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課題さえ楽しむ担い手をつくる。繋がる喜びを生みだす「コミュニティナース」の価値

AUG. 14

SHIMANE

拝啓、地域のコミュニティづくりで繋がりをつくっていきたいアナタへ

※本レポートは2024年8月7日に行われたイベント「【第1期コミュニティマネジメント講座 特別公開講義②】“生きる”を進化させるコミュニティの価値とは」を記事にしています。

株式会社WHEREが新たに開講する「コミュニティマネジメント講座」は、個人も地域も豊かになるコミュニティマネジメントスキルを自分に落とし込む超実践講座です。

コンセプトメイキングから、空間・体験設計、施設管理、イベント・共創の設計まで、コミュニティマネジメントに関わる全工程を講義でインプット。

アナタに合ったより深い学びにする為に、「コミュニティデザインコース
」・「コミュニティマネジメントコース」の2コースをご用意しました。

超実践コースでは、全3回の現地視察・壁打ち・インターンシップ(※希望者のみ)を通じて、コミュニティマネジメントの解像度を上げ、自信を持った実務経験へと繋げます。現在、第1期となる受講生を募集中です。(コミュニティマネジメント講座 詳細はこちら

第2回目となる特別公開講義では、コミュニティナース事業を全国に広げている株式会社CNC 執行役員の北垣 佑一さんをお招きし、地域コミュニティの価値やその可能性について伺いました

繋がりがうまれるコミュニティは、地域を“ナーシング”する

北垣 佑一 氏(以下、敬称略):まず、コミュニティの価値を深掘りしていく前に、僕たちがやっている「コミュニティナース」とは一体なんなのか、簡単に説明させていただきます。

弊社株式会社CNC 代表取締役の矢田が、この活動を始めたきっかけは、彼女のお父さんの死です。最愛のお父さんに癌が見つかって、亡くなるまでわずか5ヵ月。その経験から「病気になって苦しむ前の段階、日々の暮らしの中で、不調のサインを察知する機会があれば」と考えました。

27歳で看護大学を受験した矢田が、入学と同時に始めた活動がコミュニティナースの原型です。 

北垣 佑一(きたがき ゆういち)氏 株式会社CNC執行役員 / 島根県出身。東京都立大学作業療法学科卒業。 大学卒業後、病院での臨床業務に従事した後、コンサルティング会社にて医療機関、介護事業所の経営コンサルティングに携わる。その後、ヘルスケアベンチャーでの経営企画などを経て、2021年より株式会社CNCに所属。
北垣 佑一(きたがき ゆういち)氏 株式会社CNC執行役員  / 島根県出身。東京都立大学作業療法学科卒業。 大学卒業後、病院での臨床業務に従事した後、コンサルティング会社にて医療機関、介護事業所の経営コンサルティングに携わる。その後、ヘルスケアベンチャーでの経営企画などを経て、2021年より株式会社CNCに所属。

病気になる前の「まちで暮らしている」段階でケアがもっと実践されれば、病気や要介護にならずに済む未来もあるのではないか?という発想が起点になっています。

「健康をつくる機能」つまり「予防」にあたる機能を医療や専門機関に頼るのではなく、「地域のコミュニティ」で実装していこうとする考えです。

平林(モデレーター:株式会社WHERE):コミュニティは大事だということは、個人も企業もなんとなくは感じている。しかし、その価値はすぐには伝わりづらいと感じています。改めて「コミュニティの価値」をどう捉えていらっしゃるのかお聞きしたいです。

北垣:コミュニティの価値は色々あると思うのですが、医療や介護の観点から見ると、現在ケアが十分とは言えない「予防」の役割を大きく担っている点があると思います。

これまでも色々な企業や自治体などが「予防」の為に、様々なアプリケーションやプロダクトを作って提供していますが、その多くは広く活用されていません。

その手薄になりがちな「予防」部分にコミュニティがすごく力を発揮してくれるんです。

僕が活動している島根県雲南市にも、家に引きこもりがちな高齢者は多いです。その方々にコミュニティナースとして介入する際、対話を通してご本人の大事にしている想いや特技などを丁寧に聞き出していきます。

