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誰しもが一度は抱えるであろう疑問や違和感ーー。
「自分の居場所」や「他者とのつながり」について悩んだことはありませんか?
そうした生きづらさを解消する一助となるのが、人が集まり、つながる「コミュニティ」。
コワーキングスペース、中高生の居場所、地域の交流拠点など、いま、ローカルでは多様な場やコミュニティが生まれ、地域に根ざした場づくりが進んでいます。
その運営に必要なノウハウを学び、主体的に考え実践する力を身につけるのが「コミュニティマネージャー養成講座」です。
第1期では14名が受講し、その受講満足度はなんと100%を達成。
今回インタビューをしたコミュニティマネージャー養成講座の卒業生3名は、それぞれが抱いた疑問や経験を原動力に、この講座で学びを深めていました。
3人がそれぞれの人生で抱いた違和感と、そこから得た気付き。その思いがどのように「人と人をつなぐコミュニティ」への興味につながり、講座受講という新たな一歩へと導いたのか。
この記事では、3人それぞれの挑戦と、講座を通して得た学びを紐解きながら、その成長の過程に迫ります。
サステナビリティ専門のコンサルティング会社にて、統合報告書のレポーティング業務やコンサル業務をしている濵田佳奈子さん。学生のSDGsビジネスコンテストの運営などにも従事されてきました。
企業と学生をつなぐコミュニティづくりにも取り組んできた濵田さんが、コミュニティマネジメント講座への参加を決めた理由は、自身の経験の中で直面してきた「手探り感」の解消のためでした。
「大学時代から、今の仕事でもコミュニティ運営に携わってきました。そうした中、その時々のリーダーやメンバーによって、コミュニティの状況が大きく左右されてしまうことに課題を感じていました。もっと仕組み化して汎用性を高めたい。そのために、コミュニティ運営を仕事として実践されている方のノウハウを学びたいと思い、この講座に参加しました」(濵田さん)
ゆくゆくは「コミュニティマネジメントを仕事にしていきたい」と語る濵田さん。その原点には、学生時代に感じた社会への2つの疑問がありました。
「私には10歳下の弟がいます。私が高校生の頃、『弟が社会にでたとき、果たして良い社会になっているだろうか?』と考えたとき、『恐らくなっていないだろうな』と感じたんです。だからこそ、人生の先輩として、自分にできることをしたいと思いました」(濵田さん)
「また、幼少期の頃から女性らしさを押し付けられている感覚があり、違和感を抱いていました。他方で、世の中には女性と男性という性別二元論的な語りでは語れないアイデンティティを持つ人たちがたくさんいることを知りました。
そのような人たちの生きづらさを解消することは、女性として生きる私自身にとっても、生きやすい社会を作ることにつながると考えています」(濵田さん)
そう語る濵田さんは、高校生の頃からLGBTQの理解推進に取り組み、学びを深めてきました。そして今、目指しているのは「社会の『あるべき論』に振り回されず、誰しもが固定観念に悩まされることがない社会」です。
「コミュニティに参加する方が、少しでも前向きになってもらえるような、背中を押せるような空間を作っていきたい。心理的安全性を基盤とした、誰もが安心して参加できる場を目指したいと思っています」(濵田さん)
コミュニティ活用を単なる仕組みとして捉えるだけでなく、長年感じてきた社会課題へのアプローチする手段として考える濵田さん。
その姿からは、誰しもを包括するあたたかさと、より良い社会に導く力強さの両方を感じさせます。
続いて、「どちらかというと生きづらいと思う人生でした」と話すのは、ホステルの支配人として、コミュニティやチームづくりに取り組んできた手塚愛さん。
1年半の間、試行錯誤しながらもホステルで成果を上げ、自分なりの運営スタイルを確立してきました。しかし、新たな挑戦を求めて自ら手を挙げ、ヴィラの新規開業プロジェクトへの異動を決意したと言います。
「ホステルでは、自分がコミュニティの一部として、ある種の自己表現を楽しむような形で運営していました。でも、異動した先のヴィラでは、支配人としての役割を離れ、新規事業としての運営に携わることになりました。それ自体は後悔のない選択でしたが、次第に自分が大切にしているチームマネジメントや場づくりを学び続けられる環境がほしいと感じるようになりました」(手塚さん)
