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LOCAL LETTER

地域と企業をつなげ、地域活性人材を育む「TUNAGUプロジェクト」

OCT. 18

WAKAYAMA

拝啓、「人材育成」と「地域活性」をつなげたいアナタへ

「この人の人生が気になる!」そんな旬なゲストと、LOCAL LETTERプロデューサー平林和樹が対談する企画『生き方 ‐ 人生に刺激を与える対談 ‐ 』。

第13回目のゲストは、株式会社YeeY共同創業者・代表取締役の島田由香さんです。

島田さんは、ユニリーバ・ジャパンで先進的な人事制度を数多く実現してきました。2022年に退職後、自身の「やりたい」想いを原動力として、さまざまな人材育成プログラムを手掛けています。

そんな島田さんが目指す「真の人材育成」の真髄に触れた前編でしたが、後編では自身の原体験から構想を得た「TUNAGUプロジェクト」の詳細について語られました。

自分自身の人生を精一杯生き続けているアナタに注ぐ、一匙の刺激をお届けします。

見ないようにしてきた過去の原体験が、馬との対話を通して緩んだ

平林:スイスのビジネススクール・IMD(正式名称:国際経営開発研究所)で受けたホースコーチングは、どのような内容だったんですか。

島田:まず、馬の手綱を引いて馬場を1周するワークがありました。でも、誰がやっても馬が1歩たりとも動かなくて。引っ張ったり押したり、泣き叫ぶ人もいて、私の番が回ってきたんです。

島田 由香(Yuka Shimada) 氏 株式会社YeeY 共同創業者 代表取締役 / 慶応義塾大学卒業後、米国コロンビア大学大学院にて組織心理学修士号取得。日本GEで勤めたのち、2008年ユニリーバ・ジャパンに入社。ユニリーバで取締役人事総務本部長として「WAA」などの先進的な人事施策を実行しながら、2017年に株式会社YeeYを共同創業。2022年にユニリーバを退社後、「真の人材育成」を実現するプログラム開発に従事。
島田 由香(Yuka Shimada) 氏 株式会社YeeY 共同創業者 代表取締役 / 慶応義塾大学卒業後、米国コロンビア大学大学院にて組織心理学修士号取得。日本GEで勤めたのち、2008年ユニリーバ・ジャパンに入社。ユニリーバで取締役人事総務本部長として「WAA」などの先進的な人事施策を実行しながら、2017年に株式会社YeeYを共同創業。2022年にユニリーバを退社後、「真の人材育成」を実現するプログラム開発に従事。

島田:実は、私は自分の中に奢りがあったんですよ。みんなの時は動かないけど、私の時は動くんじゃないかって。それで馬のところに行ったら、馬が動いたんです。一瞬、やった!って思いました。でも、次の瞬間気付いてしまったんです。これ、「動いている」んじゃなくて、「私から逃げている」んだって。それに気付いたら、ぶわっと涙が出てきて。「行かないで!」と号泣していました。

これは多分、幼少期の原体験とつながっているんですよね。

私、中学の時にいじめられたことがあって。ほかにもいろんな記憶がこの時に一気に出てきて、「私が近づくと人が逃げていくんじゃないか」という苦い記憶と重なって、「行かないで!ただ一緒にいてほしいだけなの!」って叫んだの。そしたら、その瞬間に馬が振り向いて歩み寄ってきたんです。あの感動をなんて言ったらいいのかな……もうね、言葉じゃないの。

平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)株式会社WHERE 代表取締役、内閣府地域活性化伝道師、ふじよしだ定住促進センター理事 / ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社 CRAZY を経て、株式会社WHERE創業。約2万人の会員を持つ地域コミュニティメディア「LOCAL LETTER」、産学官民の起業家70名以上が登壇する地域経済サミット「SHARE by WHERE」など地域、業界を超えた共創を創出。長野県根羽村で一棟貸し宿を立上げ事業譲渡など独自の事業作りで活動中。
平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)株式会社WHERE 代表取締役、内閣府地域活性化伝道師、ふじよしだ定住促進センター理事 / ヤフー株式会社、カナダ留学、株式会社 CRAZY を経て、株式会社WHERE創業。約2万人の会員を持つ地域コミュニティメディア「LOCAL LETTER」、産学官民の起業家70名以上が登壇する地域経済サミット「SHARE by WHERE」など地域、業界を超えた共創を創出。長野県根羽村で一棟貸し宿を立上げ事業譲渡など独自の事業作りで活動中。

