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LOCAL LETTER

起業家のファーストキャリア。TURNS創刊者が営業職で培ったホスピタリティとは

NOV. 05

拝啓、夢に向かう道筋が見えないと悩むアナタへ

自信に溢れ次々とビジネスを成功させている起業家の方にも、新卒の時代があった。悩みながら壁にぶつかりながら成長してきた過程で、考え方や人生観を育んで来られた筈。

社会人としてのファーストキャリアをどう選び、そこからどんなプロセスで今に至ったのか。ファーストキャリアでの経験がその後にどう活きているのだろうか?

地域情報メディアとしてLOCAL LETTERの大先輩にあたる『TURNS』。そのプロデューサー堀口正裕氏の場合は?

未経験からメディア事業を立ち上げ大きく育てて来られた、堀口さんの意外なファーストキャリアと、そこで得られた学びとは?

ファーストキャリアで営業の面白さと真髄を知る

『TURNS』をはじめ、数々のメディアのプロデューサーであり、発行元の株式会社第一プログレスの代表取締役社長を務める堀口氏。

学生時代は、早稲田大学社会科学部の人気のゼミ、マスメディアについて学んだ。そのままメディア業界を歩んで来られたのかと思いきや、社会人としてのファーストキャリアは、意外にもメーカーの法人営業職だったという。

堀口正裕(Masahiro Horiguchi)氏 TURNSプロデューサー、株式会社会社第一プログレス代表取締役社長 / 総務省地域力創造アドバイザー。雑誌「LiVES」「カメラ日和」「tocotoco」等の創刊に尽力。2012年6月、日本を地方から元気にしたい、地方に関わる魅力と可能性、地方暮らしの素晴らしさを多くの若者に知って欲しいとの思いから『TURNS』を企画、 創刊。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす、関わり続ける為のヒントを発信している。
堀口正裕(Masahiro Horiguchi)氏 TURNSプロデューサー、株式会社会社第一プログレス代表取締役社長 / 総務省地域力創造アドバイザー。雑誌「LiVES」「カメラ日和」「tocotoco」等の創刊に尽力。2012年6月、日本を地方から元気にしたい、地方に関わる魅力と可能性、地方暮らしの素晴らしさを多くの若者に知って欲しいとの思いから『TURNS』を企画、 創刊。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす、関わり続ける為のヒントを発信している。

「大学卒業時、メディアに関わる仕事をしたいという気持ちはもちろんありました。でも、武道家の父の下で自分もずっと武道を続けており、武道を通じて身につけたことや沁み込んだ言葉が自分を作ってきたと思っていて。父をとても尊敬していたこともあり当時は、父のような武道家になりたいという想いの方が勝りました

とは言え、時代的に武道家で食べていくのは難しいこともよくわかっていましたから、就職はして、休日に稽古を続けようと。それで、休日は確実に休めると思っメーカーに入社したんです」(堀口氏)

ところが、任じられた流通大手企業向けの営業職は激務で、休日どころではなかった。堀口氏は「365日どころか、367日働いていた感じです」と笑う。入社当初は初めての地方生活で戸惑うことも多かったが、持ち前の負けん気の強さと、物事を俯瞰して本質を掴む力を発揮。ほどなく、部門トップの成績をあげるようになる。

「この時期に営業を徹底的にやらせてもらえたのが、僕には大きかったですね。自分なりに考えて工夫して仕事をさせてもらいました。流通大手の経営層を相手に大きな仕事をさせてもらったのも本当に大きな経験だったと思います」(堀口氏)

他部門の製品を仕入れて流通業界向けに販売するなど、既存の枠に捉われない提案を通していった結果、年間売上は50億円を超えるようになっていた。

「営業ってお金を持ってくる仕事と思われがちですけど、そうじゃないんですよね。営業でうまくいくためにはホスピタリティがないと絶対に無理。どんなに腰を曲げても嘘は伝わってしまうし、信用もされない。だから、相手を知る努力を決して怠らずに色々な可能性を感じながらお互いに“いい感じ”になれる関係性を創って仲間を増やすのが営業の仕事だと思います

営業が一番クリエイティブだと思うし、今でも一番楽しい仕事ですね」(堀口氏)

父の死をきっかけに、メディア作りを志す

 忙しくて大変ではあったけれど、仕事は楽しく成果も上がり、充実した日々を送っていた堀口氏だったが、入社5年目に転機が訪れる。お父様が逝去されたのだ。

「父のことを心から尊敬していたので、弱い人間の代名詞のような私は、悲しくて辛くて、冗談抜きで1ヵ月程度は父を思い出すたびに泣いていました。父の人生は激動の昭和を苦労の連続で生き抜いた人ですが、好きなことをやって、大好きな仲間に囲まれた素晴らしい人生だったなと思ってて。そういう風に父を見ていたから、父が死んだ時に『自分はこのままでいいのかなぁ』と思って。今までやってきたことを活かしたいという思いもあり、やっぱりメディア作りに関わりたいと決めました」(堀口氏)