その背景には、コミュニティマネジメントにおいて自らのスタイルが一度確立されていたこと、そして社内でのロールモデルや学びの機会を見失っていた現状がありました。
「そこで、社外で経験を積んでいる方々のもとで学び、新たな突破口を探すために、講座の受講を決意しました」(手塚さん)
場づくりにおいて、「もっと多角的に捉えたい」と語る手塚さん。そもそも社内でコミュニティの場を離れたのは、「もっと難しい人間関係に挑戦したかった」からだと話します。
「ホステルの支配人時代は、自分が関わるのは主に社内の人やアルバイトのメンバーでしたが、ヴィラではオーナーや他のステークホルダーなど、関係性が複雑で多様です。そうしたより難しい人間関係の中で経験を積み、さらに大きな視点でのチーム作り、コミュニティづくりができる自分を目指したかったんです」(手塚さん)
手塚さんの「場づくり」への情熱の原点には、自身が過去に抱えた孤独感があると言います。
「人間関係が得意ではなく、他者との関わりに疑問を持つことも多かったです。一方で、時折お店などでものすごく繊細なコミュニケーションをとってくれるスタッフさんに出会うと、自分を見つけてもらえたような気持ちになります」(手塚さん)
こうした経験から、手塚さんは「自分が気づいてもらう側」ではなく常に「気づく側」であることを意識するようになりました。
「自分が孤独を感じていたからこそ、他者の孤独に気が付き、寄り添える・見守れる人間でありたいと思いました。その姿勢は、アルバイトを教育するときにも心がけています。自分がかつて掬い取ってほしかった孤独感を、今度は私が掬い取れる存在でありたいと思っています」(手塚さん)
ホステルの支配人からヴィラの開業、そして講座受講へと進んだ手塚さん。新たな環境での挑戦を通じて、多角的な場づくりへの道を切り開いています。
「どこから話せばいいかわからないほど、受講の動機となる部分は今までの人生で無数にありました」と語るのは大学生の服部さん。高校時代、「社会を知らないまま小さな世界で生きる苦しさ」を感じたと振り返ります。
そんな服部さんが視野を広げるきっかけとなったのは、大学3年生のときに4ヶ月間行ったバックパッカーの旅。東南アジアを中心に、南国の雰囲気が漂う島、漁村や農村まで様々な場所を巡り、人々の生活や文化に触れました。
「都市部から離れた地域に滞在していると、そこに住む人たちが笑顔で笑い合っていて、なんだか幸せそうに見えたんです。それに対して都市部では、個人主義的な雰囲気が強い印象を受けました。
最初は単純に『都市部から離れた地域の方が人を幸せにするんじゃないか』と思いましたが、『それだけじゃないよな』というひっかかりもありました」(服部さん)
その「ひっかかり」を抱えながら、服部さんはタイの首都バンコクでホームステイを経験します。滞在先の家族に連れられて訪れた郊外のお寺で、人々が自然に集まり、それぞれが役割を果たしながら交流する姿を目の当たりにします。
「お寺では、地元の人たちが野菜を持ち寄ったり、お互いに助け合ったりして、まるで家族のようなつながりを感じました」(服部さん)
その後、日本に帰国した服部さんは、日本でも長野県の都市部から離れた地域を訪れ、同じようなつながりの重要性を実感したといいます。
「訪れた地域ではコミュニティを自分ごととして捉え、自分の役割を果たしながら自己効力感を持って生きていました。そんなつながりが幸せに大きく寄与しているかもしれないと感じました。
これから都市部で生きていく中で、これまで抱いていた孤独感や無力感から人が解放されるような場づくりやコミュニティに携われたら良いなと思い、講座を受講しました」(服部さん)
服部さんが描くコミュニティは、孤独を解消し、人と人が自然とつながりを感じ、助け合いが起きる場。その可能性を広げるために、講座で学びを深め、都市部での新たなつながりを模索しています。
原体験を胸に、コミュニティマネージャー養成講座の受講を決めた3名。果たして、講座ではどんな学びや気づきがあったのでしょうか。
印象的な学びとして、「講座の中で、『コミュニティは生き物です』というお話がありました」と振り返るのは濵田さん。
「どのコミュニティにも活かせる特効薬的なノウハウがあるわけではなく、その場に集まる人や環境、外的要因に合わせて施策を考える必要がある。課題が小さい時に見逃さず、小さな違和感や問題に目を向けることが、結果的にコミュニティに参加する一人一人の想いに届くのだと感じました」(濵田さん)
