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LOCAL LETTER

東京生まれ・徳島移住カメラマンが、カフェ×グランピングの新規事業に挑戦するワケ

SEP. 04

TOKUSHIMA

拝啓、自分の限界にチャレンジし続ける、どこまでも真っ直ぐなアナタへ

好きなことを仕事に。多くの人にとってそれは、いつかは叶えたい理想の1つとなっています。ですが、実現するためには数え切れないほどの障壁があるのもまた事実。様々な理由を抱え、あと一歩を踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。

2005年の創業以来、数多くのウェディングや家族の肖像・笑顔を写真に収めてきた写真館「NICE!」。代表である水谷英俊さんは、「好きなこと」と真摯に向き合い、歩みを続けてきた1人です。

サラリーマンから起業し、写真館を立ち上げたのは18年前のこと。長きに渡ってカメラマンとしての活動を続けてきた水谷さんが、今年(2023年)立ち上げたのはカフェとグランピングの複合施設という畑違いの新規事業でした。

なぜ新しい分野へのチャレンジを決めたのか。創業秘話から続く、変わらない「ある想い」について伺ってきました。

水谷 英俊(Mizutani Hidetoshi)さん 有限会社ナイス代表取締役、KAWAUCHI TOWN代表取締役 / 1972年東京都生まれ、千葉県出身。社会人として旅行会社に勤務していた際に、海外ウエディングに携わるようになり、ブライダル業はサービス業のトップであると勝手に感じるようになる。その中でも写真業務こそが最も難しく、だからこそやりがいがあるとまたまた勝手に感じ独学でスタート。ウエディングの中でも、写真だけがカタチとして残ることもあり、カメラマンほど責任とやりがいがある仕事は無いと思い敢えてその道を選んだ。あれよあれよとひたすら走り続け、気が付けば50代に突入。開業当初は新郎新婦の友達のような立ち位置からの撮影を意識していたが、今やご両親やご親族の目線からも撮影できるように。結婚式の大切さや一人一人の繋がりを大切に日々シャッターを押している。
水谷 英俊(Mizutani Hidetoshi)さん 有限会社ナイス代表取締役、KAWAUCHI TOWN代表取締役 / 1972年東京都生まれ、千葉県出身。社会人として旅行会社に勤務していた際に、海外ウエディングに携わるようになり、ブライダル業はサービス業のトップであると勝手に感じるようになる。その中でも写真業務こそが最も難しく、だからこそやりがいがあるとまたまた勝手に感じ独学でスタート。ウエディングの中でも、写真だけがカタチとして残ることもあり、カメラマンほど責任とやりがいがある仕事は無いと思い敢えてその道を選んだ。あれよあれよとひたすら走り続け、気が付けば50代に突入。開業当初は新郎新婦の友達のような立ち位置からの撮影を意識していたが、今やご両親やご親族の目線からも撮影できるように。結婚式の大切さや一人一人の繋がりを大切に日々シャッターを押している。

創業の秘訣は「喜んでもらいたい」というシンプルな想い

「社会人になってから最初の4〜5年は、旅行会社で働いていました。フランスやハワイなど様々な国に行き、現地で営業やガイドの仕事をしていましたね。それから勤めていた会社を辞めるというタイミングで元奥さんと出会い、彼女の地元でもある徳島県に引っ越すことになったんです」(水谷さん)

徳島県に移ったのち、水谷さんは県内最大のドレスサロンである「ブライダルコアときわ(以下ときわ)」に転職をします。当時は海外挙式の人気が高まりはじめたタイミング。型にとらわれない柔軟な発想と前職での経験やつながりを活かして、水谷さんは様々なアイデアを形にしていきました。

「例えば、国内と海外に同じドレスを用意しておいて、日本で測ったサイズに合わせて現地のドレスを調整してもらう。そうすると、現地での衣装合わせの時間を大幅にカットできますし、お客さんも身軽に行けるようになりますよね。

今では当たり前なっていることも当時はまだ整備されていなかったので、お客さんにとって本当に喜んでもらえることは何なのかということを考えて1つずつ形にしていきました」(水谷さん)

ユーザー視点に立つことで、様々なヒット商品を生み出していった水谷さん。お客さんの喜ぶ顔を見たいという想いはやがて、カメラマンとしての才能も開花させていきます。

「ときわでは当初は海外挙式に関する仕事をしていましたが、しばらくすると国内での前撮りを担当してほしいという相談を受けるようになりました。そこで、これまでの仕事で出会ったカメラマンなど、信頼のおける知人たちに声をかけてチームを組むことにしました。

私は全体のコーディネートをする立場にいたのですが、撮影当日に手持ち無沙汰なこともあって、途中から前撮りのオフショットを撮影するようになりました。

その当時はフィルムカメラ全盛期で、納品までに数日かかるのが一般的。そんななか、スタジオ近くのカメラ屋に協力をしてもらいオフショットを当日渡せるようにしたんです。これが思いのほか評判が良く、前撮り写真のクオリティの高さと相まって瞬く間に人気のサービスとなっていきました」(水谷さん)

前撮り写真の人気が高まる一方、会社としては衣装屋ということもあり撮影に人数を増やすことはできず、常に人手不足の状態が続いていました。

「カメラマンとして、一生に一度の姿を撮影することにやりがいを感じていましたし、やりたいことを続けていくためには独立して起業するしかなかった。きっかけは本当にシンプルでした」と水谷さんは語ります。

