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LOCAL LETTER

石井食品×ローカルプロデューサー講座。受講後に「確かに感じた」地域貢献への広がり

NOV. 08

CHIBA

拝啓、生産者・消費者とともに発展・循環していくビジネスを掲げる企業のアナタへ

「日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる」

そう掲げるのは、創業79年の石井食品株式会社。
「イシイのおべんとクン ミートボール」でおなじみの老舗食品メーカーです。これまで石井食品は、社会課題の解決とビジネスをどう繋げるか、さまざまな実験と挑戦を続けてきました。

「古き良きは残し、変えるべきは変える」

こうした信念のもと、石井食品は時代に合わせたアップデートを進めています。

そして今回、代表の石井智康氏は、地域プロデュースを担う2名の社員に「ローカルプロデューサー養成講座*」への参加を推薦。地域資本を活かした事業創出を学ぶこの講座は、企業の成長にどのような影響を与えるのでしょうか。

*ローカルプロデューサー養成講座…LOCAL LETTERを運営する株式会社WHEREが開講しているアカデミーのひとつ。「地域資本を活かして事業を生み出し、継続する力」を目指して、第一線で活躍するプロデューサーから学び、経験を積む超実践型カリキュラム。現在、第2期を開講中(2024年9〜11月)。(講座詳細はこちら

「企業×講座」を活かす石井食品の人材育成の取り組みを、社員と代表の声を通じて前編・後編でお届けします。

第1期ローカルプロデューサー養成講座では、石井食品とローカルイベントとのコラボが生み出され、見事受講中に実行された
第1期ローカルプロデューサー養成講座では、石井食品とローカルイベントとのコラボが生み出され、見事受講中に実行された

はじまりは佃煮。時代ごとに「社会のために向き合ってきた食の実験企業」の歴史

「食品製造業」と「ローカルプロデューサー養成講座」。一見すると関係が薄いようにも感じる本講座の受講を決めた理由は、いったいなぜなのでしょうか。

その意図がより伝わるようにと、石井食品の創業からの歴史を現在代表取締役社長執行役員の石井智康さんからお聞きしました。

「一般的にミートボールやハンバーグで知られている石井食品ですが、実は、創業当時船橋の名産だった海産物を使った、佃煮の製造販売業からはじまっている会社なんです」(石井さん)

石井 智康(いしい ともやす)氏 石井食品株式会社 代表取締役社長執行役員 / 2006年6 月にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア) に入社。ソフトウェアエンジニアとして、大企業の基幹システムの構築やデジタルマーケティング支援に従事。2014年よりフリーランスとして、アジャイル型受託開発を実践し、ベンチャー企業を中心に新規事業のソフトウェア開発及びチームづくりを行う。2017年、祖父の創立した石井食品株式会社に参画。2018年6月、代表取締役社長執行役員に就任。
石井 智康(いしい ともやす)氏 石井食品株式会社 代表取締役社長執行役員 / 2006年6 月にアクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ(現アクセンチュア) に入社。ソフトウェアエンジニアとして、大企業の基幹システムの構築やデジタルマーケティング支援に従事。2014年よりフリーランスとして、アジャイル型受託開発を実践し、ベンチャー企業を中心に新規事業のソフトウェア開発及びチームづくりを行う。2017年、祖父の創立した石井食品株式会社に参画。2018年6月、代表取締役社長執行役員に就任。

佃煮・煮豆の会社として発展した石井食品。

日本が高度成長期を迎えた1970年代になると、忙しい毎日を過ごす当時のお客さんのニーズにこたえ、日本初の調理済み「チキンハンバーグ」や「ミートボール」などの発売を開始しました。佃煮から商品のラインナップを大きく変更し、冷凍食品やチルド品など温めるだけで手軽におかずになるバラエティー豊かな商品を展開しています。

「1990年代に入ると『食の安全性』に目を向け、製造工程において食品添加物を使用しない『無添加調理』の取り組みを開始し、加工食品の技術を磨きました。それに付随して2000年に会社独自のトレーサビリティ(原材料履歴管理システム)を開発・導入し、加工食品に対するお客さんの不安を軽減するための取り組みを続けてきました」(石井さん)

お客さまに安心していただくため使用原料、調味料、検査内容など、商品ごとに履歴が追える独自のシステムを開発し、Web上にすべて公開。全商品「無添加調理」を実現させました。

石井食品は、情報を管理し安心を提供する「品質保証番号」、安全とおいしさの源である「厳選素材」、素材本来の味を活かす「無添加調理」の三大原則を守りながら、時代のニーズに対応する魅力ある商品づくりをおこなっているそうです。