例えばある高齢者の方から、現役時代に営んでいた蕎麦屋を懐かしむ話題が出たとします。その種を拾い上げて、その方の地域住民に向け「〇〇さんの蕎麦打ち会」などイベントを企画・開催し、元蕎麦屋のおじいちゃんが打った自慢の蕎麦を地域住民の方に振る舞う。すると蕎麦を打ったおじいちゃんは活力が湧き、その他にも自分の役割を担おうとしてくれたりします。

企画を通して繋がった、その方を取り巻く地域住民との関わりのなかで、活動量が増えていく。

引きこもりがちだった方が、散歩や、人とおしゃべりしに行く。それ自体は小さい変化のようでも、「予防」の観点からみるとものすごく大きなインパクト・価値だと感じています。

僕らが考えるコミュニティとは、ただ地域に存在しているだけではなく、「地域の人たちと繋がりがうまれている状態」のことを指しています。

「繋がりがうまれるコミュニティを作ることで地域を“ナーシング”する」。それを実現することで、地域を元気にしていけると考えています。

コミュニティ運営をされている立場からの具体的な話が聞ける特別公開講義の様子(写真左上が北垣さん)

見ているのは、関係の成長。「担い手」になってもらう為に

平林:僕は日本橋にあるオープンスペース「+NARU NIHONBASHI」の運営にも携わっているのですが、その方が「関わるフェーズ」によってコミュニティが与える価値が変化するのではないかと考えているんです。

例えば「+NARU NIHONBASHI」で言うと、自宅と仕事場の行き来しかしていないオフィスワーカーの方が、+NARU で初めに得るのは、新たな繋がりがうまれる価値。

そしてもう少し進むと、そのコミュニティを通じて自分がどう活動していくかという成長フェーズでの価値。さらにその先にあるフェーズにも得られる価値があると考えているのですが、コミュニティナースではいかがでしょうか?

北垣:僕は東京で働いていた時、地域や人との繋がりがほしいと思わなかったんです。むしろ「変な人と繋がりたくない、繋がりなんていらない」とさえ感じていました。

でもコミュニティナースでの活動を通じて、「繋がる喜び」をめちゃくちゃ感じたんです。人との関わりを通して、自分をより理解できた。繋がりを起点にして、喜びや自己理解が進むと価値観や行動が変わり、次は自らが「担い手」として広がっていく「共創フェーズ」に入ると感じています。

「共創フェーズ」では、担い手となった若者や高齢者・子育て世代など、地域住民同士での自発的な助け合いである「互助」がうまれます。

これからの人口減少の社会で公助・共助のみで全てを補うのは不可能です。地域コミュニティで交わされる「互助」によって課題が解決される構造をつくりだせると信じていますし、その価値はものすごく高いと思っています。

平林コミュニティが持続的に成長していく為に、工夫をしている点はありますか?

北垣実は僕たちコミュニティナースは、現在多くの地域が抱える課題である「人口減少や縮小社会」自体を解決しよう、という考えでコミュニティづくりに臨んでいません。

僕らが大事にしているのは、「地域住民の方がどうしたら楽しく生きるを進化させていけるか」という目的をぶらさない事です。「生きるを進化させる」とは、「私ならできる。あなたならできる」と人々が信じあい、高めあうことです。

その考え自体を「成長」と捉えるのであれば、「関わる目の前の人たちを『生き進(生きるを進化させる)』を実践していく『担い手』にしていくこと」を強く意識しています。

目の前の方を「担い手」にしていくには、僕たちが「何かをしてあげる」んじゃなくて、「その方に何かをしてもらう」ことを意識して、「頼る」ことをまず最初にやるケースが多いです。

「自分がケアされる側になっている」と感じさせるのではなく、「助けてもらえませんか?」と言われることで「必要とされている」ことを実感していただく。そうやって気持ちよく「担い手」になっていただけるような働きかけが大事だと思います。

「怒られたら、もっと行く」。課題さえ楽しむメンタリティを育むには

平林一方で、コミュニティに課題はつきものだと思います。現場や運営側の視点から感じている課題とそれに対する向き合い方はありますか?