島田:自分の中にあった悲しい思い出、寂しかった記憶、つながりを断ち切られた体験。ずっと自分が見ないようにしてきたものが、馬との時間を通して一気に緩んだ。そういう体験でした。

その後、「日本でもこの素晴らしいプログラムを提供したい」と思い、現在展開している沖縄と和歌山でのホースコーチングが実現しました。

自然の中で単純作業に没入することで、内省の時間を確保できる「梅収穫ワーケーション」

平林:沖縄や和歌山のホースコーチングをはじめとして、由香さんがつくられているプログラムは、地元の人たちとチームを組んで行われている印象があります。

島田:まさにその通りです。例えば、和歌山県はみなべ町で実施している「梅収穫ワーケーション」。ワーケーションに行った先で、「梅農家さんの収穫を手伝おう」という試みです。これにはある深い目論見があるんですよ。

島田:ワーケーションという新しい働き方は、ただ場所を変えてモバイルで仕事をすることではなくて。「ワーク」と「バケーション」でいうと、バケーションのほうが大事なんです。バケーションと聞くとみんな休暇や遊びを連想するのだけど、本来の意味である「心を空にする」ことに意味がある。

「あれもしなきゃ」「これもしなきゃ」って頭の中がいっぱいな状態ではなく、「今ここにいる」というマインドフルな時空間を体験できることこそが、本当のワーケーションなわけです。

平林:足し算ではなく、引き算なんですね。

島田:そう思います。不要なものを削ぎ落とす。そのために必要な要素が「自然に触れる」ことと「単純作業に没入する」こと。農業などの一次産業において、素人がやらせてもらえるのは単純作業じゃないですか。

梅収穫ワーケーションは、雨天決行・土日なしでやるんです。雨の日の作業が私は大好きで。東京にいたら雨に濡れるなんて絶対に嫌でしょう。ところが、自然の中で雨に打たれていると、自分が着てるカッパに当たる雨の感覚や音が集中力を加速させてくれるので、黙々と梅を拾えるんです。これが、ものすごい内省の時間になるんですよ。体験者のアンケートでも、100%の人から「よかった」という感想をいただいています。

島田:一次産業のお手伝いだから、内省が進むだけではなく確実に社会貢献につながっている点も大きいですよね。体を使って汗をかいて、それで貢献して感謝される。良い気持ちになってウェルビーイングが上がる。まさに良いこと尽くし。

企業で学んだことに加え、一次産業に従事されている事業者さんから学ばせてもらうことがすごく多くて。それで今年ある事業をスタートしました。それが「TUNAGUプロジェクト」です。

各地域それぞれの特徴を生かした個別プログラム「TUNAGUプロジェクト」

島田:「TUNAGUプロジェクト」は、和歌山県みなべ町、和歌山県すさみ町、石川県能登町、福井県高浜町の4地域で、15日間の実地研修を3回に分けて行います。研修終了後も対象地域の活性化に関わってくれる「地域活性人材」を育むためのプログラムです。

平林:すごい行きたいし、めっちゃ取材したいです。

島田:マジで来てほしい。私、本当にこれ以上のものはないと思って命かけてやっているから。

平林:地域の特性が出やすい一次産業、それこそ自然と密着した産業を体験できるコンテンツづくりを各地でやっているということですよね。

島田:そうです。私が草案を考えて、地元の方にもなかに入ってもらって、各地域それぞれの特徴を生かした個別のプログラムを組んでいます。

平林:4地域すべてを回るプログラムなんですか。

島田:それは参加者に選んでもらいます。3回の実地研修ですが、すべて同じ場所でもいいし、全部違ってもいい。ただ、行った先の地域活性に何かしらの形で関わってほしいんですよね。いろいろ考えた結果、初回は参加者さんに7万8000円だけ負担していただこうと思っています。これは概算ですがトータルでかかる費用の10%ほどです。

プロジェクトにはオンラインセッションも含まれています。私のセッションのほか、TURNSプロデューサーの堀口正裕さんと、株式会社umari代表の古田秘馬さんのセッションを予定しています。

