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LOCAL LETTER

挑戦すべきは「町を好きな人の循環の作り方」。これからの地域創生とは

MAY. 19

拝啓、これからの「まちづくり」の在り方を考えたい・知りたいアナタへ

※本レポートはPOTLUCK YAESU様、株式会社SHIFT PLUS様のスポンサードによって行われた、地域経済活性化カンファレンス『SHARE by WHERE』で行われたトークセッションを記事にしています。

地域創生という概念が生まれて10年。多くの地域が人口減少・少子高齢化に頭を抱える中、これからの「まちづくり」に必要な考え方や取り組みとは一体なんなのでしょうか。

今回は各地域の第一線で地域創生に関わるプレイヤー5名が「人口減少、少子高齢化ではない地域創生ビジョンとは!?」をテーマに様々な切り口から、地方創生について考察しました。

前編では、登壇者の方々が関わる各地域で実践されている、地域創生施策や、地域の寛容性と人の流動性の関係などについて紹介しました。

後編となる本記事では、地域目線でどのような点に配慮しながら地域創生を進めるべきなのかに触れながら、真の地域創生とは何を目指すべきなのかを探っていきます。

地域の特色を活かすために、「守るところ」と「開くところ」のバランスを考える

大瀬良氏(以下敬称略):昔は仏教があって、お坊さんが各地を回って教えを広げ、建築や農耕技術の伝播に繋がっていた。これが今はパソコンを持ったスキルある人たちが地域を巡って、新しい知恵を届ける。

だからワーケーションが盛り上がったのかなと思う一方で、どこまで地域がそれを受け入れるのか。もはや従うという感覚になった時に、地域の特異性をどこまで守り続けられるか。温故知新のバランスをとるのがすごく難しいと思います。うちの地域はここまで守り、ここからは寛容に行くという線引きを間違えると、そこら辺にある国道沿いの町のように同一化してしまう

大瀬良 亮(Ryo Osera)氏 株式会社遊行代表取締役、旅のサブスク「Hafh(ハフ)」創業者、一般社団法人日本ワーケーション協会 顧問 / 筑波大学卒業後、株式会社電通に入社。内閣官房に出向し、安倍政権のSNSを監修。2019年に旅のサブスク「Hafh(ハフ)」を創業、そして今年株式会社遊行を創立。
大瀬良 亮(Ryo Osera)氏 株式会社遊行代表取締役、旅のサブスク「Hafh(ハフ)」創業者、一般社団法人日本ワーケーション協会 顧問 / 筑波大学卒業後、株式会社電通に入社。内閣官房に出向し、安倍政権のSNSを監修。2019年に旅のサブスク「Hafh(ハフ)」を創業、そして今年株式会社遊行を創立。

河尻氏(以下敬称略):流山には “流山らしい景色はこれ” とする景観条例があり、看板に原色は使えないなどの決まりがあります。景観は1つの例ですが、“守るところと開くところ” は仕分けしたほうがいいかもしれないですね。

河尻 和佳子(Wakako Kawajiri)氏 千葉県流山市マーケティング課 課長 / 1972年生まれ。東京電力で14年間、営業、マーケティング等を担当。流山市の街を売り込むための任期付職員公募に応募し、前例のない自治体マーケティングの道に入る。首都圏を中心に話題となった「母(父)になるなら、流山市。」広告展開や、母の自己実現を応援する「そのママでいこうproject」、年間16万人を集客する「森のマルシェ」の企画・運営などを手掛ける。
河尻 和佳子(Wakako Kawajiri)氏 千葉県流山市マーケティング課 課長 / 1972年生まれ。東京電力で14年間、営業、マーケティング等を担当。流山市の街を売り込むための任期付職員公募に応募し、前例のない自治体マーケティングの道に入る。首都圏を中心に話題となった「母(父)になるなら、流山市。」広告展開や、母の自己実現を応援する「そのママでいこうproject」、年間16万人を集客する「森のマルシェ」の企画・運営などを手掛ける。

