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「こんなことができたらいいな!」
「そのアイデア、私も考えていたのにな〜」
頭の中では広がる構想も、いざカタチにするとなると踏み出せなかったり、『壁』にぶつかって諦めてしまったり。こうした経験はありませんか?
そんなみなさんの歩みをサポートすべく、株式会社WHEREは、まちづくり人材の育成に資する各種講座を開講しています。『地域と人の繋がりに新しい可能性を創出する』を企業ミッションに据え、これまで100名以上の受講生と学びの場を共にしてきました。
講座の卒業生は全国各地で活躍中です。今回は、2023年3〜6月に開講した「東北起業家養成講座*」の受講生であり独自の事業を展開する3名に、講座での経験やその後のキャリアについて伺いました。
*東北起業家養成講座…「東北起業家の実体験から学ぶ事業の起こし方」や「東北から全国に羽ばたく先輩起業家から学ぶ事業戦略の立案方法」などを座学やワークショップを通じて学ぶ講座。株式会社WHEREと株式会社MAKOTO WILLの共同企画。
事業化の過程において直面するいくつもの『壁』を乗り越えたであろう3名にとって、講座はどのように機能していたのでしょうか。卒業⽣のその後に迫る鼎談から、講座がもつ価値を紐解きます。
講座への参加動機を「特定の悩みを解決したかったわけではありません」と振り返るのは大澤翼さん。古民家を改装しシェアサロンをつくる構想を持って、受講に臨みました。
「受講時にはすでに個人の整体を開業していましたが、長年構想していた古民家シェアサロンが実現してから『起業ストーリー』が始まると捉えていました。
そのため、当時は起業にまつわる本を読み漁っていました。しかしどの本も似ている。本からは筆者の熱が伝わりにくく、つまらないと感じていました。
一方講座では、憧れているホテルの社長さんに会えるかもしれないし、直接話を聞く中で自分の初心を振り返れるかもしれない。そうした期待を持ちつつ、講師陣に惹かれて本講座の受講を決めました」(大澤さん)
今や起業の成功事例を書き連ねたノウハウ本は数多く流通しています。しかし文字情報だけでは伝わらないのが、先人たちの熱量。リアルタイムで実施する講座では、講師陣の熱いメッセージが届きやすいと期待されています。
この講座では、東北地方において現役で活躍する起業家たちが講師として登壇するほか、事業案に対して直接アドバイスをもらえる『最終プレゼン』の場も用意されていました。「憧れている」人とコミュニケーションが取れる機会は魅力の1つだったと言えます。
そうしたプログラム内容に対し「人を知って財産にしたかった」と賛同を示すのは、木浪真由美(きなみまゆみ)さん。出身地の青森県を拠点に、「あっぷるぱい(牌)」という、りんご栽培の歴史をマスターできるカードゲームを開発しています。
「2022年9月に『next AOMORI』という別の起業塾を受講していました。そこは、事業のマネタイズよりも精神論が重視されたプログラムだったと感じています。社会のために何かをしたいという気持ちの醸成や、一企業として成り立っていくために必要な姿勢などを学びました。
次に、自分の構想を突き詰めていく研修として『東北起業家養成講座』を選びました。
求めていたものは事業に対する姿勢より、もっと具体的なこと。収益化含めて、すでに東北中で活躍されてる方々からぜひ学びたいという気持ちが大きかったです」(木浪さん)
他方、受講前に法人化を果たしていた参加者の久慈美穂(くじみほ)さんは受講理由を「直感」と表現します。
「正直、SNSで講座情報が流れてきた時はプログラム内容までは把握しきれていませんでした。ただ運営陣に知り合いがいて、なんとなく受けたいなと。
とはいえ『この講座はこれから起業する人向けかな?』と感じていたので、すでに個人事業主としての6年間を経て会社にした直後だった自分には合わないかなと、参加を迷っていました」(久慈さん)
豊富な事業経験をもつ久慈さん。参加を決める後押しになったのは、運営メンバーからの案内でした。
「『久慈さんに合うと思います』とメッセージが来て、その言葉で受けることを決めました。結果的には受講生の半分がすでに起業されている方、もう半分が会社に所属している方といった割合でした。
参加を迷う方も『何となく自分に合うかな』『キーワードにわくわくした』など、感覚的な部分で揺さぶられたなら思い切って参加してみるのが良いと思います」と話す久慈さん。受講を検討する方々の背中を押します。
「自分も内容は気にしてませんでした。むしろ起業に対する熱を上げる後押しに期待していました。講座の説明会で株式会社WHEREのぽぽさん(弊社代表・平林)が最後にちらっと『1回これを受けたら、人生が変わりますよ』と言ったんです。それが印象的で、受講を決めましたね」(大澤さん)