「現在、私たちが一丸となって目指しているのが持続可能な食品企業・ビジネスの構築です。

おいしく、安全なものを家庭に届けるだけでなく、その商品を生みだす生産者とつながり、生産者・お客様がともに喜ぶ新しい持続可能なビジネスモデル作りを推進しています。

食に関するさまざまな課題があるなかで、社会課題の解決とビジネスづくりをどう接続するか。企業として模索するなかで、大きな方向性として打ち出したのが『地域と旬』事業です。地域食材と無添加調理を掛け合わせ、生産農家さんとともに商品づくりから取り組んでいます」(石井さん)

「かつては加工食品として『〇〇産の栗』と大きなくくりのなかで大量に調達、同じ味になるように加工し、できるだけ価格を抑えながら消費者に栗ご飯を楽しんでもらうのが一般的な方向性だったと思います。

そんななか我々は、千葉県の八千代工場・京都府の京丹波工場・佐賀県の唐津工場の各工場付近でつながりをもつ地域の厳選された栗をつかい、それぞれの栗がもつポテンシャルを最大化できるような商品に仕上げることで、特徴が異なる4種類の栗ご飯の素ができあがりました」(石井さん)

石井食品の栗ごはんは、国産栗を100%使用。社員が実際に産地に赴き、選び抜いた全国4か所の栗が使用されている
石井食品の栗ごはんは、国産栗を100%使用。社員が実際に産地に赴き、選び抜いた全国4か所の栗が使用されている

「現在、各地の生産者とともに、地域限定や旬限定の商品をたくさんつくりだし、季節ごとに食材と商品が移りかわっていくような、加工品としては珍しい取り組みをおこなっています。

お客さんにとっては『生産者がイメージできない』、生産者からは『どう届けられたのかわからないまま生産しなければならないそうした現在の状況を変え、生産者や地域とお客さんがもっとつながるような商品をつくることで生産者の発展を後押ししようとしています」(石井さん)

日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になるために「知見」を取りに行く

企業理念として「真(ほんとう)においしいものをつくる 〜身体にも心にも未来にも〜」を掲げる石井食品。2030年に向け農と食卓をつなぎ、子育てを応援する会社にすることをビジョンに方針を定めています。

さまざまな方法で社員に企業理念やビジョンを共有。社員一人ひとりに前提を落とし込んでから実践に入ります。

「『日本一、生産者と地域に貢献する食品会社になる』ことを目標に、生産者と消費者が循環するビジネスモデルを実現しようとする取り組みは、食品加工会社としては新しく、これまでとは全く違うことを各部署で新たに取り組んでいかなければなりません。

例えば、営業部ではこれまでスーパーに営業をかけることが主体でした。しかし、現在では業務の半分は生産者を訪問し、生産者とともに商品開発をする活動にあてています。

また、調達部門であれば、これまではどう安定的に大量に安く仕入れるかをミッションに、商社や農協などをまわってきたと思います。そんな状況を脱却すべく、部署の名前は素材価値開発部に変更しました。

地域食材がもつポテンシャルを最大限に引きだし、地域や生産者を包括して発展させるにはどうすればよいかということが最大のミッションになっています」(石井さん)

「会社のなかで『地域食材をプロデュース』というテーマを掲げ、食品加工会社にとどまらない、地域食材をプロデュースする機能をわれわれは持っているんだ、という共通認識をもつようになりました。

社内には、どう地域食材をプロデュースして、より価値あるものにしていくかを考える『地域コーディネーター』という役割を設けています。そして、2016年からは営業(顧客サービス部)や調達部門(素材価値開発部)を中心とした『地域と旬』の取り組みを開始しました。

そうしてすばらしい商品が生み出される一方で、地域と深く関われば関わるほど、商品開発だけでは解決しない課題がたくさんでてきました

食品メーカーとしておいしいものは生み出せます。しかし、それをどのように伝え商品や生産者・地域のファンにつなげていくのか。社会的にも前例・事例が少ない状況で、われわれ社内の知識だけでは限界があると感じていました。

そこで、社外からも知見を得ようと考えていた折、このローカルプロデューサー講座を知りました。

フィールドワークの開催地が工場がある佐賀県唐津市だったことにも縁を感じ、今回受講してくれた2人に『興味はないか』と伝えたのが講座を受けることになったキッカケです」(石井さん)

「これって講座の影響だったんですね」

そうして推薦を受けた、石井食品 素材価値開発部 の行政(ゆきまさ)さんと夛田(ただ)さん。代表から講座の紹介はあったものの、実際に受講するためには、所属部署の上長の許可取りから始めなければならなかったそうです。

「智康さんから推薦いただいたとは言え、外部の講座を研修として活用した前例がない分、どう伝えれば上司から許可が得られるか悩みました。

そこで、今期から方針として掲げられた『地域コーディネーターの育成』の視点と、ローカルプロデューサー講座で掲げられていた『地域資本を活かして事業を生み出し、継続する力をつける』など、想いが重なる部分があると自分で整理しました。

