立が後押しされる社会)で生きてきた私にとって、最初はそれが驚きで、違う世界に来たと思いました。ですが、彼らと一緒に過ごす中で、彼らの生き方を私が否定することはできないし、そこにある種の魅力があるのも事実、これこそが多様性なのかもしれないと感じたんです」(竹島氏)

浅草の花街を舞台に、芸者とダンサーがコラボ。生み出すのは、自分だけの「幸せの定義」を見つめ直せる時間。

そんな花街での自らの経験をイマーシブトリップの作品そのものにも込めたという。

「今回は芸者の生き様を通じて、演者・観客が幸せの定義を見つめ直せる作品にしたいと思っています」(竹島氏)

「“自分自身だけが知っている、自分だけの、本当の幸せとは何か?” をお客さんに作品を通じて、問いかけたいと思っています」(近藤氏)

イマーシブシアターは、言語を使わない。ダンスと音楽だけで表現される物語に、観客がそれぞれの解釈を加える。

DDが手がけるイマーシブトリップには、ダンスと音楽に加え、芸者の心情を表現した創作料理が加えられることにより、さらに解釈の多様性を生み出す。物語は、観客それぞれの価値観によって、何千色という色に塗られていくのだ。

「私の生きる現代社会では、女性の幸せは “自立” だとする風潮が強いと感じています。ですが、芸者さんが生きる社会での女性の幸せは、芸を磨きながら、お客さんとの関係の中で長く築いていくものなのかもしれないと思いました。これまでとは違う価値観に触れた時、私の中での幸せの定義が崩れたんです。今は、芸者さんも含めていろんな働き方があり、自分で選択できる時代だからこそ、演者・観客一人一人の幸せと、多様性を作品の中で顕在化したいと思っています」(近藤氏)

作品は、自分にとっての幸せは何かを考える一人の芸者と、それを取り巻く人々の物語。自分の恋を貫くことが幸せなのか、芸を追求することが幸せなのか、はたまた別の道があるのか。芸者に巻き起こる様々な体験を観客も一緒に体感しながら話が進み、自らが考える幸せを問い直す時間が巻き起こる。

同じ作品を体験しているにも関わらず、感じること、最終的にでる結論は、100人いれば100通りになるイマーシブトリップ。ここまで読んでくれたアナタは、きっと興味が掻き立てられているに違いない。

新型コロナウイルスの影響で延期を決断。逆境から繋がりを再認識し、新たな挑戦をスタート。

様々な人たちの想いと十分な準備期間を踏まえ、2020年6月13日(土)14日(日)の2日間で開催を決めていたイマーシブトリップ。

しかし社会に大きな変化が起きている今、お客様や出演者、スタッフの安全を第一に考え、延期、という決断をせざるを得なくなった。 

「最初から中止は考えていませんでした。延期という判断に関しても、予算が当初の予定以上にかかってしまうことを考えても、前向きな決断だったと思っています。ただ、一点不安だったのは、同じメンバーでやれるかどうかでした」(近藤氏)

延期の話が持ちあがった当初から「このメンバーでやりたい」ということを譲らずに、メンバーに叫び続けていたという近藤氏。とはいえ、地域の方を含めたら100名を超えるメンバーの日程と会場の日程を合わせることは、相当大変だったのではないだろうか。

「今回の出来事があって、地域の方との繋がりの強さを再認識しました。いろんな方と連絡を取り合いましたが、誰からも “もう無理じゃないか?” という言葉をいただくことはありませんでした。むしろ、いろんなご提案やお気遣いをたくさんいただいて、本当に心強かったですし、涙がこぼれました」(近藤氏)

「50年以上浅草で働いている大先輩も多くて皆さん、これまで本当にいろんな危機を乗り越えられているんですよね。だからドーンと構えていて、たくさんの元気をいただきました」(竹島氏)

周りの人たちの力に後押しされDDは、2020年11月21日(土)22(日)に開催日を改め、再びイベントを成功させるべく動き出し始めた。

さらに、今までかかった人件費や、延期によって発注したキャンセル代など、DDに関わる出演者や協力者へのお支払いを行うことを約束し、クラウドファンディングへ挑戦。公開わずか5日で目標金額を達成

次の目標を設定し、2020年6月12日(金)までクラウドファンディングに挑戦をし続けている

DDのコンセプトは「世界をもっとドラマチックに。

Zoom飲みやYoutube、Netflixなどモニター越しでの感動ではない、リアルな繋がりを、これまでには味わったことのない没入感を、コロナが落ち着いた先の楽しみとして、彼女たちと待ち望んでみてはいかがだろうか?

Dramatic Diningへの応援はこちら

Editor's Note

編集後記

とにかく、個性豊かなプロデューサー陣。朝、かつ、新型コロナウイルスの影響でオンラインでの取材にも関わらず、DDのことや浅草、浅草に暮らす人たちのことをとても嬉しそうに、熱く語ってくださる60分間。

どんな状況でも「とにかく自分たちにできることを何でもやる」という彼女たちの姿勢そのものが、多くの人を惹きつけていると感じる取材でした。

これからもDDの応援をよろしくお願いいたします!

これからもDDの応援をよろしくお願いいたします!

これからもDDの応援をよろしくお願いいたします!

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