転職活動を始めたが、「メディアに関わりたい、作りたい」と言っても、経験のない堀口氏に門戸を開いてくれる企業はなかった。そんな時、第一プログレスの社長(現会長)が「自分で資金を集めてくるなら、つまりしっかり実績を作るなら何でも好きなことをしていいよ」と言ってくれたことで、入社を決定。

5年近く勤めたメーカーを退職する際、堀口氏にとって意外であり、思い出深い出来事が起きる。

在職中、クソ生意気な私は、上司や先輩とぶつかることも多かったんです。それだけ真剣に仕事をしていたからとはいえ、失礼な物言いをしてしまったと今でも申し訳なく思っていることも多々ありますそんな生意気な自分だったのに、辞める時に全国の拠点で送別会をやってくれたんです。費用を全部会社が出してくれて。僕の言葉で嫌な思いもしたであろう人たちが、泣きながら胴上げまでしてくれました。

その時、数字では勝っても、人間力では圧倒的に負けたなって思いましたね」(堀口氏)

営業力を土台として、メディア事業の立ち上げへ

当時の第一プログレスは広告代理業専業だったこともあり、堀口氏も最初は広告営業に携わることからはじまった。前職は既存顧客に付加価値をつけた提案をして売上を伸ばす仕事だったが、今回は新規顧客の開拓。しかも商材は全く異なる。それでも「自信があった」と堀口氏は断言する。

お客さんと信頼貯金できる術さえ作っていけば、新規だろうが既存だろうが増やしていけます。お客さんと本当に心から楽しんで接していくと、最初は難しい相手に感じられても、いいところを見つけていける。そういう人の見方みたいなことを前職で自分なりに学んでいたので、新規だからと臆することはありませんでした(堀口氏)

入社当初は専用のパソコンもなく、営業したい企業の電話番号を104番(名前と住所から知りたい電話番号を案内してもらえるサービスのこと)で聞いて調べ、それまで全く縁のなかった業界にも積極的に営業していった。インターネット広告の営業なのに紙に書いて説明して受注したケースもあったと当時を懐かしく振り返る。

広告営業で着実に実績を伸ばし、幾つかのメインクライアントの売上を超えるようになり、自信を得る。入社した翌年には会社全体の営業力も強化され、売上が倍以上に躍進し、利益もあがった。

そして遂に広告営業と並行して、初の自社開発メディア『LiVES』、そしてTURNSの前身の『自休自足』の立ち上げに動き出す。しかし、当時はまだ本が強い時代。紙媒体を発行するために必要な出版コードを新参の会社が取得することに大苦戦を強いられた。だが、ここで諦めたりはしない。

「必要な手続きを進めながら、並行してスポンサー獲得に会社を上げて奔走しました。広告会社がメディアを作っていく事例が当時はあまりなかったこともあって、クライアントの意見を特集や企画に自然に取り入れていくやり方に興味を持っていただき、見込み通りにお金は集めることが出来ました。極端な言い方をすれば、お金があれば様々な企画を現実的に動かすことができるんですよね。その根本にあるのは営業です。編集者には営業の話をする人はあまりいないと思いますが、我々のチームは営業も編集も企画チームも全員が原価計算ができる集団なんです。何かやろうとしたときスポンサーというか、価値を感じていただき資金面でもしっかりサポート頂けるような仕組みを作らないと、何もできませんから」(堀口氏)

『自休自足』はじめ、その後に立ち上げた幾つかの自社開発メディアにも読者がつき、広告も集まっていたが、3.11 の東日本大震災を契機に、「もっと若い人と地域を繋げたい」という想いから、新たなローカルメディアを立ち上げるべく『自休自足』をTURNSリブランディング。現在に至る。

自分がやりたいことと、世の中のニーズが一致したところでメディアを作れたらすごい幸せじゃないですか。それがあるのがこの会社なんです。僕だけではなく、例えば『カメラ日和』という一世を風靡した雑誌を発行していますが、企画したのは新入社員の営業職の子で熱い想いを持って企業を訪問して、いきなり数千万円の広告費を集めてきて発刊したものです」(堀口氏)

後づけで語れる人生がいい。一所懸命に今を生きて

最終的には、人でしかないんですよね。移住も地方創生も関係なく、ローカルも東京も海外も、大人も子どもも関係なくて、人と人の向き合い方でしかないのかなって。ホスピタリティも結局そういうことだと思います