人を動かすことの難しさを痛感。自分の限界点をつくらないということ

自ら動くことで道を切り拓いてきた水谷さんだからこそ、会社を経営するようになってからは、自分ではなく他人を動かすことの難しさに直面することもありました。

「会社を続ける上で一番大変なのは、やはり人を動かすことですね。特に最近は『これはできない、これは自分の役割ではない』と自分で限界点をつくってしまう若者が増えてきているように感じます。

様々なことにチャレンジをして大変なこともたくさんありましたが、私の場合やらなければよかったと思っていることは1つもありませんあとから思い返すと、すべてのことに意味があったと感じているんです。

だからこそ、会社のメンバーにも自らチャレンジする姿勢を持ってもらいたいと思っています。でもこれは言葉だけで伝わるものでもないので苦心しているところですね。どうしたら自分事として実感してもらえるのか、そういったところを私自身がもっと考えていく必要があるなと日々痛感しています」(水谷さん)

変わることのない一貫した想いがチャレンジを支える

新しい物事にチャレンジする不安というのは、何度経験しても付きまとうもの。さらに勇気を出して一歩を踏み出しても、ときには思い通りの結果に結びつかないこともあります。その度に水谷さんを支えてきたのは、創業当初から変わらない真っ直ぐな想いにありました。

お客さんの笑顔や嬉しそうな顔を見ると、それだけで『頑張ろう』という気持ちになれる。それが本当に支えになっていますね

ブライダルに関わる仕事にも様々なものがありますが、記憶に残るということを抜きにすると、やっぱり最後までモノとして残るのは写真や動画だけなんです。

いつの日か写真を振り返ったときに、『このときのカメラマン面白かったな』とか『こんなシーンも撮ってくれていたんだな』とか、思い出してもらえる可能性がある。そういった笑顔のどこかに携わっていられるから、立ち止まることなくここまで続けてこれたんだと思います」(水谷さん)

徳島の魅力を伝えたい。ゼロからはじめるまちづくりへの挑戦

創業から18年、この地で数多くの笑顔を撮影してきたNICE!。そんな同社が新規事業として立ち上げたのは、なんと写真業とは全くの畑違いであるカフェ業・宿泊業でした。一見すると無関係のようにも思える取り組みですが、水谷さんの目の前の人の笑顔に関わりたい」という想いはここでも一貫していました。

「2023年7月、徳島県徳島市の川内町の小松海岸周辺エリアに『KAWAUCHI TOWN』という複合施設をオープンしました。施設内にはカフェ『HIZAMOMO』とキャラバンカーに宿泊可能なグランピングエリア『QUVEL』を設けています。

今回、新しい業態にチャレンジした1番の理由は、“まちおこし”にあります。ここ川内町もそうですが、もっと言うと徳島という県自体を、たくさんの人にとって訪れてみたい、住んでみたいと思える場所にしていきたいんです」(水谷さん)

カフェには世代や性別を超えた幅広い層の人たちが集まり、グランピングは県外や国外のお客さんの目的地になる。KAWAUCHI TOWNには、「人や文化の交流地点になってほしい」という、そんな水谷さんの願いが込められていました。

「既にこの地で魅力的な取り組みをしている方たちはたくさんいますが、まだそれぞれが個別で活動をしている状態だと感じています。そういった人たちが集まる拠点ができれば、ジャンルを超えた繋がりが生まれて、それはやがて大きな渦になる。この場所の魅力を広めていくにはこれしかないと思いました」(水谷さん)

「ただ、突然私が旗を振って『やりましょうよ』と言ったところで、残念ながら説得力に欠ける。根本の想いは同じでも、『写真館の人』と『複合施設の人』では、受け取り方に大きな違いが生まれるんです。

無事にKAWAUCHI TOWNをオープンすることはできましたが、これはゼロからはじめるまちづくりの第一歩。大変なのはここからなので、今後は徳島という土地の1パーツになっていけるように頑張っていきたいですね。そのためにも、人が集まる場所や人に喜んでもらうということに対して、さらに真摯になっていかなければと考えています」(水谷さん)

次の世代の笑顔のため、今できることを誠実に

「NICE!としては、この先も色々なことがあるとは思いますが、生成AIに取って替わられない限りはこの仕事を続けていきたいですね。まだまだお客さんから必要とされていますから」と水谷さんは誇らしげに笑って語ります。

「そのためには、自分の成長はもちろんのこと、次の世代を育てていくことが大切だと考えています。正直に一生懸命向き合っていれば、その想いはお客さんに伝わるもの。お客さんに合わせるカメラマンではなく、お客さんと一緒に考えて動けるカメラマンを増やしていきたいですね」(水谷さん)

目の前のお客さんが喜ぶ顔を見たい、そんな純粋な気持ちを大切にし続けてきた水谷さんの言葉はどこまでも真っ直ぐです。やりたいことを仕事にするということは、私たちが思っているよりも案外もっとシンプルなことなのかもしれません。

Editor's Note

編集後記

とことん前向きに、真っ直ぐな言葉を語る水谷さんに、終始眩しさのようなものを感じながら取材をさせていただきました。
様々なチャレンジを超えてきたからこそ、水谷さんの「自分で限界点をつくってしまっている」という一言には説得力があり、私もまだ頑張れそうだとエールをもらえたような気持ちになりました。チャレンジすることをもっともっと楽しんでいこうと思います!

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