北垣ローカルという特性もあるかもしれませんが、「ステークホルダーとのコミュニケーション」は常に課題です。

長年蓄積された関係性や価値観がある状況に、新参者として入っていく際、「私はこんな話聞いてない!」と言われたり、トラブルになることも。そんな時の対処法は明確にあって、「とにかく懐に入る」ことです。

「怒られたら、もっと行く!」っていう(笑)。「もう来るな!」って言われても行って。ダメでもまた行って。逃げずに、「とにかく会いに行く」ことを徹底しています。

それって結構つらそうなイメージがあると思うんですけど、僕らは「この状況さえも楽しんじゃおうよ!」って思えるチームづくりをしています。怒られた後に会いに行き続けると、意外と心を開いてくれるんですよ。

屈託のない笑顔を見せる北垣さん(写真左上)

北垣まさにその通りです。ただそうやって「楽しもう!」と思えるのは「仲間」がいるからできることなんです。僕らがいう「仲間」には、「社内の仲間」も「地域の仲間」も入っています。

コミュニティナースを広げる仲間は地域にもいるので、その方たちにあえて相談してみる。「〇〇さんにめっちゃ怒られちゃったんですけど、どうしたらいいと思いますか?」って。そしたら「あの人麻雀好きだから、麻雀をフックにして繋がれないかな」みたいなアドバイスを貰えたりします。

そういうやり方をしていくと「自分だけが抱える課題」ではなく「みんなの課題」になっていき、そのプロセス自体が楽しくなっていきます。

平林実はこのコミュニティマネジメント講座の裏テーマにはコミュニティ担当者を孤独にしないっていうのがあるんです。

「コミュニティの価値」が判断しづらいことから「コミュニティマネージャー」などの担当者に初期投資しづらい。それ故に企業などでも1人担当者で始めがちです。そんな状態では、担当者は孤独になってしまうので、広く仲間がいる状態はとても理想的だと感じました。

実践の方法は、100人いたら100通り。属人化させることでコミュニケーションが加速する

北村(ディレクター、株式会社WHERE):色々な地域や企業がコミュニティナースを実施していく際、属人化していかないのか、どのようにその取り組みを広げていけばいいか気になります。

北垣:僕らもまだまだ試行錯誤ではあるのですが、めちゃくちゃ大事にしている要素があります。それは「楽しむ」ってことです。

自分のやりたいこと・自分の力が湧いてくること・自分の得意なことなど「自分の熱量」がうまれる源泉を掘り起こす必要があります。その源泉と地域に求められているニーズが重なる部分を実践した時に「力強い実践」がうまれます。

「人との関係の作り方」のような基本的なコミュニティナースのスキルは研修で学びますが、実践のやり方は、100人いたら100通り。むしろ属人化大歓迎なんです。

北村:属人化しないようにではなく、「その人らしさ」の要素を出しながら、チームマネジメントをされているんですね。

北垣:フワッと「なにかやろうよ」とすると、うまく進みません。まず誰かの熱量がうまれている「これやりたい!」を起点に、それを実現させる為にはどうするか、という「応援」がうまれる議論にすれば、コミュニケーションが加速します。

僕らはそれを「地域おせっかい会議」という活動にしていて、全国合わせると年間300回ほど開催され、いろんな活動事例がうまれているんです。

コミュニティナースのスタッフによる開催から始まったとしても、回を重ねると地域住民が自発的に開催し始めるのだそう

専門的な資格や知識よりも、もっと純粋に「コミュニティを繋げていきたい」気持ちで、柔軟に楽しんでいくことが大事だと感じています。

平林:何を実現させたいのかという「目的」は見失わず、けれどその目的を達成させる「手段」は柔軟に楽しむ。その実践知を積み重ねてきた視点からのお話に大事なヒントが詰まってると感じました。本日はありがとうございました。

Information

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Editor's Note

編集後記

コミュニティづくりを進める力は、何か特定の職業だけに役立つものではなく、生きていく上で、必ずプラスになるものですよね。さらに、「机上の空論」ではなく、実際の運営側の視点を丸っと学ぶなんて。この講座が提供するような内容を、1人で独学することは不可能だと思うので、使える機会は存分に余す事なく使い倒しましょう!

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