大瀬良:地域の人が欲しいものと、町の独自性やブランディングの面で考えたものとで差が出てきたりするので、本当に難しいですね。

高木氏(モデレーター:以下敬称略):僕は行政の人と議論をしていると、観光やブランド・付加価値を作っていく話と、社会保障の話が混ざってしまうことがあると感じます。この観光コンテンツの価値を享受できるのは一部の人だけ、という話になる。確かに社会保障は誰一人取り残さないことが大事だけど、そんなコンテンツは面白くない。だから尖らせる部分と、みんなのインフラとして必要な部分とは分けて考えようよとお話ししています。

高木 新平(Takagi Shinpei)氏 株式会社ニューピース 代表取締役CEO / 1987年富山県射水市出身。 高岡高校、早稲田大学卒業後、(株)博報堂に入社。 2014年独立し、(株)NEWPEACEを創業。 未来志向のブランディング方法論「VISIONING®」を提唱し、スタートアップを中心にこれまで数多くのブランドの非連続成長に携わる。富山県成長戦略会議委員、富山県クリエイティブディレクターも務める。
高木 新平(Takagi Shinpei)氏 株式会社ニューピース 代表取締役CEO / 1987年富山県射水市出身。 高岡高校、早稲田大学卒業後、(株)博報堂に入社。 2014年独立し、(株)NEWPEACEを創業。 未来志向のブランディング方法論「VISIONING®」を提唱し、スタートアップを中心にこれまで数多くのブランドの非連続成長に携わる。富山県成長戦略会議委員、富山県クリエイティブディレクターも務める。

共感を得るために、説明する重要性。「危機感」と「希望」はセットで伝える

富田氏(以下敬称略):行政視点では、説明する人・間で汗をかく人が大事だと思っています。地方自治体の業種特性は特殊で、サービスを提供する人=住民と決まっているわけです。我々が最終的にやることは、住民のみなさんに一番良い行政サービスを届けること。だから観光は目的ではなく手段で、最後は住民の幸せに結びつくようにする。この概念を誰かが説明できるようにしないといけない。

富田 能成(Yoshinari Tomita)氏横瀬町町長 / 1965年横瀬町生まれ。横瀬小、横瀬中、熊谷高、ICU 卒。1990年~2009年、日本長期信用銀行(現新生銀行)。法人営業、メキシコ留学、米国支店勤務等経て、不良債権投資や企業再生の分野でキャリアを積む。 2011年4月から横瀬町議会議員を経て、2015年1月より現職。官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げるなど、都市圏の人材や民間活力を小さな横瀬町に呼び込む施策を次々展開、地方創生のフロントランナーとして注目されている。
富田 能成(Yoshinari Tomita)氏 横瀬町町長 / 1965年横瀬町生まれ。横瀬小、横瀬中、熊谷高、ICU 卒。1990年~2009年、日本長期信用銀行(現新生銀行)。法人営業、メキシコ留学、米国支店勤務等経て、不良債権投資や企業再生の分野でキャリアを積む。 2011年4月から横瀬町議会議員を経て、2015年1月より現職。官民連携プラットフォーム「よこらぼ」を立ち上げるなど、都市圏の人材や民間活力を小さな横瀬町に呼び込む施策を次々展開、地方創生のフロントランナーとして注目されている。

高木よこらぼ(横瀬町の官民連携プロジェクト)の取り組みについても、住民たちは「あれは何なのか」と思っているかもしれない。でもそれが余白を生んで新しい関わりができ、最終的に活性化になっているはずですが、どのように説明していますか?

富田:横瀬はシンプルで「やっぱりこのままじゃいけないよね」なんです。横瀬町は消滅可能性都市で、今までと同じことやっていてもダメですよねと。だから必然的にチャレンジしなきゃいけない。

そのためには町をオープンにする戦略も大事で、外から人・モノ・金・情報を呼び込んで化学反応を起こさせるんだと。そのための仕組みがよこらぼなんです。でもチャレンジ優先なので、中には育たないプロジェクトもあるんですよと説明しています。

高木:危機感も共有できていればやりやすいですね。

地域に関わりがある企業に目を向けることも重要? 地域資源を活かした企業の関わり方とは

田村:最近企業の方から、地域に入って事業や関わりを作りたいと相談されるのですが、多くの方は「地域の中に自分たちが持っているものをどう売り込むのか?」を考えている。でもそれではなかなかビジネスにならないんです。