平林:その内容で7万8000円は破格ですよね。企画をやったことがない人はもしかしたらイメージしづらいかもしれないけど、地元の方々に謝礼をお支払いしたりとか、カメラマンさんを入れたりとか、けっこうな費用がかかってくるので。

島田:そこをわかってくださって嬉しいです。でも、やっぱり最初って体験してもらわないと良さがわからないから、ある意味キャンペーン価格ですよね。

平林:そういったプログラムの1番最初の1期生って、関係性が濃くなるし特殊ですよね。

島田:本当に。今までいろんな研修をつくってきたけど、ゼロイチにした時に関わってくれる参加者って普通じゃない。2期目になると、やっぱり1期の様子を見て来ていますからね。1期目の人はね、本当に変態が多いんですよ(笑)。

味覚、臭覚、触覚を体感するリアルと、サステナブルなオンラインをかけ合わせる

平林:僕らの会社は今、第2創業期に入っています。これまでを振り返ってみると、本当にアプローチしたいのはやっぱり「人」だなと思っていて。地域って、人がいなければ地域にならないじゃないですか。なので、人を育める産業が理想だと感じていて、「人材」というところに改めてアプローチしたいなと思っているんです。

でもそういう場をつくる際に、体験を伴う実地を行いたくても、オンラインのほうが参加するハードルが低いこともあって。そのせめぎ合いをどう整理しようか悩んでいるんですよね。

島田:具体的に「迷う」のはどういう時ですか。

平林:今うちではローカルライター養成講座の第3期をやっている真っ最中なんです。全6回の講座で、座学でインタビューや執筆のポイントについて学んだ後、1泊2日で現地に行ってグループインタビューをします。先日は、福島県の南相馬市に現地取材に行きました。

ただ、この講座はフィールドワークが1回だけなんです。最後ぐらいみんなで実際に集まれたらいいなと思う反面、参加ハードルと価格設定を考えると迷ってしまって。やっぱり実地研修が増えると、価格が上がってしまうので。

島田:なるほど。仮にですけどこんな方法もありますよ。最後にもう一度、取材先に集まってもらって自分がつくった記事を事業者さんに見てもらい、感想をその場で聞く。そういう場を設けた懇親会を価格設定に入れたとしても、「高い」とはならないんじゃないかな。自分が関わってつくったものがお相手に届けられる瞬間って、みんな絶対に見たいと思うので。

私は、オンラインも実地も両方大事だと思っていて。全部がオンラインなのも違うし、全部がリアルだと体力、時間、お金の面でもサステナブルじゃなくなってくる。

味覚、臭覚、触覚。近接感覚と呼ばれるこの3つが育まれることによって、信頼関係が生まれると言われています。オンラインでは、それができない。でも、オンラインでも十分にコミュニケーションは取れるわけですよ。

ということは、リアルですべきなのは、味覚、臭覚、触覚から得られる体験がある時だけでいい。

平林:わかりやすいですね。今のお話でだいぶ整理されました。

「TUNAGUプロジェクト」の話に戻るのですが、さまざまなプログラムを組むために地域と関わるなかで、由香さん自身の変化も生まれましたか。

島田:すごくありましたね。やっぱり農家さんや漁師さんなど、自然に触れている人は哲学がすごいから、そういう人たちの人間力に触れることによって変わっている感覚はあります。

ずっと凝り固まっていたものをほぐしたり、違う仕事や生き方があることに気付いてもらうために、「TUNAGUプロジェクト」が企業にとっても良い意味での受け皿になるといいなと考えています。

研修先の候補として、個人だけではなく企業の人にも検討してもらいたいな、と。地域と企業が互いに連携していけば、それぞれの良い面を引き出し合えるのではないでしょうか。

平林:まさに「生き方」の企画そのもののお話を聞けて嬉しかったです。ありがとうございました。

Editor's Note

編集後記

ホースコーチングでの経験をお聞きして、胸が詰まりました。「言葉を持たない」馬との対話は誤魔化しが効かない。梅収穫ワーケーションや「TUNAGUプロジェクト」をはじめとして、大いなる自然との対話において、言葉は意味を持ちません。日頃、私たちがどれほど言葉に頼り切っているのかにも気付かされました。

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