ビジネススクールを始めたのも、その地域の魅力を伝えるだけじゃなく、そこで実際チャレンジできる人を育てることに寄与できたらって思ってそうなれたら、もっと人に喜んでもらえるメディアになれるんじゃないかと」(堀口氏)

2021年5月の『TURNS BUSINESS SCHOOL開講に続き、7月には『GLOBAL TURNS PLATFORM』というプラットフォームも始動させた。

地方から世界のマーケットを作れるような素晴らしい企画がいっぱいあるんでローカルからグローバルに羽ばたくお手伝いを始めたんですね。

今までの人生に後悔はありませんけれど、そういう今の仕事に紐付けて考えると、若い頃にもっと世界を見ておけばよかったなっていうのはすごくありますね」(堀口氏)

「僕はもうすぐ50歳になりましたが、遅咲き後づけが大事だと思っています。

時間を巻き戻すことは出来ませんから、遅咲きだっていいし、後づけで語れるような人生ができたらいいよねって話をよくするんですよね、みんなで。その時は自信がなくても、今を一所懸命に生きていたら、後づけで物が語れるぐらいの成果が出ることがある。最近そういうのがわかってきた感じがあって。

自分が会社にお世話になってることとか、その地域から得てることって何だろうって考えたときに、その組織とか地域を好きになるヒントっていっぱいあるはずなんですよね。環境に感謝する癖をつけながら、何かに没頭して一所懸命にやっていたら、振り返って語れる日が必ず来と思います」(堀口氏)

起業家のファーストキャリア。『TURNS』プロデューサーであり、株式会社第一プログレスの代表取締役社長を務める堀口氏には、自分の信念に目をそらさず、周囲の人に敬意を払いながら、今に邁進する強さがあった。

『スナックほりぽぽ』開催決定

実は今回、LOCAL LETTERでは、TURNSのプロデューサーである堀口さんを、TURNSでは、LOCAL LETTERのプロデューサーである弊社代表平林(通称:ぽぽ)を取材。

この取材を記念して、『スナックほりぽぽ in東京 』を開催することが決まりました!ぜひこの機会に、リアルでも会いにきてみてはいかがでしょうか?

当日の概要

◉日時:
12/1(水)17:00-22:00

◉場所:
TURNSオフィス(東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館ビル9F

◉参加スタイル:
特に定員等は設けませんので、立ち替わり入れ替わりでお入りいただけます
※ 満席だった場合はお待ちいただく場合がございますので予めご了承ください

参加希望者は以下申込みボタンより「LINEオープンチャット*1」にご参加いただくと、申込みが確定します

*1 LINEオープンチャット
LINEの友だちになっていなくてもトークをしたり、情報をキャッチできるサービスのこと
https://guide.line.me/ja/services/openchat.html

Information

地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」をはじめました。

場所に縛られずに、 オモシロい地域や人と もっと深くつながりたいーー。

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは、「Co-Local Creation(ほしいまちを、自分たちでつくる)」を合言葉に、地域や社会へ主体的に関わり、変えていく人たちの学びと出会いの地域共創コミュニティ。

「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。

<こんな人にオススメ!>
・本業をしながらも地元や地域に関わりたい
・地域で暮らしも仕事も探求したい、人が好き、地域が好き、旅が好き
・地域を超えた価値観で繋がる仲間づくりがしたい
・社会性の高い仕事をしたい
・地域や社会課題を解決する事業を生み出したい

 

MEMBERSHIP の詳細&お申込みはこちら
https://localletter.jp/membership/

Editor's Note

編集後記

「自分を救ってくれた言葉は、合気道絡みが多いんですよね」
そう言いながら、堀口さんが幾つかの言葉を紹介してくださいました。

合気道場の館長が教えてくれた、道場に整列する時に少年部の子供たちも唱える、吉田松陰の「夢なきものに成功なし(夢なきものに理想なし、理想なきものに計画なし、計画なきものに実行なし、実行なきものに成功なし。故に、夢なきものに成功なし)」。
師範が教えてくれた、木喰上人の「まるまるとまるめまるめよわが心 まん丸丸く 丸くまん丸」。合気道は円運動なので、遠心力を大きくするためには大きな丸になる必要があるそう。「若いうちは尖っていていいから、角を取って小さな丸になるのではなく、角をたくさん創って大きな丸になれ」とも教えられてきたとのこと。

そういった言葉の数々が、堀口さんの太い背骨を造っているのだと感じました。

ご自身の内に言葉を沁み込ませ、大切にして来られた堀口さんだからこその今のメディアのお仕事であり、そういう堀口さんの言葉がまた誰かの背骨となっていく。その場に立ち会えたことに感謝します。

これからも LOCAL LETTER の応援をよろしくお願いします!

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