兼業副業
コロナ禍を経て、働く環境が急速に変化した現代。
副業や兼業としての関わり方が少しずつ取り上げられる中で、「どうやって地域にコミットすればいいのかわからない」と考えている方も多いのではないでしょうか。
そんなアナタにお届けするのは、ふるさと兼業事務局NPO法人G-netが開催した「ふるさと兼業」の事例に学ぶ、兼業×地域企業のオンラインセミナーです。
オンラインセミナーで話されたのは、NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトさんと実施した4ヶ月の兼業の実例。前編では、実施内容をお伝えしましたが、後編では兼業先の選び方や、兼業にかかる時間といった、より具体的なお話を取材しました。地域と繋がる兼業のリアルとはーー。
志知加奈(以下、加奈):の前半でも少し話に上がりましたが、兼業の受入れ先企業であった純科さんは、最初の兼業かとのマッチングの際に、旅行業の専門家を希望されていたのにも関わらず、最終的には専門家ではない兼業家2名を選ばれました。なぜだったのでしょうか?
坂本純科(以下、純科):今回兼業家の方と進めたいプロジェクトが観光分野だったので、最初は観光のプロから知見をお借りしようと思ったのですが、マッチングの途中で今回実施するプロジェクトの場合、プロの方の視点が入ることで、その世界の常識に捉われてしまう可能性もあるなと思ったんです。
あとは、前編でもお話しましたが、今回は「短い期間で一定の成果を出す」ことを目標にしていたので、とにかくそこを意識して選ばせていただきました。私自身の個性として、これまでも色々なところに手を広げすぎて着地ができないみたいなことが散々あったので、マネジメント能力が高そうな2人というのも決定打でしたね。
加奈:面接のときに「得意なことは何ですか」という質問に、今回の兼業家であるセッキーもタムタムも「整理すること」「揃えること」と話されていたのが印象的で、今改めて思うと、ここが2人の共通点だったなと思いますね。時間内に進めていくことは、ふるさと兼業の数ヶ月のプロジェクトにおいて大事なポイントにもなります。ちなみに、セッキーやタムタムが意識していたことはありますか。
関(以下、セッキー):最初に「どういう役割分担をしよう」と2人で話し合ったのですが、タムタムさんが「僕がプロジェクトマネジメントをする」とリードしてくださったんです。最初に役割分担を明確にしたことが、短期間で成果を導けた要因だなと思っています。2人でマネジメントをしていたら収拾がつかなくなっていたかもしれないので(笑)。
田村(以下、タムタム):実は最初は「明確な役割分担はいらないよね」と話していたんですけど、コーディネーターの加奈さんが「役割はきっちり決めた方がいい」とアドバイスを下さって、役割を決めることにしたんです。そこから順調に進んでいきました。
加奈:4ヶ月ってあっという間に経ってしまうので、明確な役割は必要かなと思ったんですよね。セッキーとタムタムが細かく依頼主である純科さんにヒアリングをして、課題と打ち手を整理されていたのがとても印象的でした。私自身おふたりの姿を見て「なるほど、こうやって課題に向かっていけばいいのか」と学ばせてもらうことも多かったです。
純科:プロセスも素晴らしかったですが、成果物もとても評判がよくて、旅行代理店さんにも「とても分かりやすい!」とお褒めの言葉をもらいました。これまでは予約を取るだけでも大変だったのに、みんなのおかげでスムーズに話を進めることができていて、大満足です。
加奈:『「ふるさと兼業」でどのくらいの時間と労力を使いましたか?』という質問が参加者からきていますが、時間と労力に合わせて、おふたりが大変だと感じたことやモチベーションが下がったときの対処法もお聞きしたいです。
セッキー:僕は「兼業をしているから時間がない」という感覚はなかったです。
タムタム:僕も同じです。朝のミーティングが週1であったんですが、兼業に対してたくさんのパワーをかけた感覚はなかったですね。僕は兼業をやる中で、プロジェクトを3~4つ並行することが多く、基本的には「月10時間ぐらいの稼働かどうか」を確認しながらプロジェクトに参加させてもらってます。
モチベーションについては、短距離走が向いていると自負しているので、3ヶ月とか4ヶ月で1回区切りをつけられるようなプロジェクトを選んでいますね。
加奈:プロジェクトによっては半年やそれ以上の長い期間のものもあるので、期間で判断するのも一つですね。あと、ミーティングを朝に行っていたというお話がでましたが、私生活に応じて柔軟に対応していただけるのも「ふるさと兼業」のポイントだと思います。
純科:兼業家の2人の活躍はもちろんなのですが、今回感じたのはコーディネーターの存在の大きさ。私もNPO業界で15年ぐらい活動しているので、いろんな方々とご一緒させてもらいますが、加奈さんの伴走力は抜群でした。G-netさんの教育がいいのか、彼女が優秀だったのかはわからないですけど、すごく上手にチームの中に入られていた印象です。
加奈:ありがとうございます。コーディネーターの役割って面白いなと思っていて、兼業家でも受入れ企業でもない立場で活動を後押しできるというか。私生活でもまずは相談相手がいるって大きいと思うんですよね。だから、促進剤として入れるといいなと思って行動していました。
加奈:「ふるさと兼業」の特徴を、これまで他の兼業プログラムにも参加されてきたセッキーとタムタムの視点で教えてほしいです。
タムタム:純科さんが言ってくれたのと同じで、とにかくコーディネーターさんが熱い。でも、グイグイ入ってくるわけでもなく、引いてるわけでもなく絶妙な間合いで入ってくださる。ケアも丁寧にしてくださるので、兼業が初めての方でも安心してできると感じましたね。
セッキー:僕も、コーディネーターさんが手厚く伴走してくださるのが、一番の特徴かなと思いました。他のプロジェクトでももちろんコーディネーターの方はいるのですが、困ったときにちょっと相談できるスタイルがほとんど。
でも加奈さんは全部のミーティングに参加してくださっていたので、僕らの動きを全部理解してくださっているからこその的確なアドバイスが素晴らしいなと思いました。また「ふるさと兼業」に参加したいなと思います。
純科:最初「4ヶ月短いなって。そんな短い間にできるのかな」と思ったり、たくさん応募があるとみんな優秀に見えてきて、みんなにお願いしたくなってきたりするんですが、ゴール設定から「大勢とったら調整するのが大変ですよ」といった兼業家の人数の部分まで、コーディネーターさんが助言してくれました。プロジェクトを終えてみるとチーム規模もちょうどよく、満足いく成果もつくれて本当によかったです。
セッキー:僕も最初は「2人で大丈夫かな」と心配していましたが、逆にそれが良かったですね。これまでのプロボノは半年ぐらいかけて実施していましたが、4ヶ月でやるには2人がちょうどよかった。このメンバーで実施できたことを本当に感謝しています。ありがとうございました。
Editor's Note
兼業を実際に体験した人だからこその意見が盛りだくさん。私自身も「兼業って大変そうだな」と思っていましたが、今日の話を聞いて、「好きな地域にコミットしてみようかな」と思う方も増えるのではないでしょうか。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香