そうではなくて「地域にあるものをどういう形で受け継ぐのか?」を考えたほうがいいんじゃないかと。地域特性や地域資源を、どう受け継いで面白いことができるのか考えると、その地域にとって資産になります。同時に事業として発展する可能性が出てくる。そういうやり方を外の人が考えるべきだと思います。

田村 大(Hiroshi Tamura)氏 株式会社リ・パブリック共同代表 / 神奈川県出身、1971年4月4日生、神奈川県横浜市出身。東京大学文学部心理学科卒、同大学院情報学環・学際情報学府博士課程単位取得退学。1994年博報堂に入社。デジタルメディアの研究・事業開発などを手掛けて、イノベーションラボに参加。2013 年に退職して、株式会社リ・パブリックを設立。2009年、東京大学工学系研究科の堀井秀之教授とともにイノベーションリーダーを育成する学際教育プログラム・東京大学i.schoolを立ち上げる。現在、九州大学・北陸先端科学技術大学院大学で客員教授を兼任。
田村 大(Hiroshi Tamura)氏 株式会社リ・パブリック共同代表 / 神奈川県出身、1971年4月4日生、神奈川県横浜市出身。東京大学文学部心理学科卒、同大学院情報学環・学際情報学府博士課程単位取得退学。1994年博報堂に入社。デジタルメディアの研究・事業開発などを手掛けて、イノベーションラボに参加。2013 年に退職して、株式会社リ・パブリックを設立。2009年、東京大学工学系研究科の堀井秀之教授とともにイノベーションリーダーを育成する学際教育プログラム・東京大学i.schoolを立ち上げる。現在、九州大学・北陸先端科学技術大学院大学で客員教授を兼任。

高木:本当にその通りだと思う一方で、そんな大した地域特性があるところは少ないとも思っています。国家としても同一化するまちづくりをしてきたので。

1つ思うのは、創業がその地域でも東京に移転した会社があるわけですよね。出身者が立ち上げた会社などにもっと関わってもらえばいいんじゃないかと。それって大きな資産だけど、全然掘り起こしていない感覚があります。

田村:確かに。久留米ってブリヂストンの発祥の地なんですけど、ゴムを使って何かやろうなんて誰も考えていない。

高木:地域を出て行った企業も本当はアセットがある。ゴムも本当は活かせるはずなんだけど、そうではない外の企業に絡んで欲しいみたいなことを言っているのがもったいないです。

地域の人の誇りを伸ばすことが大事。切り方で作る、地域のオリジナリティ

大瀬良:最初のトークセッションで「どこの町の夕日も一緒だ」という話が出ていましたが、地域の人たちは地域の目線で夕日が綺麗だと感じていて。僕はそれでいいと思うんです。ブランディングをやっている僕らは、相対的にこの町がどう尖っているか考えますが、地域の人が何を愛しているか、その人が何に誇りを持っているか。その気持ちを伸ばすことが大事だなと思います。

僕はサウナが好きなのですが、結局どこのサウナも水風呂の水質でしか差が出ないと思っています(笑)。富山で立山連峰を見ながら、山の伏流水の水風呂で最高に整う体験をした時に、立山連峰は切り方みたいな話になってくるのかなと。

河尻:エピソードトークと場所がくっつくとめっちゃ強くなりますね!

大瀬良:今まで綺麗だとか、数字で物理的に評価していた立山連峰が、切り方で変わります。

高木:地域住民だけでなく、「ここでこれをやると良いな」という外の人の目線・編集も入ってきますしね。

データから課題を把握し行政と議論。主観的な幸せを重要視した、ウェルビーイングの推進の背景

大瀬良:富山県でウェルビーイングをキーワードにまちづくりを進めたのは、どのような背景があったのですか?

