兼業副業
コロナ禍を経て、働く環境が急速に変化した現代。
副業や兼業としての関わり方が少しずつ取り上げられる中で、「外部人材の力を借りたいけど、どうやって繋がりをつくったらいいかわからない」「以前に外部人材を入れたプロジェクトを実施したが、空中分解してしまった」といった悩みを抱えている企業・団体の方も多いのではないでしょうか。
そんなアナタにお届けするのは、ふるさと兼業事務局NPO法人G-netが開催した「ふるさと兼業」の事例に学ぶ、兼業×地域企業のオンラインセミナーです。
オンラインセミナーで話されたのは、NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトさんと実施した4ヶ月の兼業の実例。兼業を実施されたおふたりと受け入れ先企業に登壇いただき、地域と繋がる兼業のリアルについてお伺いしました。
志知加奈(司会進行 / 以下、加奈):本日は、ふるさと兼業の受け入れ先の代表である坂本純科さん、兼業者の関雄さん・田村和久さんにお越しいただきました。兼業という働き方はどうだったのか、また受け入れ先として感じたことや課題点など、リアルな感想をシェアしていきます。
加奈:まず最初は、兼業受け入れ先であるNPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト代表の坂本純科さんから、プロジェクトの紹介をお願いします。
坂本純科(以下、純科):NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトは、「持続可能な暮らしと社会(=エコビレッジ)」を創造するための技術や考え方を学び広める団体で、住み込みのスタッフと共同生活をしながら、サスティナビリティに関する内容に日々取り組んでいます。
純科:現在、大学やJICAといった外部研修を受け入れたり、修学旅行や子どもたちの環境教育も行っているのですが、コロナ禍で海外へ行けなくなった高校からの修学旅行生のリクエストが増えていて。私たち自身、旅行業のノウハウがなかったので、ふるさと兼業を募集し、修学旅行生の受け入れ体制を整えたいと考えました。
純科:応募する前は、「どんな方が来てくれるのか」「本当に悩みを解決してくれるんだろうか」という不安はありましが、ふるさと兼業さんの力をお借りし、無事に修学旅行生に対する説明資料を完成させることができたんです。今回一緒に頑張ってくれた、兼業者のおふたりもぜひ自己紹介をお願いします。
関(以下、セッキー):僕自身は、過去他の団体でプロボノとして活動したことはあったんですが、今回は兼業でトライしてみたいと思っていました。大好きな北海道が舞台で、かつ、今の職場がSDGsを取り扱っている会社であることから、今回NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクトが実施される「ふるさと兼業」への参加を決めました。
田村(以下、タムタム):僕はコロナで本業の業績が落ち込んでしまい、2021年11月から副業でのキャリアの形成を行っていて。前回参加したプロジェクトのテーマがSDGsで、同じテーマである北海道エコビレッジさんの活動に惹かれて本プロジェクトに応募しました。
セッキー:ここからは、今回の目的であったSDGs教育研修のパッケージ化への取り組みについて話します。まず、僕たちが兼業に取り組む際に最初に行ったのは、プロジェクトの代表である純科さんが考える「ありたい姿」と「現状」をヒアリングすること。
そうすると、修学旅行なので学校側の条件やシーズンによって提供できる内容が変わるため、毎回オーダーメイドで研修をつくっていたことがわかったんです。想像するだけでも大変だなと思う中で、純科さんのありたい姿をお伺いした上で、オペレーションの整理と研修内容や目的が正確に伝わる資料づくりを目指すことになりました。
加奈:現状を把握する上で大事にされたことはありますか?
セッキー:実際に現在実施している研修を把握をするため、純科さんのお家にタムタムと加奈さんと一泊二日でお伺いしました。自分たちが体験することで、より一層手触り感のある現状を把握することができます。その上で課題を整理すると、出てきたのは「予約フロー」の課題。
純科:今までは私一人で電話やメールの対応をし、「誰に対してどこまで話したのかがわからない」といった問題が起きていたのですよね。
今回のプロジェクトで研修の概要説明書をつくったんですが、HPからダウンロードできるところまで構築してくださって。それによって、前提情報を相手に共有した上で話ができるので、とてもスムーズに進行できるようになりました。
セッキー:純科さんのお話を聞いていたら、プログラムをつくっているのは、学校だけではなかったので、①学校、②代理店、③一般とターゲットを分けて、最終的に3パターンの概要説明書をつくりました。
加奈:頼もしい兼業メンバーが純科さんのパートナーになってくださったんですね。純科さんは、今回「ふるさと兼業」を一緒にやってもらうメンバーはどのような基準で選ばれたのでしょうか?
純科:実は最初は、おふたりではなく、旅行業あるいは旅行に長けてる人を選ぼうと思っていたんです。でも短期間で成果を上げていくことが重要だと考えた時に、マネジメントが上手そうだったセッキーとタムタムを選びました。正直、こういう外部人材に入ってもらうプロジェクトって、プロジェクトが最後まで到達するとは限らないんですよね。空中分裂することもあって、そうすると成果が得られなかったというケースも少なくありません。
でも「ふるさと兼業」のチームはプロセスを組んでいくのが非常に上手くて、「今日はここまで進もう」とか、「遅れてるけど代わりましょうか」と、みんなでサポートしながら進めることができました。
もう一度外部人材を受け入れるとしたら、是非このようなチームで取り組んでいきたいですね。「ふるさと兼業」の仕組みが私たちの団体やプロジェクトにフィットしたケースだったし、今回のプロセスが今後に応用できそうだと感じています。
セッキー:僕は今回初めて兼業副業にトライさせていただきましたが、本業で携わっているSDGsがテーマということもあり、「フィールドが変わっても自分の強みを生かせる」ということを再認識できた気がしています。
プロボノと兼業の違いは個人によって感じる部分に差があると思いますが、私は「兼業として対価をいただくことに対する責任」が大きく違っていると感じました。もちろんお金をもらってないから適当にするということではないですが、対価をいただく緊張感がありましたね。
タムタム:僕は、北海道エコビレッジを訪問できて良かったです。自分の固定観念が自然の中で剥がれていく感覚だったり、仕事で来てるんだけど、ある種休みのような感覚にふっとなったりする。そんな気づきもプロジェクトに関わるとよく起きるなって。そういった体験も含めてすごく楽しかったですね。
Editor's Note
違う土地にいても、何かしらの形で地域にコミットしたい!そんな想いが叶う兼業ですが、なかなか現場の声は聞けないはず。今回はそんな受け入れ側と兼業者のリアルな想いが聞ける貴重な場だったと思います。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香