会社の方針と、講座で目指すもの、両者を紐付けて説明することで上長からも理解が得られました」(行政さん)

行政翔平(ゆきまさ しょうへい)氏 石井食品株式会社 素材価値開発部 / 千葉県出身。顧客サービス部(営業)を経たのち、2024年より現所属の地域プロデュースグループ 地域コミュニケーションチームへ。”地域と旬”の食材と生産者を探しつつ、食材と商品を通して、地域に貢献する形を作り、地域と食卓をつなぐ調整役を担う。
行政翔平(ゆきまさ しょうへい)氏 石井食品株式会社 素材価値開発部 / 千葉県出身。顧客サービス部(営業)を経たのち、2024年より現所属の地域プロデュースグループ 地域コミュニケーションチームへ。”地域と旬”の食材と生産者を探しつつ、食材と商品を通して、地域に貢献する形を作り、地域と食卓をつなぐ調整役を担う。

実際に講座に参加したことで、具体的な学びを得られたり、仕事に変化は生まれたのでしょうか。

行政さんとともに本講座を受講し「地域プロデュースグループ」というチームで業務に取り組んでいる 夛田英梨奈さんは、わかりやすい形で変化が生まれたことを教えてくださいました。

「実際に地域で関わりをもちながら大きなイベントを継続するために実践されている、現役のプロデューサーの方々から多くの知見を学ぶことができました。座学だけじゃなく実際に地域に伺い、実践する講座だったことで、生きた経験を積むことができて具体的な学びになりました

今では、ローカルプロデューサー講座で得た学びをまとめ、地域で活躍している社内メンバーに向けての社内研修として、わたしたちから学びの共有をしています」(夛田さん)

<<夛田さんプロフィール>>

夛田 英梨奈(ただ えりな)氏 石井食品株式会社 素材価値開発部 / 2019年新卒入社。千葉県出身。北海道で学生時代を送り、生産者と距離が近い仕事を求めて、石井食品に入社。地域プロデュースグループ 素材加工研究チーム所属。現在は "地域と旬”を求めるお客様に商品をお届けするべく、各地域の野菜や果物のピューレ加工や研究を行っている。
夛田 英梨奈(ただ えりな)氏 石井食品株式会社 素材価値開発部 / 2019年新卒入社。千葉県出身。北海道で学生時代を送り、生産者と距離が近い仕事を求めて、石井食品に入社。地域プロデュースグループ 素材加工研究チーム所属。現在は “地域と旬”を求めるお客様に商品をお届けするべく、各地域の野菜や果物のピューレ加工や研究を行っている。

行政さんもさらに言葉を重ねます。

「具体的な話でいうと、まずひとつは定義が曖昧だった『地域プロデューサー』『地域コーディネーター』『プロデュースコーディネーター』についてきちんと定義づけをしよう、と部署や社内に提案できたことです。

定義がきちんと固まったあとも社内で理解を進めていく必要はあるのですが、まずは土台を築いていくことが大事。その足がかりをつくる大きな一歩になりました。

他には、地域との関わり方・巻き込み方にも大きな変化があって。これまでは、石井食品として関わるのは、生産者と一対一の場合が多く、ときに自治体や小売りが加わる、という程度だったんです。

でも、講座を受講したことで『それでは足りない』という考えが生まれ、石井食品・生産者・自治体の他にも第三者・第四者などの『+α』の存在をどう巻き込んでいくか考えるようになりました。実際に、具体的な取り組みが動き始めています」(行政さん)

行政さんからの言葉をうけ、石井さんはハッとしたような表情をみせます。

確かに新しい動きがでてきたことは感じていました!地元の有名高校や新聞社を巻き込みに行ったりして、各拠点それぞれで新しい広がりをみせてきましたよね!それってこの講座の影響だったんですね」と聞き返す石井さん。

「私はそう捉えています」と行政さんは笑顔で言葉を返していました。

ここまでは、講座を受講するに至った企業としての想いや、講座がどのように活かされたのかを紐解きました。

後編では、企業が描く未来と講座での学びをどう掛け合わせるのか、「こんな人に参加をおすすめしたい」など、受講検討中のアナタへのメッセージをお伝えします。

Editor's Note

編集後記

石井食品のHPを覗くと企業スローガンのところに大きく赤字で「イシイの本気は、裏に出る」と書いてあります。これは商品の裏面に記載されている「原材料」や素材のシンプルさを表しているそう。理念にまっすぐ向き合い、本気で取り組んできたからこそ、堂々と書ける文言なのだと感じます。そうか、そうか。イシイのミートボールをお弁当に詰めるとき、この方たちの熱意と愛情も一緒に詰めているのだと思うとなんだか嬉しくなりました。

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