高木:もともと富山県は24~39歳の若年女性の流出率がワースト3だったんです。でも女性の就職率や収入などの客観的なデータを見ると高水準。原因を推測すると、結構お茶汲みみたいな仕事が残っていて、仕事内容の充実度は低いんじゃないかと。

河尻:女性が地域から流出する原因には、社会意識の押し付けみたいなものがありますね。

高木:客観データのほうが説明しやすいので、主観的な要素の強いウェルビーイングを高める施策を行政はあまりやらないのですが、全国に先駆けていち早く何かをやっていくのがこれからの富山県のスタンスとしても大事でしょう、と議論を重ねました。

当時は都道府県レベルで推進しているところがなく、新しいことをやっていく風土にもなるだろうと、ウェルビーイングを掲げるに至りました。数年経ち、ウェルビーイングという言葉が広がった今は、みんなが大事にする考え方になったと思いますね。

寛容性とクリエイティビティを高めるための「ダイバーシティ推進」と「まちづくり」

田村:熊本にTSMC(半導体受注生産で世界最大手の台湾企業)の工場ができるので、台湾から社員と家族が1,500人くらい来るという話があり、学校をどうするのかが大きな問題になっています。流動化は国境を超えて起こってくるけど、その人たちの受け入れに日本はあまり慣れていないんです。

同化か分断の二極化で、ダイバーシティを覚悟を持って受け入れている自治体はあまりないなと。でもそこは実はチャンスだと思います。上手く受け入れれば、とてもクリエイティブな地域になるかもしれない。

河尻:ダイバーシティとまちづくりは本当に難しいです。マーケティング視点でまちづくりをすると、ターゲティングした人が引っ越してくるのですが、それ以外の人を今住んでいる人は望まない。極端な例だと、昼から酒飲んで道路で寝ている人は望まないわけですよ。でも多様性と言ったら、みんな受け入れるのか。そうはならないよなぁと思い、どうしたらいいのか悩みます。

高木:公序を乱す人は問題ですが、新しい価値観を持つ人をどうやって受け入れるかが重要ですね。違う人種が入ってくる環境をつくるための一番わかりやすい存在が、アーティストで、理解し難い・何これ、という “わからないもの” に多く触れることが寛容性をあげることに繋がると思います。

世界の事例から学ぶ、同化と多文化化政策。多様性を高めるための人の受け入れ方とは

田村世界の移民政策の主流は同化政策で、どこかの国に行きたい人は、その国の人になる・一緒になるという考えです。唯一、多文化化政策を進めるのがフィンランドで、例えばソマリアから移民してきた人の子どもは、ソマリア語を学ばなければいけないという法律があります。そのために学べる環境を政府が用意するので、多文化化が進む。

実は対ロシア政策でもあり、複数国との繋がりが、政治的に自分たちを支援してくれる仲間づくりになるという考えです。移民は同化すると吸収されてしまうけど、外の繋がりとして保持する。どのように多様性を受け止めるのかは、考えるポイントですね。

高木:関係人口の話で、僕も月1~2日しか地域にいないので、中途半端な関わりだと言われたりするんですけど。でも月28日で他のネットワークを持ち込んでくる存在だとすると、受け入れ自体が柔軟性を上げていきますよね。

今できる地方創生とは?この町が好き・この町にいて幸せであったと言える人を増やす

大瀬良:今僕たちができることは、その地域で暮らしていてハッピーな状態の人を一人でも増やすことだと思います。それをウェルビーイングと表現するとカッコ良すぎてちょっとくすぐったいので、ウェルダイイング=よく死ねた、と言ってしまおうと。一人一人が各町で、心からこの町にいたからこそこれが出来た・良かったと言えることが成仏なのかなと最後に言いたいです。

高木:子どもという多様性を作る存在が人口減少で失われ、新しいことが起きづらくなったり、多様な価値観を受け入れづらくなっているというのが今。そこに多様な人を呼び込み、これが町を面白くしていくんだという新しいことを現象化していく。

この町が好きだと思える人を増やす循環をどう作り出していくかが、今みんながチャレンジしている地域創生なのではないでしょうか。

Editor's Note

編集後記

地域が守るべきところ・開くべきところの線引きの話がとても興味深かったです。
私は出身が都心部で、地域に入る側の経験をし、ついつい受け入れてもらう側=自分の立場の考えによりがちなことに気付かされました。
その地域が大切にしてきたことを守りつつ、それを発展させていくことが、地域が、みんながハッピーになるための鍵になりそうですね。

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