地方創生
地元に貢献したい!
都心ではなく、地域で起業したい!
そんなアナタにお届けしたいのが『茨城県北ビジネススクール2022』最終プレゼンテーションで行われた『ローカルが未来を創る〜スペシャルトークセッション』。
地域を舞台に、新規事業やブランディングといったチャレンジを積み重ねてきたゲストが語る、新たな事業づくりのヒントとはーー。
齋藤(ファシリテーター):茨城県北の印象と、今日登壇するお二人と茨城県の関わりを教えてください。
及川(ポーラ):茨城県北は本当に自然豊かで、映画の舞台になりそうな美しさがありますよね。実を言うと友人が県北に住んでいるので、年に数回茨城県北を訪れているのですが、「この風景は失われてほしくないな」と常々思っています。私にとっては第二の故郷のような場所ですね。
及川(ポーラ):仕事での関わりでいうと、弊社は化粧品を地域に密着して販売しています。この茨城県北にも、たくさんのポーラレディ(現:ビューティーディレクター)がいました。私も営業担当だった頃に茨城県の担当をしていたので、プライベートでも仕事でも馴染み深い土地ですね。
指出(ソトコト):日立市と一緒に移住定住や観光のパンフレットを作らせていただきました。県北地域には活躍されている方々がたくさんいて、爽やかな風が吹いている場所だなという印象があります。
齋藤(ファシリテーター):今日は、ローカルの可能性ということで「茨城県北でどんな事業やビジネスが生み出せるか」といったテーマでお話をしたいのですが、例えばポーラさんと地域を掛け合わせたときって、可能性が無限に広がると思うんですよね。茨城県以外での取り組みを教えていただけますか?
及川(ポーラ):島根県に「神紅(シンク)」というとっても美味しいブドウがあるんですが、すごく綺麗な赤色で「化粧品にいいんじゃないか」とリクエストをいただきました。調べてみたら、栽培過程で廃棄される葉茎から美白成分の高いエキスが出まして。
本来だったら捨ててしまうものから新たな価値が生めそうだということで、新プロジェクト「FROM LOSS TO BEAUTY」を始動。島根県と島根大学と当社がタッグを組み、1年半ほど格闘しハンド美容液をつくりました。
及川(ポーラ):希少価値の高いエキスなので、数万個しかつくれなかったんですが、1日で5,000〜6,000個売れてしまって。「1年間の限定個数発売」という形で売り出したところ、かなり話題になりました。「多く作れない」ことは、一般的にはネガティブな要素になったりしますが、今回は「1年に今の時期しか取れない」ことが希少価値性に繋がったと思います。
また、化粧品から派生して「この化粧品に使われている神紅っていうブドウはどんなブドウなんだろうか」と、島根県自体にも興味が波及していて、まちづくりのキーワードでも素敵な循環が生まれていると実感しています。
齋藤(ファシリテーター):指出さんもたくさんの地域ビジネスを見てこられていると思いますが、ここ最近で「面白いな」と思うものって何かありますか?
指出(ソトコト):及川さんがおっしゃったような、社会派化粧品のジャンルがしっかり育っていると感じています。ポーラさんの取り組みがきっかけで、「社会に貢献できる化粧品をつくりたい」と思う人も出てくるでしょうし、捨てられるはずだったものがサーキュラーエコノミー的な視点で化粧品に還元される流れが出てきているなって。すごい心強いですよね。
及川(ポーラ):そうですね。化粧品だけでなく、例えば食品だったりとかいろんなジャンルに派生していくと、まちづくりの観点としてもどんどん広がっていきますよね。
齋藤(ファシリテーター):及川さんは茨城県常陸太田市にも関わりがあるんですよね。
及川(ポーラ):そうなんです。サスティナブルなデザイン思考実験をされている茨城県北出身の方から、無理難題を押し付けられるんです(笑)。例えば、「コンポスト(堆肥)から香水やアイシャドウってつくれない?」とか。
及川(ポーラ):もちろん解決できることと、できないことがあるんですが、まずはトライをしてみることが大事だなと思っています。一見、ポーラのような会社とは直接関係がないように思えることでも、可能性がどんどん広がるし、違う思考で自分の本業も考えられるなと感じています。
齋藤(ファシリテーター):及川さんって昔から本当にフットワークが軽いんですよ。元々ポーラの営業セールスから始まって、代表取締役になられていますが、今日のイベントもお誘いしたら「行きます!」ってすぐにお返事をいただきました。
そのフットワークの軽さが及川さんの可能性をどんどん広げている気がしているのですが、特に及川さんが大事にしてることってありますか?
及川(ポーラ):好奇心を大切にしていますね。私は自分自身を日本の終身雇用の見本だと思っていて、1社30年勤めあげているんですよ。だからものすごく会社人間なんですけど、一方で組織に埋没しちゃうと、新しい発想ができない。
だからとにかく休日には人に会いに行って、面白そうだなと感じたところには、とことん顔を出す。「自社事業には関係ないですよね」と言ってしまうと、そこでクローズドになってしまうので。
齋藤(ファシリテーター):ありがとうございます。では最後にお二人から、これからの未来で頑張る人たちに向けてメッセージをお願いします。
及川(ポーラ):今後のまちづくりで大切になってくるのは、女性にとって住みやすいまちかどうかだと思うんです。女性が住みにくさを感じる要素の一つに、良妻賢母とか、仕事をしないで家事育児をせよといった「女性とはこうあるべき」を押し付けられてしまうケースがあると思っています。そうすると、都会に出て行ってしまうなって。
なのでぜひ、新規事業や地域創生の中にも、ジェンダー・ダイバーシティの問題を取り上げてもらって、誰も取り残さないまちづくりを意識してもらいたいですね。
指出(ソトコト):僕が常々思っているのは、大人はみんな “中2病” か “小5病” になったほうがいいなということ。その年齢ぐらいの頃は、みんないつも頭で「巨大ロボをどうやったらつくることができるのか」みたいな、実現できなさそうな、でもワクワクすることを考えているじゃないですか(笑)。
一見バカだなと思うようなことでも「こんなことしたい」というワクワクをみんなで共有すると、いろんな人を巻き込んでいけると思うんです。誰だって難しい話より、楽しい話の方が好きでしょ? だから楽しい話で仲間をつくっていくような感覚で、前へ進んでもらいたいですね。
及川(ポーラ):私は、N=1の困りごとを解決することも大事だなと思っています。「私は今こういうことに困っていて、これがあったらいいなと思ってる」という強い思いを、どれだけたくさんの人と共感できるか。
自分の思いってすごく大事で「こういう事を解決したら、きっと私と誰かが喜ぶ」みたいなことから、事業のアイデアはスタートすると思うので、みなさんの活躍を楽しみにしています。
Editor's Note
地域で本気で挑戦されてこられていたからこその本音が詰まったトークセッション!中2病と言われたときは一瞬戸惑いましたが(笑)、ワクワクすることを人に伝えながら、巻き込んでいくことがまちづくりのヒントになると感じました。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香