「コミュニティは生き物」という講師の言葉に深く共感した濵田さん。そして、同じ言葉は手塚さんにも強い影響を与えました。
手塚さんは以前、自然栽培の農業体験をした経験もあり、「農業で土づくりが何より大切なのと同じように、コミュニティも土壌づくりが大切」だと、日頃から感じていたそうです。
「『コミュニティは生き物である』と同時に、『コミュニティを作るということは土壌をつくることだ』と講座で話があった時に、これまで自分が感じてきたこととつながりました。講師は土壌づくりとコミュニティづくりをリンクさせて説明しており、『コミュニティを育める土壌をつくるんだ』と説明していました。
『やっぱりそうだよね』と。その感覚を分かち合える他者が当時周りにいなかったので、自分の感覚に確信をもてたことが非常に印象的でした」(手塚さん)
また、手塚さんは、コミュニティづくりを目指す人々は感性豊かであることが多い一方で、「自分の感覚を確信に変えるには勇気が必要だ」と語ります。
「講座を通じて第三者からのフィードバックを受けることで、自分の感覚への確信が強まるのを感じました。そのことが、たとえ理解者が少ない環境にいたとしても頑張ろう、と思える原動力になります」(手塚さん)
講座での講師への壁打ちや、自分自身と向き合う内省の機会は、手塚さんが自身のフィールドに戻った後も大きな効力を発揮しているようです。
コミュニティマネジャーに重要なのは、一人で抱え込まず、外部からの視点や他者との対話を取り入れること。そして、それによって、自分の本当に大切にしたいことに常に立ち返り続ける姿勢なのかもしれません。
また、服部さんは講座を通じて「コミュニティという概念に対する考え方が大きく変化した」と言います。
「コミュニティマネジメントをするのは、コントローラー(管理者)ではなく、あくまでマネジャー(運営者)なんだと実感しました。
これまでは『コミュニティをつくる』という言葉そのものに疑いはなかったのですが、講座を受けたことで『つくる』という表現にしっくりこなくなりました」(服部さん)
「コミュニティづくり」や「場づくり」という言葉に、「畏れ多い」という感情が芽生えたと話します。
「コミュニティは『つくる』という表現そのものよりも、そこに集まる人たちのことを『理解する』ことが大切だと思いました。どのようにコミュニティをつくっていくかよりも、自然と人が集まるような人柄であったり、魅力的な企画のほうが、繋がりを生む上においては大事なのかなと感じています」(服部さん)
今回インタビューを行った3人は、それぞれの疑問や経験を原動力に、この講座で学びを深めました。講座では、体系的な学びだけでなく、現役で活躍される講師陣から得られるリアルな知識が、受講生の気づきや成長を後押しします。
生きたコミュニティを育むための実践知を得ることで、現場の課題解決に直結する学びを得られる。そして、知識と確信を持って、自身のフィールドでさらなる挑戦ができるようになるのが、この講座の大きな魅力です。
後編では、講座を卒業して実際にどのように活かしているのか、講座の魅力の本質にせまります。
コミュニティマネージャー養成講座詳細はこちら
Information
地域に根づき、場を通じて人と人が交わることで個人が活躍、地域も豊かになる。
そんなコミュニティマネジメントのスキルを実践を通して身につける、「ローカルに特化したコミュニティマネージャー養成講座」を開講いたします。
コンセプトメイキングから、空間・体験設計、施設管理、イベント・共創の設計まで、全工程を講義でインプットするほか、講師陣の現場も視察して、明日から活きるスキルを身につけませんか?
<こんな人にオススメ!>
・コミュニティ運営が自己流でなんとなく自信が持てない
・交流拠点の創出をしているが相談できる相手がいない
・地域に根ざした場づくりを具体的に学び、実践したい
・全国の仲間と学びを深めたい
まずは相談会・特別公開講義へ!
参加申し込みはこちら:https://whereinc.co.jp/academy/communitymanager/
Editor's Note
受講生それぞれの背景や気づきが、コミュニティマネジメントの多様な可能性を教えてくれました。この講座は、学びと実践を通じて新たな視点を得られるだけでなく、仲間との交流を通じて自分自身を深める場でもあると感じました。
Natsumi Ishizaki
石﨑 なつみ