「人生が変わる」という言葉に期待をにじませていた大澤さん。講座内で最も記憶に残ったコンテンツとして、内省に繋がったというワークを紹介してくださいました。
「バーっと並ぶキーワードから目に留まったものを使い、自分のストーリーを描くというワークがありました。ワークをやる中で、これまでの経験を思い出して『誰もやりたがらない仕事を責任感を持ってやってきていたな』と。
過去の自分と今やろうとしていることが、ガチっとはまる感覚があったんです。『誰もやらない事業をやっても大丈夫だ』と自信がつき、未来に対する怖さが解消されました。
起業に向けて売り上げや支出のことばかりを考えている時期でしたが、そこを一歩抜けて『自分だからできる事業はなんだろうか』と考える時間になったと思います」(大澤さん)
本講座での時間が、ご自身の起業案に自信をもつきっかけとなったと語る大澤さん。この経験に木浪さんも重ねます。
「盛岡のヘラルボニー*さんの創業時の話を聞いて、私もとても勇気をもらいました。
今や名高いヘラルボニーさんですが、立ち上げ当時は『そんなことをやって何になる』と言われ続けたそうです。まさに同じようなことを何度も言われている真っ最中だったので、自分も自信をもってそのままいこうと思えた。心強い存在でしたね」(木浪さん)
*株式会社ヘラルボニー…「異彩を、放て。」をミッションに掲げる福祉実験カンパニー。福祉施設に在籍する知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、さまざまな商品展開を行っている。
3月の講座開始時点では会社員だった木浪さん。「青森県のリンゴ栽培の歴史を伝承していく活動」を軸にご自身のアイデアを醸成している最中であり、講座期間内に退職のタイミングを迎えるという、まさにライフチェンジの渦中での受講でした。
お一人で構想をカタチにしていくプロセスにおいて、講師陣の言葉から得る気づきは多かったそうです。
「ヤマガタデザイン株式会社*の山中さんに『青森カラーが強すぎる。全国を狙うならもっと広い範囲でみた方がいいのでは』と言われ、その時はそうかもなと納得しました。一方で『なぜ私は青森にこだわるのか?』と考え直しました。
改めて内省する中で『やっぱり私は青森にこだわりたい』と。事業のベースを見つめる良いきっかけになりました」(木浪さん)
*ヤマガタデザイン株式会社…地方都市の課題を希望に変える街づくり会社。田んぼに浮かぶホテル「スイデンテラス」を始め、山形庄内から日本の地方都市の課題を解決するモデル事業の創出に分野横断的に取り組む。
一度、自分の活動フィールドから離れ、他者の視点からアイデアを見つめてみる。外からの問いかけが、アイデアの解像度を上げるきっかけとなるのかもしれません。
「正直、講義の内容は聞いたことのあることが8割ぐらいだった印象です」と、正直に講座を振り返る久慈さん。一方で、講座の価値としては「人との出会い」を挙げました。
「一番の価値は自分で活動したり、考えていることを形にしようとしたりする仲間ができたこと。こうやって終わった後も繋がっていて、刺激をもらえる仲間が全国にいるという点では本当に価値があった講座だと思っています。
また、講師陣や最終プレゼンにお越しいただいた審査員は自分ではなかなか会いに行けない方々でした。自分の直感で動き、この講座に参加してみて良かったです」(久慈さん)
受講後も互いの活躍をSNSで確認しあったり、オンラインで意見交換をしたりと、受講生間の交流は講座内に留まりません。こうした横の繋がりの価値に大澤さんも共感を示します。
「起業当時はずっと1人で活動していて、自分の脳内会議ばかりしていました。
自分と似たような局面を迎えてる人たちや、これからもっと頑張っていくぞという人たちと出会えるのは講座の醍醐味だと思います。
また自分の活動場所の近辺だけを見るのではなく、日本中の頑張る人と繋がる可能性を大事にしたい。こういう講座を受けるなど、自ら積極的に動いた方が良いと思っています」(大澤さん)
ここまでは、3人が講座を受講した理由や、講座を通して実感した魅力を紐解きました。
後編では、講座がどのように3人の事業に活かされたのか、「こんな人に参加をおすすめしたい」という、受講検討中のアナタへのメッセージをお伝えします。
Editor's Note
「地方で頑張る若者を増やすには」
こうした議論はよくなされますが、この講座のようにみんなで学び合い、活動に対するモチベーションを維持できる空間が必要なのではと思っています。
Komugi Usuyama
臼山 小麦